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2024年11月25日08:00
侍ジャパンも埼玉西武ライオンズみたいなチームでした!
野球世界一決定戦という触れ込みに「そうですね、すごい戦いですね」とウンウン頷く大人の慎みがある皆さん、こんにちは。去る日曜日、ついに僕もその舞台・東京ドームへと足を踏み入れてきました。何と、今さらの盛り上がりで恐縮ですが、世界野球プレミア12の決勝を観戦してきたのです。足掛け5年、27連勝しているチームが僕が見に行った途端負けるとはよもやよもやでしたが、まぁあの顔ぶれじゃしょうがないですよね。途中で隅田知一郎さんがアップアップになって、それを源田壮亮さんが好守備で救うも、その後の援護は特になく無抵抗敗戦…みたいな試合、埼玉西武ライオンズだけでなく侍ジャパンでもやってるんだなと思ったらちょっと安心しました!
↓やってきました、決勝の舞台・東京ドームへ!
↓多くのファンが現地に詰めかけていました!
この観戦を決めたのは実は前日土曜の夜のことでした。そもそも大前提の部分で「プレミア12かぁ…」「大谷さんもおらんし…」「それどころかあんまよく知らない人がいる…」「この選手、みんなのパワプロオールスターズに入ってる?」「入ってなくない?」くらいの温度感でそんなにのめり込んでいなかったこともあり、バンテリンドームや台湾に行ってまで応援するほどの熱量はなく、行きやすい距離でやる休日の試合はスーパーラウンドの最後の2試合だけで日本が出場するのかどうかも未確定だったため、チケットを取り逃がしていたのです。
日本のスーパーラウンド進出が決まってからチケットサイトを見れば、すでに決勝戦のチケットは売り切れという状態。転売チケットは若干ダブつき気味ではあるものの強気の高額出品(※受け渡しを水道橋駅のコインロッカーに指定するなど粘りの姿勢)によって相場は崩れず、諦めて正規のリセールサイトにチケットが戻ってくる気配はありません。まぁ、スタートダッシュで買わなければこうなりますよね、というだけの話なのですが、それでもまだ「まったく無理」というわけでもなさそうでした。
木曜・金曜の試合はド余りで当日券の販売もしていましたし、土日の試合も追加見切れ席の販売を急に始めるなど、なんやかんやでチケットは出つづけていたのです。日曜のチケットをどうしても取りたい人がいて、それが取れなかった場合、普通なら「木曜でも金曜でもいい」となりそうなものですが、そうはなっていない程度の世間の熱量。公式のチケット販売サイトを見ると「予定枚数終了」とは書いてあるものの、いつまでも「販売中」のステータスでサイトのトップのほうに枠を出してきていたりして「店は開いている」気配がするわけです。
そしてちょこちょこ店を覗きにいくと、海外分なのかスポンサー分なのか、どこかからチケットが日々戻ってきているようなのです。どこかのチームが敗退すると、その日の夜にチケット販売サイトに少数のチケットが復活することの連続。「ははーん、アメリカか台湾が消えたらこれは結構戻りが出そうだぞ」と思い、土曜日の試合で決勝進出の2チームが日本と台湾に決まったのを見計らってサイトを覗きに行くと、案の定販売サイトには大量の戻りチケットが。そこで首尾よくチケットを入手しまして、決勝の日だけ見に行くというズボラな観戦が実現した次第です。
いざ現地に到着すると、さすが決勝戦だけあって大変な盛り上がりです。地元日本の大応援団と、それに負けない熱量で盛り上がる台湾応援団。人数では日本、熱気では台湾といった感じで、互いに譲らぬせめぎ合いとなっています。僕の周辺からも「加油!」の声が多数あがっており、台湾のこの大会・この試合に懸ける想いが伝わってきます。台湾は土曜日の日本戦で「予告先発投手を罰金払ってでも決勝にスライドする」ということをやっていましたが、(最善の振る舞いとは思わないものの)それも勝ちたいという強い気持ちの表れでしょう。その必死さは日本を明らかに上回るものであり、ゆめゆめ油断はならない相手です。
↓満を持して見に来ましたよ!
↓決勝のカードは日本VS台湾です!
↓これが栄光のプレミア12の優勝トロフィーです!
↓4万大観衆が世界一が決まる瞬間を待っています!
