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2023年12月27日08:00
主要4団体統一してこそ真の強者!
この「モンスター」はどこまで強いのか、改めて底知れぬ強さに震えるような一戦。世界スーパー・バンタム級4団体王座統一戦、井上尚弥さんVSマーロン・タパレスさんの試合は、ボクシングの価値観ごとアップデートしてくれるような戦いとなりました。
有明アリーナに集った1万5千人の大観衆。このビッグマッチを日本で開催することの誉れを感じつつ迎えるメインイベントで、先に登場したタパレスさんはいたって静かな入場です。王者でありながら挑戦者のような佇まい。前日計量でのフェイスオフでも、これまでの対戦相手のように睨み合うようなことはなく、井上さんからの握手の申し出に和やかに応対していました。油断してしまいそうになる雰囲気、気を引き締めて掛かる必要がありそうです。
会場中に掲げられた日の丸を“背負って”入場してきた井上さんもいたって落ち着いています。足に滑り止めをつけながら、深々と礼でもするように息を吐く集中の時間。リングに上がった井上さんを迎える大歓声と期待感は、試合ごとにますます高まっています。今夜はどんな勝利を見せてくれるのか、勝敗ではなく決着の美しさに心惹かれる…そんな雰囲気です。両方とも同じ2団体王者であるはずなのに、何という圧倒的な王者感であることか!
↓入場曲はおなじみの「Departure」!荘厳で雄大な王者の佇まい!
Preparado para hacer historia 🏆#InoueTapales x @ESPNPlus pic.twitter.com/lN1tITxwZy
— Top Rank en Espanol (@trboxeo) December 26, 2023
リング上、ガウンを脱いだ井上さんの肉体に目を見張ります。また大きくなったか。さらに分厚くなったか。あるいは顔が小さくなったのか。前戦もスーパー・バンタム級での戦いではありましたが、これまで以上にパワーと大きさを感じさせる身体がそこには仕上がっていました。前戦はまだスーパー・バンタム級への移行途上で、今回はようやく階級にキッチリ合わせた肉体になったのだとすれば、前戦よりもさらに強くなっていることは疑いようもありません。まだ、これは、通過点。まだ、まだ、強くなる。身体でそう語るかのよう。
そして始まった第1ラウンド。サウスポーのタパレスさんとの対峙ということで、前に出した足が交錯するような形となる両者。まずは守りを固めるタパレスさんに対して、飛び込んでの右ボディでご挨拶した井上さんは、相手の様子を探りつつも、ときおり鋭いワンツーでタパレスさんのガードを叩きます。タパレスさんは飛び込んでの左ボディを繰り出しますが、井上さんは冷静に距離を取ってさばきます。互いに手数は多くないものの、まずは井上さんが主導権を握った、そんな印象の立ち上がり。
つづく第2ラウンド。ひきつづき守りを固めるタパレスさんに対して、井上さんはそのガードをこじ開けようといった動き。鋭いジャブでガードの中央を叩いては、さらに同じ中央の隙間に右をねじ込むといった連打で、相手の意識を中央に向けさせます。40秒過ぎにはガードの隙間を通すパンチで、タパレスさんに片ひざをつかせる場面も。ここはスリップの判定でしたが、タパレスさんは重心を後ろに後傾させ、警戒心を高めた様子です。
第3ラウンド、ここまでは両方のガードを高く上げていたタパレスさんですが、右手でL字のガードを作り、左で攻撃のチャンスをうかがうような構えに変えてきました。ただ、手を出せば隙が生まれるのがボクシング。タパレスさんが攻撃を繰り出して構えを崩せば、すかさずそこに井上さんの連打が飛んできます。反応、目、スピード、いずれでも上回り、じょじょにパンチをヒットさせていく井上さん。このラウンドもポイント奪取の手応えです。
第4ラウンド、ラウンド開始から相手のガードも構わず連打を仕掛ける井上さん。タパレスさんもそれにつられるようにアッパーなどを返して、打ち合いの様相になっていきます。ただ、打ち合いで強いのはモンスターのほう。タパレスさんは打たれた右腕を「いってー」とばかりに思わず振ってしまうなど、ダメージは否めません。そして迎えた第4ラウンド残り20秒、ここまで中央・前に意識を集めてきた井上さんが、相手の足幅が狭まり突っ立ったようになった瞬間を狙って、中央を固めるガードを左フックで払いのけるようにしてパンチをねじ込みました。顔がブンと横に振られたタパレスさんは明らかに効いています。その隙を逃さずに連打で攻めると、タパレスさんはたまらずダウン!残り時間の関係で仕留めるチャンスはありませんでしたが、早くも勝利が見えてきました!
