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横綱の強さと親方の強さは別物!

残念な噂話が広がってまいりました。大相撲の宮城野親方…というか元横綱・白鵬が角界を去るというのです。一部の週刊誌報道に留まらず、日頃から大相撲を伝える番記者の人たちも含めて伝え始めている、宮城野親方の日本相撲協会退職の意向。すでに宮城野親方は退職届を提出しており、現時点では協会側が受理せずに預かりとしているとされます。もしも提出が事実なのであれば、仮に協会側で何か新しい協議・決定をしたとしても「白鵬」の意志は覆らないでしょう。どちらともなく、あるいは両方ともに見限った。そんな物別れの決着なのかなと思います。

↓元白鵬の宮城野親方はすでに退職届を提出済とのこと!


↓何だか扱いに困る退職届が連続で出ているみたいですね!

そのギャンブルはオンラインなのかオフラインなのか!

相撲に賭けるヤツなのかそうじゃないのか!

その辺ものちほどお知らせください!



どちらがいいとか悪いとか、どちらにつくとかつかないとかはありません。大相撲そのものも好きで大事であるし、白鵬に対しても敬意と感謝があります。表沙汰にせず表面だけでも仲良くやっていてくれよというのがコチラとしての唯一の希望でしたが、それができないというのであれば物別れも致し方ないかなと思います。

そもそもの部分で、協会側あるいは角界には薄っすらとした白鵬なり外国出身力士への排他的な意識があるのだろうと僕は思います。だってこの競技は世界と戦わないのです。世界と戦わないことをあえて選び、日本という市場を独占し、その代わりどこにも打って出ず、伝統スポーツ芸能&インバウンド向け観光産業としてやっていこうと腹を決めているのです。世界最強である必要はなく日本最強であればそれでいい。なのに、外国からの侵入を許してしまった。自ら引き入れてしまった。そしてめちゃくちゃに席巻されてしまった。本来自分たちで山分けできたはずの金も名誉も持っていかれたのです。やってる側とすれば面白いはずがありません(←アメリカならそんなケチ臭いことは言わないだろうが)。

ただそれは身から出た錆です。大谷翔平さんが野球でもサッカーでもなく大相撲を選び、大横綱・大谷山となっているような世界線であれば、そもそもこんな状況にはなっていないのです。五輪も国際大会もなく世界一の夢を見ることは難しい競技環境にあって、金は最高峰までいっても年1桁億止まりで、人権があるのかないのかよくわからない就業環境のなか、年がら年中尻出しを強制される。何でも選べるスポーツエリートが相撲を選ぶ率は、どうしたって高くはならないでしょう。好きな人は好きだけど、みんなが夢にするにはいささかハードルが高い…そんな世界を築いてきたのは大相撲自身です。

ただこれはバランスの問題であり、「そんな世界」だからこそ新弟子が少なくなったりもするわけですが、逆に「そんな世界」だからこそ唯一無二の憧れを抱く人もいれば世界に類を見ない観光資源にもなります。端的に言えば「やばそうでおかしなことをやっている異世界」だから大相撲は魅力的なのです。昭和のおかしみを笑うバラエティのように、中世を眺めて楽しむエンターテインメントという側面が大相撲にはあるのです。そういった日本の一般的な若者からは敬遠される「やばそうでおかしい中世」が由来の衰退を、外国人出身力士の夢を追うたくましい強さによって補ってきたのが近年の大相撲であり、たとえ気に食わなくても排除はできない、そういう関係性なのだろうと思います(←アメリカならそんな器の小さいことは言わないだろうが)。

せめてこれが団体競技であれば、人数制限やら「チームとしての勝利」やらで、お互い面目が立つウィンウィィンの関係も成立したのでしょうが、大相撲は個人戦です。一番強いヤツしか横綱にはなれません。庇を貸して母屋を取られると言いますが、つまりは土俵を貸して横綱を取られたわけです。平成の大横綱・貴乃花の引退が2003年1月ですので、そこから22年間で日本出身の横綱が存在した期間は稀勢の里の在位2年間のみ、しかもそのうち3分の2は休場しておりますので、正味4場所分ほどしか日本出身横綱はいなかった。席巻されつづけた。「日本出身の力士が弱いのが悪い」はまったくその通りですが、そうなれば土俵で勝てないぶんをほかのところで仕返ししようとするのが人間の愚かな性というもの(←アメリカならそんな底意地の悪いことはしないだろうが)。まぁ内部的には面白くはないのでしょう。ずっと。密かに。

↓アレが優勝20回とかしてくれていればフォースのバランスが保たれたのだが…!



