世界最速の人類、決まる!
熱戦つづくパリ五輪、大会10日目は数々の偉業に胸躍る一日でした。日本勢ではゴルフ男子松山英樹さんの東京五輪プレーオフの雪辱を果たす銅メダル獲得や、連日のメダルラッシュに沸くフェンシング勢から今度は男子フルーレ団体による金メダルに沸きました。フェンシングは出場した団体競技すべてでメダル獲得ということで、侍の国としても鼻が高い大活躍です。選手たちへのごほうびリゾート、ぜひお願いできればと思います。
今大会は「みんなが見ている時間帯にやっているのが柔道くらいしかない」という事情もあって柔道にSNSインプレゾンビ勢が集中する傾向が感じられましたが、その柔道でモヤモヤしたぶんをフェンシングが晴らしてくれる好循環があったのは痛快でした。フランスの人の気持ちはわかりませんが、日本勢が直接フランス勢に立ちはだかる機会も多かったので、向こうは向こうで「こんなものはフェンシングではない!」「機械がぶっ壊れてる!」「あの面の圧は強過ぎる」とか言っていたりするんじゃないかなと思います(※嫉妬からくる言いがかりなど)。そこはお互い様ということで、ぜひ真の騎士道に励んでもらえたらいいなと思います。こちらの理解度としては「当たりゃいいんでしょ、当たれば」くらいの段階で恐縮ですが…!
↓準決勝、「蝶のように舞い、蜂のように刺す」空飛ぶ一撃でフランスから45点奪取!
日本勢以外ではテニス男子シングルスのノバク・ジョコビッチさんの金メダル獲得は劇的でした。四大大会を24度も制するという生きるレジェンドでありながら、何故か五輪には縁がなく、過去4度の出場で銅がひとつというジョコビッチさん。37歳で迎えた今大会、会場はクレーコートのローラン・ギャロスということでものすごくやりやすいということはなかったかもしれませんが、見事にこのラスト(かもしれない)チャンスを活かしました。全仏オープンを途中棄権することになった右ひざ半月板の損傷からわずか2ヶ月。再びこの地に戻っての劇的な勝利は、さすがジョコビッチさんと唸るものでした。ジョコビッチさんほどの選手がコートに突っ伏し、指を震わせながら嗚咽する姿、それほどの思いをぶつけた戦い、見守れて大変いい思い出になりました。生涯ゴールデンスラム達成、おめでとうございます!
↓テニス好きの皆さんがジョコビッチさんの金メダルをお祝いする大喜利を開催中です!
漫画のような勝利でした!
これがスターだなと思いました!
そしてこの日は何と言っても五輪の華、陸上男子100メートルです。世界で一番足が速いのは誰なのか。その単純にして明快なロマンに、人類は魅了されてきました。今回も世界から集った韋駄天たちの走りを記憶に刻もうと思います。そして、サニブラウン・アブデルハキームさんら日本勢による、実現すれば92年ぶりとなる決勝進出にも期待したいところ。
前日4日の1次予選では、1組に東田旺洋さん、4組にサニブラウンさん、7組に坂井隆一郎さんが登場しました。そのなかで準決勝に駒を進めたのはやはりサニブラウンさんでした。サニブラウンさんは同組に入ったオブリク・セヴィルさんの走りを見つつ、最後は左右を確認して緩める余裕もある走りながら2着の着順で準決勝進出を決めました。無風ながら10秒02という「日本史上五輪最速」のタイムを叩き出すなど状態のよさがうかがえます。インタビューでも、ここは通過点という雰囲気アリアリで期待もグッと高まりました。
↓余裕の準決勝進出!日本歴代最速タイムにも「何も考えてないですハイ」の塩対応!
「ま、今日はホントにラクラクなんで」という頼もしい振り返り!
「(自分の走りをすれば)しっかりと決勝は行けると思ってる」という頼もしい展望!
