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面積は倍にする!お値段はそのまま!ごめんなさい!

その誠実さとこだわりから常に驚かされることの連続である羽生結弦氏プロデュース案件で、またしても身震いするような出来事が起きました。先だって惜しまれつつもツアーファイナルを迎えた羽生結弦アイスストーリー「RE_PRAY」に関するさまざまな解説をまとめた「オフィシャルプレイヤーズガイド(攻略本)」が2024年6月末に発売されるのですが、このたび僕を含めた注文済みのお客のもとに驚きのお詫びが届きました。何と、より内容を充実するために当初A5判を想定していたものを縦300ミリ×横225ミリ(A4変形判)に変更するというのです。しかも、ページの面積は倍になるのに、お値段はそのままであると。一体何をお詫びされているのか、ちょっとわからないですね!

↓サイズが大きくなったことへのお詫びメールをいただきました!

Sサイズで注文したピザがMサイズで届いた場合、ピザ屋はお詫びするだろうか…?

たぶんお詫びじゃなく「そのままお召し上がりください」って言いますよね…?

なので、お詫びはナシで大丈夫です!



僕も本など出したこともありますし、ときおり雑誌に寄稿させていただいたりもする経験から申し上げれば、このような決断は前代未聞と言いますか、世に例がないとまでは言わないものの「まずもってやらない」ことです。紙の本はWEBのように縦長に伸びていくわけではありません。人間が読みやすい文字のサイズはある程度決まっているわけで、面積が倍になったからと言って文字を倍に大きくするわけにもいきません。ページを増やすぶんには今あるページを活かして後ろにつづきを足すこともできますが、判型が変われば最低でも配置替えは発生します。基本的には「全ページ作り直し」になる、そういう変更です。

ストアからの案内によれば「編集過程でより内容を充実させるために」とありますので、ある程度制作には着手していたのでしょう。6月末発売だとすれば、印刷・加工〜配送に1ヶ月、内容と刷り上がりの校正作業を行なうのに1ヶ月、原稿と印刷データの制作に2ヶ月として、4月末時点ではおおよそ本の形(コピー本なら作れる程度)には仕上がっていてほしいところ。同人誌制作のように綱渡りの日程を組めばギリギリまで詰めることは可能ですが、少なくとも「作り始める前に判型変更を決めた」わけではないだろうと思います。変更を決めた時点でなるべく速やかにお知らせする運営さんだろうとも思いますし。

だとすると、これは大変な決断です。

大きな手戻りを含む、制作側全員に影響のある決断です。

とても言い出しづらく、受け入れられづらい決断です。

内容を充実させるためには手戻りも厭わない、という姿勢。手戻りしたところで儲かるわけでもなければ、品物の評価が変動するわけでもないのに、それでも決断した高潔さたるや。比較検討される対象があれば世情を見て「もうちょっとクオリティ上げないとアカンな」と思うこともあるでしょうが、「RE_PRAYの攻略本」は世界でその1冊しか出ないのです。何が載っていたとしても、それしかないのです。もっといいものがあり得たのかはお客にはわかりませんし、何が入りきらずにこぼれたのかもわかりません。どんなものであっても、どの道、買うのです。しかし、作り手の側が、内容を充実させるために、一度崩して作り直すことを決めた。現実に見たことはありませんが高名な陶芸家がツボを叩き割るのと同じことをしたのです。何というこだわりでしょう。世のなかの数多の適当なイベントパンフレット制作者にも届け、この心意気!

小賢しい悪知恵がまわる僕なら「アカン内容があふれそうだな…せや!」「すまん!皆が予約してくれたアレ、実は上巻だった!今気づいた!」「ということで下巻の発売が追加決定!」と言い出すところですが、そこで「面積を倍にしてお値段を据え置く」なんてどんな神運営なのかと。せめて、当初160ページ予定だったものを判型を変えて80ページ程度にした、くらいの変更であってほしいなと思います。もともと80ページ程度の予定だったけど、「1ページコラムのつもりが全然おさまらない」「ちょっと伝えたいことが多過ぎましたね…」「せや!面積広げたろ!」だった場合、内容含めて全部が倍増になってしまいますからね。単純計算で制作費も紙代も倍ですからね。それでお値段据え置きはコチラもちょっと受け止められないですよね。ピザ屋でもSとMの間違いならそのまま受け取りますが、1枚のはずが2枚持ってきたら「多いよ」って返しますからね。

↓オフィシャルフォトブックとサイズがほぼ同じになったので、収納時のおさまりはすごくよさそう!



