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優勝が射程圏内に入ってきました!

ちょうど1週間前、埼玉西武ライオンズの悪い正夢のような大逆転負けに「今季のターニングポイントになりそうだな」と思った僕の予感は見事に当たったようです。もちろんそのときは「あー、こっからズルズルと負け出して内部崩壊するんだろうなぁ」「今季は不祥事さえなければ合格としよう」「今井達也さんがドジャースに行けますように…」と思っていたわけですが、何とまったく逆方向にチームは舵を切り、あの日から負けなしの5連勝でこの1週間を過ごしてまいりました。

「よーし、そろそろ暗黒面突入だな」と思った頃合いに先手を打って予防線を張っているのに、その期待を何故か裏切ってくる今年のライオンズ。ギリギリで踏み止まってくるというか、紙一重の勝利を掴んでくるというか、どうやら今年は本当に昨年とは少し様子が異なるようです。いやー、それなりに長い野球応援歴のなかで初めて自チームの暗黒期を楽しめるかと思ったのに、やはり西武は常勝を運命づけられている球団なのでしょうか。気がつけば貯金2のAクラス3位。2位も1位も目と鼻の先で、何ならこの週末にも首位浮上があり得る範囲まで浮上してきたチーム状況に、これはもう甘んじて「ファッション暗黒」の誹りを受けるしかなさそうです。他球団の皆さんすみませんでした!大して弱くもないのに暗黒ぶって!暗黒神はソフトバンクに引っ越したようです!

↓去年なら0-1で負けてそうな試合を2-1で勝てる今季!


大型連休半ばの5月1日。この日は台湾プロ野球統一ライオンズとのコラボレーションイベントデーということで、台湾のマスコットと台湾のパフォーマンスチームが「名前が同じ」というよしみで応援に来てくれています。これには埼玉からやって来たオジサンたちも「Uni-girlsを見られたから今日はもう大満足」「登峰造極最高〜」「僕の推しはMaggieタン!」などと大盛り上がりです。

↓レトロを社是とする西武グループが海外から昭和を輸入してきた感じ!



西武がこの日のマウンドに送り込んだのは今季初登板・初先発となる與座海人さん。與座さんは初回からズラリとゼロを並べると、6回を被安打1の無失点と素晴らしい投球を見せます。ゴールデンウィークの過密日程という側面もあるとは言え、月間MVPクラスが2枚並んでいる現在のライオンズ強力先発陣のなかに加わってくるのは伊達ではないということか。この先もまだ武内夏暉さんの復帰が控えているかと思うと鼻も高くなるばかり。「試合開始早々に3失点くらいして負ける」ことがないというだけでも気分は軽やかです。

そして、最近のイイ気分を下支えしてくれているのが異常な先制率です。この日も「1回の男」こと西川愛也さんに先頭打者での二塁打が飛び出すと、そこに微強力助っ人・ネビンさんがタイムリーでつづいて初回に先制します。これで11試合連続の先制となり、「西武に1点ずつハンデやる」の密約が存在するのではないかという憶測も、あながち妄想とは言えないような状態になってきました。

得点自体は大して増えているわけでもなく、昨年の4月30日終了時点では26試合消化67得点だったものが、今年は同じ4月30日時点で25試合消化68得点と微増したに過ぎません。打線がすごく強くなったかと言われると決してそうではなく、昨年ほどではないもののしっかり穴は開いています。ただ、先制点の大事さというか、とにかく1点先取に血道を上げることで、試合運び全体に好影響を及ぼしています。1点でもリードしていれば相手投手は追加点を嫌って投球の幅が狭まりますし、当方の打線では手も足も出ないであろう勝ちパ救援陣は投入そのものを手控えられます。1点先に取ることで相手の投手陣全体を弱体化させ、手も足も出ないような展開を避けられている。好調だったオープン戦を含めて、先制点への意識というのは今季の気分の良さを支える要因だなと思います。一瞬でも勝っている時間があれば、その時間帯にアルコール入れて楽しくなっちゃえますからね。

↓同じ1点だけ取るなら初回に取るのが一番いい!


とにかく1点あれば強力先発陣による完投完封という力業も効きますし、寄せて集めた勝ちパ投入による逃げ切りも狙えます。この日も2回裏には無死一・二塁からのバント失敗&インフィールドフライや、6回裏の一死満塁からの無得点など、打線のほうは試合を決め切るチカラを持ち合わせていませんでしたが、投手陣と守備陣が1点を守ってくれていることで「イライライライラ…」ではなく「くー、突き放せなかったか!」と前向きな気持ちで見守ることができました。

9回表に抑えのウィンゲンターさんの大暴投によって同点に追いつかれた場面も、昨年ならおそらくコレが決勝点となって負けていたことでしょう。そして、ドンヨリイライラした気分で怒りの矛先を誰に向けるか探していたのだろうと思います。しかし、民度が悪いと評判の西武界隈だって気分が悪くなければ「まだまだ!」「追いつかれただけ!」「勝負はこれからだ!」などと温かく見守る余裕も見せるというもの。同じ延長突入するにしても2024年とは気分が違います。

↓イライラしている日なら試合を投げたくなる、犬と遊んでいるときみたいな大暴投!




