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2024年09月29日08:00
埼玉西武ライオンズ「50/90」への道!
「もう野球はドジャースだけ見てれば十分」と感じている一般的感覚のスポーツファンの皆さん、こんにちは。日本のヒーローが漫画以上の大活躍をし、世界のスターたちがそれを味方として支え、強いチームが強いチームを退けて地区優勝を果たし、これから世界一を目指そうとするドジャースの物語が現在進行形であるなかで、あえて日本のローカルプロ野球を見る時間や意味があるのか、立ち止まって考えることになった2024年はいかがお過ごしでしょうか。
「阪神は人生」「カープこそ我が命」「ドジャースよりウチのほうが強かバイ」と魂レベルで自球団への愛を宿した皆さんはさておき、これからあの球投げ棒打ちスゴロクを知っていく子どもたちのことを考えると、本気でもう「ドジャース」でお腹いっぱいなんじゃなかろうかと思わなくもありません。野球をやらせることでのプレイヤーとしての楽しさや、球場に連れて行くことでのレジャーとしての楽しさを刷り込んでいかないと、「見る」エンタメという意味合いだけなら本当に子どもたちはドジャースのところに行ってしまいそうだなと思います。それぐらいドジャースの物語は面白くドラマティックでした。まずは地区優勝、おめでとうございます。ワールドシリーズ制覇にも期待しています。
そして、その物語の中心としてMVP当確の歴史的シーズンを送っている大谷翔平さんによる「50/50」は、これまで想像だにしなかった掛け合わせ記録でした。50本塁打も放つようなパワーヒッターが、50盗塁できるほどのスピードも兼ね備えているという想像力の枠外からの大偉業。シーズン前は「今年は投打二刀流がない」というマイナスの捉え方もあったなかで、すべてを引っくり返して「打者一本に専念したら別次元の歴史が作れる」ということを示して見せた展開には、驚きを通り越して呆けるばかりです。すでに異次元に突入しているのに、さらに「60/60」さえも現実として視野に入っているのですから、どれだけの想像をしても翼を広げ過ぎるということはもはやないのでしょう。「野茂+松井+イチロー」でもまだ想像力が足りないのかもしれないなと思います。二刀流復活の暁には打者専念よりも休養日が増えることを加味して「20/50/50」という走攻守の究極形を見せてもらいたいものです。
HISTORY!
— Los Angeles Dodgers (@Dodgers) September 19, 2024
SHOHEI OHTANI IS THE ONLY MEMBER OF THE 50/50 CLUB. pic.twitter.com/F1T5D4n6QD
さて、前置きが長くなりましたが、本日はその大谷翔平さんみたいな大記録に「負」の方向で挑戦している日本のチームに気づきましたので、お知らせしたく思います。その球団とは、プロと社会人の中間にある2.5次元相当の別次元で懸命に引退試合の消化に励む埼玉西武ライオンズです。今年は「開幕からの同一カード連敗プロ野球記録:16」「開幕から14戦未勝利の11連敗:高橋光成(史上4人目)」「8連敗以上連続4ヶ月達成:パ・リーグ初(史上4球団目)」などいくつもの記録を達成し、大谷翔平さんみたいな掛け合わせ記録の達人として負の存在感を発揮してきました。
そんな西武が、シーズンの最後の最後に新たなプロ野球記録に挑戦しています。それが「50/90/143」です。これがどういう意味かと言うと、「年間50勝」と「年間90敗」を史上最少の143試合で達成できるかどうかに挑戦中である、そういう意味です。わかります、おっしゃりたいことはわかります。「それ何か意味あるの?」「すごくもないし気にしたこともない」「で?」「ん?」「は?」みたいな気持ちになっているのでしょう。僕も同じ気持ちです。もっとわかりやすい「100敗達成」とか「全敗」とかのほうが偉業感があることはその通りです。
しかし、大谷さんだってすべての記録に偉業感があるわけではないでしょう。「73年ぶりに1ヶ月に25本以上の長打&20以上の四球」の記録を達成した、と言われても「はぁ」としか言えないはずです。ただ、それは自分たちがその価値を普段から見出してこなかったというだけで、気にしたことのない記録には価値がないという偏見あるいは先入観が生み出す反応です。「考えたこともなかったが、これって100年ぶりの出来事なんだ」と奇なる事実に素朴な敬意を持ち、奇なる事実であることを理由としてそこに価値を見出す、それこそが記録に対する誠実な姿勢です。科学と同じです。何の意味もなさそうでも奇なる実験結果が得られたら、そこに何かを見出そうとする姿勢が大切なのです。見たい結果だけを気にするのではなく、浮かび上がった事実から新たな喜びを得る、そういう姿勢で記録には向き合いたいもの。
