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パリでのメダルへ大きく前進!

当初はどうなることかと思ったサッカーU-23アジアカップでの若き日本代表の戦い。無用なヒジ打ちによって初戦で試合の大半を10人で戦うことになったとき、負けたら終わりのカタール戦で試合後半に逆転を許したとき、「あっ…」と思う瞬間は幾度もありました。しかし、終わってみれば文句なしでアジアナンバーワンの座を手に入れました。カタール、イラク、そしてウズベキスタン。アジアの難敵をことごとく退けての優勝は大目標であるパリ五輪でのメダルに向けても大きな大きな前進でした。

この大会の優勝国から順にアジア代表の1枠目・2枠目…と入る仕組みに定まったことで、優勝の日本はパリ五輪の一次ラウンドでパラグアイ、マリ、イスラエルと戦うことになりました。この決勝で負けていた場合はスペイン、エジプト、ドミニカだったことを考えると、与しやすいとまでは言いませんがグループ1位抜けも十分に狙っていけそうな組み合わせになりました。「またスペインをボコれるのかー!楽しみ!」と期待していた部分もあったので少し寂しくもありますが、まぁお楽しみは決勝トーナメントに取っておきましょう。

↓U-23日本代表、堂々のアジア1位でパリ五輪に出場!

やっぱりゲッツがアカンと思いますね!

どうやってもゲッツがいるとチョイダサになる気がします!



この日の決勝の相手は近年アジアの若年代の大会で目覚ましい結果を残しているウズベキスタン。高い攻撃力と今大会ここまで無失点という固い守備で、圧倒的に勝ち進んできました。日本の反対側の山は制圧した、と言ってもいいレベルの勝ち上がりぶり。ということは、カタール・イラクを撃破して上がってきた日本がウズベキスタンに勝てば、紛れもたらればもなく日本こそがアジアナンバーワンということです。

立ち上がり、前から強くプレッシャーをかけてくるウズベキスタン。引いて構えるようなところはまったくなく、日本ゴールに迫ってきます。そのプレッシャーによるものか、日本は自陣でのパスを不用意に相手に奪われる場面がいくつかあり、ややヒヤリとするところも。ただ、今大会を通じて非常に安定していたゴールキーパーの小久保玲央ブライアンさんが、素早い飛び出しでのクリアや、ブレ球に対する堅実なキャッチングなどで「ヒヤリ」以上には進ませません。「ザイオン」をトレンド入りさせたチカラ、伊達ではありません。

日本は攻撃時に4-1-2-3の形で、相手が4-2-3-1の形であることから、ほぼマンツーマンで相手選手とマッチアップする配置となり、やや中盤での組み立てに苦労する場面も。前半28分には相手のボール回しを追い詰めたところからシュートまでつながる場面も作りましたが、それも散発的なもの。我慢比べのなかで隙をうかがうような時間がつづきます。前半の終わり際はウズベキスタンの連続攻撃を浴びるなど苦しい時間帯となりましたが、それも凌ぎ切ってまずは0-0での折り返し。後半に向けては、このまま我慢比べをつづけるのか、あるいは何か手を加えるのか、大岩剛監督の動きも気になる前半戦でした。

↓クロスバーに当たるボールもしっかり小久保さんが見送ったうえでの直撃で不安ナシ!


迎えた後半、両チームともメンバー変更はなく、布陣もどうやら変更はなさそう。日本はより高い位置から連動したプレッシャーを掛けており、狙いどころについては整理をしてきた模様ですが、まずは「見」といったところ。そして、相手のハーフタイムでの変化を見定めたうえでカードを切っていこうという構えでしょうか。

日本が動きを見せたのは後半17分、松木玖生さんと藤尾翔太さんに代えて平河悠さんと荒木遼太郎さんを投入し、両サイドにフレッシュな攻撃の選手を入れて打開を図ります。さらに後半26分には山本理仁さんと佐藤恵允さんに代えて川崎颯太さんと山田楓喜さんを投入し、これで中盤から前はキャプテン藤田譲瑠チマさんとエース細谷真大さん以外は全員入れ替えという形に。さらに一度投入した選手の位置を動かすなどもしており、布陣は変わらないなかでも局面でのマッチアップはだいぶ変わりました。先手先手の仕掛けで前半よりはグッと攻撃もスムーズになっていきます。

