2021年08月28日08:00
目標があるから有言実行!
パラリンピアンの姿を見ていると、「目標」を持って人生を過ごすことの素晴らしさを感じます。何かを目指し、そのために一生懸命になることはカッコいい。ただただ休みだけを目指し、仕事をやり過ごしながら、休日に昼寝をすることだけを考えている我が身とは対照的だなと思います。
それは制限があるからこその強さなのかもしれません。「何でもできる」と思えば迷いや悩みを生みますが、「何でもはできない」と覚悟すればむしろビジョンはクリアになるのでしょう。これはできる、これをやろう、これで頑張ろう、そういう一筋に懸ける胆力というものが生まれるのかなと思います。
その「胆力」の塊のような選手が、27日の東京パラリンピック・陸上男子400メートルT52クラスで金メダルを獲得した佐藤友祈さん。脊髄炎を患って車いすでの生活となった佐藤さんは一時自宅に引きこもっていたともいいますが、テレビでロンドンパラリンピックの陸上競技を見て、こんなにカッコいい車いすでこんなに速く走るのかと魅せられ、一念発起で車いす陸上の選手を目指したと言います。
それからの活躍はご存知の通り。リオパラリンピックでは、まさに自分に一念発起のキッカケを与えてくれた選手であるパラ陸上界のレジェンド、アメリカのレイモンド・マーティンと激闘を繰り広げ、2つの銀メダルを獲得しました。テレビで見て、憧れて、その相手と世界の頂点で戦う。「映画化決定」と言いたくなるようなドラマティックな展開です。
↓リオではマーティンに破れた佐藤さん!東京で雪辱を期す!
Hey Spokes! Raymond Martin, our #2012SNSJrAthlete of the year, collects gold at the Men's 400m (Photo OIS). #rio2016 pic.twitter.com/XMRGcpEvVF
— SPORTS `N SPOKES (@SPORTSNSPOKES) September 13, 2016
佐藤さんはリオ大会後の2018年に400メートル・1500メートルでの世界記録を樹立すると、2019年の世界選手権では2冠を達成し、堂々の金メダル本命候補として今大会を迎えました。しかし、世界記録を樹立しても、世界選手権でマーティンに勝っても、まだ真の勝利ではないと佐藤さんは言います。パラリンピックの王者に、まだ自分はなっていない。今大会、掲げた目標は「世界記録での金メダル」。最上級の目標を掲げ、大本番に臨みます。
迎えた決勝。佐藤さんは外側7レーンからのスタート。マーティンはさらに内の4レーンから追ってきます。佐藤さんはスタートではやや遅れるも、淀みなく一定のリズムで車いすを漕ぐことで、コマ回しの名人のように加速をつけてきます。前半は100メートルでも強さを見せるマーティンが押し、後半から佐藤さんが追い上げるという展開です。
予想通りバックストレートではマーティンが前。ふたりだけがまるで別次元の速さで、他の選手を引き離していきます。3コーナーから4コーナーの出口では、ちょっと届かないのではないかという差をつけてマーティンが先頭に立っています。通常の陸上競技ならこのパターンからの逆転はまずないような位置取りです。
しかし、ここから佐藤さんの見せ場。マーティンも淀みなく漕いではないますが、佐藤さんは小さく鋭く一定のリズムで漕ぎつづけ、マーティンよりも「ピッチ」が明らかに速い。最後の直線でグングン追い上げると、優れた競走馬のような差し足からゴール前でマーティンをキッチリととらえ、「2分の1馬身」差し切りました。マーティンとの対決を制して、ついに佐藤さんがパラリンピック金メダリストとなりました!
↓9年前に「コレを追いかけよう」と思った相手を、ついにとらえた!
【速報動画】#陸上 男子 400m T52 決勝
— NHKスポーツ (@nhk_sports) August 27, 2021
日本人W表彰台!#佐藤友祈 選手がパラリンピックレコードで #金メダル 獲得!#上与那原寛和 選手も #銅メダル 獲得!
NHK総合テレビで放送中! PC💻スマホ📱でも中継をご覧いただけます☟https://t.co/vOBOofGpUd#nhk2020#tokyo2020#パラリンピック pic.twitter.com/lFif7MKbyr
↓金の佐藤さんと、銅を獲得した上与那原寛和さんとの日本勢ダブル表彰台!
【速報動画】#陸上 男子 400m T52 決勝
— NHKスポーツ (@nhk_sports) August 27, 2021
表彰台で笑顔!#佐藤友祈 選手 #金メダル #上与那原寛和 選手 #銅メダル
NHK総合テレビで放送中! PC💻スマホ📱でも中継をご覧いただけます☟https://t.co/vOBOofGpUd#nhk2020#tokyo2020#パラリンピック pic.twitter.com/MjfrxPDiuK
↓NHKによるハイライト動画はコチラです!
