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来世から本気出す!

「一年の計は元旦にあり」などと言いますが、また余計なことを言ってくれたものです。正月というのは、昨年を激走してきた人がゆっくりと休むための時間。三が日は当然として、今年の場合で言えば4日〜6日も休み、7日〜9日の三連休とつなげて大連休を楽しむべき時間であります。そんな中、元旦の過ごし方でこの先一年間が変わるぞ的な物言いは、不愉快極まりありません。

しかもこのことわざには前後があるのです。「一日の計は朝にあり 一年の計は元旦にあり 十年の計は樹を植えるにあり 百年の計は子を教えるにあり」。要は、未来を見据えて今をしっかりと生きておかないといけないぞという教え。元旦に限らず、毎朝毎朝未来と向き合うことを強いられる言葉ったのです。子を教えるどころか、前段階の子を作るための行為にすら到達していない僕としては、2012年だけでなく2112年頃まで、すでにしくじっている感じ。百年の計を成し遂げた紗栄子さんなどは、本当に偉人ですね。

今年は帰郷して旧友たちと再会を果たしたのですが、そこで聞く話がまたしくじり感を加速させるものばかり。僕としては、最近やっているマリオカート7のルート攻略などについて熱く語り合いたかったのですが、やつらの口からは「マ」の字も出てきません。県庁に勤めているという旧友は、避難所を巡って被災者のリストを作っただのという3.11話。看護師になったという旧友は、病院で見かけた人間ドラマなどの3.11話。地元の百貨店に勤めているという旧友は、不況でこの町は終わりだよという3.11話。結局、唯一聞けたマリオカート話は「ウチの子どもがハマっているよ」というもの。

何でしょう、僕の人生だけが子どものままで止まっているようなこの感覚。半端ない出遅れ感。僕の人生はマリオカートで一周遅れたときのような状態です。しかも遅れていてもいいアイテムは出ないという糞ルール設定。どうやら、先のことわざにもあるように10年前に樹を植えなかったことで、僕の大地には何も育っていなかったもよう。この出遅れを挽回するのはちょっと難しく、もはや来世での巻き返しを図るしかなさそう。ならば、今世はまずしっかりとマリオカートをプレイし、来世で人生を充実させる…そうした意気込みで、死なない程度に生きていきていくのがよさそうですね。

ということで、来世への戒めとすべく、正月から死にそうになって頑張っていた学生諸君について、2日・3日の「箱根駅伝2012」からチェックしていきましょう。



◆学生のとき、何かを頑張って泣いたこととか僕は一度もありません!


今年の正月はアスリートをやたらと目にしました。なでしこJAPANはアチコチに登場し、いろいろな芸能人とバトルを繰り広げていました。INAC神戸の全日本制覇のニュースですら「なでしこJAPANのみなさんです!」と選手たちを紹介する有様。「次も全員なでしこに入るかはわからんぞ」「高瀬さんにロンドン五輪の抱負を聞いちゃダメだろ」「まぁでも、INACを呼びたいんじゃなくて、なでしこを呼びたいんだもんな」と、正月ということもあり僕もゆるーく納得。長谷部誠とレディー・ガガのどっちが多くテレビに出てくるかというカウントも、面倒臭くなったので途中でやめてしまったほどです。

そこで改めて思うのは所詮芸能人とのバトルは虚仮であるということ。大晦日にフジテレビが放映したものまね番組がヒドイ低視聴率だったそうですが、出演者自ら「裏で本物(紅白)がやっているんだよ。一年で一番ものまねやったらアカン日」という納得の評論をしているとのこと。本物の戦い、本物の勝負の前では虚仮の出番はないのです。

ということで、まずは箱根駅伝。箱根駅伝こそが正月に行なわれる真の戦いです。学校同士の経営そのものを懸けた熾烈な戦い。青春を箱根に捧げる学生たち。自分の夢を子どもに託す親。「VS嵐」に人生を懸けるアスリートはいなくとも、箱根駅伝には本気で人生を懸けているランナーがいるのです。「寝過ごしてしまうので、1区と6区のスタートは毎年見てない」などと言っている場合ではありません。自分の怠惰な生活を反省していくためにも、新年は箱根駅伝観戦から始めるのが吉であります。

↓正月早々から走り出す選手たちを見て自己反省するぞ!


あーっ、今年も学生たちが走り出した!

僕がまだ二日酔いで寝ている間に!


箱根を見守りながら、毎年感じる虚しさ。自分の学生時代には何の思い出もないという後悔。学生時代、僕はSPEED解散のお知らせでしか泣いたことがありません。箱根駅伝には出られなくとも、何かを目指して頑張った思い出があれば、これほど胸が締めつけられることもないのでしょう。僕は毎年、今年こそは頑張ろうという誓いを立てるため、箱根駅伝を見守っているようなものなのです。

で、お雑煮を食べながら朝ビールを堪能し、自己反省を繰り返すこと小一時間。何となく人生もどうでもよくなり、気分もハイになってきました。「やっぱ正月から走りたくなんかねぇなwww」「山まで行って戻ってくるだけの作業www」「3区のコスマスとモゼの並走テラシュールwww」などと、俄然観戦も楽しくなり始めます。

↓どこかの国際大会みたいなシュールな絵面!


モゼとコスマスが上武大の山岸を両サイドから抜き去った瞬間、日本マラソンの「アカーン」な未来が見えた!


