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弱いコンテンツが強いコンテンツをよけるのが大原則です!

噂として聞き及んでいた「日本シリーズの裏でワールドシリーズの再放送を敢行したことで、フジテレビが取材パスを取り上げられていた」という件、どうやら本当だったようです。11日、都内で行なわれた実行委員会のあと日本野球機構の井原事務局長が取材に応じ、件の問題について実行委員会で話をし、実際にそういったことがあった旨を認めたらしいのです。

↓「あ、本当だったんですね!」という感想!



フジテレビさんがノリで運営されているメディアだという印象は個人的にも持っております。「今が楽しければいい」とでもいうか、信念とか哲学ではなく、ある種の軽薄さをもって世間の風に吹かれているような、そんな個性があるだろうと。決してそれを非難しようというわけではなく、世のなかにはたくさんのメディアがあり、たくさんの主張や個性があるわけですから、そんなメディアがあってもいいと思います。軽薄なだけであれば盗撮とかする週刊誌よりは善良だと思いますし。あぁ大谷さんの自宅を勝手に撮影してたんでしたっけ…。

そんなフジテレビさんですので、大谷さんの自宅情報を放送して大谷さんに怒られつつ、大谷さんのワールドシリーズを放送してNPBからも怒られるというアクロバットな二正面作戦を展開したとしても「やっぱりフジですねぇ」と思うくらいなのですが、この件についてはどちらかと言えばフジ寄りというか、NPBの対応が上手くないなと思います。

そもそもフジテレビが何を放送しようがフジテレビの勝手です。商売としてやっているテレビ放送で、視聴者が望む正規のコンテンツを放送することに何の問題もないはずです。野球の裏に野球をぶつける姿勢にカチンと来るのであるという意見は拝聴しますが、お笑いの裏にお笑い、グルメの裏にグルメ、クイズの裏にクイズが放映されているなかで「野球の裏に野球」を咎め立てされても視聴者としてはハァとしか思いません。

日本シリーズの中継中に日シリそっちのけで「今日の大谷さん」でも長々と振り返っていたのならともかく、その日は中継担当の日ではないのですから、ワールドシリーズでなくとも何か面白番組は放送したのでしょう。大谷さんを見ていた人が「それがなければ」日シリを見たわけでもないでしょうし(※両方見たければチャンネルガチャガチャして見てたと思う)、そもそも再放送と互角の戦いになる時点で自分たちのコンテンツの弱さを嘆くべき。これなら総務省のなかの強火ファンがキレ散らかして「お前んとこの放送は公共性を著しく欠く!」「もっとベイスターズを特集しろよ!」「高木豊と野村弘樹と谷繁元信の豪華トリプル解説で!」「もういい!電波剥奪!」と言ってくるほうがまだ筋が通るというもの。

むしろNPB側が取材パスを発行するのしないという処置のほうが、独占禁止法云々だとか優位的地位の濫用云々にあたったりしないのか気になるところ。怒るのは勝手ですが、その怒りを実際に相手にぶつけるというのは、さすがに器が小さく、焦りが垣間見えてしまい、上手い対応ではありませんでした。だからこそフジテレビとの話し合いに先立って12球団会議で処分が解除され、早めの幕引きとして「やってました」「もう解除してます」「今後話し合います」という一方的な収束宣言になったのだろうと想像しますが(※今回はこれぐらいでカンベンしといたるわの意)。

↓これでフジテレビが話し合いを拒否したら面白いのになと思いました!

フジ側も別に野球中継なんかしなくてもいいんでしょ!

CSプロ野球ニュースも生放送でやるの大変だからやめたいのでは!?

野球は結果だけ言うスポーツニュースがあってもいいと思います!



そもそも「大谷VS日本」でケンカをしている場合なのですかと。目の上のタンコブであるメジャー&大谷さんさえ排除すれば日本プロ野球がナンバーワンコンテンツとして君臨できるというのならともかく、今や「野球」自体がかつての支配的立場からは遥かに遠ざかっているのが現状です。毎日地上波で巨人戦が中継され、興味のない人も野球のルールを強制的に叩き込まれる野球漬けの世界はもはや存在しません。興味を持ってCSチャンネルでも見なければ野球自体を見る機会がないのが今です。

サッカーのように「要するに蹴って入れればいいんだろ」という単純さもなく、まったく知識ゼロで見始めたら「これは何をやっているんですか…?」「ボールをぶつける競技ではない…?」「棒でぶん殴る競技でもない…?」「何をしたら勝ちなの…?」となる複雑な競技にとって、見てもらう機会の減少はそのまま市場の縮小につながります(※あなたは試合映像だけ見てクリケットのルールがわかりますか?/知らなければ野球も一緒です)。そんななかで唯一の国民的な関心事となり、「とにかく大谷さんだけは知っている」という状態で日本に野球を広めてくれている大谷翔平物語を活用して、「野球」を最大化することは日本プロ野球にとってもメリットがあるのです。本来ならば「おぉ熱心に大谷さんを中継しとるな」とフジテレビに労いの一言くらいあってしかるべきなのです。