日本の先発は世界一を知る侍・戸郷翔征さん。関係者から漏れ聞こえる話では決勝に進出した場合は戸郷さんが先発することは代表チームを集めた当初から決まっていたとのこと。なるほどこのあたりは今大会が「ラグザス プレミア12(読売新聞社など協賛)」なんだなといった感じもしますが、まぁほかに出したい投手がいるわけでもありません。直前のコーチ陣の見立てが「70点」のデキであったとしても、しっかり投げていただければ無問題。初回は二死から二塁打を許すものの、後続をしっかり断って無失点。2回・3回・4回とチョコチョコ走者は出しますが失点はせず、先発としての仕事をしっかりこなしていきます。
一方、台湾の先発は罰金スライドで決勝に臨むリン・ユーミンさん。リンさんは和風のタトゥーをガッツリと両腕に入れており、かなり気合が入った選手である様子。投球のほうも左腕から150キロ付近のチカラのあるボールを投じ、そこに落差のあるチェンジアップを交えてタイミングをズラしてきます。投球フォームにもちょっとクセがあり、何となく打ちづらそうな感触も。日本打線は初回・2回と三者凡退に抑えられ、3回に源田壮亮さんのピッチャーのグラブを弾く内野安打こそ出ますが、4回まで終えてヒット1本という状態。台湾は守備でたびたび好プレーを見せるなど集中力も高く、今日はスンナリ先制点でラクな試合運びとはいかなそうです。
↓なかなか気合の入ったタトゥーです!
そうするうちにやってきたのがターニングポイントとなった5回表。2023年のWBCの決勝では「2イニング」「2イニング」「以降5人が1イニングずつ」「ダルビッシュ、大谷も投入」という総力戦だったのに比べると、シーズン中のようなドッシリ構えた継投策を取る井端ジャパンは、ごく普通に戸郷さんをマウンドに送りますが(勝ち投手になれ!の心)、この回の先頭打者に先制のホームランが飛び出します。「だったら回の頭で替えときゃよかった」の後悔は先に立たず、その後もヒットと四球で一死一・二塁とされます。ここで打席には今大会当たりに当たって打率6割台というチェン・ジェシェンさんが入りました。この試合の趨勢を左右する大きな大きな場面でした。
思えば日本が勝つ世界線があるとすれば、この場面が最後の分岐点だったかもしれません。チェンさんには初回痛烈な二塁打を打たれていました。戸郷さんはすでに4回を投げ切っており、十分に先発の役目は果たしていました。1点を先制され、これ以上の失点は避けたいところでした。走者を得点圏に置いて打者は今大会打率6割を誇る台湾の主将でした。もしここで打つ手があったのであれば、迷わず次の手を打つタイミングだっただろうと思います。同じ「選手を信じる」にしても次の選手を信じるタイミングだっただろうと。それがやり直しの効かない1試合で最大値を出すための采配だっただろうと思います。すべては結果論で、結局誰を出しても打たれていたかもしれませんが、ここで「動かない」は代表チームとしては消極的過ぎました。いい選手がいないんじゃなくて、いっぱいいるんですから。全員代表なんですから。全部のカードを切って手が尽きたときに勝っていればそれでよかったのですが……
↓イヤな予感しかしなかったので念のため打率撮影しましたよね!
↓結果、見事にスリーランホームランを打たれましたよね!
↓あーーーーーーこれで一気に0-4!動かざるごと山のごとしで0-4!
↓台湾ベンチはお祭り騒ぎで殊勲のチェンさんを出迎える!
あまりに大きい4失点。ここまで比較的ラクな戦いで勝ってきた日本にとって、今大会のなかで本当に敗戦を意識した瞬間はこれが最初だったかもしれません。そして、ひとたび追い込まれてみると日本の打線は脆弱でした。メジャーリーガーの不在は致し方ないとしても、辞退者続出によって本来組みたい打線も組めず、一挙4点反撃というイメージはそもそもしづらい陣容です(※結果としてビッグイニングも作ってはいるけれど、それをアテにできる打線ではないの意)。そして何より支柱というか、頼るべき主軸がいません。もしも「1打席勝負」の試合があったとき、各選手の所属チームでその打席を託される選手がここにいたでしょうか。所属チームのなかでも「これが運命を分ける1打席だ」となったら、ここにはいないほかの打者が出ていくのではないでしょうか。成績的には十分に日本を代表する選手ぞろいではありますが、本当にチームを背負ってきた打者は何人いただろうかと思います。WBCの準決勝メキシコ戦4-5の1点ビハインドで迎えた9回裏、二塁打を放ってチームの雰囲気ごと変えて見せた大谷さんのように、その後の命運を託されサヨナラ打を放った村上宗隆さんのように、この人が打てば勝てる、この人にまわして勝つんだ、そういう支柱…すなわちチームの形が不明瞭なまま地力だけで勝ってきてしまったことが、この苦境につながっていたように思います。場内の歓声が一番大きくなる牧秀悟さんが何故か6番に入っていたりするチグハグさはその象徴でしょう。
5回裏、1点でも取ればまだ流れを引き戻せたかもしれないイニングはふたり走者を出すも無得点。クリーンアップが打席を迎えた6回裏は三者凡退。7回・8回も走者すら出せず、日本の打線は沈黙をつづけます。逆に台湾は追加点こそないものの、7回の攻撃では日本の隙を突いてダブルスチールを決めてみせたり、日本のバッテリーが本塁に背を向けたタイミングでホームスチールを狙う動きを見せたり、ライトポール際にあわやスリーランホームランという打球を放ってみせたり、一度は追加点の「1」がスコアボードに記録されるあわやタイムリー内野安打という場面を作ったりと、ますます意気盛んです。日本側が沸いたのは「あぶねー、今の大飛球はファウルでした」とか「あぶねー、際どいタイミングながら一塁アウトでした」という、リプレー検証で日本が救われた場面だけ。「死ななかった!よかった!」みたいなことしか起きないのでは逆転などおぼつきません。
↓あわや台湾の追加点という場面で「足はベースについてました」を確認する牧秀悟さん!
