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2024年09月16日08:00
奇跡のような引退試合でした!
本日はお出掛けの記録です。「もはや行ってまで見るべきものは何もナイのでは説」すら提唱されそうな低迷ぶりでおなじみの埼玉西武ライオンズの試合を見に、終末トレインに乗ってベルーナドームへ行ってまいりました。お目当ては9月15日に行なわれた金子侑司さんの引退試合です。
思えばライオンズ界隈において、これほど愛憎渦巻いた選手もいないかもしれません。もしかしたら皆の「好き」と「期待」と「成績」とのバランスが偏っていたのかもしれないなと思います。皆が金子さんのことを好きだった。と同時に大きな期待を懸けていた。けれど現実は苦悩も多かった。それがときに味方応援団からの「働け」コールなどにもつながってしまったわけですが、ひとえに「好き」が途轍もなく大きかったからだと僕は思うのです。好き過ぎてもどかしい、そんな時間が多かったように思います。
珍しく開場前にたどり着いたベルーナドームはまるで優勝争いでもしているかのような大観衆の熱気で満ちていました。3連休だから、ということではない特別な気配。聞けばこの日のチケットは完売とのこと。きっと誰もが別れを惜しまずにはいられなかったのでしょう。僕もそのひとりです。柄にもなく応援タオルなど首にかけ、見送りに来たのですから。選手自ら決めての現役引退は幸せな別れの形のひとつではあるけれど、どれだけ幸せでも寂しさは変わらない、そんなことを思いながらタオルで涙でも拭こうと思います。
↓やってきましたベルーナドーム!
↓球場前広場では金子さんへの感謝のボードが!
入場すればいつになくごった返す球場前広場。何がそんなに混雑しているのかと思えば、金子さんの引退記念グッズを買い求めるファンの列が店舗前の滞留エリアではおさまらず、球場前広場を横断して三塁側まで到達していたのです。そして、まだ試合開始まで2時間近くあるというのに、係員さんは「今から並んでも金子選手の引退記念グッズを買えない可能性が高いです!」と連呼しています。すごい人気ぶりです。
視線をフード売店に送れば、そちらもまた大変な人だかり。すでに金子さんプロデュースの洋食弁当は売り切れています。そりゃあそうでしょうよ。この日引退する選手の特製弁当で、購入すれば記念のカードもつくというのですから。「普段いくつ用意してるか知らないが…」「この日はほかの弁当の数を絞って8割方ねこさん弁当でよかったのでは?」「仮にほかの弁当が好みでも、ねこさん弁当しかなければ記念に買うだろ…」などと商売っ気のなさにボヤきながら散策していきます。
金子さん引退記念ガチャのコーナーでは今まで見たことがないほどの列が伸びていますし、こちらも金子さんプロデュースグルメである「湯葉としらすの明太子クリームパスタ」も早々に売り切れるなど、とにかくどこもかしこもすごい人気です。ユニフォームを着ている人、タオルを持っている人の多さたるや。引退試合なので当然と言えば当然ですが、これほど名残を惜しんでいる人が多いのだと、改めてご本人にも見てもらいたいような光景がそこかしこに広がっていました。
で、人気&売り切れとなると欲しくなるのが人情で、僕もどうしても金子さんプロデュースグルメが食べたくなってしまい、どう見ても2人前のサイズ感の「源田壮亮&金子侑司のねこげんピザ(マルゲリータ)」をおひとり様で購入することにしました。記念のカードは無事いただいたものの、お腹もパンパンに膨れ上がり、胸もお腹もいっぱいになる引退試合です。
↓カードの奥にノートパソコンくらいのサイズの巨大なピザが見える…ゴクリ…!
この日の対戦相手は今季ボッコボコにやられている千葉ロッテマリーンズさん。前日の岡田雅利さんの引退試合でもスミイチでシャットアウトされ、岡田さんの引退に花を添えることはできませんでした。そしてこの日は、あの!完全試合の!将来メジャーで活躍確実の!佐々木朗希さんを先発に立ててくると言うではありませんか。「相手にとって不足なし」ではあるのですが、「不足なし」の概念のなかに「大盛り過ぎる」を含み得るというのは新鮮な発見でしたよね。コップの水で例えるならば「足りてるな」って思ったのは確かですが、同時にダバダバ「あふれてる」感じもするんですよね。もうちょっとこう手心というか…!
