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この日に向かう一年の最後の2日間で大逆転!

皆さま、あけましておめでとうございます。2024年は元日から天災や大きな事故がつづき、明るさいっぱいで始まった年にはなりませんでしたが、それでもまた新しい年を迎えられたことを喜ぼうと思います。嬉しいことも、楽しいことも、悲しいことも、辛いことも、常にそこにあるものです。それぞれの立場で見えるものは異なるでしょうが、そんななかでも、どんななかでも、自分なりに前向きに過ごしていければいいなと思います。そんな世のなかであればいいなと思います。

一昨日・昨日・今日とニュースで「影響が広がっている」という言葉をたくさん聞きました。事故の影響で飛行機が飛べなかった、みたいな話です。しかし、それもとらえ方だなと思います。確かに事故で飛ばなくなった飛行機はあるのでしょうが、人々はただ影響を受けてただ困っていたわけではありませんでした。降りられる場所を探し、ほかの行き方を探し、ほかのやり方で行きたい場所へ行けるようにそれぞれで取り組んでいました。それはたくさんの人が困っている姿ではなく、みんなで痛みを分け合うように、吸収するように協力している姿だと感じました。大きな出来事の痛みを薄く広げて、堪えていくような姿だなと。

元日に起きた能登半島地震のあともそうでした。被災地へは助けと祈りを届けつつ、今まさに困っているわけではない人たちは自分の暮らしを淡々と守ることで、むしろ頑張ることで、その痛みを薄く広げて分け合うように過ごしていたように思います。「こんなときなのに」ではなく「こんなときだからこそ」と。楽しいことも笑えることも、できるのならばしっかりやろうと。前よりも少し、世のなかがたくましくなったような気がしました。もしかしたらこの4年間ほど「自粛って何だろう?」と考えてきた答えが、それぞれを少したくましくしたのかなと思ったりもしました。

迎えた1月2日・3日、能登半島地震の翌日というタイミングではありましたが、むしろ翌日だからこそ、しっかりと東京箱根間往復大学駅伝競走すなわち「箱根駅伝」は行なわれました。選手・関係者たちは感謝の心を抱いてしっかりと走りました。僕はそれをテレビで遠くから見ていただけでしたが、ほの暗い気持ちを乗り越えて、よーし頑張ろうという気持ちにさせてもらいました。誰かが頑張る姿は、誰かに伝わります。心を動かします。それこそが真に「影響が広がっている」と言うべき事象だと僕は思います。このいい影響が日本に広がって、2024年も元気に走っていければいいなと思いました!

↓優勝は往路・総合で新記録を樹立した青山学院大学でした!

青学創立150周年!

箱根駅伝節目の第100回!

ここで勝つことにフォーカスしてきましたね!



「また青学か」「しかも独走」「つまんね」みたいな声もSNSでは散見されました。なるほど、確かに1年ぶりにこの2日間だけを見れば、そういう感想になるのかもしれません。競り合い、アクシデント、そういったものはない、圧倒的独走と言ってもいいような勝利でした。しかし、それはこの1年間の最後の2日間、2時間の映画で言えば最後の1分にも満たない程度の時間についてだけの感想です。

この1年間、下馬評は「駒澤1強」でした。昨年度の大学駅伝三冠達成ののち、今年度も出雲・全日本と勝利し、「2年連続の三冠」へと評判は高まる一方でした。実際にその下馬評に違わぬ強いチームだったと思います。記録を振り返ってみても、1区の区間賞に始まり、区間順位で1位、2位、2位、6位、3位、12位、4位、4位、5位、4位ですからまったく悪くありません。総合タイムも10時間48分00秒という例年の優勝タイムを上回る見事なものでした。優勝していても何の不思議もない、例年なら勝っていたであろう、よくまとまった素晴らしいチームでした。

駒澤1強と呼ばれるほどのチームが、実際に本番でもしっかりとチカラを出したのに、なおそれを上回るほどの走りを見せた青学がただただ凄かった。実際に走り出すまでこうなるとは思っていませんでした。当日、レースが始まってからでさえも、1区で駒澤の篠原さんが区間賞、青学の荒巻さんが苦しそうな走りで9位となったときに「駒澤1強」と再確認したほどでした。そこからまさかこんなレースになるだなんて。これは決して青学の独走などではなく、1年かけての「大逆転劇」と言うべき勝利だったと思います。

