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2025年06月10日08:00
本当に「横綱」と向き合うのはこれからです!
元横綱・白鵬にして先代宮城野親方である白鵬翔さん、要するに白鵬の日本相撲協会退職に関する記者会見を見ました。思うところはいろいろあるのでしょうが、会見でのやり取りはおおむね無難というか、一部ザワっとする言い回しはありつつも波風を立てないように努め、穏やかに終えられたものと思います。会見冒頭には元旭富士の先代伊勢ケ浜親方も同席し、宮城野の継承と将来的な宮城野部屋の再興についても意欲を見せてくれたことは「円満」な別れとして受け止められる吉報だったと思います。
↓会見については各位YouTube等でご覧ください!
ただ、やはりというか、残念ながらというか、質疑応答の最後に向けられた「今回の退職について悔いはありますか?ありませんか?」という質問に対して「悔いはまったくありません、はい」と即答した点については、冒頭の挨拶のように事前に用意していた回答なのか、そう言うよりほかにないという性質のものなのか、本心からの言葉なのかはわかりませんが、「師匠」たる人の言葉としてそれが出てくるのは違うのかなと思いました。
師匠は指導者であるだけでなく、若者の心と身を預かる親です。今はかつてのように師匠と弟子が生活をともにする部屋ばかりではありませんが、それでも師匠と弟子というものに対して角界が抱いている思いは昔と今とで大きく変わってはいないはず。その「師匠」の言葉としては、仮に自分自身のことについては何の悔いもなかったとしても、自らが招き、自らを慕って入門したひとりひとりの人生に対しての思いが真っ先に滲まないものかなと寂しく思いました。
もともと宮城野部屋の閉鎖という事態に至った事件は、弟子がほかの弟子に対して長期間に渡って暴行を加え、それを承知しながら解決せず、報告を怠り、一部には口裏合わせのような隠蔽工作があったともされるものです。それはやはり師匠としての監督責任であり、その結果として弟子たちが引退したり転籍したことや、師匠を慕ってこの世界に入り今も土俵で奮闘する弟子たちの夢に最後まで寄り添えなかったことは、スッキリと前を向ける性質のものではないだろうと思うわけです。弟子のことが自分のことより先に来るのが師匠であり、仮に部屋の再興が叶わずとも、辛酸を舐めようとも、自分が招いた弟子たちは最後まで見届けてこそ「師匠」であり「親」なのではないかと。
何というか、そういう「師匠」の部分を学んでもらうために、協会側としても大島部屋や安治川部屋ではなく伊勢ケ浜部屋付きとしたのでしょうし、伊勢ケ浜部屋が代替わりするにあたっては浅香山部屋への転籍を模索した部分なのかなと思うわけですが、世間も含めてそのあたりは理解されておらず、何なら差別的処遇くらいに受け止められているのかなと思いました。耐えた時間の長さではなく師匠としての成長こそが問われていたのに。「再興が見えたら頑張れる」ではなく「成長が見えたら再興話が持ち上がる」の順番なのに。逆説的に言えば、あそこで即答悔いなしとなることが、まだ部屋を再興する段階には至っていないのだなと感じさせる一幕だったと思います。
その後の締めの言葉では不覚に思い至ったのか「先ほどの悔いはないかって質問はありましたけど、もちろん弟子たちを近くで見ながら横綱・大関になりたいっていうのを見たいという思いがありましたけど」と弟子たちへの言及を追加する場面はありましたが、その思いは本人の心ひとつで叶えられることなのです。辛酸を舐めようとも角界に踏み止まれば、弟子たちを見守り、自分の技術と経験を伝え、夢に寄り添えるのです。それは誰にも止められていませんし、妨げられてもいないのです。できるのです。「お前が退職しなければ全員追い出すぞ」なんて脅しは掛かっていないのです。貴乃花親方のときのように「親方は一門に所属すること」「一門に所属したければ告発状の内容を事実無根と認めろ」といった有形無形の圧力で外堀を埋められたわけではないのです(※まぁ貴乃花親方も頭下げて屈すれば踏み止まれたのだと思いますが)。3月に退職を決意したあとだって最後の1日までできる限りを伝えることはできたのです。
しかし、そうしないことを決めたのです。弟子以外のものを選んだのです。「指導者」としては普通のことかもしれませんが、それはやはり「師匠」とは違うんじゃないのかなと僕は思います。元旭富士の先代伊勢ケ浜親方がこの会見に同席し、引き止められず残念と繰り返しながら白鵬の門出を応援し、白鵬が残した弟子たちを見守り、宮城野の名跡の継承に尽力すると約してくれたのとは対照的だったなと思います。
↓僕が弟子なら悔いて、泣いて、詫びて、断腸の思いで旅立ってほしかったなと思いますね!
白鵬翔氏 退職は「悔いは全くない」も弟子たちの成長見届けられず未練の思いも「いつかはまた一緒に…」 - スポニチ Sponichi Annex スポーツ https://t.co/DsmvEnWCau
— スポニチ記者ツイート スポーツ (@sponichisports) June 9, 2025
もしくは世界相撲グランドスラムに誘ってほしいですよね!
断るかもしれませんが、こっそり誘ってはほしいです!
いい機会なのでほかの「師匠」に至ってない人も退職していただくといいんじゃないかなと思います!
ゴルフクラブで子ども殴ったりする親とか考えられないですもんね!
