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記録は破るものじゃない、生み出すものだ!

21日、スポーツ界の話題をさらったのは北海道日本ハムの大谷翔平クンでした。単に150キロ台後半のボールを投げる高卒新人というだけなら、ここまで大きな話題にはならなかったでしょう。これは何と言っても、「投手と打者の二刀流に挑む」という新味によるもの。ただでさえ興味深い素材が二刀流という稀有な設定によって、通常の2倍も3倍も興味深い話題となりました。

日本ハムは昨年もソフトボール出身の大嶋匠クンの話題で春先の衆目を集めましたが、素材を活かして話題を作るのが上手です。大谷クンなどは、最速160キロを投げるという能力、日ハムの指名強行によりメジャー志望から一転日本球界入りを果たしたドラマ、投手と打者の二刀流という新味、さまざまな魅力が付加されドンドン存在感を増しています。いかにもスゴそうな、この目で観てみたい選手になっています。

「おっスゴそうだな」という感覚。これをどれだけ生み出せるかが、商売においても重要になっているように感じます。品質がある程度よくて、値段がある程度手頃なのは当たり前。単にイイものではなく、それに加えて「ちょっとスゴそう」なもの。大谷クンなども、素材がいいのは当然として、そこにたくさんの魅力が付加されてこその注目度なのでは。

同じ素材にどれだけ「スゴそう」を乗せられるか。それは「発見できるか」と言い換えてもいいでしょう。二刀流なんて言ってますが、投手が打席に立つこと自体は別に珍しくもありません。しかし、「両方とも真剣に目指しているパターンはあんまりないよな」という発見が、「二刀流」という新たな魅力になったのです。まぁこれは誰でも気づくスゴさですが、パッと思いつかないスゴさも世の中には結構あるもの。それを何とかして見つけ出し、いかにもスゴそうな形で提示することが、これからの売り手の腕の見せ所なのではないでしょうか。

ということで、「これは上手いことを思いついたな」と唸らされた、ヤマザキナビスコカップのギネス記録認定についてチェックしていきましょう。


◆去年と何も変わっていないのに、何か格が上がった気がする!

スポーツにおいて魅力・面白さを作るのは「こいつはスゴイ」という感覚です。それをもっとも生み出しやすいのは「記録」。例えば、100メートルの距離を史上最短の時間で駆け抜ければそれだけで億万長者です。有無を言わせず圧倒的に「スゴイ」からです。何の役に立つとかではなく、世界のたくさんの人に「これはスゴイ」と納得させる説得力を、「9秒58」などの記録は持っているからです。

記録を作るにはどうするか。ひとつはこれまでの誰よりもスゴくなることです。9秒58を破るには9秒57で100メートルを走れば、文句なしで新記録です。でもコレは大変です。本人以外できないんじゃないかという気さえします。正直、無理。

もう少し簡単なのは計測方法を変えることです。9秒58という記録は、1000分の1秒のケタを丸めていますよね。9秒58は9秒580、9秒579、9秒578…9秒571のどれかなので「9秒58」になっています。ならば、実際はタイムを更新していなくても、9秒579と1000分の1秒まで計時をすれば勝った感じがします。

そして、もっと簡単なのが別の制約をつけること。9秒58を破ることはできなくても、「白人で初めて9秒台」とか「義足で初めて9秒台」とか何か1個別の制約をつけることで、記録更新に近いスゴさを表現することができるのです。

そのことを示す好例が昨年現役を引退したプロ野球の金本知憲さん。鉄人とも称される金本さんのスゴさを示すのは、何と言っても連続試合フルイニング出場1492試合の大記録。しかし、よく考えてみてください。これは一体何なのでしょう。僕は金本さんがコレを言い出すまで、「連続試合フルイニング出場」などという概念は持っていませんでした。

単なる連続試合出場だと、金本さんは日本記録より400試合も下の記録しか持っていません。しかし、連続試合フルイニング出場という切り口を発見したことで、衣笠祥雄さんに匹敵する鉄人風格を手に入れたのです。そこに意味があるのかとか、誰がそれを目指しているのかとか、そういう細かい問題を豪快に吹き飛ばして。

↓昨年のドラフト会議でも、金本さんは並みいるレジェンドと肩を並べる存在となっていた!

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王の868本塁打!福本の1065盗塁!金田の400勝!

そして金本の1492試合連続フルイニング出場!

受け継ぎ超えてゆくの無理な記録ばっかりwwwwwwwww


「発見」こそが記録の妙。いかにもスゴそうな切り口を新しく見つけられるかどうかが勝負です。掛け値なしにスゴイ切り口は、破るのにも相応の労力がかかります。しかし、もう達成しちゃっている何かを発見するだけならノーコスト。手間も労力もゼロで、新たな付加価値が手に入る…やらないのは勿体ない話です。

最近、僕が感心で唸ったのはヤマザキナビスコカップのギネス記録認定。Jリーグヤマザキナビスコカップが2012年に第20回を迎えたので、こんなに長いこと同じ冠スポンサーがついている大会はないだろうと申請したら、見事に認定された…という話です。

↓ヤマザキナビスコカップギネス世界記録認定についてのお知らせ!
ギネス世界記録に申請しておりましたJリーグヤマザキナビスコカップが「Longest sponsorship of a professional football competition」として認定されましたのでお知らせいたします。

Jリーグは、昨年、「Jリーグヤマザキナビスコカップ」20回目の開催という節目にあたり、プロサッカーの大会において20回の長きにわたり、同一スポンサーの下で継続して開催している大会は世界的にも例がないことから、2012年11月にギネス世界記録に申請いたしました。

そして審査の結果、「Longest sponsorship of a professional football competition」としてギネス世界記録に認定されました。

21回目の「2013Jリーグヤマザキナビスコカップ」は、明日3月20日(水・祝)に開幕いたします。

■記録名称:「Longest sponsorship of a professional football competition」
同一企業の協賛で最も長く開催されたプロサッカーリーグの大会としてギネス世界記録に認定

http://www.j-league.or.jp/release/000/00004961.html

何かスゴイ感じがする!

