スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム

競泳

悪いニュースばかりと評判のアジア大会愛知・名古屋2026から東京開催の水泳競技を観戦し「自国開催で日本新の金」の夢を見た件。

07:00
アジア大会観戦に行ってきました!

本日はお出掛けの記録です。「試合は見てないけど、騒動の話には注目してます!」というイヤーな勢力が元気いっぱいだと評判の、アジア大会愛知・名古屋2026の観戦に行ってきたのです。と言っても、愛知に乗り込んだわけではなく一部分散開催により東京で実施されている水泳競技に行ってきました。「愛知に行くまでではない」とおおっぴらに言いたいわけではなく、いまだ東京五輪の怨念が燻る心を冷たく癒すには、水泳が見られるなら願ったり叶ったりということで、むしろ選りすぐって近所に向かった次第。昨年の今頃は東京世界陸上を見て基本そこでいろいろ成仏はしてるんですが、怨念っていろんなところに残ってますからね!

↓ということでやってまいりました東京アクアティクスセンター!
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折からの雨、連休終わりでの疲労感、さまざまな要因はあったのでしょうが、「まぁこんな感じでしょうな」という穏やかな賑わい具合で、現地は日本選手権くらいの盛り上がりです。一応人はたくさんいますし、のちほど会場で確認してみても売った範囲のチケットはおおむね売れており、スタンドにもしっかりと観衆は集っています。ただ、昨年の世界陸上には及ばないというか、そもそも及ぶべくもないというか、祝祭感というところには至りません。

来ている人も「あなたこういうの好きですよね」といった歴戦の猛者が多く見受けられ、「なんかわかんないけど盛り上がってるんで気になって来ました!」みたいな人は多くなさそう。まぁ、ぶっちゃけどこでチケット売ってるかもよくわからないですよね。ぴあとかが売り切れたあとも普通に公式チケットサイトでタンマリ売ってたんですが、それも意識されてないですよね。意識されてないあまりに、公式チケットサイトでまだ普通に売っているチケットがチケジャムあたりで高額出品されていたりして「悪意or愚か」って新作映画のタイトルが浮かびましたよね。

アジア大会は五輪以上の競技数(どうでもいいのが多いとか言わない)と選手数(多けりゃいいってもんじゃないのはその通りではある)が集う大祭りなのですから、その気になれば熱狂を日本全体に波及させることだってできそうなものですが、まぁそのあたりは「アジア大会(勝っても世界一では絶対にない)」といったあたりの限界値でしょうか。アジアで一番であれば事実上世界一という競技もないことはないものの、絶対ではないですからね。あるとすれば陸上や競泳での純然たる世界記録更新くらいでしょうか。なるほどこれでは悪いニュースばかりが目立つのも詮無きことでしょう。基本この手の大規模イベントでは一定数「粗探ししかしない輩」がいるのですが、それを興奮と熱狂でひっぱたくほどには盛り上がっていないので、結果的に悪いニュースが妙に目立つのかなと思います。なので「騒動は気にしない」がよいでしょう。世界から1万何千人も集まってるんだから、何もないわけないのです。探せばいっぱいある。選手も関係者も何かしらあると思って過ごすべき。それに動じないのも実力の一部。結局は「気になるのは熱狂が弱いから」です。その点については、もうちょっと頑張りたいなと思う次第です。

↓若干の地域イベント感は否めないものの飾り付けもちゃんとある!
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↓そんなに売れてないかもだけれど一応食べ物だってある!
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↓インバウンドはあんまり来ないかもだけれど英語の案内もしてみた!
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雨に備えて頑張ってラミネート加工してるぞ!

英語の部分も頑張って紙を切って貼ってるぞ!



僕は17時開始の決勝セッションを観戦する予定で、若干遅刻気味ながら16時半頃には入口前に待機しておりました。しかし、行列はあれど前に進む気配はありません。開場が遅れているのか、開場を忘れているのか、列が動き出したのは16時45分くらいだったでしょうか。午前の予選セッションから見ている人はすでに場内にいるのかもしれませんが、17時の競技開始時刻が迫るなか結構な人がまだ会場の入口で列を成しています。

見れば入場ゲートではカバンを開けて点検するタイプの荷物検査や、空港みたいな金属探知機での検査のほか、水筒やらペットボトルを持っている人に対して「一口飲んでみてください」といった検査も行なわれるなどしっかりめのセキュリティで、わりと時間がかかりそう。傘をさしている手前「事前にカバンを開いた態勢」で待つのも面倒臭く、皆自分の番が来てから準備を始めるものですから、入場はだいぶ手間取る流れに。ようやく入場口をくぐったのは17時ギリギリとなりまして、急ぎプールへ向かうことになりました。いやー、時間があれば出展モノなども全部体験したいところですが、まぁ今日のところは見る専でいきましょう。