とにもかくにも負けずに踏み止まっていれば、お互いにおかしなこともするものです。1週間前は西武も投げんでもいい送球による暴投ピタゴラスイッチで自滅していたものですが、相手だって同じ人間、やらかす日はあります。9回裏一死一・二塁のサヨナラのチャンスでは、サード強襲の打球を相手が後逸してあわやサヨナラという攻撃もありました(※レフトの好カバー・好返球で惜しくも本塁タッチアウト)。こちらが暴投で「どうぞ」するなら、相手だってエラーで「どうぞどうぞ」するのです。

そして、運命の10回裏には、西武を今季最長…もしかしたら最初で最後かもしれない5連勝に導く、ビッグな「どうぞどうぞどうぞ」が。西武が先頭から二塁打⇒ライト前への安打とつづき、無死一・三塁でサヨナラのチャンスを築いた…と思った場面でそれは起きます。ライトからの返球を中継に入ったファーストが弾いて取りこぼし、ボールが三塁側ベンチ方向へ転々とすると、何とホームのカバーに入っていたピッチャーは全然違うところを見ており、ボールが転々としていることに気づかなかったのです。

三塁側からの映像を見れば、中継のファーストがボールを弾いた時点ではピッチャーはまだ三塁側ネクストバッターズサークルあたりにいます。ボールを見ながら背走してホームカバーに入っていたなら、弾いた時点で異変に気づき、ランナーを三塁に留め置くプレーはできたように思われます。弾いたファーストが一番悪いとは言え、ボールをまったく見ていないのでは何のためのカバーかと指摘されても致し方ないでしょう。

一方で西武はと言うと、まだ弾いたボールが内野を転がっている間に、ホーム周辺で待ち受ける外崎修汰さんが走者に回れ回れと指示しています。外崎さんからの位置であれば弾いてこぼれたボールも、それをキャッチャーが捕りに行けば本塁がガラ空きになることも、カバーに入ったピッチャーがそんな状況にまったく気づいていないこともすべて見えたことでしょう。迅速な判断と迅速な指示。確信を持ってブン回す腕の頼もしさ。もちろん走者も打者走者もボールの行方をしっかりと見つめ、すかさず次の塁へと走り出しています。相手がボールを見ていなかった状況だけに、我が方の試合への集中ぶりが際立ちました。

たとえば「9回裏同点二死満塁」といった状況の場合、結果がどう転んでも打席に入っている打者のところで攻撃は終わります。そのときネクストバッターズサークルに入っている次打者には何の仕事もないかというと決してそうではなく、この日の場面のようにサヨナラなるかならないかという状況では、ホームベースコーチ的な存在として味方にスライディングの指示を出したりする役割があるのです。ボールを見ていなかったベースカバーと、ボールを見ていたネクストバッター、「自分は直接関与しないであろうプレー」への集中の差が、野球の上手い下手とは関係ないところで紙一重の勝利を分けた…そんな象徴的な場面だったなと思います。

↓ピッチャーがボールを見ていないと気づいたときのキャッチャーの絶望がジワります!

これでライトにエラーがつくのはやってられないでしょうね!

取り損ねたファーストとボールを見ていなかったピッチャーにもエラーをあげたい!

すべてが終わったあとピッチャーがキャッチャーに何が起きたか聞いている風なのもジワります!



壮絶な譲り合いを制して勝利をつかんだ埼玉西武ライオンズ。まだまだ地力不足は否めませんし、毎試合1点とか2点を守り勝つような戦いではどこかで心身のスタミナが切れるだろうとは思いますが、オールスターまで5割前後くらいをキープしてくれていれば、「今年はある程度戦えたな」という悪くない気分でシーズンを終えることができるでしょう。「オールスターまでに5割」は優勝を狙える圏内という意味なのですから、オールスターまで5割をキープできたらイコール優勝争いをしたと言っても過言ではない…そのくらいの甘々視線で暗黒からのV字回復を見守りたいと思います。この日のような感じで、ヨソが勝手に負けてくれたらCSくらいあるかもしれませんしね!


V字回復かと思ったがn字不回復だった、とかでもまぁヨシとしましょう!