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マススタート選手は競馬学校に行け!(※阿部寛さんの声で)

いよいよ閉幕を迎えるミラノ・コルティナ五輪。最終日となる大会17日目は日本勢の登場はありませんので、各種団体種目の決勝を見守りつつ、閉会式を待とうと思います。日本としては冬季五輪通算でメダル100個の大台にも乗せ、そのうち4分の1が今大会ということで、なるほど楽しいわけだなと思いましたよね。トリノとかバンクーバーの頃とか明るい話題もあんまりなかったですもんね!そりゃ世間もイライラしますよね(回顧)!

そんななか大会16日目には日本勢が最後の奮闘を見せてくれました。フリースタイルスキー男子スキークロスでは古野慧さんが史上初の快挙となる決勝進出での4位としました。ウェーブセクション・緩斜面での素晴らしいスピードで次々に勝ち抜けていく古野さんの滑りには日本が「誰!?」と大興奮。我が家でも「賭けながら見たい!」という熱い声援があがりました。

そして、日本勢が最後のメダル獲得に挑んだスピードスケート男女マススタート。こちらは惜しくもメダル獲得・入賞とはなりませんでしたが、各選手が素晴らしいレース展開の読みを見せ、出場4選手中3選手が決勝進出ということで、非常に楽しませていただきました。ただ、男子の決勝、アレはいけません。金を賭けた本物の鉄火場でアレを見せられたら、オヤジたちが両手のストロングゼロを投げつけてもおかしくないレースです。穴候補側である日本勢としては「チャンスを逃した」という性質のレースでもあり、全員まとめて猛省いただきたいところです。




まずレースの前提の部分から。このレースはトラック16周の6400メートルで争います。一定数の周回(4・8・12周)ごとに着順上位にポイントが与えられるポイントレースですが、最終着順のポイントが大きいので、メダル争いという意味では1着・2着・3着がそのまま金銀銅になる仕組みです。

今大会の男子の場合、ひとり突出した注目度…いわゆる「人気」の選手がいました。500金・1000金・1500銀を獲ったアメリカのストルツさんです。残り3周とかの最後のスプリントになったら、この選手に勝つのは無理だろうという圧倒的な末脚の持ち主。そこをどう考えてレースを組み立てるかがジョッキーの見せ場となるわけです。

↓ストルツさんがめちゃ強い、が予想の大前提となります!


スピードスケートは時速50キロくらいのスピードを出しますので、空気の抵抗などを強く受けます。先頭に立てば空気抵抗をより大きく受けて疲労が増すので、できれば誰かの後ろについて風よけにしたいということを考えます。なので、「前にあんまり出たくない」という気持ちがひとつ全員にあるわけです。

そしてレース展開などを考えたとき、強い選手の後ろというのは非常にいいポジションになります。強い選手は勝手に遅くなったりしませんし(※前が壁にならない)、勝つタイミングでしっかり仕掛けてくれますので、強い選手の後ろについて一緒にあがっていけば、ラクに自然にいい着順に飛び込めます。何ならラクしてきたぶん最後にピュッとかわして勝ってもいい。競輪でいう「番手」のポジションですが、つまりは「ストルツさんの後ろにつけたい」が第一の発想としてあるのです。

ただ、レースというのはそれだけではありません。ストルツさんは短距離型・末脚タイプですので、ストルツさんも誰かの後ろにつきたいのです。誰かの後ろについてラクをしながら距離を消化し、最後に爆走してぶっちぎれば勝利は確実、そう考えるわけです。「ストルツさんの後ろにつきたい」と「自分も誰かの後ろにつきたい、先頭を引っ張りたくない」という相互の思惑が交錯したとき、お互いが譲り合って全体が超スローになることがあり得る。

そこを見越して、集団が遅いならこの隙にリードを築いて逃げ切ってしまおうという逃げ馬…じゃなくて人が出てきます。その逃げ勢が出ると、放っておいたら逃げ切られてしまいますので、追いかける馬…じゃなくて人が出てきます。これを競馬などでは「鈴をつけにいく」と言いまして、簡単には逃がさんよと誰かが逃げを捕まえにいったりするのです。

こうしたそれぞれの思惑への読みと、レースペースを体感で測りながら、今は追うべきなのか控えるべきなのかを判断して、ベストなレース展開を作るのが騎手の仕事なわけです。競馬で名騎手として知られる武豊さんやクリストフ・ルメールさんは、レース展開の洞察力と馬を操る技術が高く、「ここでここにいくべき」のときにビシッと馬をそこにいかせるのが非常に上手く、そのあたりが名騎手の名騎手たるところだったりするわけです。

で、今大会のジョッキー…じゃなくて選手の皆さん。

ビックリしましたよね、誰も鈴をつけにいかなくて。

まずレース序盤、ストルツさんが押し出されるように先頭に立ちます。ほかの選手はどうぞどうぞとばかりに誰も前に出ようとしません。ストルツさんは「誰か前に行けよ」と振り返りながら、ジョギングペースで滑り出します。その緩やかなペースの最中、オランダのベルフスマさんとデンマークのトープさんが3周目でポーンと飛び出しました。

マススタートでは中間ポイントというものがあり、4周目・8周目・12周目の着順上位にわずかなポイントが与えられます。3周目での飛び出しは、一般的に「4周目終了時点の中間ポイント狙い=入賞狙い」と想定されます。集団を離れて自力で走れば疲労も増しますので、中間ポイントを取ったら一度ペースを緩めて集団のなかで休憩するのが一般的。なので、ストルツさんはもちろん追いませんし、ストルツさんを警戒する他選手も当然追いません。