↓なのであんまり散策できていませんがキヤノンさんのフォトスポットです!
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↓こちらはチェキ的なフォトスポットです!
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↓奥にある葛飾北斎の「北斎漫画」の復刻展示が目を引くフォトスポット!
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↓銭湯について伝えたいという熱気を感じるフォトスポット!
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↓東京のスポーツ施設情報を伝えたいという意欲を感じるガチャ!
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↓グッズ売店には相応の人だかりができていました!

いよいよ場内へ入りますと、場内はなかなかの熱気で満ちています。テレビに映る側のスタンドはおおよそ埋まり、反対側のスタンドもそれなりに人が集っている感じでしょうか。レイアウト上「椅子はあるけどもともと売ってない」という座席もある認識ですので、まぁこんなものでしょう。超満員大観衆とは言いませんが十分に盛り上がっています。その盛り上がりはもちろん日本勢の応援が中心なのですが、中国勢の勢いもかなりありそうな気配。中国選手の登場には大きな拍手や歓声があがりますし、国旗をもって熱烈に応援する人の姿も。なるほど「アジア大会」って感じがしますね。

↓アジア大会の表示もドーンと出ていて気分が出ます!
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↓奥側のついたてのところから選手が登場してくる仕組みです!
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↓10レーンからなるプールと奥側スタンドには参加国の国旗等が!
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着席からほどなくして競技スタート。この日最初の種目は日本から池江璃花子さん、池本凪沙さんが出場する女子100メートルバタフライ決勝です。早速のスターの登場で場内も大いに盛り上がります。池江さんが5位、池本さんが6位と惜しくもメダルには届きませんでしたが、まずはしっかり泳ぎ切りました。この日は男女混合のメドレーリレーもありますので、そこに懸けてもらいたいところです。

つづいて行なわれた男子100メートルバタフライ決勝では、ビッグな嬉しいニュースが。この種目に登場の光永翔音さんが後半まくって1着入線、しかもその記録が50秒56という日本新記録に!松元克央さんも3位に入り、日本勢のダブル表彰台となりました。1レーンという「競泳のレースとしてはそんなに強い選手が入りそうな感じはしない枠」ながら、前半を2位の好位につけ、後半の50メートルに入って先頭に立った光永さんのレースには、会場からも絶叫のような歓声があがり、素晴らしい雰囲気を堪能することができました。気持ちよかった!

↓日本記録を更新した光永翔音さん!
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↓日本勢が抱き合って喜ぶ美しい絆!
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↓表彰台でも堂々の金を受け取りました!
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↓だいぶ仲良しさんなんですね!楽しそうで何より!
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日本勢の活躍は見事なもので、その後も女子100メートル背泳ぎでは白井璃緒さんが銀、男子200メートル自由形では村佐達也さんが銅、女子100メートル平泳ぎでは鈴木聡美さんと加藤心冨さんで銀・銅を獲得。女子400メートル個人メドレーでは成田実生さんが銅とし、この日実施の個人種目6種目中5種目で表彰台に上がってくれました。「アジア選手権だし」と言われればその通りですが、日本競泳陣がひところの苦しさから脱して、若い世代の台頭がしっかりと見える状況となっており、ロス五輪へ向けても上昇機運を覚えます。ここまでの日程のメダリストを見ても、男子100メートル平泳ぎで同着金の大橋信さんが17歳、日本のエースである男子200メートル個人メドレー金の松下知之さんも21歳ということで、まだまだここから強くなる想定の選手たちがあと2年かけて臨むロス、これは大変楽しみです。その若き一角にまたひとり光永翔音さんという新星がきらめいた、やがて自慢になる観戦となったかなと思いました。

さぁ、こうなると女子100メートルバタフライでメダルを逃していた日本勢も、何かしらいい結果で気分よく帰りたいもの。そして、それにうってつけの舞台も整っています。この日の最終種目・混合4×100メートルメドレーリレーには、先ほど女子100メートルバタフライで5位・6位の池江さん池本さんがそのままメンバー入りしています(バタフライと自由形)。日本のオーダーは、最初の背泳ぎに今大会個人で銀の竹原秀一さん、つづく平泳ぎに個人金の大橋信さんと入る前半型の布陣。後半は女子選手がふたりつづくオーダーですので、前半でしっかり差をつけてそのまま逃げ切りたいところです。