↓ダメ押しかと思われましたがリプレー検証の結果アウトで日本は救われることに!
↓それでも「負傷覚悟のヘッスラで追加点を狙う」台湾のガッツに気圧されました!
迎えた9回裏最後の攻撃、日本は先頭の未来人・辰己涼介さんがヒットで出塁しますが、つづく森下翔太さんは内野ゴロに倒れて一死一塁。場内では「せめて牧までつなげ」という期待感が高まりますが、何とここで栗原陵矢さんはファーストライナーで走者戻れずゲッツーとなり、牧さんまでまわることなくゲームセット。期待の牧さんにあと1打席まわしたかったところではありますが、本当に打席をまわしたい打者がいるのであれば前のほうに置くのが当然であり、下位に入っている打者は「上位より1打席少なくても仕方ない」という意味ですので、これはもうしょうがない。大谷翔平さんが何故ドジャースで1番に入っているのかの意味を改めて感じる幕切れとなりました。まぁ、打席まわったところで何も起きてないとは思いますが!
↓最後はファーストライナーゲッツーで日本敗れる!
↓プレミア12優勝は台湾!台湾が悲願の世界一!
↓MVPは当然ですが決着のスリーランを放ったチェン・ジェシェンさん!
↓優勝トロフィーを掲げる台湾!
↓取っ手があるとは言え、結構雑に持ちますね!
今大会のなかで3試合やって2勝1敗ですから地力は普通に日本のほうがあるのでしょう。ただ、台湾はこの決勝だけ勝てばいい、ここで勝つためにすべてを決勝で出すという本心からの勝利への意欲がありました。罰金を払ってでも投手をスライドさせたり、怪我をすることも厭わずに1点を取りに行ったりする心意気を見ると、最大値は台湾のほうが上だったなと率直に思います。
選手たちにとっては悔しい銀メダルだったのかもしれませんが、相手の強さを認め、それを讃え、これは世界の野球の発展の1ページであると喜ぶ気持ちを持って、この銀に胸を張ってほしいと思います。それは銀に至らなかったチーム・目指していた先に銀があったチームに対する当然の振る舞いであり、金を獲ったチームへの礼儀であろうと思います。銀を大事にできないで、その上の金だけ欲しいなんて話が通るわけがないのです。この銀を大事にして、また金への挑戦ができたらいいなと思います。
もちろん、相手の強さは認めつつも心の底から「負けた」とは僕も思っておりません。大谷翔平さんのいない日本を倒しても、それは本当に日本を倒したことにはならないのです。「大谷さんがいるチーム」が真の日本であり、真の日本となってこそコチラの熱気も高まるというもの(大谷さんがいれば平日だろうが当然超満員)。その意味で、次なるWBCへの体制づくりで一番大切なのは「大谷さんを呼ぶ」ことです。采配云々なんてものは二の次で、まず大谷さんを呼ぶことができるのかどうか、それをチーム作りの第一歩としてもらいたいなと思います。
「呼べば来るだろ」とは簡単に思えません。本当に世界一に挑む気持ち、覚悟があるのかどうか、大谷さんもまた侍ジャパンを見定めているだろうと思うからです。チームの組織作り、監督との対話、メンバーたちの顔ぶれと意欲、そういったなかに世界最高の選手の情熱に火を点けるものがあるのか、それが問われるのかなと思います。すべてが井端監督の責任とは思いませんが、今大会に臨むにあたって「怪我してたら休む程度の大会」みたいになってしまったのはチームを統べる監督の求心力による部分も大きかったと感じています。どんなことをしてもここに出る、ここに出るために怪我などないようシーズン中から万全を尽くす、そういう火をここに至る前に点けることができなかったなと。決勝戦前のいまひとつ盛り上がらないミーティングなど見ていると、このままWBCに突入するのはどうかなと思いました!
↓大谷さん!次は広告以外でも来てくださいね!
大谷さんがくれば「大谷さんがいる」ことで日本に火が点く、その順番!