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2026年06月16日07:00
博識であることは二の次です!
日本が初戦オランダ戦で好試合を演じたFIFAワールドカップ2026北中米大会。試合自体と同じくらいに話題となったのが、NHKでの中継に登場した本田圭佑さんの解説でした。それは決してものすごく博識というものではなく、いわゆる豆知識的なものは基本的に何もないスタイルでしたが、妙に心地よく、不思議と盛り上がる名解説でした。
この事例は、かねがね実況・解説に関して思っていることをわかりやすく実感できる実例でしたので、何故本田解説はイイ感じだったのかについて自分なりに言語化していこうと思います。もし、年間プランを契約しちゃったもので意地になってDAZNで見ていてまだ本田解説をご覧になっていない方がいましたら、意地にならずにNHKもご覧になったほうが楽しいと思うので、そちらとあわせてご覧いただければと思います。
↓NHK自らが「ココでこんなこと言ってます」をまとめるほどに話題沸騰中です!
⚽️サッカー FIFAワールドカップ2026⚽️
— NHKサッカー (@NHK_soccer) June 15, 2026
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本田圭佑さんの解説 もくじです📣
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まず、この本田解説には、一般的な解説という意味では大きな問題点がありました。本田さんは驚くほどサッカーを見ていないのです。このワールドカップの開幕戦で退場者が3人出たことも把握していませんでしたし、「ハイドレーションブレイク」などと呼ばれる飲水タイムについても知らなかったようですし、オフサイドディレイのこともわかっていなかったようですし(※4年前もわかってなかったので覚える気がないだけかも)、オランダの選手についてもファンダイクさんとデ・ヨングさんなど数名しか把握していなかった気配がありました。
もしかしたら、一般視聴者目線で「4年に1回だけサッカーを見る人」のところまで敷居を低くし、あえて何も知らない素人のフリをしているという可能性はあるかもしれません。ただ、現場での本当に知らなそうな言いっぷりや、「そんな小細工をする人ではないだろう」という見立てからすると、たぶんマジで知らなかったのでしょう。何なら4年前のワールドカップのあと1試合もサッカー見てない(自分でやってはいる)という可能性さえ想像されるほど。予習ゼロ、ソース俺。そんなストロングスタイルで本田さんはこの仕事に取り組んだのだろうと思います。この調子だと、日本の試合で「DOGSO」(※いわゆる決定機の阻止/退場など重い罰がくだる)による不利が発生した場合は、「ドグソぉ!?何すかそれ!?クソですね!」みたいなドグソ文句さえ始まるかもしれません。
もちろん手放しで褒めることはできません。一応解説者なのですから、ある程度博識であることは求められてしかるべきですし、せめてここんところの2・3試合くらいは見てから来たってバチは当たらないはずです。ただ、本田さんは決して本質は外してはいません。一番大事なことは博識であることではないのです。
解説あるいは実況にもっとも求められることは、その現場で起きたことに対する当意即妙な即興による言語化です。実況は事実を列挙し、解説はその背景を解きほぐす。その意味で博識であることはある程度必要ですし、ベースとしてあったほうがいいわけですが、知識は諸刃の剣でもあり、一番大事な「当意即妙」「即興」の部分を阻害する要因にもなるのです。
たとえば漫才や落語などで、もちろんネタ本はあるわけですが、そのネタ本を覚えてきて台本通りに言っていますという雰囲気が出ていたらどう思うでしょう。しらけますよね。面白くないなと思いますよね。フリートークで盛り上がっているとき、急に自分語りが始まったり、関係ない話題を持ち出してきたらしらけますよね。面白くないですよね。急にぶっこまれたアドリブでいい返しがきたりすると、ドッとわきますよね。面白いですよね。そんな、お笑いにおける「当意即妙」「即興」「間」「空気」「アドリブ」のようなものが、同じ会話芸である実況や解説にもあるのです。
すべての実況・解説の最初の最初の発端となるネタは、常に目の前のプレーです。
その場で行なわれるプレーこそがすべての発端であり、まずはそれを全身全霊で見て、咀嚼して、その瞬間の空気も取り込んで、言語化することが大原則です。これを少しでも外すと、聞いている人は急に冷めてしまいます。よく日本テレビのアナウンサーがやる資料読み実況などはこの最たるものです。たくさん豆知識を調べていて偉いとは思いますが、その情報は今目の前のプレーと本当につながっているのかと。今目の前にあるプレーを見るのではなく、何も起きていない時間のごとく、調べてきた豆知識のお披露目大会になっていませんかと。
もっと冷めるものとしては、あらかじめ考えてきた決めゼリフ実況などもあります。これも当たり前の話で、あらかじめ考えてきたセリフが、その日目の前で起きている一期一会のプレーにあてはまるはずがないのです。一生懸命考えたネタだから言いはするものの、それは今みんなが感じているものとはどうしたって合わない。誰それが勝ったらこう言ってやろう、誰それが勝ったらこう言ってやろう、事前に用意した美辞麗句を一生懸命並べれば並べるほど、目の前のプレーとはズレていく。知識自慢、表現自慢になっていく。まして腹の底で「チャンピオンズリーグに比べると強度低ッ」だの「どうせ世間はこの選手のことを知らないだろうから俺が教えてやろう」だの「この機会に日本人の戦術理解度をあげる」なんて思っていたら、どうして4年に一度の祝祭に臨むファンの心に響く言語化ができるでしょうか。
