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「連帯責任」は止めることになりました!

大変な騒動になっている広陵高校硬式野球部員による暴力事案の件。事案そのものについては、実態を知り得る立場でもなければ、何らかの裁きを担う立場でもありませんので、真実に則った適正な対応がなされることを望むばかりですが、ひとつ気になったことがありました。

こうした事案が起きれば高野連お得意の「連帯責任」によって野球部自体に出場停止処分が下りそうなものですが、本件については該当部員が1ヶ月間の公式戦出場不可という指導を受けたものの、野球部に対しては厳重注意までということで、いわゆる「連帯責任」は発動されなかったのです。

もちろん「連帯責任」については徹頭徹尾反対の気持ちですので、高野連も少しは令和らしくなってきたのかなと思いつつ(※そのぶんSNSでは一族郎党徹底糾弾の勢いだが…)、不思議だなぁと首を傾げていたのです。高野連が連帯責任を止めちゃったら、誰が連帯責任という概念を未来に伝えるんだよと。

そうしたら驚きましたよね。何と、高野連を傘下に置く日本学生野球協会(大学野球と高校野球を統括する)では今年の2月25日に各種の処分基準やら内規やらを改めておりまして、「連帯責任」の基準明確化に乗り出していたのです。これは急に決まったことではなく、2023年にスポーツ庁が各団体に要請したガバナンスコードに基づく対応とのことですが、どうやら今回の一連の対応はそれに則ったものだったようなのです。

↓対外試合禁止となる一番大きな基準は悪事を働いた部員数が10人以上かどうか、みたいですね!

なお、部員9人の野球部だと絶対10人超えないので、部員の50%超が悪事を働いた場合も対外試合禁止に処します!

そのほか野球部の部室とか練習場で悪事を働いた場合も野球部由来の事案として厳しい処分となります!



内容を知りたいなと思いまして基準を記した文書を読み始めたのですが、なかなか頭に入ってこない文書です。途中でこれは「処分をするため」の規則改定ではなく「処分を止めさせるため」の規則改定なんだと気づいてからはスッと読めるようになりましたが、非常に難解でした。「処分基準」「処分基準別紙」「注意・厳重注意および処分申請に関する規則」「部員の憲章違反行為に対する注意・厳重注意、処分、及び指導・措置の運用内規」…などなど処分のことを定めた文書がゾロゾロゾロゾロ並んでいます。日本高野連のサイトの「日本高野連について」のページを開くと、出てくるメニューが「定款」「役員」「日本学生野球憲章」に次いで「処分基準」ですからね。野球のPDFより処分のPDFのほうが多いんじゃないかという勢いです。処分超大事。

↓全体的な改定とその意図については日本学生野球協会のサイトをご覧ください!


↓詳細な処分基準については高野連のサイトでご覧ください!
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https://www.jhbf.or.jp/summary/penalty/


まず、超意訳で日本学生野球協会の意図を読み解きますと、これまで先例に則って行われてきた処分に基準を設け、重過ぎる懲罰や高野連が好きな「連帯責任」を止めさせようとする意図を感じました。

特に興味深かったのが日本学生野球協会と大学野球連盟・高野連の連名で出された「部員の憲章違反行為に対する 注意・厳重注意、処分および指導・措置の運用内規」(※部員が何かやらかしたときの罰則ガイドライン)なる文書で、ここには「法の処罰、学校による指導、連盟による処分と3回罰してるのおかしくない?」という意図での改定や、「部員が何かやらかすと野球部ごと連帯責任負わされるのおかしくない?」という意図での改定が連綿と綴られています。以下、トーク形式で超意訳しますと、

「現状さ、部員が何かやった場合、すでに学校が何か処分してても、さらに高野連から野球部を処分してるでしょ」
「そういう風に決まってますんで」
「そういう屋上屋を架すようなことはやめよ?」
「学校で十分に厳しく処分していたら、追加処分ナシにできるよう規定変えるわ」

「あと、部員が個人でやらかしたことでも、いつも野球部を処分してるけどなんで?」
「はい、部員に対して処分すると部員のことが公表されてしまうので、それを避けるべく教育的配慮から野球部への処分としております」
「……わかった、部員を処分しても公表しないようにするから、もうその運用止めよう」