迎えたスタート、背泳ぎでは浮き上がりから身体半分ほどリードする中国に対して日本は2位で食い下がり、1秒63の差で平泳ぎにつなぎます。日本は金メダリストの大橋信さんが少し詰めて、1秒21差でバタフライの池江さんにつなぎます。中国も男子男子女子女子のオーダーで、3泳・4泳は日本と同じく先ほど女子100メートルバタフライを泳いだ選手たち。ここはそのレースでの差をそのままなぞるようにして、日本は2秒74差でアンカーにつなぎます。中国を逆転するのは少し厳しく、逆に最後の自由形に個人銀の男子選手を残している韓国との差が6秒66というのが気になるところ。個人種目での自由形100メートルのタイムをそのまま当てはめれば韓国が逆転する計算で、これは文字通りのアンカー勝負です。

ここで池本さんが粘ります。前半の50メートルでは中国との差が変わらず、韓国の追い上げも3秒17に留めており、折り返してのリードはまだ3秒53あります。勝負の後半。韓国の追い上げの体感速度、計算上の差、テレビ中継では解説の萩野公介さんが「これはきますね」「これはきたわ」「いやーこーれーはー」と負けを覚悟するかのような呻き声をあげています。現地でも「あげろー!」「逃げろー!」「あー!」などの悲鳴があがりますが、池本さんは粘り込んで2位入線!単純な比較はできませんが、池本さんが個人自由形100メートルの決勝で出したタイムが54秒64だったのに対して、このリレーでのラップは53秒79でした。アンカー勝負で見事に日本が勝った、勝利の銀、そういっていい内容だったと思います。終わりよければすべてよし、このレースもこの日全体も、とてもイイ気分の締めくくりとなりました!

↓表彰式で銀メダルに笑顔を見せる日本チーム!
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↓表彰台はもう少し大きくてもよかったかもですね!せめてリレーのときだけでも!
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↓金メダルの表彰式やリレーの表彰式など現地の雰囲気を動画にまとめました!


もう一回くらい行きたいですね!


とまぁ、大変希望に満ちた気分のいい観戦となりました。このあとに控える種目では男子の4×100メートルメドレーリレーに「銀・金・金・200で銅」といった強い布陣が組めそうで、妥当中国という大きな目標へ向けても一筋の光が見えてきたようで楽しみです。自国開催での金&日本新という名場面を見られてまたひとつ成仏も進み、とてもよかったなと思います。皆様、特に愛知周辺の皆様、「何かトラブルが起きるかも(ワクワク)」みたいな邪念でもいいので、一度行ってみると楽しいんじゃないかなと思います。トラブルを熱狂で吹き飛ばす、そんな開催国の姿、見せられるといいなと思います!


飯と宿と足が立派であることよりも、大事なのは試合そのものです!

東京2025デフリンピックで「東京で日本の代表が金メダルを獲り、日の丸を見て君が代を聞く」の夢が叶い、さらに「君が代」を見た件。

08:00
東京で日の丸と君が代を見ました!

熱戦つづく東京2025デフリンピック。平日は給料仕事があって僕は忙殺されていたわけですが、そんななかでも大会は大変な人気だそうで、会場によっては入場規制で観戦まで時間が掛かるところや見られずに撤退する人も出たとか。この週末は3連休ということで、運営側からは「3連休は大きい会場に行ってもらったほうがいいかも…」的なアナウンスが出たほどです。改めてこの大会を包む熱気を感じるようです。

↓公式からの、3連休は大きめの会場を推すアナウンス!


混雑情報で怯む僕ではありませんが、検討の結果この日は、東京アクアティクスセンターで行なわれる水泳競技を観戦することにしました。9月には世界陸上で陸上三昧をしておりましたが、まだ東京で世界の水泳を見ていないなと思ったのと、やはりせっかくなら「金メダル」を見てみたいなと思ったのです。日程表(結局PDFが一番見やすい/公式サイトも頑張れ!)でこの日行なわれるメダルマッチを凝視して、ここだなと思ったわけです。

↓ということでやってまいりました東京アクアティクスセンター!
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いつ来ても空いていることでおなじみの東京アクアティクスセンター。個人的にも大会などで何度か足を運んでいますが、立地なのか競技性なのか敷地面積なのか、会場に向かうときには「本当に今日試合あるのかな?」と不安になる感じで人口密度の低さを覚える会場です。それがどうでしょう、入場口へ向かう階段を上がるとそこには夜の部の入場を待つ観衆が行列を成しているではありませんか。