↓まだ何も始まってないくらいの身体に見えるのに、相手はもう倒れている!
井上尚弥が快挙 史上2人目&最速の2階級4団体制覇!難敵サウスポー、タパレスに10回KO勝ち 節目10本目の世界ベルト奪取/ファイト/デイリースポーツ online https://t.co/DAr3f5kCCi #DailySports
— デイリースポーツ (@Daily_Online) December 26, 2023
第5ラウンド、当然井上さんは攻勢に出ます。人間に当たったら死んじゃいそうな凄いパンチがズドン、ズドンとタパレスさんを襲います。しかし、そこはタパレスさんも2団体王者です。接近したほうがむしろ安全とばかりに井上さんの懐にもぐり、何とか耐えようという構え。そして、この試合に向けて用意してきたものか、ときおり右のフック、右のアッパーを放って井上さんを脅かします。すごい根性、すごいタフネス、このラウンドで試合が終わらなかったことはタパレスさんの強さの証明でした。ポイントとしては井上さんが取るも、試合を終わらせることはできなかったという意味では「やられた」という感じもするラウンドでした。
つづく第6ラウンド、引きつづき打ち合いとなる試合。接近戦で根性を見せるタパレスさんですが、井上さんも一気に仕留める動きではなく、もう一度相手をしっかり崩していこうという意識で、少し距離が取りつつ正確で強いパンチをガードの隙間に通していきます。いや、通るはずのない隙間が、パンチの強さで広がってしまうというべきか。タパレスさんとしては、パンチを出さねばガードをこじ開けられてジリ貧、でもパンチを出せば動いた隙を連打で突かれるということで、ちょっとどうしたらいいのかわからない様子です。
第7ラウンド、タパレスさんは再びL字ガードの構えに転じると、ここまであまり打ってこなかった右のジャブで井上さんの顔を跳ね上げる場面を作ります。ならばと井上さんも顔を突き出して「打って来い」という誘いも見せますが、タパレスさんは無理はせず、丁寧にジャブを突いてきます。互いに動きが乏しくなったことで、もしかしたらこの試合で始めてタパレスさんのラウンドと言える攻防になったかもしれません。
↓ラウンド間にはタパレスさんがトップバリュの天然水で水分補給する姿も見られました!
【トップバリュ】井上尚弥にKO負けのタパレス SNS上で”水”が注目集めるhttps://t.co/7PV3ess3GX
— ライブドアニュース (@livedoornews) December 26, 2023
タパレスが口にしていたのは、イオンのプライベートブランド「トップバリュ」の水。SNS上では「タパレスの陣営の水イオントップバリュじゃね」「個人的にツボ」など話題となった。
中盤から終盤へ差し掛かる第8ラウンド、L字ガードで頭を遠くに置くタパレスさんに対して、井上さんは右を伸ばしていきます。回り込みながら身体ごと飛び込むような井上さんの右フックは、当たれば一撃もありそうな勢いのもの。それを何とか左のガードで受けて耐えるタパレスさん。タパレスさんはようやく「この形ならば」という活路を見出した感もありますが、あとはどこまで「一撃で終わる」攻勢に耐えていけるかといったところ。
第9ラウンド、懸命に攻撃を仕掛けるタパレスさんですが、井上さんもしっかりパンチを返していき、互いに譲らぬ攻防となります。ただ、タパレスさんのパンチが当たっても井上さんは平然としているのに対して、井上さんのパンチが当たるとタパレスさんはロープまで押し下げられる場面が目立ちます。これは下がってパンチを殺しているのか、あるいは飛ばされているのか。その答えが明らかになるのは次の第10ラウンドでした。
迎えた第10ラウンド、タパレスさんはL字ガードでの後傾の構えを止めて、前に出てきました。勝とうと思えばそうせざるを得ない、背水の攻勢です。しかし、それはもはや最後のチカラだったかもしれません。ラウンド開始から50秒頃、井上さんの右ストレートがタパレスさんをとらえると、ものすごく効いたという見た目ではないのに、タパレスさんがその場に崩れ落ちたのです。あるいはテンプルのあたりの急所にパンチが突き刺さったでしょうか、タパレスさんはそのまま立ち上がれません。「勝った」というよりは「え?終わったの?」と驚くような決着。最後は勝った本人も見守る会場もちょっとびっくりしつつ、井上さんが10ラウンドTKO勝利で、スーパー・バンタム級統一です!