これ馬券買ってたら声が枯れるほど叫ぶ展開のヤツですね!
「差せー!差せー!差せー!やったー!」のヤツ!
「世界記録で金メダル」という目標は記録の面では達成できなかったものの、パラリンピックレコードでの金メダルという偉業を達成。それでも佐藤さんは「世界記録で金メダル」をまだ達成していないと悔しがり、このあとの1500メートルでの目標達成と、パリ大会での再挑戦に意欲を見せました。金の達成感を噛み締めたのはほんの少しの時間で、すぐさま次の目標を見据える、前向きで強い意志の塊でした。
そんな強い意志の塊を見ながら、大会開催前に佐藤さんが残した全国ネットのニュース番組での発言を思い出していました。まだ開催か中止かも定かではなかった時期に、アスリートとして開催の是非を問われた佐藤さんは「自分の仕事を中止にすべきと言われたらどう思うか」「どうやったらできるんだろうって考えて生活していくほうが何百倍も何千倍も楽しい」「パラリンピックはまさにそういうことを伝えられるカギとなるもの」と毅然と言い放ちました。
アスリートが悪者にされ、クチを開けば炎上させられるという時期においても、佐藤さんは鋭く強い意志を持ってパラリンピックに向かっていました。オリンピアンでは内村航平さんがそういう意志を示した選手だったように、パラリンピアンでは佐藤さんがそういう意志を示した選手でした。「できたらやりたい」ではなく「これをやるんだ」という確固たる意志があるならば、それを隠す必要はないのです。堂々とそこに向かうのです。それこそが「強気の有言実行」の正体なのだろうと思います。
そして、佐藤さんほどに強い言葉ではないまでも、パラリンピアンの多くは明確な目標と強い意志を持って大会に臨んでいる「有言実行」の人たちだなと感じさせられます。目標をハッキリと語り、その一点に突き進んでいます。むしろ、何でもできると思っている障がいのない人のほうが、「可能なら…」「できたら…」「いけたらいく…」みたいな言い方で人生に保険を掛けているなと思わされます。
先日、競泳で銀メダルを獲った富田宇宙さんが「24時間助けてもらわなければ競技ができない」と言っていましたが、パラアスリートが競技をつづけるのは大変なことです。車いすで国際大会に向かう。練習で伴走してもらう。日々の暮らしも含めて、自分ひとりでは解決しないことも多いでしょう。
そのとき、「できたらやりたい」という中途半端な姿勢では何も進まないだろうと思うのです。自分自身の「これをやるんだ」という強い意志があってこそ、世界を目指すためのサポートも求めていけますし、周囲も何としても助けるのだという心が決まるでしょう。それは誰もがそうしたほうがいい、健全で充実した生き方のように思えます。「自分はこれをやりたいんです!」と公言して、それに全力で向かっている人はカッコいいなと。本気の人はカッコいいなと。
パラアスリートは、アスリートである以前に「目標を見つける名人」たちなのかもしれないな、と思います。
困難のなかでも目標を見つけ、突き進むことができる強い意志を持つ人が、パラリンピアンとなって、その素晴らしさを全員に示してくれているのかもしれないな、と思います。
その意味では、このレースを通じて、レイモンド・マーティンにもまたひとつのキッカケがあったらいいなと思います。マーティンは医療系の仕事を目指しており、大会後はそちらの道に進むという話もあるそうですが、もうひと燃え、あってもいいのになと思います。ゴール前で差し切られたとき、マーティンにとっても新たな「目標」が目の前に見えたはずなのですから。
何もなければ自分の独走で終わっていたはずのレースが、熱く激しい競い合いとなった。勝ったり負けたりできる相手がパリを目指して走っている。しかもそれは、自分を見て競技を始め、自分を追いかけてきた選手である。負けた悔しさもあるかもしれませんが、こういう戦いができる喜びもあるだろうと思うのです。ライバルがいることの充実が。今大会の1500メートル、そして未来のパラリンピックで、「続編映画化決定」と言えるような展開があるといいのになと思います。また、熱い戦いが見られることを期待して、試合を見ようと思います。「あとでコレ絶対見よう」は小さな小さな目標ですが、自分もまた人生が前向きになるような気分です。
目標があれば、未来は輝く。
目標があれば、強くなれる。
オリンピック以上の強さで、そんな素晴らしさを感じるパラリンピックです!
↓1500メートルでは長い長いランニングデートの展開に期待です!
ま、本音は「9年前に戻ってテレビ消したい」とかだったりするかもしれませんが!