入口から伸びた行列は建物に沿って折れ曲がり、さらに奥へ奥へとつづいています。アクアティクスセンターは5000席を備える規模感ですので、入場できないということはさすがになさそうですが、それにしても想像外の集まりです。この列を見ると「FC町田ゼルビアの天皇杯決勝に観衆が大して集まらなかったのは、東京のスポーツ好き浮動層がデフリンピックに行っていたから説」を提唱してもいいかなと思うくらいです。

↓アクアティクスセンターの前に行列だと…!?
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↓奥へ奥へと人の列がつづいている…!
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行列につづいて入場しますと、さすが最新の大規模会場ということでモニター類やらの備えも多く、会場内は字幕による誘導でさまざまな情報が表示されています。入場口や案内デスクでは「私は手話でコミュニケーションできますよ」という動きの方が出迎えてくれており、必要があればすぐに助けを求められそうです。音声認識で字幕を表示する装置もしっかり稼働しており、デフリンピックに限らずいろいろな会場にいつも置いておいてくれたら便利だなと思いました。

↓係員さんが会話で応答しても即座に字幕化&翻訳してくれて便利!
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↓江東区観光キャラクターのコトミちゃんも目で訴えかけてくる!
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↓観戦時の諸注意や試合情報などもモニター並べてアチコチで表示してくれていました!
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場内は5割ほどの入りでしょうか。メインスタンドは丸ごと関係者席に充てられているようで埋まり切っているわけではありませんが、選手団・関係者などが応援に熱をあげています。一般客が入るバックスタンド側はプールサイドの低層席はほぼ埋まっていた模様。僕も出入りを繰り返したわけではないので実態はわかりかねますが、誰かが帰るとそこに誰かがやってくる、という感じで常に席が埋まっていましたので、もしかしたら僕が入場したあとで入場規制などが掛かっていたのかもしれません。まぁ、単に目ざとく空席を見つけた人が前方に移動してきただけかもしれませんが。

この会場は観客席から見えるプール上方の大型モニターと、選手のスタート位置から見える大型モニターがあり、表示する場所は十分にありますので、競技進行は基本的に字幕表示でわかる感じになっています。さらに、競技開始前にはデジタルヒューマンのKIKIが国際手話を教えてくれる時間もあり、僕も「拍手」に加えて「おめでとう」や「がんばれ」を習得し、さらに応援の幅を広げることができました。

↓これで「おめでとう」になるそうです!
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↓選手向けの情報も字幕で表示されていました!
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そしていよいよ競技開始となったわけですが、この会場では大型モニターに競技の模様だけでなく、手話通訳の方を2人同時に映すというやり方をしていました。内容がわからないので推測になりますが、やっている内容はそれぞれ違うようでしたので、ひとりが日本語手話でもうひとりが国際手話とか2ヶ国語同時に出していたりしたのかもしれません(あるいはひとりは国紹介、ひとりは名前紹介とか内容での区分けかも)。それを踏まえてなのか、選手たちも場内音声での名前呼び上げではなく、モニター上の手話での案内が終わってから動き出していたりして、そのタイミングの違いに、いかに自分が音声の世界を当たり前に思っているかを改めて感じたりしました。

場内では笛がピーピー鳴っていたりもしつつ、選手向けにはスタート台のあたりに3色に光るランプが備えられています。白いランプのときはオン・ユア・マークスで、赤いランプのときがセット、青いランプに変わるとゴー、といった感じのよう。これも最初からスタート台とかプールの機構に組み込んであってもよさそうなものですが、そうではないあたりがデフアスリートにとってはやるせなかったりするのかなと思ったりしました。

↓競技映像と手話を同時に映すのは、いつもあってもよさそうなものですね!
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↓スタート台の横にある3色のランプで選手はスタートしていました!
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すると夜の部最初のメダルマッチである女子100メートル自由形決勝では、何といきなりデフ世界記録が飛び出しました。優勝したイタリアのヴィオラ・スコット・ディ・カルロさんは、イタリア代表としてパリ五輪では100メートルバタフライ(※池江璃花子さんの出場種目)とメドレーリレーに出場していた選手だとのこと。カルロさんはこの種目の競技に臨んだあと、4×200メートルリレーの表彰式で金メダルを受け取り、今しがた勝った100メートル自由形の表彰式で金メダルを受け取り、さらに50メートル背泳ぎ決勝に出場して再びデフ世界記録&金とする大活躍で、出たり入ったりで忙しいの何の。パリ五輪では出場した2種目でいずれも違反失格となるなど苦い思いをしたとのことですが、そのぶんまでいい大会になっているようであればいいなと思います。

