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2024年11月10日08:00
佐々木朗希さん、日本プロ野球を経由してくれてありがとう!
またひとつ巨大な才能がアメリカを目指すことになりました。プロ野球・千葉ロッテマリーンズに所属する佐々木朗希さんがポスティングシステムを利用してメジャー移籍を目指すことが発表されたのです。かねがねメジャー志望とのことは表明されていましたので驚きというよりは満を持してといった印象。さらなる飛躍と、夢の舞台での大谷翔平さんらとの競い合いに大いに期待したいものです。
↓日米両方で完全試合達成となればもちろん史上初の大快挙です!
#佐々木朗希 投手について、ポスティングによる米国メジャー・リーグ・ベースボール(MLB)球団への移籍に向けた手続きを開始することにいたしましたので、お知らせします。
— 千葉ロッテマリーンズ (@chibalotte) November 9, 2024
▼松本球団本部長コメント… pic.twitter.com/iwEjGoUS1C
2019年ドラフトでのプロ入りから5シーズン、64試合登板・通算29勝という段階での移籍は若干早めであることはその通りです。佐々木さんはシーズンを通じてチームの大黒柱として投げ抜いたことはまだなく、規定投球回数の到達は一度もありません。完全試合達成という大偉業は光りますが、二桁勝利もようやく2024年になって初めて達成したというくらいで、まだまだ発展途上の投手です。
年齢的にもプロ5年目・23歳というのはいわゆる「25歳ルール」に引っ掛かりますので、メジャーに移籍してもマイナー契約しか結ぶことはできません。契約金も各球団に割り当てられた国際ボーナスプールのなかから支払われることになりますので数億円程度に制限される見込みです。あと少し待てばいきなり数百億円という契約話もあったでしょうが、それはなくなります。ポスティングシステムでの移籍にあたっての日本球団への譲渡金も選手の契約額の一定割合(マイナー契約の場合25%)となりますので、ロッテ球団へもほんのわずかな金銭(数億円程度)しか発生しないことになります。ポスティングを認めるか否かは球団側の判断ですので、球団側としてもこの点は看過できないでしょう。
こうした力量面で数字的な裏付けが乏しいことや、経済的合理性の低さ、多くの選手が「日本でひと仕事」をやり遂げたのを節目に移籍している人情面での通例を踏まえると、いかにも早いという印象は拭えないのは確かです。多くの良識ある大人が「あと2年日本でやって、ロッテを日本一にしてからアメリカに行きなさい。君ならできる」とアドバイスすることでしょう。その意見は大いに理解できるものです。
ただぁ!
それは日本の野球に魂を囚われた者たちによる妄言でしかありません。
主にネガティブな意見が寄せられる経済的合理性の部分では、確かに今すぐこの移籍のタイミングでは大きな契約は結べないかもしれませんが、結局は「メジャーで何年全盛期を過ごすか」のほうが大事です。大谷翔平さんの移籍も同様に「25歳ルール」のなかで低い金額での移籍でしたが、若くしてメジャーに渡り、大きな成長を遂げ、結果を残したことで1000億円超という巨大な契約に漕ぎつけました。今目の前の契約が多少安かろうが、「メジャーの1年」で積み上がる金額のことを考えれば、日本プロ野球で過ごすことこそ経済的合理性はないのです。一日でも早くメジャーに行って、素晴らしい実績を残したうえで28歳とか29歳のイイ年齢を迎えるほうがよほどリターンは大きい。そもそも「ロッテがいくらもらえるか」なんてのは佐々木さんが考えることではありません。本人からは言いにくいでしょうから僕が代わりに言うなら「グッズでも売って勝手に稼げ」です。
力量面についてもそうです。佐々木さんは「完全試合」の達成者です。しかも相手はのちに日本一になるオリックスです。これ以上、何か証明することはあるでしょうか。ここからあと何年か日本でやってもぶっちゃけ大して変わりはしないでしょう。5年もあったのですから、日本でできる指導はもう十分に尽くしたはずです。日本にはメジャーを知るコーチも、メジャーを知る監督も、メジャー級の対戦相手もほとんどいません。ロッテには吉井監督のように多少メジャーを知る指導者もいますが、設備・環境・情報・人材どれをとってもメジャーを知り、メジャーに勝つにはメジャーに行く以上の方法はないのです。料理の専門学校で一生懸命勉強するのと、実際の星付きレストランで修行するのと、どちらが多くの学びを得て成長できるかを考えれば、ある程度の下準備ができたらあとは一日も早く「本場」に飛び込むことが吉です。若さは有限、無駄にしていい一年などないのです。
要するに力量面も経済面も「メジャーに行く」一択なわけです。それでもまだこの移籍を応援できない気持ちの人がいるとすれば、それは人情面でのモヤモヤということになりますが、むしろ人情を重視すればこそドーンと背中を押してあげようじゃありませんか。佐々木さんはもともとメジャー志望だったと聞きます。今も「金はいらない」「安心もいらない」そういう覚悟で踏み出そうとしています。佐々木さんの一番の夢はそもそもメジャーなのですから、夢を叶えるために頑張ってこいと涙を隠して笑顔で見送ることこそが「人情」です。どこの世界の親が「お前の夢がバンドマンなのは知っているが、あと2年働いて納屋をリフォームしてから上京しろ」などと言うでしょう。金目当てで何かしようとしているなら止めもしますが、夢を叶えるための挑戦なのであれば「行ってこい!」の一択です。それが人生です。
