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比江島!比江島!比江島!比江島!比江島!

三本立てた指を突き出し、舌ペロしながら首を振る……「今一番マネしたい」ポーズ。パリ五輪を目指してバスケW杯の順位決定戦に臨む日本代表アカツキジャパンは、最年長のベテラン比江島慎さんの神懸かり的活躍によって大きく二歩前進しました。いや、もはやパリへの切符を甘づかみしたと言ってもいい。あとは最後までしっかりチカラを込めて握るだけ。パリへの道を比江島ステップで駆け抜けるだけです!

↓ポーズだけでも覚えて帰ってくださいね!



パリ五輪の切符を争うアジア勢のなかで唯一1次ラウンドで勝利を挙げた日本は、グループOの首位に立って順位決定戦を迎えました。しかし、安心できるような状況ではまったくありません。グループMでは中国が1勝を挙げ、次戦フィリピンとのアジア勢による直接対決で「2勝3敗」とする可能性が出てきました。また、グループPでもレバノンがコートジボワールに勝利し、こちらも次戦イランとのアジア勢による直接対決で2勝3敗となる可能性が出てきました。日本の属するグループOでは、地力で勝ると見られるフィンランドが今大会初勝利を挙げ、得失点差でもまくってきました。今の優位は1試合の結果で失われる程度のもの。絶対に勝つ、勝たねばとんでもない地獄が待ち受けている、そんな際どい綱渡りがつづきます。

日本のスターティングファイブはオーストラリア戦と同じ、河村勇輝さん、比江島慎さん、渡邊雄太さん、馬場雄大さん、ジョシュ・ホーキンソンさんの5人。チームが固まってきたと前向きにとらえることもできますが、「ほぼ不動」のメンバーとなっている渡邊さんとホーキンソンさんの負担は相当のものとなっているはず。ただ、それは仕方のないことです。サイズで劣る日本は、このふたりを外して強いセットを作る見込みは立たないのです。ふたりがどれだけ頑張れるのか、最後まで頑張れるのか、たとえ頑張れなくてもやるしかない。日本がパリ行きを決めるのと精魂尽き果てるのとどちらが先か、そういう戦いです。

迎えたティップオフ。日本は渡邊さんをオープンにしてしっかりとスリーポイントを決めて立ち上がります。一方ベネズエラもすぐさまスリーを返して点の取り合いは望むところといった構え。休養日が一日少なく、チームにベテランが多く、さらに怪我人が出て全部で10人しか選手がいないというベネズエラのコンディション面も計算しているのか、日本は序盤からダブルチームでボールを奪いに行くなどハイテンポな勝負を仕掛けていきます。

しかし、仕掛け自体は悪くないのですが、日本は肝心のシュートが入りません。スリーはそんなにスパスパ決まるものではないにしても、2点のシュートも「入れられそうなもの」が入らない。ベネズエラもかなり外しているのに、それ以上に日本の確率が悪い。お互いにリズムに乗れないまま、第1クォーターを15-19の4点ビハインドで終えた日本。ちょっと、「熱さ」が足りていない印象で、このままヌルヌル最後までいってしまうと怖いなという不穏な立ち上がりです。

↓そんななかでも「入る前に入ったことを確信」する比江島さんのスリーなどで日本も奮闘!


第2クォーター、日本は渡邊さんをベンチで休ませながらのスタート。しかし、相変わらずシュートは入らず、ベネズエラがじわじわと加点していくと、たまらず2分ほどで渡邊さんは自らコートに戻ってきました。日本も河村さんのドライブからのシュート、さらにバスケットカウントでワンスローを得るなどして点差を詰めるものの、要所要所でベネズエラが「日本のお株を奪う」スリーポイントを決めて流れを引き戻します。

全体として決してベネズエラの仕掛けにやられているというわけではないのですが、日本がシュートを外したあとや、不用意なターンオーバーを許した際に「速攻からベネズエラがラクに決めているゴール」のぶんで追いつけない感触。一時は10点ビハインド、第2クォーター終えたところでは36-41の5点ビハインドで前半を終えます。あれだけ外して、あれだけいらないターンオーバーを出して5点差ならまぁ悪くありません。スコアとしては十分逆転が見えるところですが、そこに至る「熱さ」がもうひとつ出てこないのが心配です。ホームの大熱狂を生み出すには、選手からのスイッチオンが欲しいところです。

↓富永さんがスリーを決めるとドンと会場も沸くのですが、この日は「5分の1」でこの1本だけ!


