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屍と空席の山が生まれるまで徹底的にやりましょう!

待望の報せと羨望の品物がほぼ同時に届きました。転売ヤーが「今年一番の稼ぎ場」と大挙暗躍していると評判のメジャーリーグ東京シリーズの件、我が家にもローチケ一般抽選で当選したドジャチケが到着したのです。本当は券面の写真など見せて自慢でもしようと思ったのですが、自分のチケットの画像が「私は確かにこのチケットを持っています」の転売用画像にでも使われたら腹が立つなと思ってチケットそのものの掲載は控えますが、とにかくまずは正規ルートで正規のチケットを確保したことで、この先が楽しみだなと鼻息を荒くしております。

何が楽しみかと言いますと、このMLB東京シリーズを巡る転売ヤーたちの行く末です。26日、今どき紙チケットで発売するなど転売天国へと自ら誘導した運営サイドがようやく重い腰を上げ、「不正転売チケットの取り扱いについて」と題する声明を発表したのです。その声明では、不正転売には刑事罰が科されることを警告しつつ、転売サイトに出品者情報の開示請求を行なったことや、不正転売が確認されたチケットは無効とすること、不正転売者を警察に通報することなどが宣言されました。うむ、どんどんやっていただきましょう!

↓私は確かに簡易書留で届いた封筒と手数料券を持っている正規ルートの者です!
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↓運営サイドが言うだけ番長で終わるのかどうか、そこが問題です!



昨今はこうしたチケット転売サイト「R」や「J」…まぁ伏せる必要もないので普通にチケット流通センターとチケットジャムのことですが、それらの転売プラットフォーマーに対して強い姿勢で臨む運営サイドが現れてきております。先日は、旧ジャニーズ事務所であるSTARTOエンターテインメント社がチケットジャムに対して、Snow Manのコンサートチケットを出品した1589件について発信者情報開示命令を求める申し立てを行なったと公表したばかり。また、それに先立って申し立てを行なっていた17件については身元が判明したことも明らかにしており、そうした転売ヤーに対してはファンクラブの退会措置を実施したのだとか。

今回のMLB東京シリーズの運営サイドがどこまで強硬に出るのか、あるいは抑止力としてのポーズだけなのかは不透明ですが、少なくとも「1枚200万円」とかのバカげた出品と購入に対しては、何らかの対応を起こすのだろうと期待したいもの。早速効果は表れているようで、チケットジャムでMLB開幕戦のチケットを1枚200万円で出品しているスレッドでは、開示請求が行なわれたことについて怯えながら購入を検討する人のコメントや「リスク高過ぎ」などと指摘する声も寄せられておりました。以前から展開されていた「定価で譲っていただきたい」「70000円でぜひ」「同額(※200万円)で2枚ください」など幅が広過ぎる価格交渉の履歴と合わせて、なかなかカオスな交流の場だなと眺めている次第です。

ただ、転売ヤーの側もしたたかなもので、本当にやる気のプロっぽい転売ヤーほど、十分な備えのもと防御を固めている模様。日本でのチケットの「不正転売」を禁ずる「チケット不正転売禁止法」は、転売ヤー視点で見れば「不正転売でない転売は全部合法」というルールなのであるのだとか。不正転売の要件である「興行主の事前の同意を得ない」「特定興行入場券の」「業として行う有償譲渡であって」「興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするもの」をすべて同時に満たしさえしなければOKなのであると、そういう認識で備えをしているようなのです。

たとえば「特定興行入場券である」という部分を逆手に取る場合だと、そもそも特定興行入場券の転売でないと不正転売でしょっぴけないわけですが、ドジャースファンクラブで販売されたMLB公式BallParkアプリ上でのチケットは特定興行入場券であるための条件を満たしていないんじゃないかと、隙をうかがう動きがある模様。7万5000円のMVP会員年会費を払っても、ドジャース戦ならオープン戦でも1枚10万円前後で売ることができ、「MVP会員は2枚」買うことができるので確実に儲けが出るし、しかも安全なんじゃないか、そういう計算が働いていたようなのです。本当にそんな話が通じるかはさておき、転売ヤーにしてみればドジャースファンクラブのMVP会員年会費は「安全を買う」ための安い保険みたいなものだったんですね。なるほど、どうりでファンクラブ開始と同時に転売が爆増するわけです。電子チケットなら転売抑止になると思いきや、ほかのチケット以上に安全確実を狙えそうな案件だったとは。

