08:00
大喜びはフリーが終わってからです!

いよいよ始まった全日本フィギュアスケート選手権。今年は4年ぶりに羽生結弦氏が全日本のリンクに帰ってくるということもあって、もちろん熱気は高まっています。ただ、誰それがいるからということ以上に「全日本」という唯一無二の舞台こそが、この熱い冬の中心だなと改めて思います。

全日本には「人生」があります。一部の秀でた選手にとっては必ずしも最大の舞台ではないかもしれないけれど、ほとんどの選手にとって全日本は生涯で最大の舞台であり、ここで輝くために毎年の苦しい練習を乗り越えてきています。何位だからとか何点だからということだけではない「重み」がひとつひとつの演技にある。選手がいて、コーチがいて、家族がいて、ファンがいて、たくさんの人がどうかこの日は輝けますようにと願っている。それが素晴らしさであり、「重さ」だなと思います。日本しか参加していない五輪のようなものです。人生が変わる日です。ピリピリきます。

迎えた初日、フジテレビの中継で見守った女子シングルのショートプログラム。昨年はアイスコープというジャンプの高さなどを分析する技術を持ってきたフジが、今大会ではアイスタッツという新技術を導入し、リンク上の軌跡を機械で素早く表示してくれるとのこと。リンクを大きく広くカバーし、高速で滑りながら、全体にバランスよく要素を配置している選手が明瞭になるというナイスな技術です。観客としても「コッチもきてー!」「公平に!平等に!」「カドも使ってー」というアピールに大いに活用できそう。

そしてキス&クライのマイクの性能がいい。演技直後の率直な感想や、コーチとのやり取りがテレビを通じてもハッキリと聞こえてくるのは観戦の充実度を高めてくれます。ある面では「現場よりもよく見える」とさえ言えるほど。CS、ネットを活用して中継パズル(一部有料)を組み立てると、全選手・全演技が見られるというのもありがたい。「これこれ、こういうのでいいんだよ」という納得の中継です!

↓インスタライブも活用して滑走順抽選などとにかく出せるものを出せるだけ出そうという心意気や、いいね!

撮る側と撮らせる側とどっちが提案してこうなったんだ…!

「いいね」不可避じゃないか…!




前半のグループからは、怪我もあって今季やや苦しみながらも復調の兆しを見せてきた山下真瑚さんがトップに立ち、それを川畑和愛さんが会場を総立ちにさせる演技で追うという展開。夜の中継でも映った川畑さんの演技は、真っ青な衣装と「美しき青きドナウ」の調べ、「世界標準」と言えるルッツからの3回転+3回転ととても印象的なものでした。まだジュニアということでこれからの選手ではあるわけですが、シニアでの活躍にも大いに期待したくなる演技です。コーチ席に太田由希奈さんの姿があるのも何だかうれしくなります。



青から赤へ、第4グループ1番手で登場したのは優勝候補・紀平梨花さん。トリプルアクセルでのステップアウトと小さくお手つきがありますが、それでも十分にダブルアクセルよりは高い得点となる要素であり、何の問題もありません。むしろ気になるのは妙に厳しいスピンの判定のほう。最終的にレベル4認定になるものの、途中段階ではレベル2の表示がキャメルスピンに対して出るなど「何となく厳しいなー」という気配。73.98点はもちろん1位で、最終的にも1位となる得点ですが、細かい取りこぼしが重なり、ショートで抜け出しきるところまではいきませんでした。

その後、永井優香さんの演技にウルウルしていた僕を、さらにウルウルそしてゲラゲラさせてくれたのは坂本花織さん。煽りVTRで療養中の三原舞依さんの映像を流されると、もうそれだけでウルウルきてしまう。くーー、友情と青春にはかなわない。舞依ちゃん…かおちゃん…とオッサンが涙ぐんでいるのに、当の本人は「優勝だー!」(※忘年会での「二次会だー」のイントネーションで)と意気込んでいる。ウルウルしてたのに、ちょっとプッとなる。これもまた「かおちゃん」らしさ。

ショート「No Roots」もかおちゃんらしさ前回のプログラムです。動きがキレすぎて乱れる暴れ馬のような大きなジャンプ、こらえたコンボ。曲調もあって手拍子が早速飛び出すなか、かおちゃんは曲の「Roots!」に合わせてジャッジ席を指差す「攻撃」を次々に繰り出します。「これは自分を狙い撃ちされたら、ちょっとワロてまうな…」と思っているところに、さらに「Roots!」「Roots!」が畳みかけてくる。もっと「Roots!」が欲しくなるド迫力演技です!

↓これ最後に狙い撃ちにされたジャッジ、よく耐えたなwwww


「めっちゃワロてるやんwwww」って自分で言ってるやんwwww

よく見たら奥のほうでコーチ陣もゲラゲラワロてるwww

もしも記念撮影の機会があったら「Roots!」をおねだりしますのでヨロシク!




