2024年07月28日07:00
暗雲漂う初日を救った巴投げ!
本格的に競技が始まったパリ五輪。日本勢も多くの競技で動き出しました。しかし、競技初日はあまり思うようにはいかない難しい立ち上がりに。金メダルを狙う昇り竜としていち早く登場したバレー男子はフルセットの激闘の末、ドイツに敗戦。挑戦者の立場でやはりドイツに挑んだバスケ男子も20点差をつけられて敗戦。卓球の男女エースが組んだ混合ダブルス「はりひな」ペアは詳細不明の北朝鮮ペアを相手に無念の初戦敗退。これは結果の話でありませんが、初日の金候補でありあわよくば複数メダルも視野に入れていたスケートボード男子ストリートは天候不良によって順延となってしまいました。
さらに国民的な期待を集める男子体操の予選では、団体・個人総合・種目別鉄棒で3冠を視野に入れていたエース橋本大輝さんが全体的に調子が上がらず、鉄棒では着地で両手をつく大きな減点があって種目別の決勝に進めませんでした。ゆかもスコアを伸ばせず、予選の結果とは言え個人総合ではトップの中国・張博恒さんに3.533点離され、団体ではライバル中国に2.434点離されました。もともと苦戦は覚悟のうえでしたが、想定以上の差と言わざるを得ません。暗雲が漂っています。
ああっ!!橋本大輝 鉄棒でまさかの着地ミス…“転倒”で大減点 種目別連覇の夢は消滅https://t.co/OB2SivBSmb
— スポーツニッポン新聞社(スポニチ)【公式】 (@sponichiannex) July 27, 2024
そんななかでも日本には頼れる種目があります。お家芸オブお家芸、日本が生んだ世界のスポーツ柔道です。27日は男女の最軽量級、男子60キロ級と女子48キロ級が行なわれました。しかし、日本時間の夕方から始まった準々決勝までの戦いでは、こちらにも暗雲の気配がありました。準々決勝に登場した男子60キロ級の永山竜樹選手が釈然としない敗戦を喫してしまったのです。
準々決勝の対戦相手は2023年の世界選手権王者であるフランシスコ・ガリゴスさん。その際は日本が誇る金メダリスト・�眛D昭�さんにも勝利した強豪です。金メダル候補を相手に永山さんは苦しみました。この試合の前の3回戦でもなかなか技が出ず、延長ゴールデンスコアからの反則勝ち(指導3)での勝ち上がりだったのと同様に、永山さんは準々決勝でも有効な攻めを繰り出すことができません。動きが固く、消極的です。技の流れから寝技に入られると、身体を引っくり返される場面が二度、三度とつづきます。寝技では少しチカラの差がありそうな感触です。
やがて永山さんが内股を仕掛けにいったところで背後に組み付かれると、またしても身体をまわされてしまいます。そして上から覆いかぶさられる形に。永山さんはガリゴスさんの足に自分の足を絡めていますので抑え込みにはなりませんが、苦しい態勢ではあります。ときおり永山さんの足が外れかけるので審判も止めるタイミングがなく、かなり長い寝技での防御となります。そのなかでガリゴスさんは絞め技の態勢に入りました。懸命に耐える永山さんの様子をうかがいながら審判はようやく「待て」のコール。
逃げ切った、そう思ったもののガリゴスさんはまだ絞めの態勢をつづけています。両者が離れるまで「待て」から5秒ほどかかったでしょうか。ようやく両者が離れ、永山さんが大の字で畳に寝そべったとき、審判は永山さんの表情をうかがって「一本」のコール。一瞬「落ちた」とみなされたでしょうか。永山さんはこの決着が理解できないように周囲を見回しながらガリゴスさんとの握手を拒みました。試合を決着させまいと畳に残る永山さんですが、すでにガリゴスさんも審判も引き上げてしまいました。後味の悪い敗戦でした。
↓「待て」ですぐ離れなかったガリゴスさん!
↓この決着には納得がいかない永山さん!
↓ちなみにこちらは2023年世界選手権で�眛D昭�さんがガリゴスさんに危険な投げ方をされて負けたときの動画です!
立った状態からヒジを極めて投げた!