↓競技中ももちろん手話実況つき!
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↓デフ世界記録誕生の瞬間を見ました!
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↓表彰式も手話実況つきです!
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↓デフ世界記録&金!1日で3回金メダルもらいました!
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↓ちなみに表彰式では国歌が流れている間、こんな表示に!
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世界に負けじと日本勢も、栄えある自国開催ということで大活躍を見せます。女子100メートル平泳ぎでは串田咲歩さんと久保南さんが決勝に進出し、串田さんが見事に銅メダルを獲得。女子背泳ぎ50メートルでも平林花香さんが決勝に進出し、8位入賞としました。

↓世界の3位、おめでとうございます!
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そして何と言ってもこの日のハイライトは男子200メートル個人メドレーです。この種目には今大会200メートル自由形で金、400メートル自由形で銀を獲った茨隆太郎さんが出場するのです。ここまでデフリンピック通算21個のメダルを獲得してきた日本の大エース、前回大会金のこの種目はもちろん金が目標となります。会場には茨さんへの熱い応援と期待感が広がっており、応援バナーや応援うちわなどを掲げてそこかしこで盛り上がっています。茨さんが会場を鼓舞するように入場すると、「拍手」はもちろん歓声さえも上がりました。このあたりはむしろ一般の観衆よりも関係者席のほうが大きな声をあげて盛り上がっていたように思います。

迎えたスタート。力強く飛び出した茨さんは、1種目めのバタフライと2種目めの背泳ぎではじっくりとチカラを溜めるように前の選手を追っていくと、3種目めの平泳ぎで一気にまくって先頭に出ます。最後の自由形は今大会でメダルを獲った種目でもあり、そのチカラはここでも圧倒的。ラスト50メートルでほかの選手をグングン引き離し、最後は身体ふたつぶんほど差をつけて堂々の1着。見事な金メダル獲得となりました!

↓会場を盛り上げながら入場してきた茨さん!
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↓圧倒的な強さで男子200メートル個人メドレーの金メダルを獲得!
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その後の表彰式。茨さんに金メダルが授与されると、大型モニターには日の丸が表示され、会場には君が代が流れました。モニターの字幕には「ただいま国歌が流れています」的なことが英語で表示されるなか、茨さんは表彰台の上で手話を始めました。その手話を知っているわけではありませんが、これはもちろん君が代の手話でしょう。たとえ会場に流れる音が聞こえていなかったとしても、同じ時間に同じ思いを重ねることはできる、そんなことを思う特別な君が代となりました。「全出場国の国歌を手話映像であらかじめ用意しておく」とかができたらもっとよかったのかなと思いますが、そこまでリーダーシップを発揮してくれるあたりはさすが日本の大エースという見事な表彰式でした!

↓表彰式で金メダルとぬいぐるみを掲げる茨さん!
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↓日の丸が一番高い場所にあがりました!
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↓金メダリストによる君が代の手話!
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この日の最終種目となった混合4×100メートルメドレーリレーでも日本が決勝進出を果たしており、最後まで熱い戦いに盛り上がった観戦。日本チームが銅メダル争いを演じ、最後の最後のタッチまで競り合った末の4位は熱くて惜しくて燃えるレースでした。もしかしたらあまりよろしくないのかもしれませんが「拍手」だけではコチラの感情が出しきれず、いつものように声で「行け!」「差せ!」「頑張れ!」など叫んでしまいましたよね。

東京で日本の代表を応援し、金メダルを見て、日の丸が上がるのを見て、君が代を聞く。個人的にもいつか叶えたかったことが叶う日となり記憶に残る観戦となったわけですが、さらにそのうえ「君が代」を見るという体験までできるなんて。我ながら見事なセレクトだったなと自画自賛したくなるようです。僕が叫んだかどうかはあまり関係ないかもしれませんが、そのぐらい盛り上がっている会場の光景が、選手たちにとっても嬉しい記憶になっていたらいいなと思います。いいものを見せていただき、ありがとうございます!

↓この日の会場ではイギリス応援団のおじが盛り上げ上手で大人気でした!
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各国関係者が盛り上げ上手揃いでした!

東京も負けていられない感じです!


あとは「団体球技の金」が見られたらいいのですが、どうですかね!

池江璃花子さんが得意種目100mバタフライで個人としてのパリ五輪出場を決め、2019年に掲げた遠い未来の約束が果たされた件。

08:00
2019年の池江璃花子さん!2024年の池江璃花子さんがパリへ行きますよ!