埼玉西武ライオンズが挑む「50/90」もそうです。日本プロ野球において史上最多敗戦となるのは1961年近鉄バファローによる36勝103敗1分であり、これが唯一の100敗到達です。それに次ぐ90敗到達というのは過去に22例あるわけですが、その多くはガツンと負けが込む形での成績となっています。20勝台&90敗台の「20/90」が1例、30勝台&90敗台の「30/90」が5例、40勝台&90敗台の「40/90」が10例、50勝台&90敗台の「50/90」が6例と、「50/90」は実は思いのほかレアなのです。
もっとも頻出する「40/90」はこの20年でも4例が起きていますが、「50/90」は2009年に横浜ベイスターズが達成した「51勝93敗0分」が見られるくらいで、それ以前となると1964年近鉄バファローズの「55勝91敗4分」までさかのぼります。そして、過去の「50/90」達成6例のうち5例は150試合以上の試合数で行なわれたシーズン(1956年、1963年、1964年のパ・リーグ)で達成されており、史上最多となる154試合制で行なわれた1956年シーズンのパ・リーグで一度に3例が起きているのです。140試合台で「50/90」を達成したのは2009年横浜が唯一の事例であり、もし今年の西武が「50/90」を達成することがあれば、史上2例目の140試合台での「50/90」達成事例であり、かつ2009年横浜を超えて「史上最少の143試合で50/90を達成した球団」となるのです。まさにこれは「50/90/143」と書くべき大記録でしょう(※大は『大恥』と同じ意味合いの大)。
チーム崩壊&やる気消滅で大負けするのはある意味で簡単です。八百長だって「操作するほうが負ける」のが常道ですよね。相手は本気なのにコッチだけ八百長で勝つ、なんて話はないのです。ガッツリ負けつつ、ある程度勝ち、しかも引き分けにはせずにしっかり白黒つける…弱さとやる気と決定力が高次元で並び立ったチームだけがこの「50/90」に到達できると考えたら、これはこれですごいことだと思えてくるのではありませんか。大谷翔平さんのグッズと同じフォント&そっくりのデザインでシーズン後に「50/90」グッズとか出してもいいんじゃないかと思いますよね。ドジャースの球団ロゴが中日の球団ロゴに相当似てても怒ってこないのがアメリカ気質なので、「50/50」のデザインなら丸々パクっても気づきもしないんじゃないかと思いますしね!
↓28日の試合で西武はまず90敗を達成!「50/90」達成にはあと3勝が必要です!
残り4試合であと3勝もできるのか!
他球団のやる気にもよりますが、厳しい挑戦がつづきます!
どうでしょう、ここまでの説明を読んで多少気持ちは変わったでしょうか。「で?」「ん?」「は?」から「はぁ」「ほぉ」「へぇ」くらいになったでしょうか。すごいとかすごくないとかではなく、珍しいかどうか、そこに敬意をもっていく姿勢を大切に、埼玉西武ライオンズのギリギリの挑戦を最後まで見守っていただければと思います。チーム各位からは「お前この前まで100敗目指せと言っていたのに」「100敗がなくなったと思ったら今度は勝てと言い出した」「そのうち55勝88敗でゾロ目作れとか言い出しそう」などと戸惑いの声もあがるかもしれませんが、珍しいものを見出すチカラがあればどんな状況でも楽しむことはできる、そんな理解で受け止めていただければと思います。
来季からは148試合制にしたい、なんて協議も始まっていると聞きますし、今季143試合制で「50/90」を達成すれば当面は史上1位の座は安泰でしょう。そう思うと、シーズン序盤に「これは引き分けでしょうな」と思った試合を奇跡的に負けてきたことにも意味が合ったのだなと思えて、今さらながら納得感がわいてくるようです。あとは西武が3勝して「50/90」を達成しつつ、中日ドラゴンズさん(※28日時点で58勝)にもあと2勝してもらって「60勝」に到達していただけると、今季を象徴する数字である「50」に位置するのが西武だけとなって気持ちいいので、西武と中日を応援して今季の余生を過ごしたいと思います。記録への敬意を大切にすれば、応援する意味と時間を見出せない球団の応援にも熱が入るものなんですね!
↓立浪監督もお疲れ様でした!最後にあと2つ勝ってウチの記録に花を添えてください!
今まで勝敗はどうでもよかったんですが、急に勝ってもらいたい要件が出てきました!
60勝まで勝ち星を伸ばして有終のビを飾ってください!
負け絡みの記録には大体顔を出す横浜もスゴいなと改めて思いました!