そして「業として」という部分。これはほかの法律でも出てくる定番の表現のようで、そのあたりをもう少し勉強しましたところ、どうやら宅地建物取引業(不動産屋)であるとか貸金業(金貸し)であるとかの規制の対象になるかどうかを示すための言葉で、要は素人と業者を区別するための一言であるよう。そこには「反復継続性」や「事業遂行性」がともなうことが必要となるとかで、自宅を売却したら儲かった…は素人だけれど、何度も何度も不動産を売ったら規制対象の不動産業者になるのであると。これでは金額が高ければ即「業」となるかというとアヤしく、「たまたま1回転売した」くらいでは対象になりそうもありません。

よほどの状況…不動産業で言えば「マンションを1棟買ってまず1部屋売った」とかであれば「これ絶対ほかの部屋も売りますよね?」という話で1回の取引でも反復継続性があるとみなされるかもしれませんが、チケットに関してはよほどの枚数・よほどの回数を重ねてでもいないと、しょっぴけないのではないかという気がしてきます。「MLB東京シリーズ全試合行こうと思ってたくさんチケット取りましたが、一週間仕事が忙しくて全部行けなくなりました」と言い張る輩の反復継続性や事業遂行性を証明するのは骨が折れそうですからね。

あまり詳しく書くと真似する人が出そうなので、詳細は各自お考えいただければと思いますが、そうした視点を持つとむしろ「一撃200万円」とかで出してくる合理性であるとか、何故か30万円をわずかに割り込む価格で出品しているチケットの多さであるとか、何故かアカウント削除後も同じ個人情報で再登録できるプラットフォーマー側の仕様であるとか、転売ヤーには転売ヤーなりの備えがあることが見えてきて、結局しょっぴけるのは「やり過ぎた素人」くらいなのかもしれないなと思いました。なるほど、STARTO社はファンクラブというチケット入手へのゲートを自前で構えているからこそ、対策にも実効性が伴うわけですね。

↓法律だけでなく、自前の強制力もあるからこそSATARTO社は強い…と!



法律においても、個人的な認識においても、これまではまず転売ヤー側が問題であり、買う側はその次の問題という気持ちでいましたが、本当にこうした行為をなくしていこうとするなら、屍と空席の山を築きつづけるしかないのかなと思います。チケット不正転売禁止法では努力目標とされている本人確認の措置を徹底し、買う側全般に「本当に入れないんだ」「買っても無駄なんだ」という認識を広げていくのが結局は早道なのだろうと。売る側はプロの転売ヤーが十分な備えのもと、少ない人数で大量のチケットを入手してさばくのでしょうから、何とかかんとかして法の網目をかいくぐってくるでしょう。その点、買う側は売る側ほどにプロ化しようがないわけで、そちらへの対策のほうが効果が出しやすいはず。

徹底した本人確認で東京ドームの前に屍の山を築き、MLBの選手たちには申し訳ないけれども東京ドームのなかには空席を大量に生み出していく、ぜひ運営サイドにはそこを徹底してもらいたいもの。僕は自分のチケットを握り締めてドーム前の屍を眺め、徹底した本人確認を急遽やらされているゲートのもぎりの方々に「頑張ってくださいね」と声を掛け、不自然に生まれた空席の写真を撮りながら「またひとつ世のなかがよい方向に前進した」などとニッコリしたいなと思います。一発目の巨人戦あたりは、大谷さん鑑賞⇒空席観察⇒ドジャース鑑賞⇒空席観察⇒大谷さん鑑賞⇒空席観察くらいの熱量で見ていきたいところですよね。少しでも早くそうした状況が伝われば、大本番であるMLB開幕戦直前に「やっぱり買うのやめた」と思い留まる人が生まれるかもしれませんからね。通常のイベントだと空席ブロックでもあると「そこも売れよ!」と憤るところですが、今回は「うんうん、不正転売が防がれたな」と楽しく見守れる気がしました!

↓これだけの枚数を積み上げたコイツは「業」で間違いなさそうです!

コイツにこの枚数分のダメージを与えるには、誰も買わないのが一番!

誰も買わずに公式リセールに放出させれば、正規ルートにチケットが戻ってくる!



大規模高額転売案件に立ち会う機会はそうないので、じっくり観察します!