08:00
誰かの素晴らしい生き甲斐が伝わりますように!

12日はテレビの前で正座などして見守る時間でした。羽生結弦氏がスペシャルメッセンジャーをつとめる日本テレビ「news every.」の「伝えたい思い」が放送されたのです。2024年という年を象徴するような大きな出来事、能登半島地震そして豪雨について羽生氏が新たなレポートを届けてくれました。




ただ、通例とは異なり、この日はスタジオへの羽生氏の登場はなく、レポートはVTRから始まります。車中インタビューで「ちょっとでも笑顔が広がったらいいな」と語りながら羽生氏が向かったのは金沢市にあるスポーツセンター。9月15日に実施されたチャリティー演技会に「伝えたい思い」のチームも密着しているようです。

演技の模様はすでに当日のライブ中継などで拝見していましたが、羽生氏が祈り捧げた「春よ、来い」が改めてレポートのなかでもたっぷりと映されました。さらにこのレポートでは公演会場だけではなくパブリックビューイング会場の様子もとらえています。そこには以前のレポートでお話をうかがった、困難のなかでも懸命に輪島朝市の活動をつづけているご婦人方の姿が。朝市のTシャツをまとい目をほんのりと潤ませながら演技を見守るご婦人方は、楽しげで、束の間地震のことが心から遠ざかるような気持ちにさせられます。楽しんでもらえていたらいいなと思いました。

公演当日の夜にはリモートで金沢市と輪島市をつないでの語らいも行なわれていたようです。羽生氏も演技後ならではのテンションの高さで、くしゃくしゃの笑顔を見せながら言葉を交わします。「本当に素敵なショーで」「(朝市を)つづけてます」「秋植えの大根や白菜の種もまきました」というご婦人方の言葉を聞けば、この先にきっと明るい未来が待っている、その日は誰もがそんな強さを感じたことでしょう。

↓前回レポートにも登場のご婦人方が演技会を見守ってくれていました!


しかし、そのわずか6日後の21日に起きたのが奥能登豪雨でした。街を雨と泥が覆う胸が痛む映像。「伝えたい思い」のチームが朝市のご婦人方を訪ねることができたのは2週間後の10月4日になってのことだったのだとか。さっきあんなに楽しそうに語っていた秋植えの大根の畑は泥を被り、水はけが悪くなり、一部には腐ってしまった野菜もある…そう語るご婦人の表情は本当に曇り切っていました。

「情けないなと思って」
「本当に頑張って植えたんだけど」
「これは…無理でしょ」
「諦めたほうがいいね」
「諦めざるを得ない」

地震だけではなく、立ち上がりかけた途端に襲い掛かった二度目の天災に、落胆と諦観を滲ませるご婦人。このレポート以外でも多くの人がクチを揃える「地震だけならなにくそと頑張れたけれど、今度の豪雨では本当に心が折れた」とうなだれる姿そのものでした。畑の被害以外にも電線が切れ、断水がつづくなど、静かに染み渡るような被害がそこかしこに広がっています。

本当なら、秋植えの大根が収穫を迎える頃にその様子と合わせて、現地の人たちが頑張っている姿と明るい兆し、そしてまだまだ助力が必要な現状をレポートしたかったのだろうなと思います。ここまでのレポートの間隔からすると昨年・一昨年同様に12月頃の生出演を見据えていたのかなと想像します。それであれば自身の新たなアイスストーリー「Echoes of Life」の制作もひと区切りし、何とか日程のすり合わせができたのだろうと思います。

しかし、前を向くことも難しいような現実を前に、実りを待っていられなかったのではないでしょうか。羽生氏は先月付だという映像で、再びリモートで朝市のご婦人方に連絡を取っていました。その姿はRE_PRAYのパーカーをまとっただけの「練習着」といった装い。アイスストーリー制作の大詰めを迎えるなかで現地に赴くことは叶わないながらも、チームとして何かを伝えたい、伝えないといけない、そんな姿に見えました。

「大変でしたね…」
「心折れますよね…」
「辛いですね…」

耳を傾け、懸命に心を寄せる羽生氏。掛ける言葉も見つからないような状況ですが、それでも、少しでも、話を聞くことが、誰かに話すことが、安らぎになればいいなと思いながら僕も見守るばかりです。すると、こんな厳しい状況のなかでもご婦人方にチカラを与えているものがあるのだと言います。それはやはり朝市なのであると。

同じ朝市の仲間たちが住む仮設住宅に出向いて、わずかに残った野菜で朝市を開いているのだというご婦人方は、そこで出会う仲間たちとの交流に自分自身もまた元気をもらっているようでした。そして最後には「朝市のおばちゃんって本当にエネルギーあるもんね」という力強い言葉が飛び出し、羽生氏もようやく「目の前でそのエネルギーを感じています」と笑顔を見せました。ご婦人方の「今度はいいお正月を迎えたい」「なんとかいけると思う」「復活します」の意気込み、きっとそうなるように僕も祈りたいと思いました。




生き甲斐というのはいいものだなと思います。生きていく張り合いや喜びがあるというのは強いものだなと思います。豪雨のあとはさすがに落胆を隠せず、暗く曇っていたご婦人方が朝市に出るやまた太陽のように活力を取り戻すのですから。日々の暮らしが大きく損なわれ、不便がたくさんあるのは辛いことですが、生き甲斐があれば「生きる」ことに取り組むチカラがまた湧いてくるのだな、そんなことを思いました。

今日困っていない僕らにとっても生きるヒントをもらえるようなレポートだなと思いました。傍目にも「これは心が折れてしまう」と思うようなあの理不尽な二度目の天災でさえも、生き甲斐を持つ人の心を折るには至らなかったのだとしたら、生き甲斐というのはとても強いものだと思うのです。それを見つけることが人生の活力であり、もしかしたら一番の助けなのかもしれないなと。

その意味では「頑張れ」「負けるな」「こんなに大変なんです」とコチラから現地や世間に伝えるというだけではなく、その素晴らしい生き甲斐がもっと輝くように現地の思いを世間に伝え広めていくことにも「伝えたい」の一面があったりするのかなと思いました。たとえば「その朝市に行ってみたい」という気持ちが世間に広がり、現地に届いていったら、生き甲斐もまた一層強くなるのかなと。今はまだ仮設住宅で日々の暮らしの再建に取り組んでいるお仲間たちも、「もう一度朝市を」とチカラが湧いたりしたらいいのになと。

9月のチャリティー演技会も、現地の高校生が見せ場をつとめるような全体構成でしたが、それもまた彼らの生き甲斐を輝かせようとする意図だったのかなと思いました。そういう機会があることで、生きるチカラが湧き出すことを期待するような。届ける・与えるだけでなく湧き出すことを願うような。羽生氏のシメの言葉「頑張るものがあるって素敵だなと思うのと同時に、いろんなところに笑顔が広がっていってくれたらいいなって願っています」の言葉に、僕も「伝われ…!」の思いを重ねる、そんなレポートでした…!

↓きっかけをもらって考えたことが、やがて現地にチカラとなって届くように願います!

思いが伝わり、そこいいねと誰かが思う!

訪れる人が張り合いとなってまた元気が湧く!

そんなサイクルが生まれたらいいなと思いました!

そして、そうした地をアイスストーリーが巡っていくような未来を思い描きました!



目下模索中の広島巡りの先にも、行きたい場所がまだまだ増えそうですね!