もちろん我が埼玉西武ライオンズも何もせず負けるつもりはありません(いつも一生懸命やって負けてるぞ)。先発にエース・今井達也さんを立ててこちらも必(ずとはいかないかもしれないが)勝(ちたい)態勢です。課題の打線は、1番レフトにこの日の主役・金子侑司さんを起用してきました。これには満場の大観衆も大喜びです。打てる打てないではなく「1番・金子」の打席が見たい。ファンの思いはひとつです。守備練習に登場すれば大歓声、スタメンが発表されれば大歓声、守備位置につけば大歓声、とにかく金子さんの一挙手一投足すべてに沸き上がる雰囲気です。
↓ロッテの先発は佐々木朗希さん!相手にとって不足なし!
↓迎え撃つライオンズのスタメン!1番金子・2番源田の並びに感涙!
↓試合前セレモニーには金子さんの登場曲を歌うMs.OOJAさんも来てくれました!
そして始まった試合。西武先発の今井さんは先頭打者を金子さんが待ち構えるレフトフライに仕留める美しい立ち上がりから、初回を三者凡退に抑えます。裏の攻撃では金子さんの打席が訪れ、セカンドゴロに倒れるも、いまだ衰えない全力疾走を見せてくれました。守備も、打撃も、走りも、この初回で見ることができた。「もしかしたら出場は初回だけかも…?」という不安もわずかにあるなかでの観戦ですが、早くも名残を惜しむには十分な場面を残してくれた金子さん。「野球の神様に愛されているな…」そんなことを感じる初回です。
しかし、野球の神様とライオンズナインの金子愛はそんな通りいっぺんのものではありませんでした。まさか、このあとあんな奇跡の試合となるとは。
西武は2回裏の攻撃で1点を先制すると、同点に追いつかれたあとの3回裏にも2点を追加して3-1とします。ちょっとしたバウンドやちょっとした相手の選択が、不思議とコチラに味方するような得点で、優位な展開に持ち込むことができました。大量2点リードをもらった先発・今井さんは素晴らしい投球で三振の山を築き、ロッテ打線に付け入る隙を見せません。金子さんもヒットこそないものの「外野3ポジションを全部守る」という守備面で魅せ、チームを盛り立てます。
西武が3-1リードのまま迎えたラッキーセブン、ここでアクシデントが。何と佐々木朗希さんが危険球退場となったのです。急遽の継投となったロッテ投手陣を攻め立てる西武は、まず栗山巧さんのタイムリーで1点追加。さらに得点圏に走者を置いて金子さんの打席を迎えます。ここで金子さんにタイムリー…が出るとキレイなのでしょうが、ヒットは出ず。チャンスを活かせず塁上で天を仰ぐ金子さんですが、本人が打たなければ味方が打てばいいとばかりに、つづく源田さんがここでホームランを放ちます。滅多にない源田さんのホームランがこの試合で出るだなんて。源田さん自身も「不思議な力」と語った一発で、「ねこげん」コンビが揃って生還しました。ホーム付近で抱き合うふたりの姿は、この試合に最高の花を添えてくれました。
↓チャンスでヒットが出ず天を仰いだ金子さんを…!
↓源田さんがホームランで生還させるという劇的展開!
源田が打って金子が帰る‼️
— パ・リーグ.com / パーソル パ・リーグTV【公式】 (@PacificleagueTV) September 15, 2024
埼玉西武 #源田壮亮 選手の第3号2ランホームラン🌈#seibulions #ねこげん
👇ライブ配信はこちら!https://t.co/3FPiKX4GOl pic.twitter.com/dNFh2s59h5
まるで野球の神様が走者を入れ替えてくれたかのような!
不思議な力がボールをスタンドまで押し込んだような!
