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パリへは堂々とメダルを獲りに行く!

やった、やった、やってくれた、全日本男子バレー龍神NIPPONがパリ五輪の切符をつかみ取りました。7日、開催中のワールドカップバレー2023にて、全日本男子は切符を争うライバル・スロベニアとの試合を行ないました。世界ランク8位、昨年の世界選手権では4位に入った強豪ですが、日本は3-0のストレートでこれを一蹴。もはやこの強さは世界のトップオブトップの一角と言っても差し支えないもの。世界のトップ6のなかにいる「メダル候補」である。パリの目標はメダル、堂々とメダル、そう宣言すべき素晴らしい自力出場となりました!



スロベニアに3-0で勝てばパリ行きが決まる。何度もセット率を確認して迎えたこの日、ドラマのような漫画のようなこの一週間は本当に劇的でした。内心で「全部勝つ」という大いなる自信を持って迎えたはずが、フタを開ければ「おっかしいなー?」と首を180度傾げずにはおれない苦しい立ち上がり。フィンランド戦はフルセットにもつれて勝点を失い、エジプト戦ではあろうことか負けよりました。

個人的な恨み節を言えば、厳しい抽選のなかでようやく取れた2枚のチケット(フィンランド戦、エジプト戦/後半は全部落ちました)が、いずれも「おっかしいなー?」という試合だったのは、龍神が悪いのか、ネットで「逆神」と呼ばれる僕が悪いのか、一度トントコトンまで話し合ったほうがいいんじゃないかとさえ思いました。入口には川合俊一さんのノボリなんか立てちゃってるし、川合俊一さんののぼりが複数種類用意してあったし、エジプト戦の帰り道には「ははーん?舐めてるな?」と思ったほどです。

まぁ「舐めてた」は言いがかりとしても、やっている本人たちも「おっかしいなー?」と思っていたことでしょう。ネーションズリーグで見せた強さ、しぶとさ、奔放さはすっかり影を潜め、「ユーキお願い!」を連発する小さくて弱気なチームがそこにはいました。五輪出場ラインは1敗までと踏んでいた計算がガタガタッと崩れました。これが歴代の先輩たちも阻まれてきたオリンピック予選の壁で、「史上最強」も所詮は壁の手前側かとくじけそうになりました。

しかし、そこからの龍神はまさに天翔ける昇り竜でした。チュニジア戦でストレート勝ちをおさめると、トルコもストレート勝ちで歯牙にも掛けず、世界の強豪セルビアもストレートでボコりました。全日本男子バレーを長年見てきた人なら「セルビア!強いな!よし負けた!」と反射的に思ってしまうイヤーな記憶の数々が甦る相手ですが、まったく問題にしませんでした。「ひき肉でーす!」がミンチにしてやったぜの意味で誤解されないといいなと心配になるくらいの快勝でした。もはやOQT(オリンピックが急に遠くなる)の呪いは無きが如くでした。

セルビア戦の結果を受け、他国の試合結果にもよるけれども、「スロベニアに3-0勝ちならパリ五輪が決まる」とわかったとき、もはや心は「いける」としか思いませんでした。スロベニアに3-0勝ちは決して容易いことではありませんが、「あぁもういけるな」としか思いませんでした。もともと持っていた自信と、暗い影を跳ね返してみせた龍神の「本物」ぶりが、大会前以上の強さで確信へと変わりました。負ける気がしない、負けるわけがない。ココで決めないで終わったらどんなヘボ漫画だ。漲る自負がはち切れんばかりで迎えるスロベニア戦です。

↓このスタメンの映像、ウルトラ6兄弟とか7兄弟って感じですね!



パリへ向けての第1セット。序盤はスロベニアが走ります。日本のサーブミス、チャレンジ失敗、ローテーションミスなどなど独り相撲がつづき1-6の5点差に。やはりOQT(オリンピックが急に潰える)かと不安がよぎりますが、キャプテン石川祐希さんがひとりブロックで相手の攻撃を断ち切ると、セルビア戦でもサーブが効果的だったセッター関田誠大さんのサーブ番で連続ブレイク。バックアタックを決めた盒桐さんのひき肉ガッツポーズも冴え渡ります。

ミドルブロッカーのブロック連発でジワジワと追い上げながら迎えた中盤戦。またもセッター関田さんのサーブ番で大きな流れがやってきます。石川さんのブロック、スパイク、プッシュ、多彩な技術の引き出しを開陳して、一気に逆転までもっていきます。そして、ローテまわって石川さんのサーブ番では強烈なサーブで連続ブレイク。自分で見事なスパイクレシーブをして、そこから自らバックアタックを決めに走るなんて、攻防兼備の圧巻ぶり。「ココで決める!」「誰が決める?」「もちろんそれは!」とでも言いたくなるような石川祭で日本が第1セットを先取です!