そのようなお客側にとっては特に損のない神変更ではありますが、相応に難しい決断だったのかなと想像します。当初から何故かサイズだけ発表されていましたが、A5サイズであることに僕は強いこだわりを感じていました。このA5サイズというのは主流の判型ではなく、学術書とか専門書とか「雑誌の棚には置かないんだけど、文字だけでなく写真とか図も使いたいのでちょっと面積が欲しい」という本で採用される判型です。羽生氏の「蒼い炎」シリーズなども写真集的な側面を持っており、ちょっと大きめのA5判になっています。まさにそういう用途でゲーム攻略本でもよく採用されており、「ファイナルファンタジーIX」の攻略本なども、やはりA5判で販売されています。

これはもう自分の本棚を見たエグゼクティブプロデューサーが「攻略本はコレのサイズ感(=A5)で」と先に決めたんだろうと思うわけです。ほかのスタッフさんから判型がどうこうの指定が出るとは思えませんので、これはエグゼクティブプロデューサー指定であろうと。ページ数は公表されていないのに判型だけ発表したのは、そういうこだわりも含めて「判型言いたい」だったのかなと。ただ、それではおさまり切らない内容が出てきたのでしょう。「インタビューが長くなった」とかだけならページ数を増やせばいい話なので、図版とか設定画とかで「これは大きく見せないともったいない」というものでもあったのかなと想像します。まぁ最近は攻略本も大判のものがありますし、設定資料集や画集はもともとA4判が多いので、判型を変えたとてゲーム攻略本感が薄まるようなことはありませんが、「攻略本+画集」のイメージでの「プレイヤーズガイド+フォトブック」だったと思うので、悩みながらの決断だったのかなと思います。

ただ、こう言うとアレですが、大きいことはいいことです。

プレイヤーズガイドとフォトブックは本棚の同じ場所にあったほうが並べたときに気持ちいいですし、狭いスペースに文字がギュッと詰まっていると読みづらかったりしますし。キャラクター紹介もストーリー解説も大きい面に大きいイラストと大きい写真でやったほうが読みやすいでしょう。ある程度制作を進めてしまうと、「まぁ作り始めちゃったしこれでいいか」と思いたくなるものですが、「当初の計画」より「手戻りを避ける」より「内容の充実」を取った決断は、そうしなかったときと比較はできませんが、きっとプラスに働いていると思います。

「表紙+82ページ」にはたしてどんな攻略情報が記載されるのか。80ページがいわゆる本文部分なので、残る2ページは普通に考えれば表紙と一体となった裏面部分で、巻頭巻末に見開きで大きく写真とか載っているのだろうと思いますが、攻略本なので三つ折りを挟んでマップ(裏表で2ページ扱い)が載っていたりすると楽しいなとか、極秘袋とじページ(禁断のネタバレ的な)があったら面白いなとか思いながら、到着を待ちたいと思います。楽しんで、こだわって、追求して、作っていただければと思います。

何と言うか、思う存分自分の作りたいものを作って、作ることに関して赤字の心配をしないでいられるように支えられたら、それが一番の応援だったりするのかなと思いました。あまり儲けようともせず、儲かっても寄付してしまうような人にとっては、自分が描く理想をお金由来で妥協せずに済むことは大事なことだと思いますので。僕らが届けるお金と感想が、創作の原動力と必要な数だけスピーカーを並べる腕力につながるよう祈って、品物の到着を待ちたいと思います。もしも値上げが言いづらいならオズマガジンプチみたいに「いつもと同じ大きいのもあるけど、小さいやつもあります」という2パターンにして、「大きいほうが欲しい人は再注文してね!」とかでもいいかなと思いました!

↓エンディングの解説だけでも4ページくらい欲しいので、82ページでもパンパンでしょうね!


演技構成のパターン図的なものを最初に載せて(1P)

パターン図上に振った番号に沿って、写真を交えて絵コンテ的に各振付を解説して(2P)

原作解説と動画編集のこだわりを含めたインタビューを入れて(1P)

公演のスタッフロールを収録(1P)

って5ページになってしまった!

本って、こうやって、すぐ長くなっちゃうんですよね!



ウチの本棚に刺さらなくなるので、A3判にするときは先に教えてください!