選手たちがタスキをつなぎ、僕が必死にプレミアムモルツを飲み続けるデッドヒート。やがてランナーは5区に到達し、山の神こと東洋大の柏原クンが登場。この時点で東洋大が大差の1位ということで、展開としては面白くもなく、柏原クンも「2012年大会は一人も抜けずに終わる」という体たらく。往路優勝こそ果たすも、どこか釈然としないレースとなってしまいます。

しかし、箱根駅伝はしっかりと見せ場を用意してくれていました。それは東京農業大学の5区を走った津野クン。津野クンはレース途中からジョギングなみの低速走行。小さく蛇行し、腰に手を当て、うなだれながらどんどん遅れていきます。東洋大の表彰式が終わってもなお、ゴール地点から姿も見えない状態。先頭がゴールしてから41分離され、中継時間におさまらないという苦しい走りとなったのです。

↓柏原クンより津野クンが見たい!1時間46分の激走!


柏原:「僕が苦しいのは1時間ちょっと。福島の人に比べたら全然キツクなかったです」
後方:「僕も、苦しいのは1時間ちょっと」
後方:「でもキツイです!結構キツイです!マジキツイです!」


朝から体調が思わしくなく、嘔吐などをしていたという津野クン。そうした状態でレースに出場したことについて批判も出ることでしょう。確かに、体調を見極められなかった監督には反省点がありそうです。しかし、選手に何の非があるものか。自分の人生で、青春を捧げた箱根路以上に輝く舞台などそうそうありません。休めばタスキが途切れ、仲間たちの走りも参考記録になってしまうのです。「死んでも走れ」とまでは言いませんが、ボロボロになり死にそうになっても走るのが人間というもの。僕は、見事に走り切りタスキをつないだ津野クンを立派だと思いますし、走りつづける彼を止めなかった仲間たちに賛同します。辛いときにすぐ立ち止まり、無為に人生を過ごしても、そこには虚しさしか残らないのですから…。

↓東農大伝統の大根踊りも津野クンゴールまで大延長!


柏原:「僕が苦しいのは1時間ちょっと。福島の人に比べたら全然キツクなかったです」
応援:「僕らも、苦しいのは1時間ちょっと」
応援:「でもキツイです!結構キツイです!マジキツイです!」
応援:「せめてニンジンにしとけばよかった」

って、コッチは休めばええやんwwwwwwwww


復路は繰り上げスタート13校という異例の始まり。大きくリードして走り出した先頭の東洋大は6区から区間賞連発で早くも勝負を決着。復路優勝争いすら面白くなくなり、早稲田・明治・駒沢のデッドヒートも、もうひとつ盛り上がりを欠きます。僕も毎日ビールでは飽きてしまうので、梅酒ソーダ割りに切り替え、何とか盛り上がりを保とうと懸命。「ゴロゴロしてるのはそれはそれで辛い」「背中が痛いなぁ」「あーダルい」などと選手たちとともに、箱根路の苦しみを共有します。

そんな中、観衆を大いに盛り上げてくれたのは神奈川大学のタスキリレー。9区から10区への最後のつなぎで、繰り上げギリギリで駆け込んできた神奈川大学。係員は繰り上げ用のタスキを持ち、時計を見つめます。タスキを外した神大・鈴木クンは最後の直線へ。しかし、あと数十メートル、残り10秒という地点で足は限界に。転倒、また転倒。そして三度目の転倒。テレビ中継での、繰り上げまでの目安時間がゼロとなったとき、転がりながら差し出したタスキが10区の高橋クンへ渡ります。その直後に鳴り響いた、繰り上げ時間を示すピストル音。よくつないだ。よく手を伸ばした。順位とは無関係に大きな歓声が上がりました。

この1秒は鈴木クンにとって、青春の勝利。自分の人生を振り返るとき、「俺は懸命に生きた」と思える素晴らしい瞬間です。そして、残念ながらタスキをつなげなかった選手も出ましたが、それはそれで素晴らしい経験。その悔しさを噛み締めることで、のちの人生でリベンジを果たす日が来るはず。何も頑張った思い出もないまま、いい年して「2012年最大の敵はスルメだな」「めっちゃ固い」「くっそぉぉ負けた!ママ、ハサミちょうだい」などとやっているオッサンからすれば、彼らの青春はまばゆいばかりの輝きに満ちているのです。

↓繰り上げ1秒前、ボロボロになりながらタスキをつないだ神大!


神大:「やったーつながったー!」
上武:「クソーーーー!つながらなかったーーー!」
東農:「ウチは50分くらい遅れてるけど、タスキは余裕でつないだ」

「ブレーキかけるなら5区」という東農の作戦勝ちだな!


結局、レースは復路もぶっちぎった東洋大が往路・復路・総合新記録を作る完全優勝。2位の駒沢ですら9分離されるという展開には唖然とするばかり。5位大躍進の青山学院大学、「復路の順大」の伝統を踏襲した順天堂大学、昨年「3秒差」でシード権を逃した城西大学などが、来年のシード権を獲得。僕も今度生まれ変わったらこんな青春を送るぞと誓いつつ、「駅伝を見て疲れたので寝る」という充実した正月を過ごしたのでした。これで「来世の計」はバッチリですね。


さて、今日も大遅刻ですが、そろそろイヤイヤ仕事始めしてきますかね!