素晴らしい瞬間を見ることができました。17日から始まったパリ五輪への派遣選手を決める競泳の国際大会代表選手選考会。大会2日目となる18日には注目の種目、池江璃花子さんが個人としてのパリ五輪出場権を狙う、女子100メートルバタフライの決勝が行なわれました。

東京五輪のヒロインになるだろう選手として多くの注目を集めた池江さんは、白血病という重い病に侵され、図らずもコロナ禍によって翻弄された東京五輪の象徴のような存在となりました。大会自体の1年延期と、池江さんの劇的な回復というふたつが合わさることでリレーメンバーとしての大会出場が叶ったとき、「あの1年」が辛いだけの時間ではなかったのだとようやく思えたものです。

その池江さんが、今度はリレーメンバーとしてではなく「個人」として、2019年の退院報告で掲げた遠い未来の目標に迫ろうとしている。この日行なわれる女子100メートルバタフライは池江さんの出場種目のなかでもパリへの切符をつかむ公算がもっとも高いだろう種目でした。準決勝は全体トップタイム、その時点で派遣標準記録を超える泳ぎも見せています。いよいよ、ついに、ようやく。祈らずにはいられない大一番です。

↓勝負の舞台は東京五輪の競泳会場・東京アクアティクスセンター!
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↓チケットは完売!なお会場の大半は選手・関係者席だった模様!
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↓いざ世界の頂きへ!謎の顔出し看板が盛り上げる!
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まるで水面のように波打つ天井が美しい東京アクアティクスセンター。「本来ならばここで…」と繰り言を始めればあとからあとから言葉が出てきそうな気分にもなりますが、時は戻りませんし、やり直すこともできません。人間にできるのは起きたことを受け止めて、それを乗り越えていくことだけ。

会場には多くの観衆と、それを上回る多くの選手・関係者が集っています。プールサイドの2階スタンドが一般席だとすれば、その上の3階スタンド以上の上層はすべて関係者席といった感触。明らかにスイマー、明らかに大学・クラブ関係者、明らかにVIP、そんな面々が日常の延長線上のようにして和気藹々と集っています。うむ、まさにここはスイマーが人生を懸ける決戦の舞台であり、チケットを売りさばいて小銭を稼ごうなんてつもりではないのでしょう。あくまでも「やる側」の大会、そんな雰囲気に観衆として紛れ込んだ僕も背筋が伸びます。

↓まぁ、だもんで、売店では身内用にビール売ってたりもするんですが!
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あとから気づいたんですが、左上に小さくポップが出ていました!

飲みながら競泳見るってのもアリですね!観衆は酒に溺れる感じで!



午前中に予選を行ない、夜に準決勝・決勝を行なうというスケジュールで進んでいくこの大会(※間に大きく時間が空くため、入場者も予選と準決勝・決勝とで完全に入れ替えになるという仕組み)。夜の部から観戦を始めますと、早速女子100メートル平泳ぎ準決勝では青木玲緒樹さん、鈴木聡美さん、渡部香生子さんといった錚々たる顔ぶれが集ったレースが行なわれ、上位選手は準決勝の段階から派遣記録突破タイムでゴールするなど上々の仕上がり具合。33歳とベテランの域に入った鈴木聡美さんが「今が全盛期」というような元気さで、2大会ぶりの五輪へ視界良好です。

さらに男子100メートル背泳ぎ準決勝では入江陵介さんが全体1位での決勝進出を決める順調ぶり。こちらはもし決勝で派遣記録突破&上位2人に入れば日本競泳最多の5大会連続での五輪出場となります。記録としてはもう少し上げていきたいところですが、まだ泳ぎにも余裕たっぷりですので、決勝も大いに期待して見守りたいところ。実力者たちの奮闘で、「世界」へ向けての気持ちも高ぶっていきます。

そして迎えたこの日の決勝種目。まず注目の一戦となったのは男子400メートル個人メドレー決勝。こちらには言わずと知れた第一人者、世界の瀬戸大也さんが登場してきます。「今年の」世界選手権で銅メダルを獲得している瀬戸さんとしては、五輪切符は通過点…のはずだったのですが、前半力強く飛び出したものの後半の平泳ぎと自由形でまくられ(最後失速気味)、まさかの2位。しかも派遣記録にも及ばず、何と世界選手権で7大会連続メダル獲得中の大本命種目で瀬戸さんは五輪を逃してしまいました。

もちろんこれは「日本が独自に設定している世界大会10位相当の派遣ライン」に及ばなかったというだけで、五輪が定める標準記録は余裕で上回っているわけですから「出そうと思えば出せるけど、出さない」という非常に厳しい結果です。この仕組みでずっとやっている以上「今のやっぱナシ!」とは今さら言えないでしょうが、もしこのあとの200メートル個人メドレーで派遣記録を突破し、瀬戸さんが個人として五輪切符を獲るようであれば、杓子定規にならずに400メートル個人メドレーにもエントリーするような運用を日本水連にも期待したいところです。「200のためにもなるから!」「調整名目で!」「本気でやらないようにキツく言っておきます!」とか何とか理由をつけるような柔軟さがあってもいいのではないかと思いました。そうさせられるように、瀬戸さんのもうひと踏ん張り、期待したいところです。

↓その400メートル個人メドレーでは、かつての萩野・瀬戸を思わせるように、高校生の松下知之さんが競泳第1号で五輪内定!