迎えた準決勝、3組27選手が走って「各組2着+タイムで2名」が選ばれるという狭き門。サニブラウンさんが入った3組には前回東京銅のアンドレ・ドグラスさん、2023年世界陸上銅のザーネル・ヒューズさん、ジャマイカが送り込んだキシェーン・トンプソンさん、前回東京銀のフレッド・カーリーさん、高地記録ながら世界歴代10傑のベストタイムを持つゲニアのオマニャラさんなど、「このなかで2着に…?」と思うような厳しい顔ぶれが揃いました。まぁ、ほかの組も厳しいのでどこでも一緒なのでしょうが、これを勝ち抜くのは並大抵のことではありません。そして、その先にもう1本決勝を走ろうだなんて。はたしてサニブラウンさんには勝ち抜くチカラと決勝への余力があるのか。
↓サニブラウンさんは自己ベスト9秒96を出すも、決勝には届かず!
いやー世界は速い。サニブラウンさんは準決勝3組4着となり、タイムでも拾われず日本勢92年ぶりの決勝進出はなりませんでしたが、自己ベストを更新する9秒96の素晴らしい走りでした。これで届かないのは「相手が速かった」で致し方ありません。サニブラウンさんの組からはキシェーン・トンプソンさん、フレッド・カーリーさんが勝ち上がりました。ほかの組から決勝に勝ち進んだ、2023年世界陸上で100メートル・200メートル金のノア・ライルズさん、ジャマイカのオブリク・セヴィルさん、東京五輪金のマルセル・ジェイコブスさんらが「世界最速の人類」の座をかけて争います。
メインスタジアムが眩く輝くなかでセレモニーのようにして始まった決勝。ここまでやってきた選手はひとりひとりが人類のスターです。そのなかでもひときわ異彩を放つアメリカのノア・ライルズさんはトラックを飛び跳ねながら大観衆を煽っています。何やら叫びまくっています。ドーピングじゃない何らかのアレがアレしているくらいのテンションです。今日はかめはめ波したり遊☆戯☆王のカードを出したりはしませんでしたが「俺のターン!」というアピールは十分。勝てば新世代ボルト的な雰囲気さえまとっていきそうです。それぐらいのパフォーマンスをしてもいいだけの舞台、この五輪全体でももっとも大きな花火が上がる瞬間がついにやってきました。
そして、スタートした最速の人類たち。反応よく飛び出したのはジャマイカのトンプソンさん、しかし外からノア・ライルズさんが上がってくると、そのほかの選手もほぼ横一線でなだれ込むように入線しました。何と7位まで写真判定をするという紙一重の勝利を制したのは…アメリカのノア・ライルズさん!煽りまくって騒ぎまくって、そして金を獲る!しかも自己ベスト!このスター性、この勝負強さ、人類全体のスターにふさわしい大お祭り男です!
↓ノア・ライルズさんが最速の人類!最後ギリギリ差し切った!
いやー、すごかった。ここまでもつれるとは。競馬で慣れた目で見ても1着・2着がどうなったのかはよくわかりませんでした。それもそのはず、1着ライルズさんと2着トンプソンさんのタイムは9秒79で同じです。ここまでもつれる勝負はなかなかあるものではありません。レベルも高く、選手も粒ぞろい。今回も「華」を存分に楽しませていただきました。そして、今後に向けてさらに楽しみが増すような戦いでした。
何せ日本には2025年東京で開催する世界陸上があります。この選手たちが、もう一度本気の戦いを東京の国立競技場でやってくれるのです。東京五輪では十分に大お祭りにしてあげられなかったぶんも、世界陸上では超大お祭りで人類のスターを迎えたいものだなと思います。そして、そのときは日本勢からの決勝進出、表彰台といった大きな夢も見られるといいなと思います。その瞬間に立ち会えるよう、チケット取りも頑張らないとですね!
東京の世界陸上ではライルズさんの連覇を見ることも希望のひとつにします!