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泣け、ヤンなで!

猶本光が人目を避けるように泣いていました。土光真代が芝生に崩れ落ちるように涙していました。田中美南は仲間に支えられてようやく立っていました。木下栞は自分のミスを反芻するように、後悔を滲ませていました。そして田中陽子はベンチでボンヤリと敗戦の瞬間を迎えていました。

U-20女子ワールドカップ準決勝。快進撃をつづけていたヤンなではドイツに対して0-3の完敗。圧倒的なチカラの差を見せられ、どうすれば打開できるのか糸口も見えないままに、金メダルの夢は潰えました。弾けるような笑顔から一転して、涙と失意にまみれた少女たち。胸がしめつけられます。

しかし同時に、僕はその美しい姿に震えていました。甲子園で泣きながら土を掘る球児たちの姿を見て毎度思っていた「これが女の子だったらな…」「球児じゃオッサンは萌えないんだよ…」「女子野球はないのか」という想いが、今ようやく叶ったような気がします。頑張って頑張って頑張って、でも届かなくて流す涙。その美しい姿を目撃できるなんて、こんなに嬉しいことはありません。

映画だって、笑いの場面ばかりじゃ退屈です。ヤンなで観戦も、ずっと笑顔じゃ作り笑いのアイドルを見ているみたいでしょう。喜怒哀楽いろんな表情を見守ってこそ断然楽しいというもの。これまで見せてきた笑顔・元気・真剣・怒り・歓喜・陽子ちゃんのキス顔などのメモリーに加え、この試合で加わった「涙」という1ページ。こんな思い出を積み重ねながら、ヤンなでと親密になっていけるなんて本当に嬉しいかぎり。まるで僕の失われた青春時代まで補完されるかのようです。

ヤンなで、いい夏を本当にありがとう。

本当は一緒に花火とか、プールとかキャンプとかもしたかったけど、それは来年の夏にとっておきます。ビーチで少しボールでも蹴ろうか。夜の砂浜だと危ないかもしれないけど。足がぶつかったら転んじゃうかもね。でも、そのとき見上げた星空はとってもキレイだと思うんだ。そして、その星空を映した陽子の瞳も。2012、恋をした。OH君に夢中。普通の女の子と思っていたけど。LOVE田中違い。OH美南じゃないよ。いきなり恋してしまったよ。夏の日の陽子に…。

ということで、ヤンなでの涙に心震わせつつ、4日にフジテレビが中継した「U-20ワールドカップ準決勝 日本VSドイツ戦」をチェックしていきましょう。



◆全力少女が汗と涙でグシュグシュになったので、僕はもう満足です!

入場を待つヤンなでたち。その中で、パンツをまくり上げて太もものあたりの具合を直している猶本光の姿。ドキッとする僕。試合のたびに少女たちは、大きく頼もしく美しくなっています。それにつれて、僕の中の「ヤンなでと一緒に夏祭りも行きたかった」「スイカ割りもしたかった」「肝試しもしたかった」という後悔も、ますます大きくなっています。今年の夏も、もう終わりですねぇ…。

そして始まった試合。ヤンなでは準決勝と同じ顔ぶれ、同じシステムでのぞみます。対戦相手ドイツはこの世代でも屈指の強豪。もちろん、将来的にはなでしこJAPANとして激闘を繰り広げるであろう永遠のライバルです。まずはお手並み拝見と思っていたところ…

↓わ、簡単に真ん中にスルーパス通された!開始1分でヤンなで失点!


出会って56秒でゴールされたか…。

何か突然のキスから始まる少女漫画みたいな急展開だな…。

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しかし、国立競技場に集った2万8036人の大観衆はこれで意気消沈することなどありません。ヤンなでの試合にとって結果など些末なこと。結果よりも過程。勝利よりも経験。今日よりも明日。もっと大きな華を咲かせるための、上り坂の途中にすぎません。

この試合だけを考えれば、確かに立ち上がりの簡単な失点は痛いミスです。しかし、未来を見据えればサッカーにおいてありがちな状況、必ずどこかで出会う苦境を体験できるいい機会。「開始5分で先制される」「だがそれでも頑張った」という記憶が、未来において彼女たちを助けるはず。初めてのキスで歯をぶつけた経験が、2度目のキスの柔らかさにつながるように。

そんな中、先制点をとっても落ち着くことはないドイツ。積極的な押し上げと、前線での追い回しはヤンなでにプレッシャーを与えつづけます。ボールをつないで落ち着くことのできないヤンなで。先輩なでしこがかつて苦しんだ、ガツガツくるタイプへの戸惑いに、彼女たちも翻弄されていたのでしょうか。自陣に押し込められる時間がつづいた前半13分、さらに前半19分と連続失点でヤンなでは打ちのめされます。

↓前半13分、センターライン付近から裏に大きく蹴ってきたボールが、一発で裏に抜けてしまった!


