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喉元過ぎればすーぐ熱さ忘れる!

トランプ大統領の就任演説が爆弾発言しかない絨毯爆撃みたいな内容で驚かれた皆さん、こんにちは。僕も昨日はミクロな世界での小っちゃい爆弾発言にビックリしておりました。トランプ大統領に比べればクラッカー程度の威力ですが、全身に衝撃が走り、「3ヶ月前と全然話が違ってきてる…」と震え上がりました。

クラッカーが破裂したのは21日に行なわれた埼玉西武ライオンズの出陣会見でのことです。2軍・3軍・4軍(※実力換算)の全コーチが集結した全体会議後に、広池浩司球団本部長が報道陣に言い放ったその発言は、2025年驚きの発言ランキングにおいて「あとは弁護士と話してほしい」「今後の芸能活動についても支障なく続けられることになりました」「第三者の弁護士を中心とする調査委員会を立ち上げる」などと並んで上位争いを展開するものでした。

「チームの目標ですが、ここはやはり、当然日本一です」

その言葉を聞いた瞬間に背中にビーンと走った衝撃たるや。地図も持たずに家を出た少年が「目的地は火星!火星にミニフラッグ立てる!」と言い出したような気分でした。トランプ大統領が「火星に到達する」と言うぶんには、イーロン・マスク氏のロケットとかNASAとかが何とかするんだろうなぁと思いますが、途中地点どころかスタートを切れるかどうかが案じられる少年が火星へ出発しようとしていたら何と言うでしょう。そうですね、「いいから学校に行きなさい」ですよね。

一応よくよく聞けば「風船100個集めれば宇宙に行けるかな?」くらいの計画感はあるようで、「守りの野球で何とか上位に食らいついてCSに進出する」「投手力を活かして短期決戦を勝ち抜く」「日本一の景色を見られる可能性はある」という皮算用をしている模様。これが社会であれば「で、具体策は?」「その『何とか』を具体化するんだよ」「見えてないんだろ?」という話になるのですが、その部分は外部コーチの招聘という時間が掛かりそうな話しか出てきません。大谷翔平さんと山本由伸さんと佐々木朗希さんを総獲りしてきても手駒が足りない気がするのに、「肥料買ってきた!」と言われてもという話です。どんなに一生懸命育てたとしてもプチトマトはトマトにはならないのですから。

そんな「スーパーエースがいれば短期決戦を勝ち抜ける」みたいな夢物語を球団本部長がしている横に、現役時代に通算182勝というレジェンドクラスの成績を残しながら日本シリーズでは7度登板で0勝5敗と負けつづけた西口文也監督が座っている時点で「これはショートコントなのか…?」と思いましたよね。もしかしたら西口監督が「嫌味かオイ!」とツッこむ展開なのかと思ってずっと待っていたのですが、全員真面目な話として受け止めていたようで頭を抱えましたとも。

↓この「理路整然」っていうワード、絶対ニヤニヤしながら嫌味で入れてるでしょ!



そもそもですよ、昨年10月の西口監督就任会見の際に、当時の飯田光男球団本部長が来年の目標を聞かれたときには「当然優勝っていうものを目指してやっていきますけれども、優勝がマストということではなくて、しっかりとしたチームの強さっていうものの積み上げが必要だと思いますので、いかに成長していけるかというところに主眼を置いていきたい」と語っていたのに、そこから3ヶ月経って人がガッチャンガッチャンしたら何故「CSさえ出られれば日本一いけるでー!」になるのか。アレですか、大統領令ですか。トランプ大統領みたいに前任者の政策は全部撤廃して、ドーンといってみようですか。「優勝と日本一は違うし…」「優勝からのCS進出なんて言ってないし…」「別に矛盾はしてないと思う…」的な話ですか。せっかく5年くらいは暗黒暮らしをしようと皆が諦め始めたのに!わずか3ヶ月ですべて喉元を通過しただなんて!

↓「(3位からCSを勝ち上がって日本一になるので)優勝はマストではない」というロジックですかね!


そんな衝撃の大きさの前には、公式動画についている字幕が「積み上げた負け星が42」(※正しくは、積み上げた負け越しが42)だったり、「ただそんな不況の中でも」(※正しくは、ただそんな苦境の中でも)だったり、その他細かい「てにをは」が抜けていたりして球団内部にも話がちゃんと伝わってない感じがすることなど気にしている場合ではありません。いいですか、日本一という目標のためにCSを狙うとなれば、4月から育成に全振りとかそういった極端采配もできませんし、負けが込んだら「うーん」くらい言わないといけなくなるじゃないですか。それでは昨年の悲劇を繰り返すだけで何の進展もありません。ただただ監督を変えて同じ世界線をなぞるだけ。

