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フォーミュラEを見てきました!

本日はお出掛けの記録です。スタートから10年を経て、今やF1などと並ぶ「世界選手権」の格付けにステップアップした電気自動車によるレース「フォーミュラE」の東京e-プリを見てきたのです。ちなみにe-プリ(e-PRIX)というのは要するに「グランプリ」のことです。今日は聞きなれない用語がつづくかもしれませんが、気にしないでいきますよ!

フォーミュラEは電気自動車によるレースということで、F1のようないわゆるモータースポーツのイメージとは少し異なるところがあります。まず電気自動車であること(当たり前だが…)。エンジンはなくモーターと電池で動くことから音は静かで排気ガスが出ないこと。「あの爆音がいいんじゃ」という人からすると魅力減ではあるのですが、そのぶん環境への負荷が小さく、市街地での開催もしやすいというのがウリなのです。

そこを打ち出そうとロンドンやベルリン、ローマなど各国の大都市で開催実績を積み上げており、このたびついに東京でも開催の運びとなった次第。「鈴鹿…富士…もてぎ…遠いな…」という出不精にとって電車1本で行ける場所でモータースポーツの世界選手権が行なわれるなんて夢のような話です。来週鈴鹿でF1日本GPをやるわけですが、地元でレースがあるならフォーミュラEでいいじゃない(※ウーバーイーツの声で)ってな具合です。

↓会場は東京ビッグサイトの裏手の道路と駐車場です!
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開催前、僕はちょっと舐めていました。来週鈴鹿でF1をやるタイミングでもありますし、そもそもフォーミュラEを真剣に見ている人は関係者を除くと日本に1000人くらいしかいないんじゃないかと踏んでいましたし、外国からの遠征客もそんなに来ないだろうと思っていましたし、チケットは申込さえすれば必中当確だろうと甘く考えていたのです。しかし、当たらないこと当たらないこと。

先行抽選では最低でも万超えのチケットが大落選祭りとなり、SNSでは当たっている人の声を見つけるのが困難なほどでした。さらに先着順の追加販売では「秒」でチケットが消滅する始末。運よく「誰かがミスって再度売場に戻ったチケット」をゲットすることができましたが、あまりの取れなさぶりから「ははーん?全部海外にバラまいたな?」とか「ははーん?関係者だけで分けたな?」とか「ははーん?座席1000席くらいしかないんだな?」と訝しんでいたほど。告知も全然されませんでしたし、フタをあけたら現地に人がいないんじゃないかくらいに思っていたものです。

しかし、いざ現地を訪れるとそこにはたくさんのモータースポーツファンとインバウンド観光客の姿が。コミケ並みのスペースに展開されたファンゾーン(※入場無料)にはたくさんの人が詰めかけていますし、コースにも多くのファンが集まっています。ホンダのシャツを着ている人の割合が高いのは若干気になりましたが(※フォーミュラEに参戦しているのは日産)、見事な盛り上がりに自分の不明を恥じるばかりでした。日本にはモータースポーツファンがいたのです!(←いないと思ってたみたいで失礼)

大体の人数で言うと、自分の席が割り当てられたスタンドが約400席ありまして、そうしたブロックが24ブロックあり、決勝レースで見る限り席はしっかり埋まっていましたので、おそらく1万人くらいは観戦に来ていたのではないでしょうか。ほかに立見席チケットの方や無料のファンゾーンへの来訪者などもいますので、実際にはさらに大きな規模での盛り上がりだったはず(主催者発表は2万人とのこと)。いやー、お見それしました。

↓ドライバーののぼりが観衆を出迎えるグランドスタンドエリア!
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↓日産スタンドには母国e-プリを盛り上げる応援団の姿が!
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↓ビッグサイトの裏がまるでサーキットのようだ!
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↓本当に東京でレースをやるんですね!
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↓ちなみに、レースの紹介映像では東京タワーとか東京ドームとかをバンバン映していました!
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ドーム映すのは微妙にウソついてる感は拭えませんが、まぁ外国の人にはわかりゃしないでしょう!

