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頼むから全員大谷さんに憧れてください!

WBC決勝を控えたロッカールームで「憧れるのをやめましょう」から始まった大谷翔平さんの名演説。僕のなかでの2023野球流行語大賞はダントツで「憧れるのをやめましょう」です。ちなみに次点以下は「米」「令和の米騒動」、「アレ(阪神の)」「アレ(ヌートバーのポーズでやっていることを言葉で表現できない人がジェスチャーをしながら言うヤツ)」「アレ(戒めを待つ男の蔑称)」などがつづきます。

とにかくダントツは「憧れるのをやめましょう」です。仮に「いやいや阪神ファンがめちゃめちゃアレを言ってたんです」と審査員が言い張るのだとしても、そのパターンの流行という意味でも「大谷翔平」のほうが絶対にたくさん使われた言葉であるはずなわけですから、絶対に絶対に大賞は大谷翔平さんなのです。会社でも毎日「大谷翔平」って言葉が飛び交ってますからね。部下への叱責と上司への陰口で。こないだなんて所用で佐賀のホテル探していたら「ニュー大谷」なんてホテルもあったくらい。ものすごい流行ぶりです。

しかし、大谷さんの言葉は大賞には選ばれませんでした。おそらくは大谷さんが表彰式に絶対来てくれないだろうという見立てから、現実の新語・流行語大賞では「憧れるのをやめましょう」を上位入賞させないよう戦略的撤退を計ったのだと僕は睨んでいます。まぁそれも仕方ありません(※大谷さんもナノも関心ないだろうし)。「微妙に知っている気もする知らない言葉」を知ったかぶりする用の本を売るための表彰です、みんなが知っている言葉を選んでも仕方ありません。「みんなが微妙に知らない」あたりを突かなくてはいけませんよね。

↓「A.R.E.」って書かれたら世間はまったくわからないと思うんですよね!

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そんな大谷さんの言葉のチカラというのをまた感じさせられたのが、ロサンゼルス・ドジャースへの移籍に伴って公表されたインスタグラムでのコメントです。「アメリカの阪神」とも称される大人気・大注目球団への移籍は、全米いや全世界の野球ファンの一大関心事でした。そこにはたくさんの絡み合う思惑があり、難しい状況もあったことと思います。

特に「古巣」となったエンゼルス(アメリカの西武/むかーしいい時代があったけど今はサッパリの意)のファンには、どうしても耐え難い心情があったはずです。エンゼルスがどうなろうが知ったことではない僕でさえも、球場に貼られた大谷さんの巨大看板を剥がす作業現場を見たらちょっとウルッときたくらいです。「だって弱いから」「弱いんだもん」「大谷いるのに弱いっておかしいだろ」などと正論を叩きつけられて唇を噛んでいるエンゼルスファンの心情は痛いほどわかります。「移籍残当」などと言われるのは、どんなに「残念ながら当然」であったとしても辛いのです。

そんなファンへの寄り添いを見せつつ、かと言って寄り添い過ぎず、明るい未来へ向かう移籍コメントを出すのは大変気を遣う作業です。しかし、大谷さんのコメントは素晴らしかった。一部で「移籍コメントソムリエ」として知られる僕から見ても、完璧としか言えない素晴らしいコメント力で、さすが大谷翔平さんと僕も感心するばかりでした。普段から口酸っぱく「こうせぇ」と進言していることを大谷さんは見事に満たしていました。それはテクニックで満たしたのではなく、深く思いを馳せたことによって自然とそうなったのでしょう。深く生きる、そういう生き様は言葉にも滲み出るのだと改めて思いました。移籍を考えているすべての選手は、大谷さんに憧れてください。そして真似してください。せめてコメントだけでも大谷さんくらいになれるように…!

↓簡潔にして明確、そして移籍云々よりも野球への大きな愛を感じさせる名コメントです!