せっかくじっくりと時間をかけてファン・関係者・スポンサーに「弱いな」と分かっていただいたのですから、これから数年間は「弱いけど頑張ってます!」をアピールしてやり過ごすべきなのです。数値目標など掲げず、「とにかくご飯だけはホッカホカで出します」とか「夏祭りイベントにチカラを入れます」とか「西口監督には3年計画でホップ・ホップ・ホップをお願いしています」とかのらりくらりしながら、90敗くらいを予定調和のコンセンサスラインとして、もし89敗で止まったら「前年比プラス」とか言って胸を張る…そんな空気を数々の犠牲によってようやく醸成したというのに。

振り返れば2021年に新庄剛志さんが日ハムの監督に就任したときに「優勝なんか目指しません」と言い放ったのは、当時は僕も球界の常識に囚われて「新庄さん一流の逆張り」くらいに思っていましたが、あの一手が現在にもつながる新庄監督の聡明さを示した黄金の言葉だったなと思います。優勝を目指せる戦力ではないのに優勝など目指したら、目標と現実の乖離で必ず歪みが生じます。「目標未達」と詰められます。現状と未来を正しく認識したうえで、先手を打って「目指さない」と宣言したあの聡明さ。

それに加えて、「成績不振でクビ=ユニフォームを脱ぐ」という図式を逆手に取って、あらかじめBIGBOSSなる謎の人格をまとっておき、最下位で初年度を終えたあとはBIGBOSSのユニフォームを脱ぐことでケジメをつけるという「外部装甲」まで仕込んであるという先手先手の動き。自身のエンタメ力と新球場という夢で界隈の空気を明るく保ちつつ、じょじょに体制を整えてついにシーズン2位&CSファイナルステージにまで駒を進めてきた道のりは、あの日「優勝を目指さない」ところから始まったのです。

そんな事例を間近に見てきたなかでの「チームの目標ですが、ここはやはり、当然日本一です」。これではスタート地点に戻るのにまた1年余計にかかるのかと僕が頭を抱えたとしても致し方ないでしょう。もう切れる監督カードがないなかで、西口監督が心身ともに健康に、じっくりとチーム再建に取り掛かれるよう、「結果」を求める空気を払拭しないといけないというのに、「希望」を求める空気で後押ししないといけないというのに、「何とかCS出れば日本一いけるでー!」とはどういうことかと。別に目標なんて何を言ってもいいのですが、目標未達で詰められる近未来の予測もできていないのかなと思うと、これでは今年も後手後手になりそうだなと思うわけです。その目標設定はワールドカップみたいに反省する間もなく1週間くらいで終わって、終わったらチームが解散して詰められることがなく、次までの4年間で世間が忘れてくれるときのやり方です。1年間詰められつづけるシーズンでやってはいけません!

↓普通の弱さなら「CSから日本一」でもいいんですけど、普通じゃないんでね!


今年の現実的な目標は普通の弱さに戻る、とかですかね!

自慢の投手陣はこれから次々メジャー(経由でソフトバンク)に行くと思うので、普通の弱さをキープしつづけるだけでも大変だろうなって思ってます!



その後の監督・コーチからの意気込みも拝聴しましたが、西口監督が初手から「守り勝つ野球」って言っちゃってる時点で我が方が苦しいのは誰の目にも明らかです。どこの世界に、打って勝てる戦力がありながら初手から「守り勝つ」を目指すチームがあるでしょうかと。ないでしょうと。「守り勝つ」というのは「打って勝てない」チームが仕方なく選ぶ道であり、打って勝つこともできるなら打って勝ったほうがいいに決まってます。そのほうがラクですし、どの道打たなきゃ勝てないんですから。スモールベースボールはビッグベースボールができないチームがやる弱者の戦略であって、目指してやるものではありません。目標と現実の乖離が滲んでいるなと思わずにはいられない出陣会見でした。

まぁ、「日本一」って言っちゃったものは仕方ないので、なるべく目標に近づけるよう陰ながら応援していければと思います。Aクラス、CS突破、日本一、できるものならもちろん僕も大歓迎です。興行なんだから「できない前提」であらかじめ上手な予防線を張ろうとすること自体が興ざめという意見も理解はできます。界隈の空気などはむしろそちら側のような気配もしますしね。皆が頭抱えているわけではなく、むしろ「広池よく言った」と盛り上がっている感じでしたからね。夢は言わなきゃ叶わない。嘘から出たまこと。言霊、言霊、言霊。火星に行くと言っていた少年が大阪万博までたどり着いたら花丸大合格というラインで、この目標への道のりを見守りたいと思います。一応手にはぶん投げる用の「火星の石」を握り締めまして!



例年「2位でCS」を目指しておりましたが、今季の目標は「元気な6位」です!