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2025年の日本プロ野球お疲れ様でした!

長きにわたる日本プロ野球の2025年シーズンが終わりました。10月30日、日本シリーズ第5戦。ここまで3勝1敗と日本一に王手をかけていた福岡ソフトバンクホークスが延長11回の熱戦を3-2で制し、5年ぶりの日本一に輝きました。この決着には「ドジャースの決着がつく前に終わってよかった…」「よーし、これでドジャースを全力で見られるぞ」「トラ党の高市総理もドジャースのほう見てたしな」とスポーツ各紙も大いに沸いたことでしょう。

埼玉西武ライオンズファンの視点からすると、「日本プロ野球まだやってたんだ…」くらいに「シーズン終了」の時間間隔がズレているのですが、この真冬の寒さに凍える時期まで熱い野球で人々を楽しませてくれた選手たちにはただただ感謝しかありません。ゆっくりと身体を休め、さらなる成長を遂げて、ぜひまた来年も楽しませていただきたいもの。我が埼玉西武ライオンズもしっかりと数合わせの任をつとめるべく、精進に励んでまいります。2025年も日本プロ野球にご声援ありがとうございました!

↓福岡ソフトバンクホークス視点では長く遠かった5年ぶりの日本一、おめでとうございます!



それにしても強かったソフトバンク。史上最速の早さでセ・リーグを制し、ドラフト生え抜きの強力打線&投手陣と名将の誉れ高き藤川球児監督を擁する今年の阪神タイガースならばあるいは…と思って日本シリーズを見始めたものの、フタを開ければ「暴力」と言ってもいい強さでソフトバンクが虎狩りを果たしました。

2015年のプレミア12では「大谷さんがいたのに」世界一を逃し、昨年は横浜DeNAベイスターズにまさかの下克上を許すなど短期決戦に弱い弱いと評判で、シーズン中もファンを中心に愚将愚将と煽られていた小久保監督も、この日本シリーズに至っては勝負所で代打策がズバズバと当たり、継投には一分の隙も見せない盤石ぶりで、名将の誉れごと相手から奪い取るような戦いぶりでした。

怪我人の続出などから、シーズン序盤は最下位にまで沈んだソフトバンク。それを見て「西口監督より先に小久保監督が代わりそうだな」などとうそぶいていたことが今となっては恥ずかしいかぎりです。シリーズ後のインタビューでは、日本一を祝われているのに何を聞かれても去年負けた悔しさの話ばかりしていた小久保監督の姿に、失敗と後悔を経て人間は強くなっていくのだなとしみじみ思いました(意味深)。CSでは肝心なところでパッとせず、このシリーズでは初戦スタメン落ちとした山川穂高を、「目がガン決まってきたな…」的な直感なのか第2戦からスタメンに戻すや3戦連発・シリーズMVPとなったことについても、もはや誰も「初戦からスタメンで起用してれば4タテだった」などと思う者はいますまい。チャンスの前髪をつかむ一瞬のひらめき、理論と直感のハイブリッドは、監督として一日の長を感じるものでした。

↓失敗と反省を経て人は強くなっていく(意味深)!


その点で、名将・藤川監督には学びの多いシリーズになったのかなと思います。阪神ファンが何日も何日も愚痴りつづけている第2戦・デュプランティエさん先発起用というあの失策。「だって調子イイと思ったんだもん」「第2戦モイネロやろ?どうせ捨てゲームや」「第2戦を捨てて甲子園の頭を才木で取る!」で先発に起用するのは監督の専権事項かなと思いますが、初回で3失点したのに2回も続投させたあの判断、あれは短期決戦を取り損ねるいかにもな新人監督らしさだったなと思います。

3ヶ月ぶりの公式戦でいきなり3失点の初回でも、2回に二死から追加点を許したときでも、暴投でさらに失点を重ねたときでも、さらに四球を出して近藤健介さんを打席に迎えたときでも、替え時はいくらでもありました。ソフバン相手に4失点・5失点ではもはや捨てゲーム、と投手を出し惜しむ気持ちもわからないではありませんが、結果としてあの回に6失点し、最後に山川穂高のスリーランが飛び出したところで、シリーズの流れは一気にソフバンに傾きました。起こしてはいけない選手をひとりずつビンタしながら起こしてしまうような、悔やみきれない采配でした。「モイネロ」という捨てゲームが控えているなかで、どこにどのカードを切るかの順番間違い(安易系)は、シーズンをラクに勝ち過ぎた弊害だったかもしれません。「どれだけ締めても締め足りるということはない」場面で「締め切れない」、勝ちつづけた者ゆえの弱さがありました。

そうした勝ちつづけた者ゆえの弱さは、決着の第5戦へと真っ直ぐつながっていたように思います。明らかにブレーキがかかっていても組み替えられないほどに一年間盤石過ぎた打線、勝てるかどうかわからない試合でも無失点リリーフを連投させた強過ぎる勝利へのこだわり、一年間阪神を支えてきたものを「今日この日だけ急に捨てる」ような柔軟さは勝っている間はなかなか身につかないものです。「勝っているときは変えない」が鉄則であるがゆえに、「変える」を学ぶ機会は負けたときにしか存在しないのですが、阪神は勝ち過ぎました。