よくわかんないけど世界一な感じが!


重要なのは、これはギネス側からスゴイですねと言ってきたものではないということ。申請して認定されたのですから、Jリーグ側からのアプローチ。単に歴史の長いカップ戦というだけなら、国内でも天皇杯に遠く及ばず、世界に出ればFAカップとい超大物が待ち構えています。これを抜くには、向こうが止めてからなお100年はかかるという絶望的な壁があります。

しかし、そこに「同一スポンサーの下で継続して」という制約をつけたことで、世界一に躍り出た。「トヨタカップは違うんだっけ?」「キリンカップってそういうのと違うんだ…」「天皇は…金は出してないのか」などの疑問はギネス認定という金看板で吹き飛びました。これを第21回大会の開始に合わせて発表するあたり、申請⇒認定⇒発表までの青写真が完璧です。

そして何より感心するのが、「同一スポンサー」という切り口を持ってきたこと。もしスポンサーに経営危機などがあれば「協賛」的な活動は真っ先にカットされる対象ですが、世界記録に認定されたことで「スポンサー止める」とは言いにくくなりました。「20年つづけたのに」「世界記録にもなったのに」「今止めたら記録が」と勿体ないような気持ちがわいてきますからね。

そして、この記録は「止めないかぎり絶対破られない」という特性も備えています。20年目は何もありませんでしたが、30年目・50年目は何が起きるかわからないもの。「第30回という節目を迎え、日本サッカー発展に一定の役目を果たしたことから、発展的解消を…」なんて別れ話が節目の年にはありがち。それがギネス記録更新継続中ということになれば、つづけることそのものが挑戦となり、前向きな印象になります。

新しくて、スゴそうな切り口の発見。別に去年と今年でナビスコカップがそんなに変わったワケではなくても、今年は「世界一のカップ戦」として、ちょっと誇らしいものになりました。こんな感じの何かを発見して、今あるモノが昨日よりスゴそうになったら、楽しいじゃないですか。こういう発見、大切にしたいものですね…。

↓しかし、この記録には国内ライバルとの壮絶な戦いが待っている!
●ヤマザキナビスコカップ ←世界記録!
・第1回大会を1992年に開催
・ヤマザキナビスコが第1回大会から冠スポンサーとして特別協賛
・以降、1995年を除く毎年開催
・2013年に第21回大会を実施
http://www.j-league.or.jp/yncup/

●FUJI XEROX SUPER CUP
・第1回大会を1994年に開催
・フジゼロックスが第1回大会から冠スポンサーとして特別協賛
・以降、2013年まで毎年開催
・2013年に第20回大会を実施
http://www.j-league.or.jp/xscup/

●ちばぎんカップ
・第1回大会を1995年に開催
・千葉銀行が第1回大会から冠スポンサーとして特別協賛
・以降、2013年まで毎年開催
・2013年に第19回大会を実施
http://www.chibabank.co.jp/news/company/2013/0107_01/

●スルガ銀行チャンピオンシップ
・第1回大会を2008年に開催
・スルガ銀行が第1回大会から冠スポンサーとして特別協賛
・以降、2012年まで毎年開催
・2013年に第6回大会を実施予定
・2015年まで開催予定アリ
http://www.j-league.or.jp/surugacs/

●プレナスなでしこリーグカップ

・なでしこリーグカップを2007年に開催
・2010年大会以降、プレナスが冠スポンサーとして特別協賛
・2011年大会は震災の影響で開催中止
・2013年にプレナス協賛による3度目の大会を実施予定(通算第4回)
http://www.nadeshikoleague.jp/

ナビスコ:「フハハハハ 私が世界記録だ」
ゼロックス:「1回しか違わねーだろ!」
ナビスコ:「規模とか試合数とか全然違うわ、このワンマッチ野郎!」
ちばぎん:「むしろ小さい規模でずっとつづいているほうがエライ」
ナビスコ:「おたくは千葉と柏の定期的な練習試合だろが!」
スルガ銀行:「うちはナビスコ王者VS南米王者の対戦だから明らかに格上」
ナビスコ:「何か銀行多いな!」
プレナス:「女子としては、って言ったらすぐ世界記録獲れるかも?」
ナビスコ:「狭っ!」
ゼロックス:「ナビスコが止めたらすぐ抜くよ」
ちばぎん:「ナビスコとゼロックスが止めたらすぐ抜くよ」
スルガ銀行:「ナビスコとゼロックスとちばぎんが止めたら…2016年以降の開催を考えるよ」
プレナス:「ていうか、女子のカップ戦としてはすでに世界一なんじゃないかしら…」
ナビスコ:「うちは止めないぞ!沢口靖子のCMとナビスコカップへの協賛は止めないぞ!」

これは止められないwwwwww

せっかくの世界記録がすぐに抜かれるwwwwwww


世界記録を守るには1年も休めないな!何か、ちょっと、プレッシャー!