まぁ、こうなってしまったものは仕方ありません。平成の大横綱・貴乃花も変人扱いのなか世間からも「まぁしょうがないね…変人だし…」くらいの微弱逆風を受けて相撲協会を追われましたが、それで大相撲の人気が落ちたとか客入りが鈍ったなんてことはありませんし、これはこれとして大相撲はつづいていくことでしょう。もし、この先に何か別の世界線があるとすれば白鵬が立ち上げるという「世界相撲グランドスラム」が大成功したとき、もしかしたら大きな変化があるかもしれません。
まだ詳細は不明ですが、会見での発言からすると、世界相撲グランドスラムは少年相撲の世界大会である白鵬杯をベースに、アマチュア相撲の新たな国際大会として世界に相撲の裾野を広げ、「相撲を通じて、世界を絆で結び、希望と幸せを届ける」構想である模様。そして、相撲がオリンピック競技となるのを夢見ていくということであるようです。理念の部分は何とでもなるとして、現実としてオリンピック競技を目指すのであれば、現時点で80ヶ国ほどである国際相撲連盟(IOCの承認団体)の加盟国を150ヶ国とか200ヶ国とかに増やしていくことが大前提となります。つまり、まだ相撲を知らない人たちに「相撲をやりたい!」「自分たちで相撲を始めるぞ!」「人数も増えてきたし国内競技連盟を作ろう!」と思わせないといけない。
真っ当に行くなら国際相撲連盟と協調し、何なら国際相撲連盟に籍を置いて、元横綱として世界に相撲を広めていくような形になるでしょう。世界100ヶ国を巡って土俵を作ってまわる、みたいな。ただ、それでは時間も手間も掛かりますし、今までやってきた普及活動と大きく変わる気もしません。そして、せっかく自由の身となった白鵬がまた別の組織に縛られるのでは退職のしがいもないというもの。
やはり、白鵬には高い高い頂点を作って、そこから裾野を広げてほしいと思います。幕内最高優勝以上の富と名誉と喝采を得られる夢の舞台、ラスベガスで行なわれる夢の相撲大会、そういったものを実現してこそのグランドスラムでしょう。その頂点を見て「コレやりたい!」と思う人を世界中に生み出す、その「憧れ」や「夢」と言った部分を担うものになればいいなと思います。
そのためには白鵬はいま一度「横綱」というものに向き合うことになるだろうと思います。
人間を惹きつけるのは最終的には人間です。素晴らしい技量があろうとも、それだけでは「で?」で終わりです。「私は速く走れます」「私は高く跳べます」「私は棒で球を打って遠くに飛ばせます」はそれ単体では「で?」でしかありません。その素晴らしい技量を身につけるに至った人間の才能や努力や人生こそがたくさんの人を惹きつけ、「こんなに素晴らしい人たちが目指す頂点」というものに価値を付与していくのです。世界記録を更新したとき、その凄さは単なる速さや高さではなく、数多の素晴らしい先人や偉人による挑戦の歴史があるからこそ、その上に立つ者に掛け値なしの誉れが与えられるのです。
世界相撲グランドスラムが世界に相撲を広める大きな夢となっていくとき、その舞台を支配するような勝者・王者・覇者・スターが存在し、その人を中心に舞台はまわっていくことでしょう。人々はその素晴らしい人を見るためにその舞台に集い、その人への憧れが相撲への憧れとなっていくことでしょう。出場している選手のなかで一番になったというだけではなく、その人が一番であること自体が価値となるような、そういう存在がいなければ舞台は大きくなりませんし、人々に夢は広がりません。金はあくまでも副次的なものであって、一番は人です。金で人間が動くなら全員が富豪になりたがる世界になるはずですが、実際はそうではないように。
相撲の世界で人々に夢を広げ憧れを抱かせる立場にあるものは日本では「横綱」と呼ばれます。品格力量抜群、強いことは当然として、強いだけではつとまらない立場です。そういった存在を、日本の大相撲が生み出してきた歴代の横綱よりも大きな存在を、世界相撲グランドスラムは生み出すことができるのか。もしそうした存在を生み出すことができれば、日本の大相撲に影響されない地域からたくさんの若者が夢と憧れを抱いて集い、世界の200ヶ国とかに相撲が裾野を広げ、国際相撲連盟や日本相撲連盟や日本相撲協会をも飲み込むうねりとなるかもしれません。
品格力量抜群、短くて深い言葉に向き合いながら、新たな相撲を世界に広げていってほしいなと思います。「勝てばよい」と考えて集う選手たちに「変化の応酬はちょっと…」「それじゃ面白くならないんだよ…」「ちゃんと立ち合ってドーンと当たってだね…」「うーん、立ち合いのタイミングずらしはちょっと…」「あー、そこで引いちゃダメ…」「すぐ引くと面白くないんだよ…」「組手争いとかしない!」「打撃戦に持ち込むんじゃないよ!」みたいなルールではないものをひとつひとつ理解してもらいながら、誰もが認める「横綱」を生み出してほしいなと思います。世界相撲グランドスラムが世界の相撲の最高の夢となり、その頂点に立つ者が最大の憧れとなれば、日本相撲協会も閉鎖空間に閉じこもった中世エンターテインメントではいられなくなるでしょう。遠い遠い未来の話かもしれませんが、そういう日が来たら、日本の相撲も令和の世間並みの感覚になるかもしれませんね!
↓ちなみに現時点の世界相撲選手権はこんな感じです!
↓「面白い相撲」を実現するのは大変だと思いますが頑張ってください!
元横綱・白鵬氏、日本相撲協会退職について「悔いは全くありません。相撲がオリンピックになることを夢見て力を注ぐ」
— スポーツ報知 (@SportsHochi) June 9, 2025
記事はこちら▼https://t.co/WgU8BYczUR
それが実現の暁には大相撲とはだいぶ違う競技になっているかもしれませんが!
大相撲って陰湿な中世で面白さを担保してますのでね!
トヨタさんが行き掛かり上支援しないといけない感じなので、お願いします!