第5戦、リードはわずかながらも佐藤輝明さんのタイムリーや、「代打・近藤健介」を抑えた継投で、試合の流れは阪神にありました。ここで勝って、一日移動日を挟めばまた気分も盛り上がってくるようなイイ試合でした。何も悪いところはなかったし、むしろ理想的な試合運びを見せていました。ただ、2点リードの8回表一死一塁の場面で打席に迎えたソフトバンク・柳田悠岐さんが超人であることを軽視していました。阪神の無失点リリーフ・石井大智さんが、外角低めの素晴らしいコースに投じた150キロの糸引くようなストレートは、人間であれば打てない、むしろ手も出ない1球だったでしょう。自慢の救援投手です、退く勝負などするはずもさせるはずもありません。

しかし、柳田さんは人間ではなく超人だった。世界一になるという野心もなく、1000億円の大金を求めることもなく、福岡ソフトバンクホークスで大好きな野球をやっている、本来ここにいるべきではない選手がここにいた。本人がその気であれば、今頃ワールドシリーズに出ていておかしくない超人は、日本プロ野球の尺度のなかにはいなかった。打たれるはずのない1球を打たれた同点ホームラン。フルスイングできるカウントで、バットの届く範囲で、柳田悠岐と力勝負をしてはいけなかった。絶対に勝たないといけない試合で、同点のランナーがいる場面で、柳田悠岐と力勝負をしてはいけなかった。天災、鬼舞辻無惨、クマ、そういった人ならざる何らかの「暴力」と対峙しているという震えを感じるには、阪神は強過ぎて、勝ち過ぎたのだと思います。

↓「これが柳田悠岐」と言うしかない、何度も見せられてきた超人の一撃!



↓CSでも証明したばかりなのに、何故人間は柳田悠岐さんと勝負してしまうのか!




まだ同点、ですがこの一撃で「今日決まる」と僕は確信しました。阪神の盤石の試合運びを一撃で破壊しただけでなく、試合の流れごと反転させる、特別な存在による特別な一発。山川穂高に打たれての同点であれば「まだ同点」でしかないけれど、柳田悠岐さんに打たれての同点は「もう負けはない」くらいの勇気が湧くことを、阪神は最大級に警戒すべきだったと思います。

その後、延長へともつれ込んだ試合。瞬間的には互角の戦いをできるかもしれないけれど、全部のカードを切り合う長期戦の展開になったときに手札が多いのはソフトバンクのほうです。阪神は第1戦でチームを勝利に導いた村上頌樹さんを延長戦のマウンドに送って総力戦に臨みますが、回跨ぎの延長11回に野村勇さんの一発を浴びて逆転を許しました。

もしもこれをもう一度引っくり返すことができるとすれば、阪神ならば佐藤輝明さんの一発か、大山悠輔さんの復活なのでしょうが、延長11回裏・阪神最後の攻撃で先頭の佐藤輝明さんが四球止まり(代走送られ)となり、大山さんも凡打に倒れたところで、タラレバの芽すらキレイに摘み取られたような気がしました。この試合はどうやっても負けていたし、よしんばこの試合を耐えても、村上さんをリリーフ使いしたあとの第6戦・第7戦を取れる目算はなかったでしょう。ソフトバンクは第6戦に上沢さん、第7戦にモイネロさんと、まだまだ強いカードが出てくるのですから。阪神、出し尽くして負けた。そんな気がする決着でした。

↓相手の胴上げを見つづける藤川監督が印象的でした!


「悔しさはない」という藤川監督の言葉、これは文字通りの言葉で、さすが名将・藤川監督と唸るような言葉でした。悔しさというのは「できそうな範囲」の出来事にしか生まれない感情です。ああしていれば、こうしていれば、これをミスしなければ、あれが上手くいけば…届き得る範囲だと感じるとき人は「悔しさ」を覚えるのです。今回の5試合、届き得る範囲ではなかった。一枚も二枚もソフトバンクのほうが上だった。それが偽らざる本音なのかなと思います。

ただ、見かけ上はこれだけの接戦にあっても、その大きな差を感じ、言葉にできる藤川監督は来年さらに名将となってこの舞台に帰ってくるのではないでしょうか。来年ソフトバンクがここに戻って来れるかは日ハム次第という感じもして、そっちのほうが少し危ういかもしれませんが、もう一度同じ顔合わせでシリーズを見てみたいなと思うので、ぜひ来年も頑張っていただければと思います。ソフバンの力を出し尽くさせるところまでいけるチームとの死闘、それを終盤の楽しみとして2026年も熱くプロ野球を見守っていきたいと思います。もちろんゴールデンウィークくらいまでは、我が埼玉西武ライオンズのCS進出を信じてそちらを応援しますけどね!



「負けたことがある」という財産を得て、来年阪神はさらに強くなりそうです!