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ちょっと不穏な空気のなか、いよいよ始まる女子100メートルバタフライ決勝。準決勝では池江璃花子さんと平井瑞希さんが派遣記録を上回るタイムを記録しています。ほかにも派遣記録に迫る選手がいますので、タイムはもちろん順位も非常に重要になってきそう。大型モニターに各選手がお茶目なポージング映像を投影するなか、センター4レーンを泳ぐ選手として最後に入場してきた池江さんは両手を大きく掲げるガッツポーズを見せました。緊張感というよりはワクワク感。薄っすらと笑顔さえ浮かんでいます。

ゆっくりと準備をし、最後にスタート台に向かった池江さん。パンパンと身体を叩いて何度も気合を入れます。深く一礼して臨む決勝の舞台、池江さんはややスタート合わずも伸びのある浮き上がりから、前半26秒35でトップに立ちます。派遣記録ペースは十分に上回っています。ターン後の浮き上がりでも先頭をキープした池江さんですが、前半の入りが速過ぎたという準決勝と同じ課題が出たか、終盤はやや苦しい泳ぎに。5レーンの平井瑞希さんがグングン追い上げ、池江さんをかわす勢いです。最後の5メートル、池江さんはかわされたか、そして派遣記録の57秒34もかなり際どい状況。最後までもつのか。ゴール後に本人たちと観衆とが全員で見上げた電光掲示板の表示は…!

↓1着平井さん56秒91!そして2着池江さん、タイムは派遣記録をわずかに上回る57秒30!2人がパリ五輪内定!


池江さんは掲示板を確認すると、水中で小さく、けれど力強く拳を握りました。ほかの選手がプールから出て行くなかで、池江さんは自分のレーンから動かず、仰ぎ見るように上を見たり、うなずくように視線を落としたり、プールのなかで余韻を噛み締めるように過ごしています。やがてプールから出ると、両の手を合わせて、拝むように、スタート前よりもさらに深々と、プールに向かって長く長く頭を下げました。その長さは、乗り越えてきた困難の時間の長さゆえだったでしょうか。泣くでもなく、笑うでもなく、あえて言うなら「感謝」するように池江さんは時を過ごしていました。1位の選手がいることも敗れた選手がいることも承知しつつなお、今日は池江さんを盛大にお祝いせずにはいられない、そんな会場の一体感を覚えました。

インタビューに臨んだ池江さんは、前半の入りの速さについて「自分が思っている以上に速くなっているし、自分の制御が効かないくらい強くなっている証拠」ととらえ、さらに体力をつけてこの結果を次につなげたいと語りました。速過ぎて終盤失速したという悲観的な分析ではなく、強くなろうとしている自分に抑えが効かないんだ、そんな前向きな捉え方は新鮮で朗らかでした。そうです、池江さんは強くなろうとしている途中。ここからが本当の始まりです。

2019年に掲げたパリ五輪という遠い未来の目標は、途中思いがけず東京五輪に間に合うという前倒しもありつつ、この日しっかりと叶いました。ただ、あのとき掲げた目標にはもうひとつ「メダル獲得」というものもありました。かつての池江さんが成し遂げていない目標、新たな地平にある目標です。メダル獲得には復帰以前の自分を超えるタイムが必要となってくるでしょうが、逆に言えばそこまでたどり着けば、過去も、かつての自分も、困難も、すべてを超えた一番向こうにいるということでしょう。ぜひそこまでたどり着いてもらいたいものです。池江さんには病気から奪い返した時間があります。今大会にも30歳を超えてなお最前線で戦う選手たちが集っています。池江さんはまだ23歳、パリもロスもブリスベンも全部狙える大会です。そんな果てしない未来を夢見て、まずはパリを見守ろうと思いました!

↓おめでとう!ありがとう!素晴らしいものを見ました!



