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無料はワイワイ、有料はネットリ!

ひとしきり世間を巻き込んで盛り上がりました「サッカーワールドカップ最終予選のアウェー戦がタダで見られない」問題。「そうかー、じゃあ見なくていいや」と世間も一旦は落ち着いたわけではありますが、さまざまな方のご尽力によって問題は見事に解決されました。何と、DAZN様のありがたい申し出によってアウェー戦の無料配信が実施され、日本全体が一丸となってサッカー日本代表を応援できる環境が整ったのです。

↓誰がお金を出したかは知らないけれど、タダになることはいつでも歓迎です!


↓みんなが100万回パス(いいね等)をつないだら無料配信するとの建付けでした!


「うーん、この出来レース感」といった言葉をグッと飲み込む大人たちに支えられ、無事に11月の2連戦を無料配信することになったわけですが、15日に行なわれたインドネシア戦の中継に対しては不満が噴出していました。この無料配信というのは通常の「中継」として行なわれるものではなく、「FAN ZONE」なるグループチャットでワイワイ盛り上がろうというコミュニケーションチャンネルで行なわれていたためです。YouTuberで言うと「●●同時視聴雑談」みたいな内容の番組に、放映権を持っているので正規の映像が一緒に映せると、そういう建付けだったわけです。

その結果、何が起きたかというとワイワイガヤガヤと雑談をしながら見守る同時視聴配信に「出演芸人のガヤがうるさい」「出演芸人のガヤがいらない」「出演芸人のワイプがデカくて試合が見づらい」と文句タラタラになったわけです。まさに世間でよく遭遇する「金払いのいい客は文句が少なく」「無料とか割引とかにこだわるケチほど些細なことでクレームを入れる」現象そのもの。貧すればクレーマー化するという終末世界の地獄絵図を前に、タダで見られたことへの感謝よりもガヤへの文句が先に噴出するなら、やはり何事もタダにするものではないなと改めて思わされましたよね。100円でも10円でも課金させれば、ガタッとヘンな輩は減るというのに(※ヘンな人はネットで課金する手段を持っていなかったりするので)。

そんなインドネシア戦の反省を踏まえたか、DAZNが「だーかーら、FAN ZONEだっつってんだろ!」という姿勢を鮮明にしてきたのが無料配信第2戦となる中国戦でした。インドネシア戦ではいわゆる解説ポジションに林陵平さんを置いてしまうというミスキャストがありましたが、中国戦でその位置に置いたのはサッカー選手としてのキャリアを持つ面白オジサン・槙野智章さんでした。中途半端にサッカー中継みたいな顔をするのではなく、サッカーを見ながら盛り上がっている居酒屋を映す番組に「たまたま本物の試合映像がのっちゃっている」という建付けがより鮮明になり、配信視聴者もようやく番組の楽しみ方を理解した模様。試合開始前に岩政大樹さんが10分ほどネットリと本日の試合展望を語ったあとに槙野さんが「いやー勉強になるなぁ!」とオチをつけた場面などは、無料視聴者からも拍手喝采でした。「小難しい話はいいんだよ!」「つづきはアントラーズを勝たせてから言え!」「俺たちはもう飲んでいるから何も理解できない!」という視聴者がガッチリ一丸となり、ようやく楽しい「FAN ZONE」が始まったのでした。

↓しおりんもいるし、普通にコッチのほうが楽しそう!



迎えた中国戦は、まさにFAN ZONE向きの一戦。大アウェーの雰囲気というのはもちろん、まるでここだけ昭和にタイムスリップしたかのように、起きる出来事がハチャメチャです。早速試合前には「ピッチの横幅が通常より3メートルほど狭い」という小細工が発覚。それを「横幅を狭くすることで日本がサイドのポケットをつく余地を失わせる戦略」と考えるか、「よくわかんないけど看板の位置とかの都合で何となくそうなっちゃった」と考えるかは難しいところですが、飲みながら見るにはこれぐらいアクシデントがあるほうが面白いというもの。

スタンドを埋める真っ赤な大中国応援団。日本の君が代にぶつけられる大ブーイング。声量が出過ぎて何を歌っているのかもわからなくなる大中国国歌。国歌のあとにはスタンドから紙テープが舞い跳び「全女かな?」(※プロレスの話です)と思わされる場面も。とても先日日本で対戦したときには7-0でボコってやった相手とは思えません。十分に警戒(※リアルに何をやってくるかわからないの意)して臨まなければいけないようです。

そして迎えたキックオフ。日本の布陣はおなじみの3バックで3-4-2-1といった形。中国は4-4-2でしょうか。通常の中継であれば「相手の布陣との兼ね合いで…」「システムの嚙み合わせは…」「ここに浮いた選手が出るので…」みたいな話が始まるところですが、FAN ZONEでは自分が買ったWINNERクジのオッズがどうこうとか、仕事中に飲むドリンクの種類はどうこうといった話で盛り上がっています。うーん、いい!平日深夜にシステム論をぶち上げられても頭痛がするだけですからね。そんなことより、クジでも握って飲んでいるほうが健康的というもの。「生で結果だけ見たい」という視聴者にとっては、むしろコッチのほうがいいかもしれませんよね。

槙野さんを中心としたサッカー漫談(遠藤航さんのマウスピースは家に何個あるとか、スパイクの靴底の選び方とか)を聞くこと20分。現地ではさらなるハチャメチャが起きていました。前半20分頃にはGKの鈴木彩艶さんの顔にレーザーポインターらしき緑色の光がチカチカ当てられたほか、前半33分過ぎにはピッチ上に乱入者が出現。中国サポーターの男のようですが、半裸で身体に何やら文字など書き込み、ピッチを駆け回っているではありませんか。あっという間に警備員に取り押さえられましたが、さすが中国といったところ。「やっぱり酒のツマミは乱闘と乱入だな」とお茶の間FAN ZONEもニッコリです!