その点、本田さんの解説は常に全身全霊で目の前のプレーに向き合っています。「本田が言いたいこと」ではなく、目の前のプレーに対して「本田がその瞬間に思ったこと」を言っている。しかもそれは本田さんの人柄からくるファン目線と、本田さんのキャリアからくるサッカーの本質を捉えた有識者目線とが高いレベルで共存しています。ワールドカップや欧州チャンピオンズリーグを経験した世界のサッカーを知る有識者が、酒場で真剣にサッカーを応援しているファンのような心持ちで、目の前のプレーに全身全霊で向き合っている。
そのとき、本田さんが情報量として博識でないことは、むしろファンに寄り添う効果を発揮してきます。前回大会で話題になった「ななふぅん!?」のフレーズも、世間のファンがまさに心で「ななふぅん!?」と思った瞬間に出てきたから大ウケしたのです。博識解説者であれば「まぁそんなもんだろうな」と落ち着いてしまう場面で、本田さんは心の底からの「ななふぅん!?」を言葉にできる。驚く気持ちも、長いなというハラハラする気持ちも、ファンと同じように言葉にできる。これだけサッカーを知っている人が、あんなにアディショナルタイム7分にビックリできた、そこが奇跡なのです。
このオランダ戦でも後半26分34秒頃に本田さんはスタンドの観衆を抜いた映像を見て「誰?」と言いました。この中継を見ていた人の多くが「誰?」と思ったときに本田さんは「誰?」を言えるのです。優秀なNHKのアナがときおり博識を活かして正解できるこの「スタンドの有名人誰でしょクイズ」に対して、通常の実況や解説なら沈黙でやり過ごすところを、本田さんは「誰?」をためらいなく言える。すなわち、その場の空気までも取り込んだファン目線の言語化ができる、そういう人なのです。(※ちなみに正解はWWEで活躍するリヴ・モーガンさんだとのこと)
これで本田さんが本当にサッカーを知らなければ単なる観光客ですが、本田さんはサッカーを深く知っているわけです。知っているからこそ、目の前の選手の名前は知識として憶えてはいなくても、「オランダは5バックになってますね」とか「22番が穴」とか「8番がうざい」とか、相手のポジショニングの変化やつけ入れそうな隙、相手の危険なプレーヤーなど、目の前で起きているゲームについては深い造詣から素早く的確に言語化ができるのです。そのとき一般ファンにしてみれば、ダンフリースって言われるより、22番のほうがありがたいわけです。そのほうが画面でよくわかるから。
もし今、目の前のどこかの国に、無名のメッシがいたら。
博識だけが自慢の解説者であれば、すでに名声を備えたチームメイトの話から始まってしまうでしょう。たくさん知識を持ち、十分な準備をすると、知識が邪魔をして反応が遅れるのです。しかし、本田さんは無名のメッシにいち早く反応し、「やば!」「コイツやばないですか?」「何なんすかコイツ!」みたいな話が始まると思うのです。バルセロナでどうこうとかパリ・サンジェルマンでどうこうとかの知識ではなく、今日、今、目の前でやばいヤツが誰なのか、それを見極めてこそ有識者なのです。競馬界隈での有名な逸話に、評論家の井崎脩五郎さんがある年のイベントで「今まで見てきたなかで一番強いと思った馬は?」といった主旨の質問をされて「昨日の新馬戦で勝った馬(ディープインパクト)」という主旨の答えをしたというものがありますが、本田さんならそういった反応もできると思うのです。見る目があって、目の前に全身全霊だから。
↓「そろそろいける気がする」の直後に同点弾という目の前言語化能力の高さよ!
イエス!イエス!イエス!イエス!
イエーーーーーーーーッス!!
と、本田さんはファン目線の言語化を行ないました!
知識があることをダメとはいいません。理想は博識であるほうがいい。ただ、実況・解説に臨むにあたっては、それをすべて忘れてから始めてほしい。メモ帳を閉じ、すべてを忘れて、目の前のプレーに当意即妙の即興で反応するのです。ただただ目の前で起きるプレーに反応していくなかで、「そういえば」と思い出すものがもしあったら、きっとそれは目の前のプレーに関係がある大事な知識なのです。ワールドカップやオリンピックで、今目の前で起きていること以上に大事な知識があるかはわかりませんが、忘れていたのに思い出すほどの知識であれば、言ってみてもいいんだろうと思います。
その「忘れる」という難しい行為を、「予習しない」という勇気で実践した、それが本田解説。並の解説者であれば自分の知識不足を指摘されるのがイヤでそんなことはできないでしょうが、本田さんはできるのです。それは本田さんが常に自分の目で世界を見定め、自分の価値基準で生きてきた人だからこそなのだろうと思います。誰が褒めた、誰がけなした、ではなく、自分がどう思うか。マネするのは難しいかもしれませんが、ひとつの本質として、各界の実況・解説の皆さんにも学びにしてもらえたらいいなと思います。
くれぐれも本田さんを表面だけマネして、「あんな感じのフレーズを事前に考えておこう」などとは思いませんように。本田さんはその場であんなことを思ってそのまま言っちゃう人だから面白いんですからね!
↓そうか、「パルプンテ本田」って当意即妙の即興過ぎて自分でもその場で何を言うかわからないってことなんですね!
何が飛び出すかはわからないけれど、その根底には深いサッカーへの理解がある!
戦略ではなく即興が生み出す奇跡を楽しみましょう!
なのでブラボー長友さんが4年かけて新ネタを考えてたらスベると思います!