「それから、連帯責任で対外試合禁止とかよくやってたでしょ?」
「でも、平成20年あたりからちょっと変わってきたじゃない」
「あの年は、野球部員が強制わいせつで逮捕された高校の出場を認めたりしたよね」
「そのちょっと前も、内規では部員5人以上がやらかしたときは野球部ごと出場停止にしてたのに、やらかしたのが2年生だったもんだから、3年生だけ出場させてあげたりしたよね」
「変わってきてるのはいいことなんだけど運用が恣意的なんだよね…」
「3年生だけは出してあげよう!とか」
「夏の予選が始まる前日に処分解除します!とか」
「選手権直前だけ甘々になるの止めたほうがいいと思う」
「基本的にやらかした部員だけの処分にすべきだし、野球部ごと処分するときはちゃんと基準を設けて」

とまぁ、こんな話が綴られておりますと。そのほかにも「処分基準」の文書には、「選手登録資格の停止の期間は、1か月を基準とし、また加重を行う場合でも、3か月を超えない期間とすることを原則とします」「野球部への対外試合禁止の期間はは1か月を基準とし、また加重を行う場合でも、3か月を超えない期間とすることを原則とします」という記載があったりして、全体的に厳罰化を抑制しようとする意図が感じられる内容となっています。もはやカメムシ食べさせて灯油飲ませても1年間の対外試合禁止処分とかはナイのかもしれませんね。

序盤に貼り付けた記事でも記載されていますが、いわゆる「連帯責任」についても基準が明確化されており、「部員10人以上」がやらかした場合は野球部由来の重い事案として対外試合禁止の処分とし、それがもうちょっと少なくて「部員4人以上」だった場合は中程度の事案として厳重注意の処分とするなどガイドラインが設けられました。もちろん、野球部の部室などで行なわれた場合は野球部由来の事案として処分が重くなったり、そのほか特段の事情(※事態の重大性/殺人とか性加害とか薬物とか)があると処分が重くなったりするようですが、人数というひとつのラインが設けられたことは恣意的な運用を防ぐという効果はあるでしょう。

↓そうした基準を踏まえて事案の報告を見ると、解像度も上がるのではないでしょうか!



報告書では10人でも3人でもなく「4人」となっていることや、寮生活の暮らしのなかでも比較的学校や野球部との関わりが薄そうな「被害生徒の部屋」での「暴力」事案となっていることからすると、「野球部に厳重注意(※4人以上関与)」「各部員に1ヶ月の試合出場禁止(※基準値)」という処分は前述の規定に則ったものと言えそうです。そして、野球部も部員もすでに処分を受けているのであれば、部活動を制限する理由は現状特にないのだろうと思います。

これがもし部員10人以上が関わり、部室や練習場などで行なわれた、性加害などを含む悪質性の高い事案であったなら野球部に対して3ヶ月(※最大加重)の対外試合禁止という処分が下された可能性もありますが、今回の報告の内容だとそこまでの処分にはならない、それが現行の規定ということになります。事案の発覚が1月ということですので、仮にそのようなおぞましい事案であったとしても夏の予選までには対外試合禁止の処分は解かれていたのではないでしょうか(※3月頭の対外試合解禁からカウントしても夏の予選が始まる7月〜8月までには解除される)。

こうした規定や運用を見ていくと、よほどの事案とタイミングでなければもはや夏の風物詩「連帯責任」は発動しなくなるのだろうと思いました。被害者側が加害者として10人以上を挙げ、かつ5月以降6月くらいまでの事案を挙げた場合にようやく「処分検討1ヶ月+実際の処分期間1ヶ月」で夏の大会に掛かってくるかなというところ。とにもかくにも、当たり前に行なわれていた悪しき慣行がひとつ消えそうなのは令和的な前進なのだろうと思います。

あとは、真実に則った適正な対応になっていること、真実をしっかりと見定めたうえでの適正な対応となっていること、そこがまっとうされているといいなと思います。もしそこに疑義があり、何らかの意図をもって真実が歪められているようなことがあったなら、それは遡って改めるべきだろうと思います。基準にどう対応するかではなく、真実にどう則るかが大事ですからね。真実に則った対応をすることで、ついでに野球部の「伝統」だの「上下関係」だのという悪しき慣行も一緒に消えてなくなればいいなと思います!



厳罰を求める世間がある限り、何度でも「連帯責任」は甦るかもですが!