2012年の栞:「私の背が10センチ、いやあと5センチでもあれば…もう少し頑張れたのかな?」
2020年の栞:「結局、背は伸びなかったよ」
2012年の栞:「そう…」
2020年の栞:「ガッカリした?」
2012年の栞:「うん。ちょっぴりね。ねぇ、未来の私はまだサッカーつづけてるの?」
2020年の栞:「どうでしょう?それは、あなた次第だから」
2012年の栞:「じゃあ大丈夫だね。私、こんなことで負けないから」
2020年の栞:「じゃあひとつ教えてあげる。私、背は伸びなかったけど、もっと上手に跳べるようになったから」
2012年の栞:「さすが私だね(笑)」
2020年の栞:「だから、頑張ってね。夢の舞台で待ってるよ」

※みたいな妄想に身悶えながら僕はテレビを見ていますが、これが罪に問われるようならこの国はもう終わりです。

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あっという間の3失点で、試合の勝ち負けとしてはこの時点で決着。ドイツも前線からの激しい追い回しは一休みし、ボランチとサイドへ素早く寄せる省エネモードへ移行。3点差を追い上げるため、日本は早々に横山久美を投入するも、前に進むこともままなりません。田中陽子ちゃんとヘンドリッヒの美少女対決でも、見た目では完全に陽子ちゃんのほうが勝っているのですが、ボールの奪い合いではヘンドリッヒが優勢。ヤンなでの苦境はつづきます。

後半に入ると思い切って攻めに転じるヤンなで。田中陽子ちゃんは前線に上がりっぱなしになり、猶本光も中盤の底から飛び出して攻撃に絡む動きを積極的に見せます。受け身ではない姿勢。いつまでも待ってるだけのお姫様ではない。自分から責める。そして奪う。恋は待ってるだけじゃいけないという熱い想い!!

↓田中陽子ちゃんは、積極的なオンナノコなのです!

<好きな男子には積極的に会いたいアピールをする陽子ちゃん>
「韓流好きとか書いていただいてましたけど、ずっと好きなのは溝端淳平君です! めっちゃ会いたい」とアピール。活躍次第では実現するかも?

http://www.nikkansports.com/soccer/japan/news/p-sc-tp2-20120902-1010303.html


<陽子ちゃんはチーム内ですっごいいじられている>
4戦連発5得点中のチーム得点王MF田中陽子(19=INAC神戸)が、ヤングなでしこのいじられ役であることを明かした。「あんまり言いたくないです」とうつむきながら「すっごいいじられています。後輩も『陽子さんなら何でも言える』と思っているんですよ」。

http://www.nikkansports.com/soccer/japan/news/p-sc-tp2-20120903-1010748.html


<景気のいいことを言っちゃう陽子ちゃん>
ヤングなでしこが初めて踏む準決勝の舞台を前にしても、田中陽の強気な姿勢に変わりはない。「景気のいいこと言っとこうかな〜。ヘヘヘ。得点王に近づくように、1点は絶対に取りたい」。これまで無失点のドイツに堂々の宣戦布告。「どの試合を見ても、ドイツと対戦した相手は慌てていた。落ち着いてスキを突いていけば大丈夫です」と不敵な笑みを浮かべた。

http://hochi.yomiuri.co.jp/soccer/japan/news/20120904-OHT1T00007.htm

要約:「大好きな溝端淳平君に」
要約:「すっごいいじられています」
要約:「イッとこうかな〜。へへへ」

※みたいな妄想に身悶えながら僕はテレビを見ていますが、僕は高須クリニックにいくら支払えば溝端淳平君になれるのでしょうか。

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しかし、ドイツの壁は高く大きかった。まるでオトナとコドモほどの差があるかのように、ドイツはヤンなでの攻撃を簡単に跳ね返します。後半7分の西川の惜しいシュートや、後半16分の柴田の惜しいシュートもドイツゴールを破るにはいたりません。田中陽子ちゃんも後半16分で途中交代となり、セットプレーの威力も低下。ヤンなではこのまま0-3完敗となったのです…。

とまぁ、結果は残念でしたが、それはそれ。試合中継開始前にフジテレビさんが流した準決勝もう1試合の結果も、字幕では3-0でナイジェリアが勝ったことになっているのに、平井MCは「2-0でアメリカが勝ちました」とねじれ紹介していたくらいです。どっちが勝っても大した問題ではありません。本当の戦いはもっと先のこと。勝ったり負けたりしながら、最終的に一番大きな舞台で真の勝利をつかめばいいのです。なでしこJAPANもそうでした。

自国開催の大会で、史上初のベスト4進出を果たし、最終日まで試合をやるのです。もう十分に責任は果たしているのです。世界一を目指した「ヤンなでひと夏の冒険」は小休止となりますが、「ヤンなで大冒険2015」「オトナになったよ!ヤンなで危機一髪2016」「ヤンなで2019−脱皮−」「ヤンなで2020−卒業−」など、数々の予定が待っています。最後に笑って終われたら、今日の涙もきっといい思い出。ヤンなでのこれからが楽しみですね。


甲子園の土みたいに、その涙を持って帰りたい!もしくは買いたい!