しかし、この飛び出したふたりは長距離型だったもので、「みんな追ってこないな」を察すると、そのまま逃げ切りへと舵を切り、快調なペースで飛ばしていきます。さらに、ここで集団のなかにいたオランダの同僚が動きました。みんなが嫌がる集団の先頭に立ち、「私が引っ張りますよ、みんなで前を追いましょう!」という顔をしながら、実は飛び出したベルフスマさんを逃がすためにペースを落としたのです。

後ろの集団はここで誰かが速やかに「鈴をつけにいく」べきだったのですが、かなり距離が空いてしまったことで、自分が跳び出して鈴をつけにいけば自分だけが潰れてしまって損をするという睨み合いの状況に。そういう場合は、みんなで先頭をかわりばんこにつとめながら全員で追っていけばいいものを、メダルを獲りたい、自分だけ損をするのはイヤだ、そんな思惑が交錯して集団のペースはあがらず、残り4周時点では「集団の最後尾が直線を出るときに、大逃げした先頭は直線の入口に差し掛かる」という4分の3周ほどの差がつく始末に。解説の�睫攤敍瓩気鵝腹�平昌金)からも「これは逃げ切れる差です」とアチャーな言葉が漏れ始めます。

大逃げの先頭集団は誰も鈴をつけにこなかったので余力も十分。ベルフスマさんは終盤さらにペースをあげてトープさんを引き離し、金確実という状況に。2番手のトープさんも余裕の銀確保という状態。ベルフスマさんは余裕たっぷりなので、最後の直線では観衆を煽りながら、ペースを緩めてガッツポーズ&拍手&流して入線しました。後ろの集団は最後のスプリントで銅メダル争いとなり、人気のストルツさんは直線伸びず、厩舎側から「距離ですね」というコメントでも出そうな滑りで4着となりました。

大逃げを許したうえに1番人気が連(※3着/メダルの意)にも絡まないという体たらくには、競馬界隈も騒然。「イングランディーレかよ」「クィーンスプマンテとテイエムプリキュアかよ」「ゴール前のガッツポーズは過怠金5万円だぞ」など、これが競馬場なら怒号飛び交う感じで盛大にズッコケることになりました。いやー、みんなが欲の皮を突っ張らすとこういうことがあるんですね!

↓オリンピックで大逃げ決めるというクs…ドラマティックレース!



↓大本命ブエナビスタ警戒で、2頭の大逃げを許したエリザベス女王杯と同じ感じになりました!


ま、このときはブエナビスタは猛然と追い込んで3着に入って責任を果たしたんですけどね!

3着にも入らないストルツさんの完成度が光ります!



振り返ってみれば、ベルフスマさんが逃げたときに一緒にいく誰かが必要でした。離れる前に誰かがついていけば、この展開にはならなかったはず。そして、できれば日本勢にいってほしかった。3人・4人となった集団が逃げていけば、さすがに後ろも追いつくまで追わないわけにいきませんし、もしそれでもまだ追ってこないようであれば逃げた集団だけでメダル争いができるチャンスでした。どの道最後のスプリントに賭けても苦しいわけで、イチかバチかならいってもよかったのではないかと思います。

そのあたりは選手としてもわかってはいたようですが、「まさか」という思いが拭えず動けなかった模様。蟻戸一永さんは「逃げる瞬間はわかってた、そこでチャンスを、後ろについていけなかった」「マススタートは展開を読めた人が勝てる」「自分自身チカラがないぶん、あそこで追うか迷った、チャンスをものにできない、覚悟がない」とわかっていたのに追えなかった自分自身を猛省していました。佐々木翔夢さんは「オリンピックは逃げが成立すると思ってなくて」「誰かしら追うだろうなという予想で滑ってしまった」とみすみす逃してしまったことを反省していました。

もし、日本勢があの逃げについていっていたら。あるいは先手を打ってアレをやっていたら。妄想のタラレバは広がりますが、そのときはそのときでまた展開も変わります。変わりつづける展開を読みながら「ここ」というときに動けてはじめて勝利も見えてくるというもの。逆に言えば、展開を操るチカラがあれば、滑りでは敵わなそうな相手でもやっつけることができるのがマススタートの面白さでもあります。日本には競馬も競輪もありますし、参考になる資料もたくさんありますので、ぜひ競馬学校にでも行きまして、レース展開について一層理解を深めていただくといいのではないかと思います。武豊さんやルメールさん並みに「展開」が読めていれば、大きなアドバンテージになりそうでしたので!

↓平昌の�睫攤敍瓩気鵑離譟璽恒燭咾郎8�てもお見事!


1周目で他選手を腕で押しのけながら優勝候補オランダのスハウテンさん(平昌銅、北京金)の後ろを確保!

そこから16周、中間ポイントには目もくれずひたすらスハウテンさんの番手に取りつく!

最後のコーナーでスハウテンさんが膨らんだところをイン急襲で差し!

ラストの直線は微妙にラインずらしてブロック!

レースがどうなるか最後まで読み切ったうえでの1周目の動きが見事!

この菜那さんも「解説のために競馬競輪を勉強した」そうなので、連盟主導で競馬やったほうがいいと思いました!

競馬をやればマススタートがもっと強くなると思います!



ま、競馬やり過ぎると「金を獲る」前に「金を失う」かもしれませんけど!