あの期間の野球というのは「大谷VS日本」で対立していたわけではなく、「大谷&日本」で大盛り上がりだった、そう考えないと。ラーメン屋の隣にラーメン屋ができたとき、商売敵の出現に怒るのではなく、ラーメンストリートとしての発展を目指すほうが前向きで建設的であり、実際にそうした成功例はたくさんあります。もし片方が潰れるとしたら「食べ比べた結果マズかった」ときくらい。両方美味ければ両方共存繁栄できるのです。大谷さんでも日本シリーズでも、その瞬間の国民を「野球」が捕まえることができていたならそれはトータルでプラスなのですから。

本来ならフジテレビにもほかのメディアにも呼び掛けて、メリットとプランを提示しながら「この期間は朝から晩まで野球週間として盛り上げていきましょうよ」と誘導するのが運営側の仕事のはずです。殿様がキレ散らかすのではなく、大谷さんへの国民的関心をも利用して「野球」を発展させる、そういう意気込みでなくて日本の野球を司る最高峰の集団と言えるのかと。サッカーが「三笘を映すならJリーグの取材はさせない」と言い出したり、バスケが「河村を映すならBリーグの取材はさせない」などと言い出したらどれだけ滑稽なことか。よかったじゃないですか、ケンカしながらでも「大谷&日本」連合でクイズやお笑いではなく「野球」に目を向けさせられて。

どうしても「自分たちがコンテンツとして負けているのを認めたくない」「ハッキリ比較されるのはイヤ」「白黒つけないでください」と思うのなら、弱いコンテンツが強いコンテンツを避けるのが世の道理です。今年で言えば、メジャーのポストシーズンは10月2日のワイルドカードシリーズから始まり、地区シリーズ、リーグ優勝決定シリーズと消化し、ワールドシリーズは日本時間10月26日スタート予定でした。もしも途中の試合が早く終わったら、試合間隔を詰めるために日程の前倒しを検討されていたほどで、とにかくポンポン矢継ぎ早にやるのがメジャーのスタンスです。

一方で日本はCSファースト、CSファイナル、日本シリーズと3シリーズしかないのに、10月上旬はシーズン日程消化のためにポツリポツリと試合を行ない、10月5日・6日の週末などはセ・パ合計2日間で5試合しかやっていないというノンビリ具合だったもので、結果としてワールドシリーズと日本シリーズの日程が被ったのです。最後の数試合をペースアップし、10月5日・6日にCSファーストステージを消化していればワールドシリーズとのドン被りは避けられました。これまでは被っても何てことはなかったのでしょうが、今や「日本最高の選手はメジャーにいる」時代です。自分たちが選手から選ばれない弱いコンテンツであると自覚し、裏にメジャーを被せられるとキレるくらいに危機感を覚えているのなら、そういう根本的な部分での衝突を「避ける」ようにすればよかったのです。そのためにも、いつも最後の週に遅れた宿題を片付けている楽天の本拠地にベルーナドームみたいなありあわせの屋根を取り付けることをまずは提案したいと思いますよね!

↓最後に自分たちだけ試合消化しているターンでもなお雨天中止を繰り出していくスタイル!


さて、この問題はまだまだ今後もつづきます。来季はカブスとドジャースが日本で開幕戦を戦うことが決まっています。日程こそ1週先にやってくれるということで日本プロ野球の開幕戦とは被りませんが(よかったですね!)、オープン戦期間の話題は大谷さん&ドジャース一色になることでしょう。それにいちいちイライラしたりするのではなく、その注目をどのように日本プロ野球、ひいては「野球」に還元していくのか、真剣に検討していただきたいところ。

個人的には僕も「日本プロ野球に魂を囚われた哀れな者たち」のひとりなので、日本プロ野球がメジャーの下部組織みたいになったりするのは寂しいですが、愛着が特にない映画などで言えば「邦画はガンダムと鬼滅くらいしか見てないし…」「ハリウッド超大作のほうが普通に面白い…」「ぶっちゃけなきゃなくても…」とも思いますので、世間もジワジワと「日本最高の選手が出るメジャーの試合がネンイチくらいであればそれでいい」となっていたりするのかもしれませんね。いっそ大谷さんを応援するパブリックビューイングでも各地の球場で開催して、その会場でドジャース戦の前に強制的にオープン戦を見せるとかはどうでしょうか。大谷さんを見に来たはずが、間違って日本プロ野球に魂を囚われる子どもとか出るかもしれませんし。軽薄な視聴者の素直な心の動きから目を逸らさず、それを利用するくらいしたたかでありたいものですよね!

↓「大谷さんを見に来たはずが、カブスの鈴木さんと今永さんもいいね!」になったりするだけかもしれませんが!


ちなみに我が埼玉西武ライオンズは開幕と同時にシーズン終了する予定です!

なので、来季はカブスVSドジャースが一番楽しい試合になるかもしれないなと思いました!



日本シリーズの1週前倒しは真剣に検討してもいいと思います!