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阿部兄妹、一・二・三連覇へ!

東京五輪を盛り上げる4連休が終わり、俄然大会は盛り上がってきました。開会式の国立競技場周辺では中止を求めてやってきたデモ隊も思わず写真撮影に興じていたり、沿道応援の自粛を呼び掛けられていてもロードレースのコースにはたくさんの応援の人が居並んでいました。それはある種のモラル違反ということかもしれませんが、同時に「民意」でもあると思います。楽しもう、楽しみたい、そういう気持ちが世のなかを明るくすることを願いながら、引きつづきこの五輪・パラリンピックを見守っていきたいと思います。安心安全を追求することを忘れずに。

25日はそんな明るい気持ちをグングン加速させるような時間でした。午前中の競泳決勝では日本競泳陣の新エースである大橋悠依さん(※前任者はプライベートの問題と単純に遅かったので降格)が女子400メートル個人メドレーで金メダルを獲得。前日の前エース降格の時点で「妙にタイムが出ないな…?」「もしや日本だけ午前決勝に順応してて逆に予選で弱い説か…?」「今大会の金は厳しい…?」という不安もありましたが、あっという間に不安を払拭してくれました。いける、いけるぞ、競泳ニッポン。大橋さんを中心に頑張ってください!

↓やっと届いた世界の「金」!元気と勇気をもらいました!


さらにこの日はメダルラッシュの様相。新競技のスケートボード男子ストリートでは、堀米雄斗さんが地元に錦を飾る金。堀米さんをはじめとする選手たちと、コーチ陣や解説の方も含めて皆の「楽しそう」な雰囲気と、それを日本の人々も前向きに受け止めていることに新しい時代を感じさせてくれる試合でした。その陽気さに「眉をひそめる」のではなく「楽しそうでいいね」と受け止める空気、チャレンジそのものを評価し失敗もチャレンジの証と笑い飛ばすような空気が広がってきているなと思います。自分自身も「眉をひそめる」ような気持ちが、いつの間にか薄らいでいるなと感じます。

もともとストリートカルチャーから生まれたスポーツたちは、選手がとても楽しそうに、自分のスタイル(個性)を追求してきたものです。スポーツになる前に文化になっていたものです。勝ち負けというよりは、カッコよさを張り合うような形で。しかし、日本では自分のスタイルで服装を着崩していたり、自分のスタイルでラップを決めたりすると、それをモラルに反する蛮行かのように指弾する動きがありました。ストリートに根を張る選手たちに「チッ、うっせぇ、うっせぇ、うっせぇな、あなたが思うより反省してます」と頭を下げさせてきました。そこまですることはなかったなと思います。今ならそういう自由な個性とも、もう少し穏便に折り合えるかもしれないなと思います。

いろいろな人がいて、みんないろいろでいい。

世界にはこんな空気もあるのだと知る、それもまた五輪・パラリンピックだなと思います。

↓ウェアも日本柄のレインボーユニでオシャレ!


↓「ビタビタに決まって鬼ヤバイ」なんて解説も楽しそうでイイじゃない!



その後も朗報が続々と届く日本選手団。卓球混合ダブルスでは絶対絶命のピンチからの大逆転劇などで水谷・伊藤組が決勝進出を決め、中国ペアと「金」を争うことに。ソフトボールも守護神・後藤さんの好リリーフでカナダを振り切り、アメリカとの金銀決着戦への進出が決まりました。メダルは確定したうえで色を狙うという「上がるしかない」戦いの予約2件、また楽しみが増えました。バドミントン、テニスでの実力者の順調な勝ち上がりや、団体競技での好試合・快勝などそれそれがこの大会への準備を発揮してくれていることに嬉しさと頼もしさを感じます。

そして、いずれもが新聞一面級の朗報たちをさらに上回って輝いた阿部一二三・詩の兄妹による「兄妹同日金」という大偉業。あるかもしれないとは言われていたことですが、本当に達成してしまうとはお見事です。そのうえ、阿部詩さんという傑出した個は、「日本柔道界がいまだ制覇できていない女子52キロ級の壁」も簡単に突破してしまいました。最強の兄妹はどこまでいくのか。五輪の金でもまだまだ天井が見えないスケール感に脱帽です!



昼セッションの3回戦、準々決勝、阿部兄妹は強かった。先に3回戦の畳にあがった詩さんが投げて抑えてのあわせて一本で易々と勝利すれば、一二三さんは組むことを拒んで逃げ回る相手を「両袖」をつかんでの「袖釣り込み腰」に見せかけて逆に「大外刈り」で背中側に倒すという仕掛けで鮮やかに一本。初の五輪という硬さはまったくありません。準々決勝も詩さんは相手の投げを潰して、そのまま横倒しにして技あり。一二三さんも消極的な相手を大外刈りで技あり。大得意の投げ技だけでなく足技も冴えています。

互いの試合を互いが見守る兄妹は、夕方のセッションでも快進撃を見せます。詩さんの準決勝は指導をもらわない程度に上手く逃げ回る相手に延長までもつれ込みますが、トータル7分を超えたところで内股技あり。組み際、電光石火の投げでした。一二三さんの準決勝は、胸に「家族」のタトゥーを入れたブラジルのカルグニンが相手。一二三さんは「ワシは家族と出ている」とばかりに背負い投げで鮮やかに一本。これで兄妹同日金まであと1勝ずつとします。