ビッグサイトは千葉にあるわけじゃないんだし!

今回のレースは日本で初めての公道レース…つまり普通の道路を使って行なうレースです。F1のモナコGPを想像していただくとよいでしょう。街中を高速でマシンが疾走する夢空間レースです。「まぁモナコとはだいぶ違うが…」「周りにビッグサイトしかないから…」「全部ビッグサイトコーナーって呼ばれそう」とは思いますが、初回からいきなり銀座の交差点を時速300キロで走らせてくれるはずがありません。この一歩を大きな一歩とできるかは今回次第です。そのためにはこのレースに日本から唯一参戦している日産(ニッサン・フォーミュラEチーム)にはぜひとも頑張ってもらいたいところです。

まずは予選の観戦から。F1だと土曜予選・日曜決勝という流れですが、フォーミュラEはそのあたりもエコでコンパクトなので土曜日1日で予選も決勝も一気にやる流れです。最初に11チーム合計22台のマシンを半分ずつ2組に分けて競わせ、早いほうから4台ずつが準々決勝に勝ち上がります。準々決勝からは1対1のバトルとなり、2台が少し間隔を空けてスタートし、タイムが速かったほうが勝ち上がります。これをトップのひとりが決まるまでトーナメント形式で争うわけです。モータースポーツで「1対1の予選」というのは基本的にナイので、フォーミュラEならではの特徴となる部分です。

すると日産はカーナンバー22のオリバー・ローランドさんが予選グループAのトップタイムを叩き出し、その後のトーナメントも勝ち上がってポールポジションを獲得します。予選ファイナルでは「一度負けそうになって最後のセクションで逆転」という熱い展開もあり、母国の観衆も大盛り上がり。コース幅やレイアウトを見るに「そんなに抜ける場所がなさそう」だったりもするので、母国e-プリでポールトゥウィンなんて展開もあるんじゃないかと期待感も大きくなっていきます。

↓こちらポールポジション獲得の日産チーム・ローランドさんです!

予選後はしばし休憩となり、決勝レースへの準備を各自整えていきます。VIP客はスターティンググリッドあたりにいってVIP的なもてなしを受けているようですが、僕はそのチケットを持っておらず(チャンスもお金もなかった)指をくわえて見ていることに。そんななかやたらとVIP風を吹かせて、前後に黒塗りの警備車両までつけて乗り付けてきた輩がおるな…と思って見ておりましたら、何と岸田総理がやって来たではありませんか。電気自動車は国策ということか、あるいは「裏金問題にもスピード感を出す」的なアピールか。総理大臣まで来ちゃって、何だか急にすごいイベントな気がしてきました。とにかくここでいいアピールをすれば、次は銀座でやらせてくれるかもしれないぞと俄然ワクワクしてまいります。

迎えた決勝。決勝でもまたフォーミュラEならでの仕組みがあります。まずフォーミュラEではピットストップの機会は多くありません。タイヤは全天候型でレース中に交換したりはしませんし、給油…というか充電も現時点では行ないません(※電池容量より若干長い距離でレースを設定し、レース中の節約運転術を競うイメージ/今季後半からパワーアップのための充電ストップを導入予定)。初期にはバッテリー容量が足りな過ぎて「レース途中でクルマを乗り換える」という仕組みでやっていたりもしましたが、スタートしたら基本は走りっぱなしです(トラブルでもない限りは)。

そんななかで勝負のアクセントとなるのが「アタックモード」です。マリオカートのキノコと言えばわかりやすいかもしれませんが、決勝レースではモーターの出力を一時的に上げる仕組みがあるのです。ドライバーが定められた「アクティベーション・ゾーン」を通過すると、一時的に出力の上限が300kWから350kWに上昇し、これをレース中に合計8分間(2分+6分または4分+4分の2回に分けて使用する)まで使う義務があるのです。