第3クォーター、日本はスターティングファイブと同じ顔触れでスタートし、順調に得点を重ねていきます。渡邊さんは見事なブロックのあとスリーポイント、つづく相手の攻撃のあと再びスリーポイント、つづく相手の攻撃でオフェンスファウルを誘うという「都合10点プレー」などの働きも見せ、一時は1点差まで点差を詰めます。

ところが、ここからつづけざまにトラブルが。まず、スタメンにも入っていた比江島慎さんが、第3クォーター残り7分というかなり早い段階で個人ファウルが4つ目となってしまったのです。バスケットボールでは「個人ファウルが5つ」になると退場となります。比江島さんはあとファウルひとつで退場となるため、かなり起用が難しくなってしまいました。さらにこちらもスタメンの馬場雄大さんがシュートを防ぎにいった際に転倒し、別室で治療を受ける状況になったのです。

主力2枚を欠いた日本は、自分たちが受けたファウルはなかなかとってもらえず、逆に相手にはファウルがきっちり与えられるという笛の傾向もあって、ややフラストレーションが溜まる展開に。解説の田臥勇太さんから「審判と戦ってはいけない」というアドバイスも出るような時間帯となります。リズムが悪いなかでの戦いでジワジワと点差を広げられ、ついには二桁点差にされるという「よくわかんないまま大苦戦」というゲームになってきます。

13点差に広げられたタイミングでは相手のソホさんが、バスケ界隈ではかなりカチンと来る挑発だという「ゴール後にボードを叩く」というアクションも見せていました(※テクニカルファウルで日本にワンスロー)。何でしょう、勝った気でしょうか、勝ったつもりでしょうか。フィンランド戦でもマルカネンさんのダンク後の「勝った感じの叫び」から試合の流れは反転しましたが、日本人が「外面は優しいけど、ものすごくキレやすい」「損得ではなく誇りを傷つけられたときにガチギレする」手合いであることはご存じないのか。今まで「さすが世界の代表はお強い」と思っていた僕も「絶対勝つつつつつつ!!」という怒りモードに移行しました。熱くなってきました!

↓治療を終えて戻ってきた馬場さんと渡邊さんによるアリウープ!相手の体当たりはファウルじゃないのか!


第3クォーター終えて53-62の9点ビハインド。終了間際にしっかり2点を挙げるなど、いい形で第4クォーターに入った日本でしたが、第4クォーター立ち上がりに連続でゴールを許してしまい、何と残り8分9秒の時点ではこの試合最大となる15点ビハインドにまで点差が広がります。「残り8分で15点差…?」、脳裏によぎる「負けるのか?」という恐れ。負けたらこのグループは全チームが1勝3敗で並ぶ混戦となります。ここまで大善戦を見せながら、グループ4位で大会を終えるなんて悪夢さえチラリと見え隠れしてきました。このまま終わるのか、終わっていいのか。どうにかしたい、誰か何とかしてくれ!

