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またしても名演目が誕生したようです!

やって来ました故郷へ。幼少のみぎりに数年住んだことがあるだけの土地をして「故郷」などと言うのは一般論では若干微妙かもしれませんが、故郷とは心が決めるもの。いつかそこに帰ると心が決めればそれでいいのです。その意味で僕の故郷は断固宮城県仙台市です(←3年くらい住んでたぞ)。両親はここには住んでいませんし、僕の家や墓もありませんが心は故郷だと言っている、ならば問題ない。大きな声で「ただいま」と言おうではありませんか。

↓ただいま仙台!おかえり仙台!
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金曜日は珍しく給料泥棒にも大量のお仕事が舞い込み、事前の予習などがまったくできずに現地入りした「羽生結弦 notte stellata 2024」。入り時間も「午前10時は早朝扱い」「昼の12時がスタート時間」「待ち合わせの約束を守れるのは午後14時以降」という認識で生きている僕ですのでいたってノンビリしたもの。剛の者は宮城の小高い丘の上にあるスタジアムで12時から始まるリハーサルを当日現地入りで見ることもできるそうですが、僕は16時の開演に間に合うかどうかがギリというスロースタートで馳せ参じました。会場でのお楽しみは後日として、サッと全体を眺めただけでもう開場時間という具合です。早速入場の列に並んで僕も会場にインします。

↓入場時に演出とシンクロして光るライトをもらいました!
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↓いつも通り、開演前にリンクを記念撮影します!

チケット取りで後手を踏んだこともあって、座席は注釈オブ注釈席といったあたり。率直に言えばステージ上のモニターはまったく見えません。もしそこに重要なヒントとかクイズとかが投影されていた場合、僕はまったくそれを把握しないまま演技を見守る感じになっていることでしょう。まぁ、RE_PRAYでは「宙づりのランタンがスクリーンに被ってたら注釈席」みたいな采配の座長さんですので、スクリーンは見えなきゃ見ないで大丈夫な感じなのでしょう。

逆に、むしろ、スクリーンが見えない角度だからこそと言いますか、これからリンクインしようとする選手たちの登場がこれ以上ないほどの間近で見守ることができる位置取りでもあります。会場でよくある「遠いし暗いし全然見えないけど誰かがキャーと言っているから羽生氏が出てきたんだろうなぁ」と思う、あのキャーのポジションに自分が入ったのです。大地真央さんが登場するであろうステージ上のパフォーマンスは、まさに目の前で行なわれそうな感触。悪くない、むしろイイ。「注釈付き神席」と呼びたいくらいです。

ここ半年ばかりはアイスストーリーに集中していたため、「おなじみのアイスショー」を見るのは随分久しぶりな感じもします。空間すべてをレーザービームが飛び回ってリンク上には常にストーリー映像がプロジェクションマッピングで表示されるみたいな環境に適応していたためか、「おなじみのアイスショー」は何だかとても新鮮な感じがします。ストーリー映像からではなく、普通に羽生氏の登場から始まる感覚も懐かしい。まずはこの公演と同じ名前、共通するテーマの「notte stellata」からスタート。この地で起きた出来事と、流れてきた13年の年月と、希望を見出しながら進んできた人々に思いを馳せ、少し背筋を伸ばします。

この公演のことを思って生み出されたオープニング曲「Twinkling Stars of Hope」に乗せて旧知のスケーターたちが集うさまも、唯一無二の孤高のなかにあったアイスストーリーとは別の味わいがあっていいものです。そして彼らがリンクサイドで気合を入れたりちょっとだけワチャワチャしたりするところを見られる位置取りも非常にいい。昨年は痛切さを強く滲ませていた羽生座長も、この13年という時間を「新たな生命が生まれ」「自分たちも1秒1秒を過ごしてきた」と評し、あの日からの時間を前向きにとらえ直している様子です。「勇気や希望や困難に立ち向かう強さ」を届けたいと祈りを捧げ、ショーは動き出します。

↓出ている人が楽しそうなショーは、見ている人もきっと楽しい!


仙台市生まれの本郷理華さんの演技を皮切りに、出演スケーターたちがそれぞれの個性を輝かせていく舞台。スケートとフラフープを融合させた個性的なパフォーマンスを見せるビオレッタ・アファナシバさんも昨年につづいて登場してくれました。最近何を見ても「もしやコレは次のアイスストーリーのヒントになるのでは…?」と思ってしまう傾向があるのですが、あるいは?と思いましよね。「今度のアイスストーリーのテーマは自分も大好きなけん玉を中心に、思い通りにならない人生とフラフープや中国ゴマなどのジャグリングを重ね合わせて…」みたいな話だって絶対にナイとは言えません。ゲームでイケるんだからけん玉だってイケる。もはやどんな可能性もゼロとは言えないのがアイスストーリーです。6分間練習からのけん玉、とかめちゃくちゃ緊張感高そうで、想像しただけで震えましたね(←6分間練習したあとで落とすのはただ落とすより厳しい)。

