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ザックさん、決勝で会おう!

これぞアジアカップという死闘、バカ死闘でした。いよいよベスト4が出そろうという準々決勝最後の試合は、UAEとオーストラリアの対戦。基本は「日本以外どこが勝ってもどうでもいい」「結局全部やっつけるだけ」「まとめてかかってこい」というスタンスでの観戦ではありますが、この試合は少しだけ一方に肩入れして見守っていました。

UAEを率いるのはアルベルト・ザッケローニ氏。言わずと知れた元日本代表監督で、2011年にはともにアジア王者になった盟友です。まだ健康体の本田△、動きがキレていた香川、フサフサの岡崎、太鼓が得意な長友、相変わらずやらかしの吉田、心が整っていた長谷部、投資に手を出す前の伊野波、差別的な意識は一切ない森脇、そしてヒザが痛くないウッチー…すべてが若く、すべてが希望にあふれていたあの頃。

ロシア大会を経て大きな節目を超えた日本代表にとって、ザッケローニ氏の姿は青春の幻影のようなもの。もし、ザックの率いるUAEと対戦することがあれば、きっと素晴らしい同窓会になるだろう…そんなことを思って応援をしていたのです。それが実現するのは最短でも決勝というハードルの高さが、逆にドラマの盛り上がりを演出するかのような気持ちで。

↓何を言ってるのかは全然わからないけれど、見覚えのある顔はわかる!


そう言えば、2015年大会で負けた相手はUAEだったな!

同窓会兼リベンジの集いになる願ってもない相手!



しかし、肩入れして見守るUAEは…うーん…あんまり強くなさそうです。アジア屈指のスターであるオマル・アブドゥルラフマンが怪我で参加していないという点ももちろんですが、まるでザックJAPANのようなカオスな戦いぶりで、ピッチに描かれる選手たちの動きはグチャグチャです。

ボランチはすぐにDFラインに吸収されて最終ラインが7人ぐらいになるし、フワーッとボールに引き寄せられてカオスなアタックを繰り返すもので、選手の偏りが激しく、そこかしこに大穴が開いています。組織だった陣形は見られず、「頑張るぞ!」という気合いだけが満ちています。

オーストラリアの決して早くも巧みでもないボール回しにかき回され、何度も何度もピンチを迎えています。最終的なシュート数がUAEの7本に対してオーストラリアは22本。際どいシュートを何本も撃たれ、ゴールを脅かされました。「入れるだけ」という場面が繰り返し訪れていました。

↓むしろオーストラリア代表チームの日本に縁ある人物を応援すべきか…?


むかーし、サンフレッチェに所属していて、最近ベガルタ仙台を率いたと言われても…!

思い入れはまったくない…!


UAEはセットプレーやカウンターなどでときおり反撃を見せるのが精一杯。ガムをクチャクチャするザッケローニ監督は、日本代表時代によく見せた「どうしたらいいかわからん…」「チッ」「チッ」というイライラ系腕組みで、ずっと手をこまねいています。スタッツだけ見ると、前半早々からカードを切るなど動きが早いように見えますが、怪我人が出たから交代しているだけで、後手後手の戦いがつづいています。

特にサイドの応対は誰がやるのかまったくわからず、ワン・ツーくらいのパス交換で普通にスコーンと抜かれています。その崩しからクロスを放り込んでいけば、そのうち頭に跳ねかえって勝手にゴールに入るだろうというオーストラリアの攻勢です。ピンチの連続で、ヒヤヒヤしっぱなし。

後半に入ってからはオーストラリアの攻勢はより顕著になり、じょじょにシュートは枠に近づいていきます。ついに後半62分過ぎには裏に抜けてネットを揺らす場面も。ここは審判団がしっかりとオフサイドを取ってノーゴールとしますが、時間の問題という感じになってきていました。

しかし、サッカーには「ヨシダ」があるから面白い。

後半67分過ぎ。ピンチを凌いだUAEのGKがドカーンと前線に蹴っ飛ばすと、それを拾ったオーストラリアのDFが前方をよく見ないでGKにバックパスで戻します。センターラインとの中間点くらいからですので、結構な距離があるバックパスでした。目の前にもフリーの味方がいるのですから、誰に渡してもよさそうな場面でしたが、より余裕を求めてGKまで戻しました。

そのバックパス、「コイツは安易に戻すぞ」という傾向を抜け目なく狙っていたストライカーがいた。アジア屈指の点取り屋のひとり、前回大会では得点王になり、日本戦でもゴールを奪った快速FW・マブフートは、バックパスをすると決めつけたような動きで、いわゆるオフサイドの位置までスルスルッと上がっていました。そして、そこに願ってもない「よく見ないで戻したバックパス」が転がってきました。「何だコレ」「日本みたいなバカバックパス」「北朝鮮なら炭鉱に転職する決め手」…ヨシダじゃないのにヨシダの匂いがする、まさかのプレーです!