↓こういう試合はむしろFAN ZONEで見たほうが「おおおぉい!」ってやれそうですね!槙野さんは何故か静観でしたが!


それ以外にも中国側がチョコチョコ蹴ったり体当たりしてきたりするなかで、それをサッカーでねじ伏せられたらそりゃあもう気持ちイイというもの。迎えた前半39分、まず日本は左サイドのコーナーキックから小川航基さんの見事なヘッドで先制!さらに前半終了間際には今度は右サイドのコーナーキックからゴール前を横断するように走り込んだ町田浩樹さんが後ろにすらすと、大外で待ち受けた板倉滉さんがヘッドで追加点!「ピッチの幅が狭かったのでいつもより正確に狙えました」とでも言ってやったらさぞ痛快だろうなと思う最高の前半となりました。

↓前半2-0での折り返し!FAN ZONEはもはや前祝いの雰囲気でした!通常中継のほうは落ち着いた感じでしたが!




ハーフタイムにはSNSの反応などを見ながら、インドネシア戦の反省を活かした中継になっていると視聴者からのお褒めの言葉をあずかり、苦笑いなどするFAN ZONEの面々。リアルタイムでの視聴者数は把握できていないようでしたが、寄せられる多くのコメントなどから無料視聴者の期待と手応えを強く覚えている様子です。視聴者からの質問にも軽快に答えるなど、後半に向かってさらに雑談は盛り上がっていきます。

後半4分に中国が1点を返すと、試合映像の歓声もグンと盛り上がり、まさに居酒屋で見ているような気分が高まります。「インドネシア戦でガヤがうるさいと言われた」×「中国戦ではガヤを抑えて試合映像の音量を上げる方向にした」という掛け合わせの結果として、大音量の試合映像と言葉を聞きとれない程度のガヤが飛び交う「臨場感」が生まれたというのは、災い転じて何とやらだったかもしれません。すぐさま日本が点を取り返してドーンと盛り上がった際には、FAN ZONEも大盛り上がりで、画面に向かってハイタッチでもしたいような気分になりましたからね。飲みながら楽しく見ようという話なら通常の中継よりむしろいいんじゃないかと思うほど。何と言ってもタダですし!

↓通常中継側で同じゴールシーンを見返したら、やはりいつもの感じでした!


その後もしっかりとリードと雑談のペースを守り切る日本。玉井詩織さんがドラマとの裏被りでぬいぐるみに変身するアクシデント?もありつつ、順調に時間を消化していきます。試合終盤には槙野さんも「勝ったな」と余裕が出たのか、橋岡大樹さんに初めて会ったとき「槙野さん、どうやったらテレビ出られますか?」と質問されたというエピソードも披露してくれました。橋岡さんもいい迷惑…じゃなくて気にかけてもらって嬉しかったのではないでしょうか。今度はぜひサッカーに関する質問もしてあげてほしいなと思いました。

そんなこんなで終わってみれば大アウェーのなかで中国に対して3-1の快勝。2位以下に暫定で勝点10の差をつけ、数字上の敗退の可能性こそまだ残るものの、もう事実上ワールドカップ出場は決定と言ってもいいでしょう。何ならあと全部負けても本大会には出られるんじゃないかという独走ぶりですので、3月にホーム・埼玉で行なわれるバーレーン戦・サウジアラビア戦では数字上の可能性も含めて確実にワールドカップ出場を決めてくれることでしょう。

無料でアウェー2連戦を見守りつつホームでの予選突破へと視聴者の関心をしっかりつなげることができたのは、DAZNさんの英断あればこそ。改めてDAZNさんに感謝するとともに、ぜひ今後もこの建付けをつづけていただけたらありがたいなと思いました。今回実施された「無料のFAN ZONE配信は解説が槙野智章さんで半分は雑談です」「サッカー解説がご希望であれば会員登録をして試合中継を見てください」というすみ分けは、視聴者層ともマッチしたいい施策だと思いますので。

そもそもよくある地上波でのダブル中継では「主音声がネットリとマジメな中継」「副音声がガヤでワイワイ楽しく」という割り振りが多いですが、本当は逆なのかもしれません。普段はあまり試合を見ず、飲みながら「生で結果だけ見たい」という層には雑談のようなトークがいい箸休めにもなるでしょうし、そういう層こそむしろボリュームとしては大きいはずです。だからこそこれまでも松木安太郎さんのような居酒屋解説が重宝されてきたわけでしょう。無料配信はガヤまみれで真剣な人がちょっとイラつくくらいにし、上質な有料配信のほうでガッツリとお金をいただく、そんな課金形態を実施してみていただけると新規獲得と収益拡大とのバランスが取れたりするのではないかと思いました。

「ウザい広告を消したいならお金を払ってください」と同じ理屈で、ウザいガヤを消したければお金を払わせるシステムを導入し、無料配信で視聴者層を広げつつ、有料客が満足する上質な配信と共存させていけたら、みんなに幸せな未来が訪れるような気がしますからね。「無料は槙野か〜」と思った人は無料を卒業して有料に移行してくれたら、「槙野でいいです」「違いもわからないし」「むしろ楽しい」という人向けの無料配信もより一層ワイワイガヤガヤできるような気がしました!

↓「お金を払うとコッチが見られる」なら課金するときも納得感ありますよね!

映画館でも音響がすごいスクリーンは高いみたいな感じで!

無料じゃないなら見ないって人は槙野・松木等にお付き合いください!



いいものを全員に無料で届けるのは大変なので、無料はそれなりでいいです!