特に大きなポイントだったのは3区でした。駒澤は、今年度の出雲・全日本でいずれも区間賞を獲得した佐藤圭汰さんを送り込んでいました。佐藤さんは昨年の箱根駅伝には出場していないものの、洛南高時代には1500メートル・3000メートル・5000メートルの高校日本記録を更新するなど、「世界」を含めた大きな期待を受けて駒大へと進んできた選手です。入学以来5レースの大学三大駅伝で「出雲1位、全日本2位、箱根欠場、出雲1位、全日本1位」と素晴らしい成績を残してきました。一方、青学が3区に送り込んだ太田蒼生さんは、箱根専用機と言ってもいいような強さを「箱根で」見せるタイプで、3年間の大学生活における大学三大駅伝の成績も「出雲欠場、全日本欠場、箱根2位、出雲欠場、全日本欠場、箱根2位、出雲欠場、全日本7位」というもの。対極的な走りっぷりです。

その両者が織りなしたデッドヒートは、「駒澤1強」の壁を打ち砕くものでした。戸塚中継所でタスキを受け取った時点では両者の差は22秒。駒澤としては、エースの投入で1分から2分へと差を広げたいはずの区間です。しかし、青学・太田さんはかなり早いペースで前を追い、最初の5キロで10秒ほどを詰めると、8キロ手前では前を行く佐藤さんに追いつきます。佐藤さんは後ろを振り返り、自分の真後ろにいる太田さんを嫌がってか左右に蛇行しますが、もちろん太田さんはその動きについていきます。サングラスで太田さんの表情はうかがえませんが、虎視眈々、そんな感じです。

ひと息入れつつライバルの様子をうかがった太田さんは、14キロ手前で前に出ると、意地を見せる佐藤さんと抜きつ抜かれつのデッドヒートに。追ってきた側のほうが苦しいはずですが、太田さんは抜き返されてもひるまず、何度も勝負を仕掛け、最後は残り3キロ付近でサングラスを外したのを合図にロングスパートを仕掛けて、佐藤さんを突き放して区間賞。太田さんはあの東京国際大のヴィンセントさんが96回大会で出した59分25秒に次ぐ歴代2位の好タイムでのゴールとなりました。

ただ、太田さんも素晴らしかったけれど、佐藤さんもそれに次ぐ歴代3位という好タイムでのゴールでした。個人タイムでは太田さんと佐藤さんの差は26秒差しかなく、4区につないだ時点では両校の差はわずか4秒差。まだまったく勝負はわからない段階でした。しかし、「勝って突き放すはずのエースが逆転された」という出来事は大きなショックを駒澤に与えた模様。笑顔でゴールした太田さんとは対照的に、佐藤さんはゴール後にぐったりとうな垂れ、取材も体調不良で切り上げたといいます。レース中にも足を滑らせるような動きが何度か見られており、執拗な追走で心と身体を削られていたようでした。それはまさに「駒澤」が感じていたショックを示すような動きだったなと思います。決して悪い走りではないのに、むしろ歴代でも素晴らしいほうの走りなのに、「上手くいっていないぞ」と思わせてしまうような。

↓学生最高ランナーと、箱根に愛された男の対決!


「駒澤」のショックを青学は見逃しませんでした。4区でタスキを受けた青学・佐藤一世さんは、中継所では4秒だった差を入りの1キロほどで一気に15秒ほどにまで広げてきました。これで走者の後ろに監督車が入り、姿が見えにくくなります。先頭で走れば、前は大きな中継車がいることで風除けにもなります。そして何より、「自分たちが1位、相手が2位」ということが明確になります。サッカーでよく見られる「1点取った直後に、相手が動揺している間にもう1点取る」というような勝負勘のある入りでした。逆に言えば、駒澤は意地でもついていきたい場面でした。「負けた?」という動揺がおさまり、「いやいや」と思い直すまで絶対に離されたくない場面だったなと思います。

往路に主力メンバーを固めた駒澤を、さらに上回る走りで破った青学は、2区・3区・4区の連続区間賞でリードを築き、そのまま往路新記録で芦ノ湖に到達しました。駒澤も見事な往路新記録でしたが、その姿は敗れた側のそれでした。主力を固めて往路で勝つ、そんな駒澤のゲームプランを完全に崩したことは、復路の行く末も含めて決めてしまうような勝利でした。

↓「前半勝利」「初日勝利」以上に大きな意味があった青学の往路優勝!笑顔でゴール!


↓5区では「山の神」「山の妖精」などにつづいて「山の名探偵」も登場!

名前が工藤慎作さんで、メガネが黒縁で「コナンっぽいなぁ」と思ったら、みんなそう思ってたみたいでスッキリしました!

「犯人を追う」ときはコナンも足速いですからね!謎の靴のチカラで!