まず素晴らしいのは大谷さんがこのコメントを英文だけで発表したことです。普段の大谷さんの投稿では、英文を出したうえで日本語文でのコメントも添えられています。自分が日本人であり日本にたくさんのファンがいることはもちろん大谷さんも意識しているでしょうから、それ自体は何らおかしなことではありませんが、あえてこの投稿では日本語文を入れませんでした。

それは何故かというと、エンゼルスファンの悲しみに寄り添い、ドジャースファンの度を越した歓喜をたしなめ、もっと大きな視座に立つためのロジックがこのコメントにはあるからです。三段落目の最後にある「Until the last day of my playing career, I want to continue to strive forward not only for the Dodgers but for the baseball world.」です。日本語にするなら、「現役の終わりを迎えるその日まで、ドジャースのためだけではなく世界の野球界のために、前進の努力をしつづけたいと思います」といったところでしょうか。

ここには大谷さんのビジョンすなわち「夢」が語られています。端的に言えば「世界一の野球選手になる」ということであり、「野球自体に大きな影響を与える野球選手になる」ということです。これまでのチームはもちろん大事ですし、新しく移籍するドジャースも大事ですが、大谷さんが意識するのはチーム云々ではなくあくまでも「the baseball world」であり、世界の野球界のために自分が努力をしつづけると言うのです。エンゼルスもドジャースも日本も「the baseball world」の一部であり、今そのなかのどこに大谷翔平がいるかというのは「the baseball world」にとっては小さな話なのです。

だから、エンゼルスファンは悲しまなくていいし、ドジャースファンも喜び過ぎてはいけない。日本もエンゼルスもドジャースも、この野球というスポーツと世界の野球界をともに発展させていく仲間であり、大谷翔平さんはその全部を夢に描いているのです。自分の努力が、きっともっと素晴らしい「野球」の未来につながるはずだと。そういうことを語ろうというときに、日本を特別扱いするように「日本語文」がついているのは、少し気になりますよね。メジャーリーグの公用語である英語があれば十分であり、それ以上を含めるのは妙な意図を勘ぐられそうですよね。ひとつ添えたなら、あと10ヶ国語くらいは欲しくなりますよね。「世界」を表現するなら。だからこその、あえての日本語カット。さすが大谷さん、心が行き届いています。

↓以下、大谷さんのコメントの感心ポイントをチェックしていきます!
【インスタグラムで発表した大谷翔平さんの移籍コメント】
※日本語訳は翻訳サイト等によるもの

To all the fans and everyone involved in the baseball world, I apologize for taking so long to come to a decision. 
ファンの皆さま、球界関係者の皆さま、決断についてお話しできるまでに時間が掛かりましたことをお詫び申し上げます。
・「冒頭はお礼か謝罪で始める」という定石をしっかり実践している
・決断までに時間が掛かったことを謝る必要など毛頭ないが、ヤキモキしている人々の存在をしっかり意識できていることは好印象

I have decided to choose the Dodgers as my next team.
私は、次のチームとしてドジャースを選ぶことを決めました。
・簡潔にして明瞭でよい
・「世界の野球界」のなかの一部としてのドジャースということを念頭に置いた表現になっており、シンプルななかにも細部まで心が行き届いている
・これまでのチームも、こうして大谷さんが選んできた、必要かつ正しい選択であったことが滲むのは前所属球団にとっても誇らしいはず

First of all, I would like to express my sincere gratitude to everyone involved with the Angels organization and the fans who have supported me over the past six years, as well as to everyone involved with each team that was part of this negotiation process. 
まずはじめに、この6年間応援してくださったエンゼルスの関係者の皆さま、そしてファンの皆さま、そして今回の交渉に携わっていただいた各球団の関係者の皆さまに心より感謝申し上げます。
・何よりも先にエンゼルスに寄り添う姿勢、感謝の表明を持ってくる心遣い
・そして移籍に伴う騒がしさや、残念ながら契約に至らなかった交渉などを含めて、他球団を含めた関係各位に感謝を述べる心遣い
・「移籍すれば関係は終わり」「断れば話は終わり」なわけではない、何故なら前所属の球団も断った相手も「世界の野球界」の一部だから

Especially to the Angels fans who supported me through all the ups and downs, your guys’ support and cheer meant the world to me. The six years I spent with the Angels will remain etched in my heart forever.
特に、いいときも悪いときも支えてくれたエンゼルスファンの皆さんのサポートと応援は、私にとってかけがえのないものでした。エンゼルスと過ごした6年間は、私の心に永遠に残りつづけるでしょう。
・移籍することが「愛の終わり」なのではないと、ハッキリと言葉にしてくれることで救われる気持ちがどれだけあるか。移籍すると、ついこの気遣いを忘れる輩がいるが、絶対に忘れないようにしたい一節
・「いいときも悪いときも」支えてね、という牽制もサラリと含めていて上手い