↓バレーボールのすべてをできる、三刀流も四刀流も備えた史上最強のキャプテン!


パリへと近づく第2セット。互いに譲らず一進一退のなか、随所で日本の判断力が光ります。西田有志さんが繰り出す単純チカラ押しではない「空中でのとっさのフェイント」、関田さんが見せる「身長が低い俺を狙ってくると思ってましたブロック」、高橋藍さんの「パイプ攻撃に張っていた3枚ブロックの裏にポトリと落とすフェイント」、小野寺太志さんの「じっくり見てからクイックを止めるリードブロック」、相手の動きと思考がよく見えています。思わず「上手い!」と声が出るプレーの連続です。落ち着きながら研ぎ澄まされています。これだけ判断の部分でしてやられると相手も苦しいでしょう。完全にチカラで決め切らないと点にならないのですから。

中盤からはネーションズリーグで見たような、打っても打っても拾いまくって逆に点にしてしまう日本のディフェンスが光りました。思えば大会序盤の苦戦の際には、こうした光景が見られませんでした。何かがちょっとズレている、そんな感覚でした。第2セット終盤の集計では、高さで10センチ上回る相手に対して日本がブロック9点、スロベニアはわずか1点。いかに守備陣形として日本は相手をしっかりとらえ、かつ相手をかわしているかの表れです。攻守に渡る合理性と美しさ、ようやく世間にお披露目したい龍神本来の姿となりました。最後は追いすがる相手をしっかりと振り切って、パリまであと1セットです!

↓ブロック、レシーブ、その連携!そしてレシーブに入った選手がすぐさま攻撃に移行!攻防一体!


ココでパリを決める、確信をもって臨む第3セット。互いのサーブ番でブレイクをし合う、出入りの激しい展開のなか、まるで日本は「ゾーン」にでも入ったかのように勢いを増していきます。相手のエース・ウルナウトさんのスパイクに対して盒桐さんが仕掛けた、「ブロックアウトを狙ってくると思ったのでブロックしないで避けました」の頭脳プレーは何故ここでソレができるのかと驚くような仕掛けでした。

ブロックアウトを狙ってくる相手には「ブロッカーもたまに手を引けよ」と言うのは簡単ですが(※エジプト戦など)、実際にそうするのは難しいもの。手を引いてズドンと打たれたらタダの守備放棄ですし、相手がブロックアウトを狙いそうなときというのはブロッカーがいい態勢であるという意味でもあります。止められそうだから相手もブロックアウトを狙うのであって、止められそうなときにコチラから手を引くというのは容易な決断ではありません。だからこそ、決めれば大きい。これで相手は、まずやってこないとはわかっていても「ブロックが避けるかも」と意識せざるを得なくなりました。盒桐さんの頭には第2セットの22-20の場面でやられたブロックアウト狙いのプレーが「カチン」と残っていたのでしょうが、早速そのお返しをする、とんでもない強心臓です。この試合、オリンピックが懸かってるのに何故それができる!

↓日本がチームで「ゾーン」に入っている感じで、ボールが落ちない!


やがて試合は何だかよくわからない不思議な世界に。これが五輪という魔物の片鱗なのか、スロベニアはスパイクを空振りしたり、何でもないボールを打たずに日本に返してしまったり、チグハグなプレーが次々に生まれます。その果てに生まれたのが「セッター関田さんのスパイクポイント」でした。ツーアタックとか、ネット際で押し込んだとかではなく、相手がトスをあげて関田さんがそれを打ち抜いた正真正銘の「関田のスパイク」です。自分がスパイクを打つ展開など基本的に考えていないはずの関田さんが、相手のトスがネットを越えてきたとき見事なスパイクで打ち抜いた。思考、備え、判断力、瞬発力、「勝った!」と思ったポイントでした。こんな得点が生まれて負けるわけがない!

↓これはもう漫画でしょ!見開き2ページくらいセリフなしの無音で展開して、「関田だーーー!!」ってセリフが入るヤツ!