そんな叫びに応えられる選手がいた。

この大ピンチに神懸かり的なチカラを見せる選手がいた。

チーム最年長、すなわち誰よりも長く苦杯を舐めてきた男がいた。

第3クォーター早々に4ファウル目をおかしてベンチに下がっていた比江島慎さんが、再びコートの上に立っていた。

あとひとつファウルをすれば退場となる比江島さんは、1点もやりたくないこの状況でディフェンスでも身体を張りながら、クリーンにファイトしつづけます。残り7分18秒、ドライブを仕掛けるフェイクからバックステップして、自らスペースを生み出して決めたこの日3本目となるスリーポイント、これで10点差。残り5分38秒、自らボールを要求し、横に動きながら相手のマークを外して決めたこの日4本目となるスリーポイント、これで7点差。会場もいよいよ大熱狂、大興奮になってきました。明らかに比江島さんがスイッチを入れました。

残り4分59秒、自らボールを運んでから始めた攻撃で、遠くにパスを出す素振りで相手の足を止めたのち、すかさずジャンプシュートで2点、これで5点差。残り4分26秒、相手が守備時の陣形が整う前の素早い攻撃、司令塔の河村さんは逆サイドであまっている比江島さんをしっかり見ていました。オープンな状況でボールを受けた比江島さんは、この日5本目となるスリーポイント!しかも比江島さんはボールがバスケットに吸い込まれる前に「確信」の指差しを見せていました。スラムダンクで見たことあるシーンです。三井のヤツです。漫画ではなく本当の試合で見せてくれた名場面。これで2点差!

残り3分49秒、日本はベンチで休ませていたホーキンソンさんをコートに戻し、逆転への攻勢を強めます。ここまでどの試合でも後半は上回ってきた日本の、「逆転の日本」の底力を見せるときです。ベネズエラもゴールを返して再び6点差に広げてきますが、もう勢いは完全に日本のもの。河村さんのドライブを止める足はベネズエラの誰にもなく、自在なタクトを振るって得点を重ねていきます。残り2分50秒、ゴール下でファウルを受けたホーキンソンさんがフリースローを決めて再び3点差。残り2分16秒、ファウルを受けた渡邊さんがフリースローを決めてついに1点差。

そして、残り1分55秒、相手のボールを奪って始めた速攻は、第3クォーターに不在だった馬場さんと比江島さんによるものでした。馬場さんが走り、比江島さんに送る。比江島さんはシュートの態勢から空中でファウルを受け、なおシュートを決める。バスケットカウント!この3点プレーで逆転、そして2点のリードを奪いました!会場では燃えるような大歓声があがり、選手たちも吠えていました。「もしこの大会でパリ五輪の切符を獲れなければ代表を去る」と宣言して臨んだ渡邊さんは誰よりも熱く噴き上がっていました。辞めたくてクチにした言葉ではなく、勝ちたくてクチにした言葉だからこその「言霊」が宿ったような大逆転劇。わずか6分ほどで日本は15点差を跳ね返しました!

↓バスケットカウント!ワンスロー!これで2点では逆転できない差をつけた!

これもスラムダンクで見たことある!仙道のヤツだ!

比江島慎さん、第4クォーターだけでここまで14点!

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残り1分30秒、時間を計算しながら試合を進めそうな場面ですが、日本は攻めます。勝てば終わりではなく、パリに行くには最後の最後まで得失点差の争いがあります。勝てるときに、流れに乗っているときに、自分から止まる必要などありません。「BELIEVE」の信念です。日本はさらに河村さんのスリーで点差を広げると、粘る相手を振り切るように比江島さんがトドメのスリーポイントをもう1本決めてみせます。第4クォーターだけで17点、この日のスリーポイントは何と「7分の6成功=85.7%」という驚異的な確率です。バスケット人生でも最大級の大当たりを、日本バスケの大事な大事な試合で出せるなんて、強いぞ!!

↓最後は河村さんが決めて86-77で日本勝利!得失点差もプラスして、グループOの首位堅持!


↓日本のバスケ界の想いを代弁するように、渡邊さんは「これが普通」「俺らの知ってる比江島慎」「マコは止めれない」と熱弁!

海外挑戦での苦い記憶、あれは実力の問題ではない!

たぶんコミュ力の問題!実力は今大会で証明した通り!