And to all Dodgers fans, I pledge to always do what’s best for the team and always continue to give it my all to be the best version of myself.
そしてドジャースファンの皆さま、私は常にチームのために最善を尽くし、常に最善の自分でありつづけられるよう努力することを誓います。
・ドジャースに尽くすことを誓いつつ、「尽くす」ことの根源にあるのは「自分が最高の選手になること」であるという意識の表明
・決してチームのために何かを犠牲にするような忠誠ではなく、自分を高めることでチームに尽くすというスタンスは、「世界の野球界」のどこにいっても変わらない姿勢となるもの
・ドジャースへの言葉がエンゼルスへの言葉に比して短くなっているのはよいバランス感覚。ドジャースではこれからいくらでもプレーで語れる

Until the last day of my playing career, I want to continue to strive forward not only for the Dodgers but for the baseball world.
現役の終わりを迎えるその日まで、ドジャースのためだけではなく世界の野球界のために、前進の努力をしつづけたいと思います。
・一見「生涯ドジャース」とも受け取れる表明であり、そう受け取っても問題はないが、実際はドジャースに限らず「世界の野球界」のためにと言っている上手い言い方
・自分が意識するのはチーム単位、国単位ではなく、野球というスポーツ、「世界の野球界」であるという大きなビジョン
・日本の学校にグローブを贈ることも、エンゼルスを永遠に愛することも、ドジャースに尽くすことも、もしかしたらさらに次のチームでする何かも、すべて「for the baseball world」であり、何の矛盾もない・・
・これが大谷翔平の「夢」であり、そのための移籍なのである
・こんな言葉を聞かされると、ファンも大きな視座に立たずにはいられない……

There are some things that cannot be conveyed in writing, so I would like to talk more about this again at a later press conference.
文章ではお伝えしきれないこともありますので、後日の記者会見で、私の想いを改めてお伝えできればと思います。
・「世界の野球界のために」という視座を示したうえで、さらに詳しく想いを伝えるという流れを敷いたことで、会見自体もきっと意義深いものとなる
・下世話な損得勘定の探り合いではなく、世界の野球界のことを考えようじゃないか
・すべては野球のために!

Thank you very much
ありがとうございました
・「結びはお礼か謝罪で行なう」という定石をしっかり実践している

お見事!直すところはございません!(プレバト‼の夏井いつき先生風に)

移籍コメント永世名人に認定します!



こういう言葉に触れていると、自分の評価だの起用方法だの戒めだのと言っている世界が小さくてみみっちいものに見えてきます。野球力や影響力では大谷さんに及ばないまでも、みんな「世界の野球界」の一部なのでしょう?自分の損得だけではなく、世界の野球のために自分が何をするのか、ちょっとだけでもそんな想いを心に持っていてほしい、大谷さんに憧れてほしい……そんなことを思いました。こんな移籍であれば、たとえチームという小さな視座では別れることになったとしても、「私たちは野球という世界で永遠に一緒なんだね」と感じられるだろうなと思いました。

「憧れるのをやめましょう」という名演説も、あの場で急に「気の利いたイイ話」をしてやろうとして思いつくものではないのでしょう。常にそういうことを考え、自分自身の糧とし、積み上げてきたものがあるから、すなわち「深く生きてきた」からこそ、その場で必要なメッセージが自然に出てきたのだろうと思います。おそらく大谷さん自身も、そんな心情を抱いて、自らを諫めた瞬間があるのだろうと思います。

言葉は内心を綴るものではありませんが、内心は言葉に滲み出ます。

特に言いづらい話ではそうです。

その滲み出る内心が高潔であるような生き様を普段からしていただければ、何も小手先でコメントだけ取り繕う必要などないのです。大事なものは生き様。ファンが見ているのも生き様です。野球とは、スポーツエンターテインメントとは、スポーツに人生を重ねて人間の生き様を見せるエンターテインメントです。いいプレーだけではなく、悪いプレーのあとに何をするのか。勝利だけではなく、敗北のあとに何をするのか。それを見ているのです。だから、どんな立場の人でも「自分も頑張ろう」と勇気や元気が湧き出るのです。いいときも悪いときも人生はつづいていくのですから。埼玉西武ライオンズ界隈の選手の皆さんも、その辺を念頭に置いて過ごしていっていただければと思います。字だけ上手くってもしょうがないですからね!



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どのチームに行っても、大谷さんはすべての野球ファンをきっと喜ばせてくれる!