�眛�さんもまず手が動くかの確認をしていますね!
このときの審判にもご注目ください!
審判員の毅然とした裁きがあればこの決着はなかったとは思います。「待て」のあと組みついてでも両者を引きはがしていれば、防御しているときに足が動いている様子から見ても永山さんは意識を失うことなく、一本は取られなかったでしょう。ただ、審判にそうする定めはなく、「待て」のあとは「試合者はすばやく試合開始時の位置に戻らなければならない」とあるだけ。そこに曖昧な数秒があるのです。「待てが聞こえませんでした」「私なりには素早く戻りました」的な空白の時間が。そして決着についても「試合者の一方が、絞技あるいは関節技によって、戦意を喪失したとき」は一本になると定められているのみ(※IJF英語版では「consciousness」を失ったら)。いつなのかは問わず、落ちたら負けなのです。
立った状態からヒジを極めて投げた!
�眛�さんもまず手が動くかの確認をしていますね!
このときの審判にもご注目ください!
審判員の毅然とした裁きがあればこの決着はなかったとは思います。「待て」のあと組みついてでも両者を引きはがしていれば、防御しているときに足が動いている様子から見ても永山さんは意識を失うことなく、一本は取られなかったでしょう。ただ、審判にそうする定めはなく、「待て」のあとは「試合者はすばやく試合開始時の位置に戻らなければならない」とあるだけ。そこに曖昧な数秒があるのです。「待てが聞こえませんでした」「私なりには素早く戻りました」的な空白の時間が。そして決着についても「試合者の一方が、絞技あるいは関節技によって、戦意を喪失したとき」は一本になると定められているのみ(※IJF英語版では「consciousness」を失ったら)。いつなのかは問わず、落ちたら負けなのです。
ならば、やはり落ちてはいけなかったのだろうと思います。安全を確保するまで防御を緩めてはいけなかったのだと。技が解けたときに落ちていれば、それが「待ての前なのか」「待ての後なのか」はわかりません。「待ての前にすでに落ちていたかもしれない」ことになってしまいます。それではどれだけ誤審を指摘しても「待ての前にすでに落ちていたのに待てがかかったことのほうが誤審だ」とカウンターを許すことになり、水掛け論でしかなくなってしまいます。
世界ではJUDOでも日本では柔道である、という発祥の国の誇りを持って戦う柔道家であるならば、「落ちたら死」という武道としての心構えは忘れてはいけなかったと思います。この曖昧な瞬間を裁くルールも、その曖昧な瞬間の選手を守るルールもないのですから。それはやはり「勝負弱さ」だったのかなと思います。
↓ここから切り替えられるかどうかが「強さ」です!
「納得できない」−柔道男子60キロ級永山竜樹、疑惑の判定に泣く 準々決勝敗退https://t.co/XlwwH7nj2A
— 産経ニュース (@Sankei_news) July 27, 2024
「待て」の判断を覆す、ありえない判定に、納得がいかない永山は4分前後も畳から降りずに抗議の意を示したが、審議されることもなく敗れた。
↓永山さんはその後3位決定戦に進出し、合わせ技一本で銅メダルを獲得しました!
あの厳しい決着から立ち上がった!
見事に「勝ち取った」銅メダルです!
そして、暗雲を払うように日本に喜びを届けてくれたのが柔道女子48キロ級の角田夏実さん。角田さんは自身の必勝パターンと言える巴投げからの腕ひしぎ十字固めのコンボで1回戦・2回戦・準々決勝と一本勝ちで勝ち抜きます。準決勝では「巴投げ⇒腕ひしぎ十字固め」を徹底警戒する相手の防御に手を焼きますが、延長戦で「組手を拒否する」相手の動きが3つ目の指導を誘って、角田さんの反則勝ちに。対戦相手のスウェーデン・バブルファスさんは抗議の姿勢を見せましたが、最後は抱き合って別れました。バブルファスさんはまだ18歳ということで、ロス五輪以降も日本選手の前に立ちはだかりそうな選手。あと1年、生まれか開催年がズレていたら、危なかったなと思います。
↓最初の右手も使って引き剝がした組手拒否の部分が指導の対象で、そのあとに焦って攻めてもダメですね!