そして、予感と言う観点でもド級のインパクトを与えてくれたのが第1部のクライマックスとして演じられた大地真央さんとのコラボレーションプログラム、その楽曲は何と「カルミナ・ブラーナ」です。ステージ上に一瞬現れた大地真央さんが演じるのは運命の女神フォルトゥーナでしょうか。だとするとリンク上の羽生氏は運命に翻弄される人間ということか。演技冒頭、舞踏会のように優雅に踊る羽生氏は幸せを謳歌するかのようですが、運命の女神はそれを許しません。女神の登場とともに羽生氏は操られ、逃走を図ろうとするも引き戻され、女神の指図のままに手足さえ操られます。完全に動きがリンクした両者のパフォーマンスを一度に見るのはなかなかに大変ですが、それだけにかつてない新鮮な驚きがある構成です。羽生氏が背中向きでも動きが合っているのは「大地さんが調整して合わせているのか」「ふたりが音楽にビタビタに合わせているのか」あとで聞いてみたいような美しいシンクロでした。

やがて羽生氏は見えない壁に取り囲まれたかのような動きを見せます。ドンドンと壁を叩き、頭を抱え、うなだれ、嘆き、尻込みし、這いつくばって女神から逃れようとする動きも。しかし、運命とは逆らい抗うだけのものではないということでしょうか。いつしかふたりのリンク具合が女神に操られるのではなく促されるような動きに変化していくと、女神自体も黒の衣装から白の衣装へと装いを変え、まるで悪魔から天使に変貌を遂げたかのように雰囲気が変わります。羽生氏は白い女神のもとに駆け寄ると、ステージにのばり、女神と寄り添ってフィナーレを迎えました。意味は咀嚼し切れてはいませんが、思い通りにはならない運命を知りつつも、それに向き合って寄り添って生きていくなかで自ら選び取る真の運命というものを見つけ出す…みたいな受け止め方をしたいなと思いました。運命にはどうしても翻弄はされるのだけれど、運命が導く先にきっと希望はある、そんなメッセージだったりするのかなと。

2022年のファンタジー・オン・アイスで「ノートルダムの鐘」を演じた際は冒頭にステージ上での演技をチラリと見せた羽生氏ですが、この日は演目のラストにチラリとステージ上での演技を見せました。大地真央さんをお呼びして同じ板の上に立つというのは、羽生氏の心情からすると相当の覚悟を持って行なった演出と思われますが、そういう覚悟を背負うのが当たり前というか、これから自分がやろうとしていることを考えたときに「その場所」を避けてはいられないというところもあるのかなと思います。自分はあくまでスケーターであり、スケートだから成立することをやってはいるのだけれど、自分も観衆もスケート以外の素晴らしいものも知っているという事実と向き合っていくというか。さらなる次元を求めていくというか。RE_PRAYでもコンテンポラリーダンス的な動きは取り入れていたわけですし。

もしもそういった段階に踏み込んでいくのであれば、成果の発表の場となるであろうアイスストーリーにはさらなる広がりも生まれるのでしょう。オーケストラやイレブンプレイさんがそこにいたのと同じように陸上のパフォーマーもいて、陸上のパフォーマンスも行なうような構成ならば、さらに描ける世界が広がるのは必然です。ミュージカルがここぞで歌う舞台だとすれば、「ここぞで滑る舞台」というのもあり得るのかもしれないなと思いました。たとえば「三国志」をひとりで演じるというのはかなり難しい気もしますが(←劉備:羽生結弦、曹操:羽生結弦、孫権:羽生結弦、だともはや誰が誰やら)、そういった物語を生み出すこともやれそうな気がしてきますよね!

↓言葉では理解が追いついていませんが、何かすごいものが生まれた瞬間を見た気がします!

「中世の絵画です」と言われても納得の見場!

立ち姿もキレイです!



衝撃の余韻に包まれたまま迎えた第2部は、一転して楽しい雰囲気。後半最初の演目はBTSの「Permission to Dance」から。踊ることに許可なんていらない、音楽に動かされるままに踊ろう、誰も僕たちを止められない、そんな楽曲はある意味で第1部からつながっているのかもしれません。運命の女神と寄り添ったことで、今この瞬間の一期一会を大切にできる自分になったような感じで。羽生氏は映像で表示される陸上ダンスの担当でしたが、昨年の例から言うと「最終日には映像担当の方がリンク上にドーンと出てくる」パターンを期待したいところですので、10日公演に向けてしっかり予習を重ねておきたいところです。

そして、この公演のなかでもとりわけ楽しい時間となったのが、無良崇人さんと田中刑事さんの男子ペアが送る「サタデー・ナイト・フィーバー」でした。ビージーズの「Stayin' Alive」などに乗せてまさに土曜日の夜にハイになって踊るなんてのは楽しくないわけがない。普段は男女ペアでの滑りを見る機会が多いフィギュアスケートですが「野郎ふたり」ってのもイイもの。ふたりがまさにサタデー・ナイト・フィーバーのような振り付けで踊るくだりは、何ならコチラも一緒に踊りたいくらいでした。

しかもそれでいて、この演目もまた「notte stellata」的なメッセージを抱いていそうなのも素敵です。「Stayin' Alive」=「まだ生きている」の背後には、「Feel the city breaking and everybody
shaking, people」「Life’s goin’nowhere, somebody help me」といった一節があり、原曲のミュージックビデオはまるで廃墟のような街角で歌われています。この明るさは生きる強さであり、生きていくことに迫られるからこその笑いでもあるのかなと思いました。「それでも生きていく」的な。楽しくて、この日にマッチした、いい演目でした。踊るヒット賞あげます!