↓あっさりと、簡単に、ボクシング史上2人目となる「2階級での4団体統一」を最速達成!
INOUE. UNDISPUTED X2 🏆🏆#InoueTapales pic.twitter.com/a19tJaf0Fi
— Sky Sports Boxing (@SkySportsBoxing) December 26, 2023
スーパー・バンタムでまだ2戦しかしていないのにベルトは4本!
計算も合わなくなるモンスターの強さ!
「やる前から勝つと思っていた」と「あ、最後それで決まったんだ」の合わせ技で、ドーンと大熱狂というよりはポカーンと鎮まるかのような場内。その雰囲気は、ここが頂点ではないという認識を、本人だけでなくファンも世間も持っていることを示すかのようでした。ボクシング史上2人目の偉業達成でも、それを誰も奇跡と呼ばず、誰も驚いていないというこの凄み。もはや井上さんが世間を驚かせるのは「負けたとき」しかないかもしれません。何を成し遂げても不思議はない、そんな圧巻の強さでした。
さぁ、スーパー・バンタム級を非常にスムーズに統一できたことで、夢は順調に広がりました。今の適正階級はスーパー・バンタムということで、当面はここに留まることを表明した井上さんですが、30歳という年齢はボクサーとしてはまだまだ全盛期で、まだまだ残された時間はあります。遠回りになれば数年掛かってもおかしくはない階級統一をわずか1年で成し遂げられたのは、井上さんの時間をロスしなかったという意味で、世界のボクシング界にとっても幸運でした。この先、さらに身体も強さも大きくなっていった先に、ボクシング史上初の3階級統一、6階級制覇といった夢があるかもしれない。それをするだけの時間がまだまだ残されている。そんな夢を思いながら、モンスターの行く末を見守っていきたいもの。
近年は興行面からの要請か、正規王者だの暫定王者だのスーパー王者だのと王者の乱立で「誰が強いのか」がわからなくなっていたボクシング界隈ですが、井上さんの示した価値観によって真の強者とはどういうものか、再認識できた思いがします。より強い相手を求め、より強い相手と戦い、その結果として階級を統一しまう。それでこそ真の強者なのだ、そう思います。今後も強者VS強者の美しい戦いを見られるよう、強くて勇敢で品位のある挑戦者の登場に期待したいもの。このモンスターを恐れず、正々堂々立ち向かっていける挑戦者をお待ちしております!
↓ちなみに、本人による振り返りとしては、意外とパンチ当てられなかったとのことでした!意外と!
↓どこぞの悪そうなヤツが日本に来たがっているようですが、先に4団体で1位を統一とかしてから来てほしいですね!
NOS VEMOS EN JAPON
— PANTERA (@luisnerynp) December 26, 2023
🇲🇽 vs 🇯🇵 🏆🏆🏆🏆 https://t.co/sO1UJoQLV5
井上さんがぶっ飛ばしたいなら止めはしませんが、契約はしっかりお願いします!
気分的には、前払いで5億円くらい保証金払わせたい気持ちです!
試合やるって言っておいて逃げられても困りますし!
5万人集めた大興行で「対戦相手逃げたわ…」は絶対避けたいですからね!
個人的に、井上選手との試合でネリがお金儲けるのはめちゃくちゃ嫌だなと思います!