角田さんも「その組手の切り方ダメでしょ」とわかってるようですね!
守りつつも「はぁ?」の動きです!
そして迎えた決勝、相手はモンゴルのバブドルジさん。すでに今大会日本勢のメダル第1号は決まっています。あとは色が金なのか銀なのかです。白の柔道着で畳に向かう角田さんはいつものように笑みを浮かべています。落ち着いています。準決勝を終えたあとは少し腕と肩を気にしているようでしたが、表向きは影響は見せません。
バブドルジさんは右腕で角田さんの左肩から左わき腹あたりを取る狙いのよう。身体の間に空間があれば寝技に引き込まれたときに足を突っ込んで伸ばす十分なスペースが生まれます。できるだけ深い位置を取ることで間合いを潰して防ごうという構えのよう。間合いを詰められればヨシ、ダメなときは自分が先に巴投げに引き込んでしまえ、という二段構えの防御です。
準決勝、決勝、やはり相手に対策されています。世界選手権3連覇の女王が対策されないはずがない。しかし、それでも角田さんは自分の武器を信じます。徹底して巴投げ、そして腕ひしぎ。どれだけ防ごうとしても防げないほどに磨いてきた武器に勝負を託します。バブドルジさんの防御的な姿勢が指導を2つに増やしたあとの残り1分7秒、再び角田さんが寝技に引き込むと、しゃがみ込む相手を足で持ち上げついに宙に浮かせました。
相手は体幹を効かせて凌ごう、とにかく足から落ちて背中をつけないように凌ごうと粘りますが、角田さんはガッチリとつかんだ相手の右腕を放しません。右腕を宙に浮かせたまま保持することで、この技を凌ぐことを許しませんでした。判定は技あり!待てがかかって残り1分4秒、角田さんは守ります。バブドルジさんはしゃにむに突っ込むためたびたび右手が角田さんの顔に当たります。その痛みと、相手の攻めに耐える角田さん。最後は再び寝技に引き込んで時間を食い潰しました。角田夏実さん、パリ五輪日本勢第1号メダルは一番眩しい金メダルです!
↓これが夏季五輪での日本選手団通算500個目のメダル!
この階級では谷亮子さん以来の金!
31歳、遅咲きのヒロインがパリで輝いた!
表彰台の一番高いところに乗った角田さんは、いつもの笑顔ではなくたくさんの涙をこぼしながら君が代を聴いてます。それでもすぐに笑顔は戻り、メダリスト4人が表彰台の一番上の段に乗って、バブドルジさんのスマホで4人の記念撮影をしました。東京五輪では見られなかった、できなかった、することは憚られた光景が五輪に戻ってきた、そう思いました。競技の過程では「あ?」となる瞬間が互いにあったかもしれませんが、それを乗り越えて互いを讃え合える決着は美しいなと思いました。
選手は互いに戦ってはいますが、それは罵り合うためでもいがみ合うためでも奪い合うためでもないはずです。それはきっと、自分が磨いてきたチカラと技を発揮して、自分が思い描いた理想にどれだけ近づけたのかを感じるためなのだろうと思います。強いライバルがいて、思い通りにならない瞬間があってこそ、自分の限界を超えることができる。ライバルは敵ではなく強くなるためのパートナーです。そんな光景を、その輪の中心にいる人を応援する気持ちで見守れたこと、とても嬉しく思いました。心の暗雲も晴れる気持ちのいい金でした!
↓やっぱり柔道は頼りになるお家芸です!
#パリ五輪 2日目
— 毎日新聞写真部 (@mainichiphoto) July 27, 2024
#柔道 女子48キロ級で #角田夏実 選手が決勝戦を制し、今大会日本初のメダル #金メダル📷 を獲得しました。 夏季五輪、日本勢通算500個目のメダルです。
写真特集🏅https://t.co/UPdSsFRbZ3 pic.twitter.com/R2zgQhFpRh
いつもありがとう柔道!
序盤に柔道がある日程、ありがたいですね!
28日も柔道から阿部一二三さん・詩さんの兄妹同時連覇に期待です!





