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カテゴリ:
パリ五輪
その他
2024年08月02日07:00
日本とパリの心を突いた史上初の銅！

日本勢に苦戦が続いたパリ五輪大会7日目。ここまで「毎日メダル」を維持してきた柔道勢も男女両階級でメダルを逃しました。期待の男子20キロ競歩も連続メダルはならず。バスケ女子・バレー女子では準々決勝進出に暗雲漂う敗戦もありました。ともに「あと一歩」まで迫った、張本智和さん・平野美宇さんの卓球男女シングルスなどなど惜敗がつづく一日でした。上位進出だけがすべてではありませんが、メダルという大きな目標を見据え、そのチカラがあると信じる選手の敗戦は胸を締め付けるものがあります。



そんななか密やかに勝ち上がり、新たな歴史を作っているのがフェンシングです。今大会、すでに男子エペ個人で加納虹輝さんが「個人としては日本史上初」の金メダルを獲得するなど、大きなインパクトを残している日本フェンシング陣。加納さんが金を争った相手は地元フランスの代表ヤニック・ボレルさんということで完全アウェーの空気で満たされるグラン・パレを、最終的には「脱帽」のスタンディングオベーションで上書きした様は壮観でした。日本はその頃「詩ーーー！」「詩…頑張れ…頑張れ…！」「ご飯、食べられてるね…よかった…」とほかのことを考えていたもので、十分にその快挙を讃えるタイミングを逸した感は否めませんが、素晴らしい活躍だったと思います。

同じく日本フェンシング史上初の「女子」のメダルを期待された女子サーブルの江村美咲さんは、金本命候補として臨んだ個人戦を残念ながら本来のチカラを発揮できずに終えました。故障のことを伏せながらの戦いだったという情報もありますが、個人戦についてはもう「開会式で旗手やったからしゃーない」と他責思考で忘れていただき、団体戦に気持ちを切り替えてもらえたらと思います。あの雨のなかで大きなお仕事があったのでは、3日やそこらで具合が戻るはずがありません。旗手をつとめる選手について、本人の希望と同意は大前提に、日程面の考慮も怠らないよう今後は注視していこうと思います。

しかし、新たな歴史への挑戦者はひとりだけではありません。大会7日目、その扉をこじ開けたのがフェンシング女子フルーレ団体です。2023年世界選手権で16年ぶりとなる銅メダルを獲得した女子フルーレ団体は、大会7日目の8月1日に登場すると快進撃を見せました。まず準々決勝でポーランドを撃破。序盤リードを許す展開でしたが、チーム3番手で登場の宮脇花綸さんが大量得点で一気に逆転すると、つづく東晟良さんがこの機を逃さず突き放し、勝利をものにしました。つづく準決勝では2023年の世界選手権を制したイタリアに敗れたものの、その内容も決して悲観するようなものではありませんでした。スコア自体も39-45と競ったものでしたし、合計9戦する各カードの勝ち負けだけで言えば「4勝5敗」という拮抗したものでした。世界一を相手にこの勝負ならば、金に同じと書く「銅」は持って帰りたいところ。

↓歴史の扉に挑む日本チーム！



迎えた3位決定戦。グラン・パレのピストに颯爽と現れた日本チームは、大きな拍手で迎えられました。地元の観衆らしき人が日の丸を持って応援する姿も見られます。対戦相手はカナダ。こちらも熱烈なファンがついている模様。盛り上がっています。日本チームが先発に起用した3剣士は、エース上野優佳さん、準々決勝で活躍を見せた宮脇花綸さん、姉妹剣士としてもおなじみの東晟良さんの3名。まず1番手で出た上野さんは、慎重な探り合いから先制の突きで1点先取する立ち上がり。相手の攻撃をしっかり見切ったうえで的確に突きを繰り出し、3選手ずつが総当たりで対戦し合計9戦を行なうその緒戦を3-3と互角の戦いで終えて後続にバトンタッチします。