「関田のスパイク」で一気に傾いた勝負の流れを、盒桐さんのサービスエース2本でガッチリと地固めし、5連続ポイントへとつなげた日本。これで18-14。もうサイドアウトしているだけで25点は目の前です。スロベニアもちょっと意気消沈したでしょうか、力んだスパイクが次々にアウトになります。そこをあざ笑うように、短く前に落とすサービスエースなども決めた日本の賢さ、美しさ、見事でした。石川さんのスパイクでマッチポイント…つまりオリンピックポイントを握ると、最後は相手のサーブがアウトとなって試合終了。日本が強豪スロベニアをストレートで下し、パリ五輪行きを自力で決めました!

↓相手が待っていないコースに思っていない球質で決めた、「見逃し三振」のようなサービスエース!


↓「コイツ小さいのにジャンサ強いんだよな」の撒き餌を回収する、ここ一番でのショートサーブ!


↓最後は相手のサーブが外れて日本勝利!パリ五輪行き決定!



素晴らしかった、美しかった、見事だった。サーブで攻め、ブロックとディグの連携でチャンスを作り、ミドルを中心に4選手がシンクロした多彩な攻撃を繰り出す。合理性の塊のような組織を作り上げ、龍神はパリへと翔け上がりました。幾多の名選手たちが阻まれてきた五輪への壁を、16年ぶりに自力で越えました。オリンピック予選敗退が当たり前である全日本男子バレーにとって、大きな大きな飛躍。しかも、そこにもはや「サプライズ」はありません。こうなるだろうと思った通りになった、歴史的な前進だと感じます。

その前進を見守っていた背番号3のユニフォームが現れたとき、胸にこみ上げるものがありました。2017年に全日本入りし、東京五輪にも出場した今は亡き名セッター藤井直伸さんのユニフォームです。健康であれば、今もこのチームにいたかもしれない藤井さんのユニフォームを東レのチームメイトである富田将馬さんが携えて歓喜の輪に加わり、同じ東レの盒況鯊析困気鵑泣きながらそれを掲げ、やがてセッター関田さんが袖を通したとき、長い道のりが甦ってくるようでした。

振り返れば2017年、中垣内監督のもとブランコーチが招聘されこのチームの原型は生まれました。自らを「お飾り」のポジションに置くことも厭わず海外の名将を招いたレジェンド・中垣内の決断は自分のプライドよりも日本の未来を選ぶものでした。そのチームには若き石川祐希さんや、今大会で日本のセンター線を支えた山内晶大さん、高橋健太郎さん、小野寺太志さんもいました。そして今は亡きセッター藤井直伸さんも。まだ手札が足りず、世界の強豪には跳ね返されましたが、2017年のグランドチャンピオンズカップで見たミドルを勇敢に使っていく藤井さんのゲームメイクは、よく言えばエースに託す、悪く言えばサイドに逃げてきた全日本男子に新しい未来を予感させるものでした。

Vリーグでも「縦のB」と呼ばれる、セッターがネットから離れた位置に動かされてもなお繰り出すクイックでゲームメイクをした藤井さんは、東京五輪でも李博さんとの「東レ」コンビで日本をベスト8に押し上げることに貢献しました。2017年に予感した未来が、一時代に集ったことが奇跡と思えるような選手たちの集いによって結実したのが今この2023年のように思います。全日本男子は世界で戦える、戦う道がある、ようやくそれを確信できる足跡が刻まれたような気がします。スロベニア戦の第3セット、11-11の場面で生まれた関田さんと山内さんとのコンビによる「縦のB」は、日本が世界で勝っていくための決意表明のような一撃でした。「つながっている」そう思いました。つながった先にある未来が今なんだ、そう思います。

さて、「1試合残してパリ行きを決める」というのは若干想定外でしたが、もとより視線はパリのメダルに向いていますので、ココはあくまで通過点。パリでは、この先のステージで待っている真の強豪を倒さなければメダルはありません。その一角にいるのが、8日の最終日に対戦するアメリカです。ともにパリ五輪の切符を決めており、若干テンションが下がったりメンバー編成が変わったりするかもしれませんが、ならばこそここでガツンと叩いておきたいもの。ホームでこの勢いで勝てないで、パリでどうするものか。見つかるのは希望か、課題か、いい試合でシメちゃってください!

↓エジプト戦後にメンタル崩壊しかけてた関田さんに「藤井さん特集」を見せたフジテレビ、いい仕事でした!


↓中央から真っ直ぐ堂々と突破する、そんなマインドをこれからも大切にしていきます!



毎試合の前日にいろんな藤井さん特集を流してもらうといいかもですね!