さらにつづくエンターテインメントの時間。何ともはやアイスショーの枠組みからハミ出してしまうかもしれませんが「稀代のスター大地真央が一流エンターテインメントをお届けします」というハードルの高さ限界突破みたいな前振りで大地さんが現れると、歌と踊りのステージが始まったではありませんか。もちろんスケーターは誰もリンクにおらず、純粋に大地真央さんのチームによるステージです。先ほどは女神役だったものが男役に転じて宝塚歌劇団の「運命よ、今夜は女神らしく」を歌い、さらに自身も主演をつとめたミュージカル「エニシング・ゴーズ」から表題曲を披露するという贅沢な時間。運命に明るく向き合っていくようなテーマの一貫性も含めて、とても印象的なステージでした。アイスショー参加のつもりが本物の歌劇を見る機会まで得られるなんて、ゴージャスで、エンターテインメントで、すごくお得な気分になりました。

やがて公演はクライマックスへ。大トリをつとめるのはもちろん羽生座長。披露したのは新演目「Danny Boy」でした。曲は誰もが一度は聞いたことがあるだろう有名なものですが、羽生氏の文脈としては「おげんさんのサブスク堂」に出演したときに星野源さんから紹介された曲、というところが背景にはあるでしょうか。「これいい曲なんだよ」「今度聴いてみて」「すごくよかったので演じてみました」なんて展開だったとしたら、瓶のなかにラブレター入れて海に流してるみたいなやり取り(※愛を見つけてほしい的な感じ)にキュンキュンしてきますが、はたして。

別れた相手(息子、あるいは恋人や家族もしくは誰でも)を思いながら待つ人の心情に寄り添ったこの楽曲もまた「notte stellata」的なもの。ジャンプの着氷後すぐに静止してみたり、とても小さな弧でハイドロブレーディングを組み込んだり、長く長くつづくツイズルであったり、アップライトで長く回るスピンであったり、おなじみの表現とは違った装いを見せながら、羽生氏はこの楽曲をしめやかに演じていきます。この公演だからこその重たいテーマを抱いている演目であるだろうと思いつつ、それを穏やかに包み込むような優しい楽曲なのがありがたい。もともと知っている曲であるのに、改めて噛み締めるとこんなに素敵な曲だったのかと思う時間です。

あぁ、この演目は何度も演じられることになるだろうものだ、まだ初見ですがそう思いました。またひとつ名演目が生まれたなと。この地で別れた人がすべてもう一度出会える日がいつか訪れてほしい、そんな切ない祈りを捧げる演目になるだろうと思いました。希望を見出すとかではなく、頑張るとかではなく、待つことだけが遺された人の想いにも心を配る演目だと思いました。時が経つほどに置き去りになっていく想いを汲み取ることができるかもしれない演目だなと…。人の出会いが曲を運び、それがまた新たな名演目になるなんて、いい話過ぎて「早くもう一回サブスク堂に出演するんじゃ…」「松重さんのお気に入り曲も一応聴くんじゃぞ…」「毎回サブスク堂で次のアイスストーリーを匂わせる流れでもいいぞ…」と、口調まで息子の帰りを待つジジイみたいになりますよね(※息子いないけど)。

↓いい曲過ぎて「胸元グァパァッ!」とか騒ぐ隙がありませんでした!

「開いてた?」と思って写真見たらやっぱり開いてました!

そのままサタデー・ナイト・フィーバーに参加してもよさそう!



充実の時間を終えてショーはフィナーレへ。MISIAさんの「希望のうた」に乗せて出演スケーターが思い思いのカラフルな衣装で集うと、配られたシンクロライトは虹のように次々に色を変えながらビッカビカに輝きます。このライトが希望の星の光と思って公演中も「星」を演じていた僕ですが、この瞬間は美しい虹にでもなったような気分でした。心に残るいいショーだった…そんな充実感でいっぱいです。

最後は楽しくLittle Glee Monsterさんの「世界はあなたに笑いかけている」に乗せてスケーターがリンクを巡り、大地さんたちはステージでそれを見守り、心をひとつにショーを締めくくります。ちょっとジャンプ大会みたいな雰囲気もあって、ソロ公演以外のショーもいいなと思いました。最後の「\ありがとうございました!/」も出演者全員で言えるので、いつもより大音量でいけますしね。こちらこそ素敵な時間をありがとうございました!10日公演もよろしくお願いします!

↓帰りのバスを待つ間にキレイな星空を見ました!

スマホのカメラって賢いですね!

冬の大三角形がハッキリ映るなんて!

左下のほうにある一番明るい星がteam Siriusでおなじみのシリウスです!


10日公演も参加します!今年こそ三角形の油揚げを食べたいです!