「ほほー、キノコで抜くわけだな?」と思いがちですが、実はそうでもありません。アタックモード起動のためのアクティベーション・ゾーンは最速ラインを外れた外側に設置されており、そこを通過する際に大きくロスをするのです。そして、タイム以上に「ラインを開けることで後続に抜かれる」というデメリットが大きく、レースでは「義務付けられたアタックモードをいかに無難にやり過ごすか」という観点での駆け引きが展開されるのです。もしも後続を十分に引き離している、あるいは最後方なので抜かれようがなければ「今のうちにとっととアタックモードを消化してしまおう」なんて考えたりするという具合。それ以外にも、「アタックモードの出力増加分を燃費向上に使う」など、必ずしも「抜くため」だけに使う仕組みではないというのは面白くて難しいところです。

↓この画面奥のコーナーを曲がるときに外に膨らめばアタックモードに入れます!
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国歌独唱なども終えていよいよレースがスタート。スタート直後のトラブルなどはなく、全車無難に立ち上がります。コースが狭く抜きどころがないので、大きくポジションは変わらず数珠繋ぎのようになっています。ポールスタートの日産チーム・ローランドさんはトップを守り、順調に周回を重ねていきます。2位との差も1秒以上つけられたので、早めに2回のアタックモード消化義務もクリアできました。中盤までは非常に順調なレース運びです。

レース中盤にはクラッシュでセーフティカーが出る場面もありますが、大きな順位の変動はありません。ただ、これにより少し終盤に影響が。フォーミュラEではサッカーのアディショナルタイムのように、セーフティカーが出てしっかり走れなかったりしたぶんを「追加周回」で補うのです。このレースで言えば追加周回は2周。これが影響を与えたのでしょうか、先頭を行く日産・ローランドさんはレース終盤に意図的?な減速をして順位を下げてしまうのです。一旦ほかのマシンの後ろにつけて節約走行を狙う意図のようなのですが、はたして…!

↓赤の日産・ローランドさんは青のマセラティ・ギュンターさんと優勝争い!
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↓しかし、電池残量の問題などもあってか、ローランドさんは順位を下げることに!
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↓電気自動車であってもバトルは激しく、終盤はフロントが壊れたまま走るマシンなど各車耐える状況に!
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↓ていうか、こちらのマシンはフロントウィングごとなくなりました!
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最終盤、先頭に立ったギュンターさんは2回目のアタックモード消化義務も無難にやり過ごし、あとはゴールまで駆け抜けるだけ。ローランドさんはコース上で自力で抜くしか優勝への道はなく、最後までアタックをつづけますが、電池残量的にも前を行くギュンターさんのほうが余裕があり、捕まえることはできませんでした。日産・ローランドさんは惜しくも2位…ではありますが、まぁ、母国開催で2位表彰台は十分に喜ぶべき結果でしょう。母国開催で全車リタイアなんて話も珍しくはないわけですから。2位表彰台おめでとうございます&ありがとうございます、です。

レース終了後は大きな拍手に包まれた現地。大きなトラブルもなく、地元チームが活躍し、とてもハッピーな雰囲気です。観衆はファンゾーンにある表彰台ステージへと移動し、表彰式を見守ることに。僕もシャンパンファイトまでしっかりと見守ることができ、大満足の観戦となりました。そして、これが銀座とかでできたら…なんて夢もグンと広がりました。実現の道のりは遠いかもしれませんが、夢は夢として持っていてもいいだろうと思いますので、そんな日が来るのを楽しみにしたいと思います。いいレース、いい母国e-プリでした!

↓屋内での表彰式だったので、火花と煙が噴き出る派手な演出でした!
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↓日産チームは歓喜のガッツポーズ!
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↓観衆も大盛り上がりでハッピーエンド!
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↓ファンゾーンのイベントや現地の雰囲気などは動画でご覧ください!

一日で全部見られて、その日のうちに家に帰れるのは気楽でイイですね!