さぁ、これで順位決定戦の1試合目が終わりました。グループO首位の日本は、次戦勝てばもちろんグループ1位、3勝2敗となってアジア最上位=パリ五輪が確定します。次戦に負けた場合はいろいろ複雑ですが、「日本がカーボ・ベルデに負け&フィンランドがベネズエラに負け」だと2勝3敗で並んだ日本とカーボ・ベルデは直接対決の結果(当該チーム間の得失点差の比較)によって、カーボ・ベルデがグループ1位で日本がグループ2位となります。「日本がカーボ・ベルデに負け&フィンランドがベネズエラに勝ち」となり2勝3敗で3チームが並んだ場合は、複雑な三つ巴の争いとなります。

三つ巴となった場合は、「当該チーム間の試合のみでの得失点差の比較」「当該チーム間の試合のみでの総得点の比較」「グループ内全試合での得失点差の比較」「グループ内全試合での総得点の比較」で順位を決めながら、順位が決まったチームを除いて改めて当該チーム間で同じ比較を繰り返して決めていくことになります。結論から言うと日本は「16点差負け」までカーボ・ベルデを上回りますのでグループ2位が確定します(※17点差負けだとカーボ・ベルデに逆転されて3位になる/三つ巴の場合日本がフィンランドを上回る見込みはない)。こう考えると、非常に大きな1勝を挙げることができました。負けていればとんでもない混戦になるところでしたが、勝ったことで視界がクリアになってきました。

ライバルを見渡せば、グループMの中国はこの日アンゴラに勝ったことで状況が複雑になりました。南スーダンがアンゴラに勝てば南スーダンの1位が決まりますが、その場合「中国がフィリピンに勝てば中国が2位」、「フィリピンが中国に勝てば1勝4敗で3チームが並び、フィリピンが2位になる公算が高まる」という状況です。南スーダンがアンゴラに負けた場合、「中国がフィリピンに勝てば2勝3敗での三つ巴となり中国は3位が濃厚」「フィリピンが中国に勝てば、フィリピンが3位、中国が4位」となります。大きな心配はいらないグループではありますが、アジア勢が2位に入る公算はそこそこあるので日本はグループ2位をしっかり確保することが必要です。

グループNのヨルダンは、自分たちが勝って、かつニュージーランドが負ければ「1勝4敗」の三つ巴の末にグループ2位に滑り込む可能性が出てきます(※メキシコに8点差以上で勝つことが条件)。ただし、日本との比較になった場合は勝敗数で上回る日本には勝てませんので、とにかく日本はグループ2位におさまっておくことが重要です。

グループPではレバノンがコートジボワールから1勝を挙げたことで、かなり複雑な状況となりました。まずはフランスとコートジボワールの試合でフランスが勝った場合、フランスの1位は確定しますが、残るレバノンVSイラン戦で「レバノンが勝てばレバノンが2位」「イランが勝てば3チームが1勝4敗で並んで、当該国間の得失点差の比較になりレバノンかイランかいずれにしてもアジア勢が2位になることが決まる」ということになります。一方、フランスがコートジボワールに負けた場合、レバノンが負ければよいのですが、レバノンが勝った場合、今度は「2勝3敗」での三つ巴が発生し、レバノンが1位となる公算が高まります。いずれにしても、日本がグループ3位に落ちた場合は「グループPのアジア勢がパリに行く」という公算が高そうです。どう転んでも複雑なのですが、まずはフランスにはしっかり勝ってもらうのがよいだろうと思います。レバノン1位は避けたいですからね。

しっかり検討すると意外にアレなのですが、

「次戦カーボ・ベルデに勝てば100%パリ行き、負けても16点差までならパリ行きが濃厚(フランスとレバノン次第)、ただし17点差以上で負けたらパリには行けない」ということになります。

負けても可能性が残るのはポジティブですが、こんなに頑張ったわりに意外にまだピリピリした感じです。

喜びは一旦おさめて、次の試合に集中していきましょう。

確実にパリに行く道は勝つことだけです。勝てば何の問題もない。

勝って、スッキリと、パリに行きましょう!




フィンランド戦で10点差をつけておいたこと、ここにきて効いています!