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3・2・1・マッスル!マッスル!マッスルガール!

あの名作が帰ってきました。2010年7月から9月にかけて放映された、天才相撲少女が恋と夢のはざまで揺れる青春を描いたドラマ「土俵ガール!」。今改めて振り返っても、「どんな設定のドラマだよ」という奇奇怪怪な名作と、ざっくり言って同じスタッフが作った「名作の二番煎じ」が4月19日より放映開始されたのです。地上波で、この国難のときに。

新たな名作の名は「マッスルガール!」

プロレスというスポーツを題材に、主人公の少女が恋と夢のはざまで揺れる姿を描く。主人公の父親は決まって借金苦。主役の女優は地上波連ドラ初主演というプレミア感。赤井英和の娘が出ている。有名スポーツ選手がどうでもいい役で一瞬だけゲスト出演。主題歌の宣伝が半端なくしつこい。毎週必ず「すき家」に立ち寄る。…そんな「土俵ガール!」との数々の共通点。あの名作を見守った人のハートを、「お、また始まったな」「よく企画通ったね」「アレは好評だったのか」とキャッチすること請け合いの新ドラマです。

しかも今作はより広い視聴者層をキャッチするため、新たなフックも導入。韓流スターのイ・ホンギさんを主役格として抜擢し、イ・ホンギさんがボーカルを務めるバンド「FTisland」の新曲を主題歌に採用したのです。イ・ホンギさんの日本でのドラマデビューという事態に、女性視聴者が大挙名作応援に参入。僕の見立てでは前作に輪をかけた名作なのですが、公式サイトの掲示板・ツイッター・ブログなどで「最高でした」「カッコいい」「2回見ちゃいました」などのポジティブ感想を連発。普通にオススメのドラマのようになり始めているのです。

まぁ、「このドラマはオススメです!」という点で、僕と韓流ファンの意見が共通していることは確か。プロレスファンのみなさんにぜひチェックいただきたいギミックの数々も盛り込まれていますし、韓国好きもプロレス好きも手を取り合って応援していきたいものです。春ドラマはいまのところコレ一本しか見ていない僕ですが、率直に言って「マッスルガール!」がナンバーワンの面白さです!

ということで、話題が乏しくて困っている市川由衣さんが「ヌードと茶番」を天秤にかけて選んだ、4月19日放映TBS・MBS系ドラマ「マッスルガール!」の第1話をチェックしていきましょう。



◆第1話の冒頭が越中詩郎の葬式から始まる…そんなドラマです!

まずは主要人物のキャスティングと設定の紹介から。

<主な登場人物>

●白鳥梓(市川由衣):破綻寸前のプロレス団体・白鳥プロレスの女社長。借金苦により一時は団体の解散を決意したが、父が愛し父が遺した団体を、そして家族のようなレスラーたちを守るため、借金返済・団体存続へと立ち上がる

●ユ・ジホ(イ・ホンギ):来日中の韓流スター。ひょんなことから梓たちと出会い、レフェリーとして白鳥プロレスの一員となる。誰よりも家族想いな青年で、来日したのも失踪した母親の行方を探すため

●向日葵(赤井沙希):白鳥プロレスの悪役レスラー。リングネームはビッグデビル。演じる赤井沙希さんは「土俵ガール!」などでもおなじみの女優さんで、赤井英和さんの実娘

●魚沼まい(亜耶バネッサ):白鳥プロレスの正規軍リーダー。演じる亜耶バネッサさんは、空手・ラグビーの経験があるスポーツウーマン

●星薫(志田光):白鳥プロレスのレスラー。演じる志田光さんは、女優業かたわらアイスリボンという女子プロレス団体でリングにも上がる、リアルプロレスラー

●須藤つかさ(山本ひかる):白鳥プロレスのレスラー。解散を悲しみ泣き出す仲間思いな一面を見せる。演じるのはヌード写真流出騒動にも負けないハートの強さを見せた山本ひかるさん

●郷原光司(水上剣星):借金のカタに白鳥プロレスの道場を取り上げようとするライバル団体・青薔薇軍の社長。かつては同じ釜の飯を食った仲間だが、白鳥プロレスの経営状況に見切りをつけ独立。団体分裂を引き起こした。実は人情深い男なのか、ジホの懇願にほだされて、梓に借金返済まで3ヶ月の猶予を与えてしまう