迎えた決勝、先に登場の詩さんはこの日絶好調のブシャールが相手。ブシャールは飛び込んで奥襟をつかみ、詩さんの技を封じようという戦いぶり。試合当初はそれを食って頭を押さえつけられていた詩さんですが、試合途中からはその飛び込みを見切ってさばくようになります。この日のために用意した策だったのでしょうが、あっという間に見切られて、これでブシャールは攻め手がなくなりました。

互いにポイントがないまま延長に突入し、試合時間8分を超えた頃には、ブシャールは疲労からかほぼ棒立ちで後ずさりという状態に。一方で詩さんは元気いっぱいに攻めつづけています。最後は相手が地面に突っ伏しての防御姿勢を、強引に起こして裏返し、そのまま抑え込むという力技。10秒抑え込み時点でポイントが入り、ゴールデンスコアでの勝ちが決まった詩さんですが、一本の20秒まで抑え込みつづけ、完勝での金メダル。投げ技をどれだけ防御されても、寝技で上回って勝つという勝ち筋の広さ。破れたブシャールの呆然とした表情が印象的でした。早くも3年後に向けて「どうすりゃええんじゃ…」とでも思っていたでしょうか。いやー、詩さん強かった!

↓とんでもない強さで女子52キロ級の壁、破壊!




その結果を見届けて畳に上がる一二三さん。試合時間2分にかかろうかというところで、またも「袖釣り込み腰と見せかけての大外刈り」という連携で技ありを奪います。もともと投げの鮮やかさで世界を制した一二三さんですが、そこに足技も絡めることで「防ごうとしても防げない」というさらなる強さを手に入れました。

ただ、そこで「勝った」「勝てる」と計算が働いたでしょうか。残り2分間は組むことを拒みながら徹底して防御の構えとなり、逆に危うい場面も生まれます。このあたりは少し精神的に憶病になった瞬間だったかもしれません。「相手が死にそうだな」という状況で「そのまま死んでくれ」と願うか「よしトドメ刺そう」と奮い立つかの差とでも言うべきか、ちょっと守ってしまったなと思います。

それでも一二三さんはしっかりと守り切ると、兄妹同日金の大偉業を達成。畳の上では喜びを見せないと誓っていたと言うとおり、一礼してようやくの笑顔を見せた一二三さん。むしろ見守る詩さんが「観戦している家族」の姿で、バンザイ大喜びだったのが印象的でした。自分の勝利の余韻に浸ることもなく、もう「妹」に戻っている。五輪すらも日常の一部という大物ぶり。一二三さんが勝ってさらに詩さんのスケールの大きさを感じる、そんな兄妹金でした。

↓「一二三」つながりで将棋の加藤一二三さんからもお祝いが!


↓やっぱりお兄ちゃんも強かった!


柔道界の新たなアイコンとして、そして「一二三」の名にちなんで、一二三さんには野村忠宏さんの五輪三連覇という偉業への挑戦が期待されることでしょう。パリ、そしてロスのエースとして。しかし、それ以上に大きな期待を寄せるべきは詩さんなのだなと、そのスケール感に圧倒されるような五輪でした。

とりわけ印象的だったのは試合直後のインタビュー。詩さんは、選手たちからよく聞く「支えてくれた人のおかげで…」という物言いではなく、「私の努力がやっと報われてよかった」とキッパリと言い切りました。それが唯我独尊的だという話ではなく、その言葉を聞いて、詩さんはまだ使っていないチカラがあるのだと感じました。

詩さんは自分のチカラでこの大会を制したのでしょう。勝ちたい、強くなりたい、そういう内なるチカラで。ただ、多くの選手は頂点を目指す過程で、それだけでは乗り越えられない壁にぶつかり、その苦しさを乗り越えるチカラを、支えてくれている人、応援してくれている人への「感謝」から得ていきます。こんなに苦しいのに何故私は頑張るのだ、という問いを「あの人に報いるため、あの人の笑顔が見たい」という他者から生まれるチカラに求めることで、さらに強くなるのです。

自分の喜びは自分の苦しみで相殺されますので、「こんなに辛いならもういい」となってしまいます。しかし、他人の喜びは自分がどれだけ苦しくても変わりませんので、あの人の笑顔を見るためならどれだけでも頑張ることができます。そういうチカラを得ることで、さらに強くなれる。そのチカラを詩さんはまだ使っておらず、五輪を圧勝してもなお底が見えない、奥深い伸び代がある。そう思います。

詩さんが勝ちつづけることで一二三さんも兄として勝ちつづけることを求め、互いが互いを引っ張りながらふたりで勝ち進んでいく…そんな兄妹の活躍がこれからもつづくのかなと思います。一二三さんが「一二三連覇」を達成する日には、詩さんも「お兄ちゃん、先にやっておいたよ」の三連覇を達成しているのだろうなと。逆に言えば、詩さんが三連覇するようなら、一二三さんもそこに届く、そういう二人三脚なのかなと思います。

もしも人生の設計が噛み合うようなら「一(いち)二(に)三(さん)詩(し)」で四連覇というところまで想像しながら、今後もこの兄妹の活躍を見守れればと思います。4年後、8年後まで予約をしたくなる楽しみが生まれたことにありがたさを覚える、阿部兄妹の見事な「一冠目」でした!




「妹よりも強い兄」で居つづけられるよう、お兄ちゃん頑張れの気持ちです!