↓緊張感で痺れる立ち上がり！なかなかリード奪えずラクに見られない試合！


2番手に登場の宮脇さんは、「行きそうで行かない」ステップによるフェイントから、じっくりと時間を掛けて攻撃を繰り出していきます。3分間戦って2-2というロースコアの展開も、対戦相手が個人で銅メダルを獲得しているエレノー・ハービーさんであることを踏まえると「稼がせなかった」という意味で大きな貢献でした。総計5-5の同点で3番手の東さんにつなぐ日本。3番手の東さんは柔軟性を活かした大きく低いステップからのロングアタックで相手を攻めます。対戦相手に先行を許す苦しい流れも、対戦中盤からは盛り返し、ここもまったく互角の総計10-10でバトンタッチしました。3選手が一度ずつ戦い終えた1周目、まずは悪くない流れです。

日本の4番手は宮脇さんに交代で入った菊池小巻さん。菊池さんは固い守りと混戦のなかでも相手の態勢をしっかり見て突く冷静さで得点を重ねます。対戦中盤には追い込んだ相手の靴が脱げた隙にすかさず得点を奪う場面も。この対戦を4-3とリードで終え、ついに日本が総計14-13とリードしてバトンタッチします。ここで二度目の登場となったエース上野さんは、相手をピスト端まで追い込むと「場外」による得点で先取。その後も短く鋭い突きで着実に得点を重ね、この対戦だけで5-1と大きくリード。総計19-14と点差を広げて試合を折り返します。6番手は二度目の登場となる東さん。十分なリードのある状況で東さんは攻め急がず、じっくりと相手の攻撃を見ることでハービーさんから追撃の機会と時間を奪います。点差を少し詰められるものの、この対戦をロースコアの1-3で終え、総計20-17で3周目の対戦へ。

残り3対戦、銅メダルまであと9分。7番手には二度目＆最後の登場となる菊池さんが入ると、攻めに掛かる相手をいなしながら、同時突きのほんのわずかな速さで上回り、際どい得点を重ねていきます。残り数秒の段階では「もう時間もないしこのまま終わりましょう」の気配を出しておいてから急に突くという、相手の虚を突く一撃も。かなり出入りが激しくなったこの対戦を9-8と競り勝ち、総計29-25の4点リードで残り2人へ。8番手はすぐさま登場の東さん。東さんは低い態勢と素早い前後の動きで相手の攻撃をかわしつつ、「相手の剣を二の腕で抑えながら手首だけ返して突く」といった巧みな攻撃で得点を重ね、3分間の対戦を3-4でしのぎます。途中には「消極的過ぎる」として両者レッドカードをもらう場面もありましたが、これが日本の侍の戦い「寄らば突く」です（※来なければ突かないの意）。総計32-29の3点リードで最後の剣士となるエース上野さんにつなぎ、銅メダルまであと3分です。

3点のリードをもって迎えた最後の対戦。上野さんはハービーさんにプレッシャーを掛けつつも、リスクを冒すことはせず、時間をジワリジワリと削っていきます。残り48秒というところでは1点差にまで詰め寄られますが、「寄らば突く」の構えでにらみ合い、ここまでのリードを十分に活かして戦います。最終盤、33-32の1点リードで一度時計が止まり、残り6.80秒の段階からの仕切り直しの連続は、まさに剣豪の立ち合いのようでした。上野さんは懸命に1点を取りに来る相手に最後まで攻撃を許さず、全部かわす、かわしたら身体を寄せてゲームを止める、そして時間を削るという戦いかたで見事に逃げ切り勝ち。総計33-32の1点差で、日本フェンシング史上初「女子」の五輪メダルを獲得しました！

↓解説者も絶叫せざるを得ない歴史的勝利！




選手とコーチとが集まって作る歓喜の輪。すぐに決勝が始まることからノンビリと喜びに浸る時間はありませんが、歴史を開いた面々は短い時間で最高の涙を流し、最高の笑顔を見せました。美しかった。素敵でした。女子フルーレの選手たちは若く、見場もよく、若年代から長く注目を集めてきましたが、記憶だけでなく歴史に残るチームとなりました。浮ついた気持ちで見守ってきた自分を猛省しつつ、この大会もしっかり注目していたことを自慢しようと思います。ライブでしっかり見守れてよかったです！

↓取れるかもとは思っていたけれど、本当に取りました！



これで日本勢は「毎日メダル」を6日間継続！まだまだ行きましょう！