●スカル杏子(こいけけいこ):プロレス団体・青薔薇軍のレスラー。白鳥プロレスの道場を取り上げようと、郷原とともに暗躍する

●黒金信浩(桑野信義):ジホの所属事務所社長。公演の直前にジホが失踪したことで東奔西走するハメに

●イ・スンジャ(黒田福美):ジホの母親。「あなたの家族にあげなさい」というメッセージとともにダイヤのネックレスを残し、ジホの前から突如失踪。メモの走り書きに残されていた、東京都足立区の住所が行方を探す唯一の手がかり

●梓の父(越中詩郎):梓の父親。白鳥プロレスを旗揚げし、奮闘をつづけてきたが死去。1000万円の借金を残し、団体消滅の危機を招く。演じる越中詩郎は言わずと知れた名プロレスラー


まぁこの辺の設定から見てわかるように、最終的には梓が借金を返し(おそらくはジホが払う)、レスラーたちは対立を乗り越えながら家族のような団結を深め、ジホと梓は恋に落ち、でもジホはスターなので「仕事と家族」のどちらを選ぶかの選択を迫られ、失踪した母親にほだされて家族=白鳥プロレスを選び、みんなで団体を盛り立てていくというストーリー。敵役で出てくる借金取りはきっといいヤツで、ライバル団体のドンは梓の母親か何かでしょう。

見え見えのストーリーではありますが、そんなことは問題ではありません。まさかの裏切り、大幅な人物設定の変更、ご都合キャラの追加など、何でもアリの脚本に振り回されることこそが本作鑑賞のコツ。プロレス同様、結果ではなく途中経過を楽しむよう心がけたいものですね。

そんなこんなで第1話の注目ポイントをまとめていきましょう。ちょっとくらい無理があっても、「ひょんなことから」をつければ通ってしまう…そんな脚本マジックにもご注目ください。

<第1話の見逃せないポイント>

●市川由衣さんの白目に浮き出る、謎の血の塊

●女性レスラーたちの地味にやらしいコスチューム姿

●第1話の冒頭でいきなり梓の父親が死ぬ

↓越中詩郎の遺影から始まるドラマって何だよソレ
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●四十九日の法要の場面、梓は喪服姿なのに所属レスラーはリングコスチュームを着ている。いくら何でもそれは正装じゃねーだろ

●法要に乱入する青薔薇軍一味。梓と青薔薇軍、緊張の初対峙

●そんなドラマの重要場面で、サブリミナル的にカットインしてくる韓国人風男性の歌唱シーン。どうやらこれが「FTisland」が歌う本作主題歌らしい

●「この道場は借金のカタに差し押さえた」「ワケわかんないこと言ってんじゃないよ」という低レベルの罵り合い。後ろのほうではJWPの女子レスラーたちが「ゲスト出演」という名の棒立ちを披露

●借金は1000万円。足立区の一戸建てを担保にしたワリには、借りられる額は少なかった

●借金している側が「アーッ!」と殴り掛かると、青薔薇軍の反撃に遭いぶっ飛ばされる。飛ばされた先には法要のために来ていた和尚さんがおり衝突。突き飛ばされた和尚の坊主頭が、近くにあったゴングに激突。カーンという効果音とともに爆発の映像がカットインし、抗争が幕を開ける。という、ウソみたいだけどウソじゃなくてクソだった名演出

●どったんばったんの大乱闘がスタート。いつの間にかコスチューム姿に変身したJWP女子レスラーが、いつもの乱闘を繰り広げる。何か知らんが梓もキレてしまい、豪快なラリアットで青薔薇軍・社長をKO。借金してる側が、借りた相手を殴り倒すという暴挙に及ぶ

●一方その頃、ジホは都内のホテルから失踪。書き置きに「さガちないでくだすり」というGANTZギャグを差し込む遊び心

●地上30階くらいの窓にチラッと見えたジホの姿を発見する目ざといファンたちが、ヨコをコソコソと歩いて行くジホの姿に気づかないなど、マジカル演出も健在

●ジホは母親が残したメモに記された住所を訪ねるが、そこは更地。いきなり手がかり消滅

●そんな中、練習をつづけるレスラーたち。しかし、梓は第70回の道場マッチを最後に団体解散を決意

●ところがレフェリーは青薔薇軍に買収され、辞表を出して失踪。給料を払わない女社長が、辞表を出した従業員にムッとするという、経営者視点のドラマ制作に全国の零細企業オーナーが歓喜