↓うわーーーーーーーーーーーーーこんなん決められたら帰れないよ!


GKのほうを見ているのに、マブフートの存在を見落としたバカバックパス!

おめでとう、あなたが2019アジアカップ・バカバックパス大賞に選ばれました!


↓ちなみに、バカバックパス大賞を受賞したのはマリノスにいたデゲネクさんでした!

日本に縁のある同士のドタバタwwwww

ヨシダもこの映像を見たらいらないやる気出してきそうwwwww




ほとんど見込みのなかった得点が入り、大興奮の地元観衆たち。日本の佐藤主審は一応ビデオ室の話は聞いたようですが、どこにも揉めそうな場面はありません。バックパスなのですからオフサイド云々など無関係です。もしかして「今のめっちゃバカだったから、もう一回ビデオ見ようぜ!」みたいな盛り上がりでもあったのかと思うほど。せっかくならもう一回見てもよかったかもしれません!場内のオーストラリアのサポーターも、「誰をぶっとばすか」決めるのにビデオ見たいでしょうから!

さぁ、この1点で逃げ切ろうとUAEは中東戦法全開です。ちょっと当たれば倒れて、しばらくゴロゴロします。オーストラリアも「本当はさっきバックパスしたバカにぶつけたい怒り」のやり場を相手選手に求め始め、中東ゴロゴロをやっている相手選手を無理やり引きずり起こして警告を受ける選手まで出ます。撃てども撃てども入らないシュートと、ゴロゴロしつづけるUAE人。まったくもってアジアカップな光景です。そうそう、こういうのがアジアカップです!

地元開催なので「すんごい倒れたり揉めたりしたけどアディショナルタイム0分です!」みたいな偏向判定もあるかと思いましたが、この試合を裁く日本の佐藤主審は長めの4分を示します。そして、もともと長かったアディショナルタイムは、UAEのジュマがゴール前の競り合いで頭を強く打って倒れたことで、さらに5分ほど追加されることに。最終的には追加10分を超え、時計は「100分台」を示すところまで進みます。

一度は担架で運び出されたジュマは、交代のカードを使い切っていたことで10人で戦うチームを見かねたか、チームドクターの制止を振り払ってピッチに戻って行きます。しかし、プレーが途切れるとジュマはよろつき、倒れ込んでしまう状態。倒れながら、また立ち上がって、ゴールを守ろうとするその姿。頭部を打ったあとだけに褒められたプレーではありませんが、気持ちは伝わってきます。めちゃめちゃ熱い。少し羨ましい。死力を振り絞って、ドラマティックな乱戦を勝ち抜くUAEが。100分の死闘を制して、UAEが準決勝進出です!

↓負けたオーストラリアも勝ったUAEも倒れ込む決着!


いやーーー、いい試合でした!

内容はひどいけど、ひどいのがいい!

そういうのを見たい!




グループステージからの戦いを見ると、日本・イラン・カタールが三強で、そこが順当に勝ち上がってきたなという印象の今大会。UAEが次に戦うカタールは「日本相手にボールを持ちつづけたサウジアラビア」をグループステージでボコっています。スコアは2-0でしたが、内容は4-0くらいでもおかしくないようなもの。ボールはやはりサウジアラビアが持ちっぱなしでしたが、カタールはとても強かった。韓国に勝ったのもフロックなどではないでしょう。普通に「強い」。

その印象だけで言うなら、カタールの優位は動かないと思いますが、それでもUAEに期待したいところ。開催国として、前回大会で負けた相手として、そしてエモーショナルな同窓会として、日本とUAEで決勝をやれたらいいなと思います。そのときは日本の元祖ヨシダが、マブフートさんに最高のバックパスを出しましょう。そして、試合後にザックさんからマジ説教をもらいましょう(※「前から言ってるだろ!」「いつまでそれやるんだよ!」「誰だ、日本代表に選んだヤツ!」的な)。ヨシダ込みで勝てるかどうか、それはやってみなければわかりません。そんなドラマが現実になる可能性、少し見えてきました!



まず日本がイランに勝って決勝で待つ!決勝で会いましょう!