2022年03月09日08:00
バイアスロンもいいですね!
熱戦つづく北京パラリンピック。今大会はやはりウクライナに肩入れをして見てしまう気持ちがありますが、8日はウクライナによるメダルラッシュが見られました。この日のメダルマッチはすべてバイアスロン競技のものというなかで、実施6種目18個のメダルのうち9個をウクライナ勢が占めるという圧倒的な強さ(※ウクライナ勢ではないが女子10キロ座位銀のオクサナ・マスターズ選手もウクライナ生まれ)。男子10キロ視覚障がいの部では1位から5位までがウクライナ勢という、ウクライナここにありを示す一日でした。
↓バイアスロン女子10キロ立位では金銀銅を独占!
They did it again!
— Paralympic Games (@Paralympics) March 8, 2022
Ukraine's 🇺🇦 second #ParaNordic triple podium at #Beijing2022#WinterParalympics #IWD2022 @ukrparalympic @UN_Women pic.twitter.com/gnEjaUBbBz
↓バイアスロン男子10キロ視覚障がいの部では1位から5位を独占!
1⃣-2⃣-3⃣
— Paralympic Games (@Paralympics) March 8, 2022
Ukraine's 🇺🇦 third podium sweep during this years' Games!#Beijing2022 #WinterParalympics #ParaNordic @ukrparalympic pic.twitter.com/pdH6Zcs5Lg
↓ちなみにウクライナはバイアスロン男子6キロ視覚障がいの部でも金銀銅を独占!
The first and only podium sweep so far at #Beijing2022 is for Ukraine 🇺🇦 in the Para biathlon men's sprint vision impaired.#WinterParalympics #ParaNordic @ParaSnowSports @ukrparalympic pic.twitter.com/2c4DPnatk1
— Paralympic Games (@Paralympics) March 6, 2022
ビタリー・ルキヤネンコ選手が金&金!
アナトリー・コワレフスキー選手が銀&5位!
ドミトロ・スイアルコ選手が銅&銅!
ヤロスラフ・レシェチンスキー選手が4位&6位!
オレクサンドル・カジク選手が5位&銀!
ウクライナは近年のパラリンピックではバイアスロンとクロスカントリースキーでメダルを量産してきた強豪国。ソチではバイアスロンとクロスカントリースキーだけで25個のメダルを獲得し、平昌でもやはりその2競技だけで22個、今回も同じくその2競技だけでここまで17個のメダルを獲得。まさにお家芸といった状態です。
バイアスロンやクロスカントリースキーでの突出した活躍を見ると「冬が長い雪国なんだろうな」と思いますし、でもアルペンスキーやスノーボードではあまり見かけないあたりから「山はあまりないのかな」と思ったりします。調べればもちろんわかることでしょうが、特に調べようという気がなくても、自然と気候や風土にも心が向きます。
オリンピックでも、近年はエアリアルでの金獲得がつづいていますが、ソチ大会ではバイアスロン女子のリレー種目で金メダル獲得があり、「バイアスロンが好きなんだろうなぁ」と思います。日本ではあまり注目度や関心が高くない競技であることは否めませんが、だからこそ世界にはいろいろな国や地域があって「それぞれだな」と感じられます。そして、日本でのバイアスロンの注目度の低さの要因が「銃刀法の関係でライフル銃を持つこと自体が大変」という背景から普及や育成が難しいことだったりするのを思うと、もしかしたら逆の環境があったりするのかなという想像も浮かびます。
ただ一緒にスポーツをしているだけですが、いろいろな「それぞれ」があることに心が向くのも、いろいろな国や地域が集まっていろいろな競技をすることの価値だなと思います。好きなものや得意なものはそれぞれなんだ、と気づく貴重な機会として。それぞれの好きなものや得意なものが、それぞれのチカラになるから、いろいろなものが必要なんだなと感じる機会として。
#北京冬季パラリンピック 第5日。バイアスロン10キロの男子立位で2位となったグリゴリー・ボウチンスキー(右)と、同女子立位で優勝したイリーナ・ブイ。反戦と平和を願い戦った #ウクライナ のカップルは、競技を終えてキスを交わしました。
— 毎日新聞写真部 (@mainichiphoto) March 8, 2022
写真特集→https://t.co/YxsZUYD4do pic.twitter.com/RHslPNpnt6
どの競技もそうですがパラリンピックというのは工夫の宝庫です。それぞれが違う障がいを抱えていることで、どこにも手本のない自分だけのやり方を考えて、実践しています。このバイアスロンでも手の障がいでストックが持てない選手たちはまるでスピードスケートのようなフォームで、大きく手を左右に振って進んだりしています。ストックを持つ前提だとあまり考えないことでしょうが、できないことがあるから工夫が生まれるのだと思わされます。
立位の選手の射撃では、それぞれの銃の保持の姿勢が大きく異なり、自分なりの撃ち方を模索しているところが印象的です。「利き腕でないほうで身体を支え、利き目で狙いをつけて、利き腕で引き金を引く」なんてセオリーはそもそも通用しません。ひじのサポートがある選手は両腕で身体を支えることもできるでしょうが、そうでない選手は片方の腕で身体を支えて同時に引き金を引かないといけない。さらに、銃を構えるために顔で抑えるときも、どちらの目を使いたいかで構えが大きく変わっています。
また、両方の腕の指が使えない選手は引き金に突起をつけて手首全体で引き金を引くようにしていたりしました。バイアスロンは「長距離走」という激しい運動に加え、「精密射撃」という身体を静止させることを求められる競技ですが、指でチョンと引くのと、手首全体で引くのとでは静止の難しさもまた異なるでしょう。ほかの選手よりも際立ってゆっくりと、本当に少しずつジワジワと引き金を引くような動作も、自分なりに見つけ出したやり方なのだろうと思います。
自分なりのやり方を見つけるのは苦労でもあるのでしょうが、謎を解いていくような楽しさもあるのだろうと思います。ゲームの攻略法を自分で考えるときのように、手本がないものだからこその達成感が。そして、それを一度にたくさんまとめて見られるパラリンピックはとても贅沢な大会だなと思います。人生を捧げて、独自に編み出したまったく異なるやり方を、並べて、比べて、堪能できる試合なのですから。
↓両腕に障がいがあったドイツのギーゼン選手はクチで引き金を引くやり方で挑戦していました!
息を整えるだけでも大変なのに、ハーハーするクチで引き金を引く!
2010年のバンクーバーでは、このやり方で銅メダルを獲得!
五輪のほうでは日本勢の活躍を追うだけで目がいっぱいというくらいの大活躍で、なかなかほかのところにまで手が回らずにいた部分もありますが、パラリンピックでは少し視野を広げて、「いろいろ」や「それぞれ」を見ていけたらいいのかなと思います。日程としては、また11日にバイアスロンが集中して実施されますので、ウクライナ勢に心を寄せながらバイアスロンを見ていきたいなと思います。射撃で外したり当たったりすることで大きく順位が入れ替わる一発逆転感みたいなものは、単純に見応えがありますしね。
「バイアスロンでウクライナ応援」という気持ちが高まってきました!