その後もつづく奇跡のような引退試合。8回表には金子さんが守るレフトに打球が飛ぶと、金子さんの代名詞となるプレーである「帽子を飛ばしながら」のスライディングキャッチが飛び出しました。引退試合でこの好守備ができるチカラと、ちょうどいい打球が飛ぶこの巡り合わせ。野球の神様にも引退を惜しまれている…そんなことを思わずにはいられません。
守備で見せた‼️
— パ・リーグ.com / パーソル パ・リーグTV【公式】 (@PacificleagueTV) September 15, 2024
埼玉西武 #金子侑司 選手がスライディングキャッチ✨
スタンドのファンも大歓声👏#ありがとうねこさん #seibulions
👇ライブ配信はこちら!https://t.co/3FPiKX4GOl pic.twitter.com/SsgYFfu4XD
そして迎えた8回裏。点差は6-1と広がっており、おそらくこれが西武側は最後の攻撃です。打順は4番からのスタート。1番に入った金子さんの打席をもう一度見たいところですが、それには4人出塁しないといけません。これはかなり厳しいか。しかし、西武ナインは愛によって燃えていました。何とここで本塁打⇒四球⇒セカンドフライ⇒安打⇒四球とつないで一死満塁で9番までまわしたのです。
「ゲッツーがなければ1番の金子さんまでまわる…」という状況に、スタンドからは隠しようもない「振るな!」の声が上がっています。打席に向かった西武の9番・元山さんはそんなこと百も承知とばかりに、この打席で一度もバットを振りませんでした。絶対に金子さんにまわす、その想いを貫いた決意の見逃し三振。その瞬間、三振したとは思えないような大歓声が西武側から上がりました。
相手の継投に合わせて右打席へとスイッチした金子さんの最終5打席目。フルカウントからの7球目をとらえた打球はヒット性の見事な当たりでした。ヒットだと思いました。しかし、相手の好守備に阻まれヒットにはならず。それでも、この打席が見られたことで素晴らしい夢を見たような気持ちになりました。こんなに神様と味方に愛された引退試合があるだろうかと、自慢したくなるような気持ちでした。
↓ヒットは見られませんでしたが、「もう1打席」の素晴らしい「夢」を見ました!
試合後の引退セレモニー、コメントを寄せてくれた人たちの言葉は不思議と似通っていました。金子さんを評して、まずカッコいい、足が速い、そして何より「帽子」であると。球団側が用意したVTRも締めのカットもやはり「帽子を飛ばしながら」の場面だったように、「帽子を飛ばしながら」のファインプレーがたくさんの人の心に残っていたようです。
もしかしたらこの試合、神様もそちらの方向で気を利かせてくれたのかもしれないなと思います。金子さんのヒットは見られませんでしたが、「帽子」は見られたのですから。むしろヒットを見ていたら、この名残惜しさとどう向き合えばいいのかわからなくなったかもしれないなと思うと、最後に相手の好守備でヒットを阻まれたことすらも神様が気を利かせたのかなとさえ思えてきます。
金子さんはまだまだ元気です。野球を諦めなくてはいけないほどの怪我もないでしょう。この日もフル出場しましたし、素晴らしいスピードも健在でした。ヒットが出ない、ただそれだけです。もう少し打撃が上向いていれば、チームが再建を迫られるこんな状態でなければ、引退なんて話が出るタイミングではなかっただろうと思います。主力としてもっとやれたし、もっと見ていたかった。辞めるのは本人の決断ですので尊重して受け止めるしかありませんが、早い、惜しい、その想いはどうしても拭えませんでした。だから、むしろ、あの奇跡のような打席で、あの痛烈な当たりがヒットにならなかったことが、神様の思し召しなのかなと思うのです。今が辞めるによいときなんだと、想いを断ち切ってくれるかのようで。
金子さんはこの先も二度の盗塁王、スピードスターとして語り継がれることでしょうが、僕にとっての金子さんは「帽子」の人です。引退そのものよりも心残りなのは、それを記録に残せなかったことでしょうか。2019年、金子さんはゴールデングラブ賞を獲るべきだった、僕は今でもそう思っています。あの年に金子さんが見せた素晴らしい「帽子」の数々は、まさしく黄金の輝きでした。あれで獲れないなら、その賞は何を讃える賞なのだと今でも思います。思い出したらちょっと憤りで気が立ってくるくらいに、今でもそう思っています。
だから、同時代に見守ったファンとして、せめて記憶に留めたい、そう思います。二度の盗塁王になった金子侑司という選手は素晴らしい守備の人でもあったことを。球界屈指の遊撃手と出会ったことで、自身も華やかで魅せる名外野手として花開いたことを。わざと(!)帽子を飛ばすあのプレーが煙幕のように包み込んでしまっているけれど、最後まで必死にボールと勝利を追いかけるガッツと勇気を備えた人であったことを。
思うところはもしかしたらいろいろあるのかもしれません。悔しさや無念もあるのかもしれません。
それでもすべてをカッコよく爽やかに包み隠す美学も同時にあるのだろうと思います。
そういうねこさんだから、皆が好きになったのだと思います。
いつもカッコよかった。いつも爽やかだった。
いつもカッコよかった。いつも爽やかだった。
12年間、お疲れ様でした!またいつか一緒に優勝しましょう!
↓帽子被って始めれば、胴上げでも飛ばせたかもですね!
↓現地の雰囲気を動画でまとめておきました!
こんな奇跡のような引退試合を見せられると、引き止められないですね!
ありがとうネコさん!そしてフモさん!不甲斐ないチームですが、それでも大好きなチームだなあとかんじます。ネコさんの人生に幸あれー!