むしろ僕らは人情面で佐々木さんに感謝すべき側です。佐々木さんが日本のプロ野球を経由してくれたことで、僕らは素晴らしい投球を「我が事」として見ることができました。あの完全試合だって、日本のプロ野球の歴史に残る素晴らしい出来事であり、鮮烈な思い出です。これが直接メジャーに行くというコースであったら、日本プロ野球には佐々木さんの足跡は残りませんでしたし、僕らもこの素晴らしい投手に愛着を持つには至らなかったでしょう。たまに侍ジャパンで見ることがあっても、「あぁあれが有名なササキ」くらいの反応だっただろうと思います。こんなにも寂しく、名残惜しく感じるこの「情」こそが佐々木さんが僕らに遺した贈り物なのです。
みなさんにとって「我が事」はどこからでしょうか。高校野球の沼に浸かっている人や岩手県民などは「大船渡の佐々木がメジャーへ!」となるのでしょうか。あるいは都市対抗野球こそ至高と思っている社会人マニアなどは「新日鐵堺の野茂がメジャーへ!」とかなるのでしょうか。まぁそういう人もいるのだとは思いますが、やはり日本の野球ファンにとって最大の「我が事」とはプロ野球だろうと思います。日本のプロ野球を経由して、日本の多くの野球ファンの「我が事」となってからメジャーに挑戦してくれることへの感謝を僕らは意識していかないといけない、もはやそういう段階なのだと思います。
社会人野球や独立リーグに所属する選手がドラフトで夢であるプロ球団からの指名を受けたとき、同僚や関係者やファンはどんな反応をしているか。その想像を巡らした先に浮かぶ顔が、メジャー挑戦を決めた選手を送り出すときにプロ野球団とプロ野球ファンがするべき顔であり、そこには「2年待て」なんて人はひとりもいるはずがありません。不安や恐れから本人が挑戦を止めることはあったとしても、粘っこいしがらみで挑戦を妨げるようなことは厳に控えるべきだろうと僕は思います。夢は損得で考えるものではなく、挑戦は損得で応援したりしなかったりするものではないのです。
↓日本プロ野球を経由してくれたことで僕らは十分に贈り物をいただきました!
これを頑なに「ポスティングは球団の権利」などと拒否すれば、それはいつしか「じゃいいですー」と日本プロ野球そのものを忌避する未来へとつながっていくでしょう。大谷翔平さんも仕方なくプロ志望届(※日本プロ野球に入るための届ではなく学生からプロに転籍するための届)を出しはしましたが、想いはメジャー一択でした。日本ハムは、そこにメリットとプランを提示して「選んでもらった」側です。そのとき選んでもらい、快く送り出したことのリターンは莫大なものだったことが今になってみればわかります。日本一とか譲渡金なんてレベルではなく「大谷さんと良いつながりを持てたこと」そのものが一番大きなリターンでした。今後50年以上に渡ってそのリターンは輝きつづけるでしょう。
一番の夢がメジャーであるという選手は今後もどんどん増えていくでしょう。「俺はベイスターズで勝ちたいんだ」などと思ってもらえれば素晴らしいですが、金や環境を考えればメジャーを夢見るのは自然で当然なことです。そのときに日本プロ野球が考えるべきは、彼らをルールで縛りつけて1円でも多く中抜きすることではなく、彼らが日本プロ野球を経由したほうがいいなと思うようなメリットとプランを提示し、「良いつながり」という一番大きなリターンを手にすることです。最終的には彼らはメジャーで活躍し、日本の野球からは離れていくとしても、良いつながりがあれば「あれが日本の生んだ大谷翔平よ」と自分たちの野球に誇りと自信を持つことができます。大谷さんは日本プロ野球を経由せずとも世界の大谷翔平になったでしょうが、大谷さんに一度も選ばれることなく今の活躍を見守ることになっていたら、どれほど日本野球はつまらん感じだったことか。「あぁあれが有名なオオタニ」と高校時代の映像でも見ながら、遠い世界のスーパースターを見つめていたことでしょう。
そうなってしまわないように、
そうなる日はジワジワ近づいているのを感じながら、
夢を叶える準備ができた人はちゃんと後押しをしてあげて、
「良いつながり」を保っていくべきだと僕は思います。
だって、メジャーが一番の夢ならしょうがないじゃないですか。それを邪魔するのなら日本のプロ野球にはそもそも関わってもらえなくなるだけです。そんなつまらんことをするよりも、自分たちの野球の魅力を高め、金を稼ぎ、金を支払い、環境を整え、雰囲気をよくし、「メジャーよりも日本で勝ちたい」「ここで勝つのが俺の夢」「日本シリーズを勝ちたい!」と思ってもらえるように頑張らないと。まぁ実際問題それは難しいとしても、トロフィーコンプリートの一環として「日本シリーズも獲れたら獲りたい」「まだ身体もできてないし、大学に行ったつもりでプロに入ろう」「5年をリミットに一応トライするか」くらいには思ってもらえるよう、頑張っていくしかないのかなと思います。そしたらいつか、「やっぱり最後に獲りたい」と良いつながりのある球団に戻ってきてくれるかもしれませんしね!
↓良いつながりがあると、誇らしくなりますよね!
やっと来ることが出来ました😊 pic.twitter.com/Xe83A5tgJv
— ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) November 8, 2024
佐々木さんもいつか千葉に帰ってきてコアラのマーチとかかじってくれますよ!
その日を楽しみに挑戦を見守りましょう!
「君の夢は応援しないが…」って言われたらそもそも入団しないだけです!