その陰湿で古めかしい矛先が向かったのが大横綱・白鵬だったのかなと思います。白鵬は現役時代、数々の難癖をつけられました。やれかち上げや張り差しがどうのだの、やれ俵を踏むなだの、やれ力士が物言いをつけるなだの、やれ万歳三唱するなだの、ありとあらゆる批判を受けました。基本的にそれらは難癖の類でしたが、難癖でもつけずにはおれないような薄暗い感情をドロドロになるまで濃厚に煮詰めたのは白鵬の圧倒的な強さでした。白鵬は強く、圧倒的で、難癖勢が溜飲を下げる隙すら与えず、強さによってすべてをねじ伏せてきました。

そうした「強さが物を言う」は大相撲らしい世界観であり、よくも悪くもそうした中世的な世界観で動いているのが大相撲なわけですが(←身分制度アリの職場)、残念ながら白鵬の強さは土俵の上にしかありませんでした。協会側はできる範囲で精一杯の嫌がらせをしてきましたが、宮城野親方に大横綱・白鵬ほどの強さがあれば跳ね返せる程度のことでしかなかったはずです。「一代年寄にはしない」という嫌がらせも、春の風と受け流せばよかっただけのこと。千代の富士は辞退した程度の話です。「年寄間垣を襲名するときに念書を書かされた」という嫌がらせも、「相撲道から逸脱した言動をしない」など内容自体は大したものではなかったでしょう。難癖に使いやすそうな念書ですが、こんなもの世間や法を前に大っぴらに材料にできるものではありません。

宮城野部屋と二所ノ関部屋とで不祥事への処遇が違うという嫌がらせも、別の案件なわけですから処遇が違うこともあるでしょう。白鵬の内弟子として角界に入った幕内力士が1年以上にわたって日常的に後輩力士に暴行を加えた案件と、未成年飲酒の案件とでは重大さが違うのはその通りですし、一部の週刊誌報道にあるビール瓶動画の案件(※こちらは大の里の入門前の話)も古き悪しき体育会系のノリというものであると見受けられ、性質が異なる案件だろうと思います。宮城野部屋への処遇は厳しいかもしれませんが、角界の罰がむやみに厳しいのは今に始まったことではありません。コロナ禍中にキャバクラに行ったら実質数千万円の罰金ですからね。ひとつの傾向としてやらかしたこと以上に「ウソ」や「隠蔽」に非常に厳しいというところがあり、その前例に照らせば宮城野部屋の処遇は「さもありなん」です。

そうした嫌がらせの範囲の事態を跳ねのけられないのは、ひとえに宮城野親方にチカラがないからです。

親方のチカラは弟子の育成であり、世間と協会内での人望であり、最終的には「票」です。票が足りないから嫌がらせを許し、政争に負けるのです。そのチカラをつけるまで、思うようにいかないのは世の常です。大横綱・白鵬として土俵の上でなら通せた程度の話でも、新米年寄・宮城野が協会のなかで思い通りにできないのは当たり前のことです。そこで誰の信頼を得て、誰を味方につけて、誰を従えていくか、個人競技の横綱ではなく団体競技のリーダーを目指さなければいけなかったのです。あの貴乃花親方でさえ(!)、貴乃花グループを率いて一門を興したのですから、白鵬ならばもっとできそうに思うのですが、宮城野親方に「票」というチカラはそこまでなかったのだなと思います。あれば、打って出ているでしょうしね。

現在の八角理事長体制は、定年まで勤めあげたとしても2028年の春場所で終わります。最長でもあと3年で潮目は変わるでしょうし、そんなに引っ張れば現体制にも批判は向くでしょうから早晩部屋の再興は叶ったはずです。暴力団観戦問題で閉鎖された木瀬部屋も2年で再興を許されていますので、あと1年耐えればそういう機運にはなったでしょう。耐えて、忍んで、「いつまでも再興を認めない執行部」への逆風が吹くまで、じっと水面下でチカラをつけることはできなかったのと惜しまれます。力士・白鵬は横綱になるまで6年かけたのですから、年寄・宮城野も2028年まで6年腰を据えてかかるくらいでよかったと思うのです。

耐え忍び、部屋を再興し、白鵬以上の横綱を育て、ほかの親方衆と信頼関係を築き、角界をさらに発展させて一門の代表となり、理事となっていくような未来には相応の時間がかかりますし、その間には不愉快や理不尽もあるでしょう。ただ、その不愉快や理不尽はチカラがないがゆえであり、チカラがないものは負けるのが大相撲という世界なのです。それは大横綱・白鵬が土俵のうえで存分に活用した角界の力学であり、年寄・宮城野が不遇をかこつ由縁となっている角界の力学です。何と言うか、それに耐えてでもこの世界で勝ってやろうとするほどには、年寄・宮城野には大相撲への情熱やこだわりはなかったのかなと、少し寂しい気持ちになりました。

まぁ、そんな中世みたいなことやってられないってのは令和の感覚として同意です。

金も名誉も十二分に得た白鵬にとって、今さらそんな中世みたいな下積みより、ほかにやりたいこと成すべきことはあるでしょうし。

だから、致し方ないなと思います。

それがよくも悪くも大相撲ですから。

そういう世界で勝ってきた人が、そういう世界で負けた、そんな話なのかなと思います。

そして、それは角界では、よくある話なのです。

↓売店で売り子とかもしてくれてありがとうございます!
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独自の相撲団体立ち上げてもいいと思いますよ!

面白くて強ければそっち見ますから!

気が変わったらまた売り子とかやってください!



個人競技の大横綱って、団体競技そんなに向いてないのかもしれないですね!