トリプルアクセルを装備してきたという樋口“最高”新葉さんは、ショートではトリプルアクセルは跳ばず。着地でステップアウトするような場面もありますが、70点に迫る演技で好調ぶりをうかがわせます。世界選手権銀メダリスト、再び世界の切符を獲るには十分な4位でショートを終えます。最終グループを残して、紀平さん、坂本さん、新葉さんという上位勢。順当に、実力者が競り合ってきています。

最終グループからそこに割って入ってきたのは宮原知子さん。クレオパトラを演じるショートは、振り付けや動きも印象的。そりゃあインスタも「このポーズで」となるというものです。手応えアリの表情で演技を終えますが、スピンでの厳しいレベル判定や、ジャンプでの回転不足もあってシーズンベストには及ばず、この時点で2位のポジション。

そして、僕注目の本田真凜さんも最終グループでの演技。真凜さんにとって全日本は嫌な意味で「重い」ものでしょう。一昨年7位、昨年15位、結果も出ていませんがそれ以上に内容もよくなかった。笑顔などなく、ただただ沈み込むような演技。声援も盛り上がらないし、「悪口を書く」と決めてからSNSに書き込んでいるような手合いも多いし、見ていていたたまれない気持ちになりました。

しかし、今季は確かな兆しが見えています。交通事故のショックを乗り越えて戦ったGPシリーズ。地域の大会に積極的に乗り込み、連勝で迎えた全日本。表情も淀みない笑顔が戻ってきました。「華」と言えば抽象的すぎるかもしれませんが、これが天性のものだなと思います。立って、滑っているだけで目を惹くものがある。

そこにジャンプやスピンがしっかり実施されれば自然と好演技にもなるというもの。冒頭のトリプルループ+トリプルトゥループは、ジャッジ・フモフモ的には回転不足は通常速度再生によってOKとし、GOEでもプラスをつけたいような出来栄え。つづくトリプルフリップも着氷を自然に上手にこらえましたので、もちろん通常速度再生です。ダブルアクセルも含めてジャンプ3つ、しっかり揃えました。悪くないジャンプでした。

そしてこの日はスピンがいい。厳しいジャッジでスピン得意の宮原さんもレベルを取りこぼすなか、真凜さんはすべてレベルも取り、出来も非常にいい。ひとつひとつのポジションが明瞭で、回転の軸も乱れないキレイなスピンです。スピンは苦手…というか「嫌い」という話すらしていた真凜さんが、この厳しいジャッジのなかでスピンを評価された。日々の小さな努力を積み重ねてここまできたんだということが、ようやく数字にも表れ始めたなと、うなずくような想い。

演技を終えたポーズがそのままガッツポーズとなり、そのまま大泣きが始まる。この日、一番の名場面でした。施設と運営の問題なのでしょうがないですが、世が世なら花束が大量に飛び交ったんでしょうね。売店で「投げる用」に売ってるものも投げられないなんて窮屈な世の中ですね。いっそ、プロ野球の風船も隣のオッサンのよだれつきのが僕のビールに飛び込むのが怖いので止めさせますかね。心でひまわりの花束を投げておきます!

↓よかったよ!すごくよかったよ!フリーでもつづけるぞ!


達成感に比して採点がショボかったことについては、若干憤っておりますが、それがジャッジの仕事なのでしょうね!

真凜さんは「褒めて伸ばす」タイプだと僕は思いますよ!

キス&クライでやった飛行機のモノマネにあと5点くらいください!




最後の演技者、横井ゆは菜さんが滑り終えたとき、真凜さんは6位に踏みとどまりました。6位ということは、フリーは最終グループで迎えるということ。日本の6番目から、表彰台を目指した戦いができるということ。「世界」を目指したフリーになるということ。ぜひ、最後まで戦ってほしいなと思います。

そして、見返してやってほしいなと思います。

試合後にはSNSのトレンドに「真凜ちゃん」が入っており、心動かされる人がたくさんいたんだなと僕も嬉しくなりましたが、まだまだ上がある。ショート以上に今季のフリー「ラ・ラ・ランド」は魅力的ですから。ノーミスで滑り終えることができたなら、ショート以上の好演技になるし、世間の目というものもまったく違うものになるはず。

大喜びしたい気持ちを抑えて、フリーの帰結をじっと待ちたいと思います。全日本に対するトラウマを振り払い、年に一度、こうしてクリスマスを迎えることを「楽しい」と思い直せるきっかけに今大会がなればいいなと願って。妙に厳しいジャッジのみなさんも、フリーでは「褒めて伸ばす」精神でお願いしますよ!


泣くほどの演技も、点を見て「まぁまぁやね…」ってなったら煮え切らない!