●「レフェリーがいないと今日の興行ができないですよー!」と言い出す、プロレスをまったく理解していないマジカル脚本

●ていうか、梓がレフェリーやれ

●そんな中、レフェリーを探しに出た梓は「すき家」でそれらしき人物を発見。しかしそれはキムチ牛丼をかきこむジホの姿だった。店に乱入した梓は、背後からジホにスリーパーホールドを仕掛ける。「ひょんなこと」すぎる二人の出会い

●すき家の店員:「お客様!店内でスリーパーホールドはお止めください!」

●技をかけられたジホが「大丈夫デスカ?」と呼び掛け、技をかけた梓が「ヘルプミー!」と答える。嘘のようなホントの脚本

●最後の興行。結構客が入っている。何でこれで借金作るんだよ、ちゃんと経営しろ

●「レフェリー リングイン!」というプロレスをまったく理解していない場内アナウンス

●レフェリーをつとめるのはジホ

●エロイコスチューム姿で女優陣奮闘。ジホを間に挟んで力比べを始めると、どこを刺激されたか恍惚の表情を浮かべるジホ。リングから叩き落されたりまた乗せられたりする際には「チーン」という効果音。韓流ファンはこの演出をアリとするのか心配になる一幕

●何故か「レフェリーいいぞー!」「もっとやれー!」「レフェリー!レフェリー!」という声援が沸き起こる

●ちなみにプロレスシーンには露骨な替え玉を使用しており、よくわからんヤツが突如としてリングに上がっていたりする

●いろいろあって白鳥プロレスの面々と打ち解けたジホ。「キム・チゲ」という偽名を名乗ったジホは、女性陣とキムチ鍋をつつくうちに母親のことを思い出す。母親の失踪、残されたダイヤのネックレスのことを…

●一方女性陣は「今夜は泊まっていきなよ」「襲ったりしないから安心しな」「薫、(襲っちゃ)ダメだよ」「自分すか!?」などの下世話な会話。レスラー・薫は極太のキュウリを握り締めながら大ハシャギ

●ちなみに道場には「三禁厳守」の貼り紙が。これは女子プロレス界に伝わる「酒、煙草、男」を禁じる鉄の掟(主に男)。欲求不満でムラムラしているあたりは、リアルな女子プロレスを描いているとも言える

●道場の片付けを始める梓。何故かこのときだけメガネ姿。越中の思い出を語る梓に、ジホは「頑張レバ大丈夫デスヨ、キット」という根拠ない励ましと、「家族ヲ捨テテシマウノハダメデス!」というメッセージを送る

●翌日、乱入してきた青薔薇軍に、梓は「白鳥プロレスは解散しない!」と啖呵を切る。何か策があるのかと思いきや、梓は「返済を待ってください」と土下座。無策で試合に臨む

●これには思わず借金取りも「カンベンしてくださいよ」と失笑

●梓の姿に胸を打たれ、ジホはダイヤのネックレスを差し出す。一宿一飯の恩義、すごすぎ

●これには思わず借金取りも「泣かせる話じゃないですか」と拍手

●そこで目に飛び込んできたのは道場に貼られたポスター。何と優勝すると1000万円の賞金がもらえる女子プロレスの大会があるというではないか。梓はこの大会に優勝して借金を返すと宣言!

●「そんな大会あるわけねーだろ」「ていうか、プロレスなんだから優勝者は大会前に決めておくものだ」「ブック破りで賞金持ってくって、最低なレスラーじゃねぇか」とプロレスファンもびっくり

●3ヵ月後の大会に向けて、練習に励むメンバーたち。ただし、負ければネックレスも取られるというジホだけ損する設定。事務所の社長には「僕はもう戻らない」と宣言するなど、トンデモない無鉄砲野郎ぶりを披露


そんなこんなで、急展開を見せた第1話。僕もあまりの展開に頭がクラクラしています。第2話では、引き続きレフェリー難にあえぐ白鳥プロレスのもようを描くなど、マジカル脚本は継続の感触。番組最後の「このドラマはフィクションです」という注意書きも、正直いらないのではないか…そんな立ち上がりとなったのです。ドラマに新鮮な驚きを求めているみなさんは、ぜひ来週から「マッスルガール!」に注目していただきたいものですね。

↓マッスルガールの見所(もしあれば)を、直前特番で確認しよう!


何か、「焦って適当な男に処女をあげちゃった」みたいな、初モノ尽くしの豪華キャストですね!

ガンバレ、市川由衣さん(民放連ドラ初主演)、イ・ホンギさん(日本ドラマ初出演)!



「あらびき団」「マッスルガール!」で火曜深夜は素敵な失笑タイムの予感!