復路に入っても青学は勝負所で強かった。もし駒澤が復路で逆転するのならば、(アクシデントでもない限りは)6区で追いつくか最低でも差を大きく詰めておきたいところ。相手が見えない状態で追いかけるのでは、前もマイペースが崩れませんし、追う側も頑張りきれません。しかし、その6区で区間2位の好走を見せた青学と、コンディションの関係で本来想定していたメンバーを起用できず区間12位とした駒澤とで、逆に差は広がりました。

こうなれば先頭の青学は元気に楽しく自分の走りをするだけ。この日も8区・9区で区間賞とし、大崩れもなくゴールした青学は、復路新記録こそならなかったものの、総合新記録となる10時間41分25秒でゴール。「駒澤1強」の壁を越え、歴代記録の壁を越え、見事に第100回の記念大会を制しました。速過ぎる青学の余波で、復路スタートでは異例の16校が繰り上げとなり、さらに10区鶴見中継所でも4校が一斉に繰り上げスタートとなったりもしましたが、駒澤が高くて固い壁だったがゆえに、それを超えるための最高の仕上げをしてきたらこうなった…そんな「大逆転劇」だったかなと思います。1年かけて最後に抜いてドーンと弾けた、鮮やかな差し切り勝ちでした!

↓「タスキをしっかり直して」「笑顔でゴール」するように、との指示も飛んだ美しいゴール!


↓青学・駒澤の激突につづいて、城西大学が総合3位フィニッシュの快挙!


↓シード権争いでは9年ぶりに大東文化大がシード権獲得!優勝候補の一角とも言われた中央大は一斉体調不良で悔しい13位!

中央大の一斉体調不良はノーカンだと思いますね!

「進退」とか言わずに再挑戦してもらいたい!



結果はそれぞれ悲喜こもごもかなと思いますが、レースを見守って思うのは、この舞台を懸命に走れること、この舞台を目指せることは幸せだなということ。勝って嬉しい、負けて悔しい、チカラを出し切れて満足、チカラを出せずに後悔、いろいろな感情はあると思いますが、どんな形であれ、この日に向かって一生懸命生きてきたことの素晴らしさは変わりません。明日はないかもしれない人生を、一生懸命に生きて目指した日にたどりついたのですから、ぜひその日々を誇ってほしいなと思います。今日という結果をつかめたこと、たどりついたことを喜んでほしいなと思います。

青学の原監督や城西大の櫛部監督が、ゴールに向かう走者に「笑顔でゴールしよう」と呼び掛けていたのが印象的でした。もちろんいい結果を出した上位校なので、何もなくても嬉しくて笑顔になるのでしょうが、この日の記録である写真や映像が笑顔で残っていることはやっぱり素敵なことだと思います。絶対に笑顔で残したほうがいい、そう思います。

走っていれば当然身体が苦しいのでついつい顔も歪んでしまうもの。しかし、心は楽しく素晴らしい時間を過ごしたはずです。であればしっかり笑顔で記録しよう、そこまでしっかりプレーしよう、そうしたほうがきっといい、そんな未来を見据えた声掛けだなと思いました。その笑顔は、自分をこの先もずっと支えてくれる、自分の味方になる笑顔だろうな、そう思いました。

「笑顔で終わるぞー」
「かっこよく映ってるぞ、いいぞー!」
「駆け抜けろー笑顔で!」
「一生残るぞ!」

櫛部監督の声を受けて、泣きながら走る走者を見ていると、ランナーに限らず、誰もが、どんな日もそうやって、一生懸命笑顔で生きていったほうがいいなと思いました。苦しい日もあるでしょうが、苦しさと向き合って節目を迎えたときには、そこまでの道のりを自分で讃えてあげるように、やっぱり笑顔がいいなと。ちょっと無理していても笑顔を作れるような、そんな日々を重ねていきたいなと思いました。だって、昨日も、今日も、明日も、一生残る一日のひとつずつなのですから。

一年の計は箱根にあり。

若者たちの頑張りを見ると、正月が終わった気がします。

自分もそろそろ何かやらねば、と思います。

なるべく笑顔で、できるだけ楽しく、やっていきたいなと思います。

世のなかにはいろいろありますが、頑張って笑顔で生きていきたいものですね。

改めまして、2024年、あけましておめでとうございます!

↓一生残る、いい写真が撮れましたね!おめでとう!


↓素晴らしい思い出はずっと自分を支えてくれる、そう思います!


思い出は、誰かを熱くする!

そして思い出は、自分も熱くしてくれる!


1月4日・5日は自分に鞭打って昨年の残務整理に臨む所存であります!