試合が終盤へと向かっていくなかで、疲労によるミスや選手間の距離の開きなども生まれ始め、互いにチャンスにつながるケースは多くなります。そうした攻防のなかの後半31分には、日本が前線に長いボールを送ったところで、荒木遼太郎さんと飛び出してきた相手GKが交錯する場面も。荒木さんは相手のヒジ打ちに加えて、倒れた際に芝生で顔面を打っているようにも見える危険な倒れ方でした。あるいはここで交代も、と心配されましたが荒木さんはそのままプレーをつづけます。

すると、その荒木さんも絡む形で、ついに試合が動きます。アディショナルタイムに入った後半46分、センターバックの高井幸大さんがタイミングよい飛び出しで相手のボールを奪うと、そこからヒールパスで藤田譲瑠チマさんに渡し、藤田さんからパスを受けた荒木遼太郎さんがまたヒールで山田楓喜さんにつないで、最後は山田さんのシュートがゴールへ!美しい連携に始まり、相手守備2人の股を抜いてGKの逆を突くシュートまで、徹頭徹尾ビューティフルなゴールで日本先制!

↓今大会無失点のウズベキスタンのゴールを日本がこじ開けた!


これで勝てるだろう…と思った日本の前に大きな試練が訪れたのは後半50分。ゴール前にクロスを送られた場面での競り合いで日本選手の手にボールが当たり、それがVARの末にPKと判定されたのです。ジャンプの際に広げた手に跳ね返りのボールが当たったもので、故意に触ったわけではない印象ですが、映像を見ると手で止めにいったように見えなくもありません。うーん、VARで見ると大体PKに見えるので、この判定は致し方ないところ。

ただ、日本には今大会素晴らしい輝きを放った守護神がいます。好セーブのたびに「ザイオン」をトレンド入りさせてきたゴールキーパー・小久保玲央ブライアンさんが、この大ピンチにまたしても大仕事をやってくれました。お世辞ではなく素晴らしいコース…決まっていればサイドネットに突き刺さっただろう相手のシュートを、小久保さんが見事にストップしたのです。日本を救うこのビッグセーブには「小久保玲央ブライアン」と「ザイオン」が同時にトレンド入りするのも納得です!

↓よく止めた!よく止められた!日本をアジア1位に導くビッグセーブ!


残念そこは小久保玲央ブライアンだ!

「そこ」はゴールの端から端まで全部だ!



なおもつづくウズベキスタンの猛攻。それを跳ね返す日本の粘り強い守備。後半58分には先ほど強い接触があった荒木さんがピッチに倒れ、担架で運ばれていきました。日本はすでに交代枠を使い切っており、ここからは10人での戦いとなります。感極まった小久保さんの目にはひと足早く涙が浮かんでいますが、アディショナルタイムのなかのアディショナルタイムがまだあります。表示の11分を大きく超えて15分、16分とアディショナルタイムは延びていきます。長い、長い、長くてじれるアディショナルタイム。そして、アジアの笛が日本の勝利にようやく納得したのは、アディショナルタイム17分台に入った後半63分!

↓日本勝利!ここまで全試合複数得点&無失点のウズベキスタンを倒してアジアナンバーワン!


↓優勝カップを掲げる歓喜の日本!

荒木さんは自ら歩いてピッチを退いたようですが、大事を取って表彰式は欠席でした!

その代わり、荒木さんのユニフォームをともに鹿島で過ごした山田大樹さんが着て表彰台へ!

若き日本代表が見事アジア王者になりました!



試合を重ねるなかで成長したチームが、準決勝・決勝で一番いい試合を演じて優勝するという素晴らしい大会。結果はもちろん、経験としても大きな収穫を手にすることができました。何事もなくスムーズに切符を手にしていればそれはそれでハッピーですが、こうした苦戦や苦闘があっての優勝のほうが、本番にもつながるというもの。「あの苦しい試合を勝った」「あの苦しい大会を勝った」という自信を胸に、パリで大きな目標に挑んでもらえたらと思います。「すぐにA代表で見たい」ような選手も含むこのチームから厳選して、さらにオーバーエイジでA代表の選手を加えたら、かなりいい感じに仕上がりそうで今から本番が楽しみです!


「出られないかも」と思ったチームが「メダルかも」と思うチームになりました!