最後に。競技終了後、観衆も多くが帰途についたあとの会場では表彰式が行なわれていました。女子100メートルバタフライ決勝で3位に入り、池江さんとわずか0.01秒差で惜しくもパリ五輪を逃していた松本信歩さんの記録57秒31が学生新記録であるということでの表彰でした。

この種目の高校記録であり日本記録でもある56秒08を池江さんが記録したのは、2018年6月のこと。池江さんが病を発症したのは高校卒業を間近に控えた2019年2月のことでした。その後、日大に進学した池江さんは2022年に50メートル&100メートル自由形と50メートルバタフライでの学生記録を樹立するも100メートルバタフライでは記録を更新するに至りませんでした。

何もなければ更新されていただろう記録が、巡り巡ってこの試合を祝福しに来てくれたような気持ちになりました。皆が「池江さんおめでとう」と言っている切ない時間に行なわれた別のお祝いが、0.01秒の無念を少しでも埋め合わせるものであればいいなと思いました。全員の夢は叶わないのが現実であったとしても、全員が何かしら得られるような、そんな世界であればいいなと。希望が叶った人にも、そうでない人にも、みんなに何かいいことがあればいいなと思う、そんな一日でした!

↓この先の熱戦にも期待しています!
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次回は売店でビール買って「4-5」とか予想でもしながら見ようと思いました!

互いの表情は見えなくても涙に触れることはできると気づかせてくれた、木村敬一さんと富田宇宙さんのふたりだからこうなった「金と銀」。

08:00
TOKYO2020史上、最高に泣けた!

この光景を見たかった。何年も前からこの東京五輪・パラリンピックに見ていた夢のひとつが、これ以上ないほど素晴らしい形で叶いました。東京パラリンピック競泳男子100メートルバタフライS11クラス決勝、日本からは木村敬一さんと富田宇宙さんが出場しました。親友でライバルで、それだけでは言い表せないような関係を備えた至高のふたり。このふたりが夢で見たとおりの「金と銀」を獲りました!




抱きしめるというよりも、互いの存在を手で確認するように抱き合ったふたり。視覚障がいのクラスは掲示板も他選手の様子も見えないはずですが、支える人たちの声と、水と空気から感じるもので夢が叶ったことを理解していました。ここまでのレースでは見られなかった最高の笑顔と最高の喜びがプールのなかで弾けています。そして、パラリンピックのプールに涙が溶けています。あぁ、これは五輪でも出会わなかったかもしれないなと思うほどの震える思いで、自分ももらい泣きしました。

「木村くんに金を獲ってほしいと思っている」

「本気で金をほしいと思ってるわけじゃないやつと俺何で戦ってるんだろう」

「何色でも見えないよ」

「金を獲れば君が代が聴けるよ」

「木村くんが鳴らしてくれても同じだよ」

そんな言葉でときにすれ違い、ときにぶつかり合いながらも、この舞台を目指してきたふたり。パラリンピック4大会出場、ほぼ生まれながらに視力を持たず、泳ぎというものをまったく見たことがないなかで作り上げた木村敬一さんの泳ぎは、すべての泳ぎ手から敬意を向けられるべきものです。途中からこの競技に参加した富田さんが「木村くんに獲ってほしい」となる気持ちは理解できます。

しかし、木村さんが本当に求めていたのはライバルだった。同じ世界で戦い、自分の全精力を傾けるにふさわしいライバルとの競い合いだった。全力で競い、全力で脅かされ、なおかつ勝ちたい。それはアスリートの本能です。強い敵と戦って勝ちたいという闘争心です。ほぼ生まれながらの障がいだから、自分にとってはそれが普通だから、何も失ったわけではないから、木村さんは「アスリート」のド真ん中で戦いを求めています。勝ちを譲られようなんて気はサラサラない。

そんな木村さんとの友情に応えるには、強くなるしかなかったのかなと思います。「あ、これは獲るだけじゃダメなんだ」という気づきの先には、世界のほかの選手を全部倒して自分が木村敬一を脅かさないと、「木村くんに金を獲ってほしい」は成立しないんだという責任感すらあったのではないかと思います。自分も本気で金を目指し、勝ってやるぞと挑んだ先で、もしもチカラで負けることがあったなら。胸を張って負けを認められる戦いができたなら。さすが木村敬一だとさらに大きな敬意を抱くほどの強さを見せつけられたなら。それこそが真に願った「金と銀」になる…そういうことなのかなと思います。



迎えた決勝。力強く拳をあげて入場してくる富田さんと、4大会13年越しの悲願に挑む研ぎ澄まされた表情の木村さん。ふたりは予選をそれぞれ1位で通過し、センターレーンに並びます。3レーンにはここまでのレースでふたりを退けてきたドルスマンもいます。役者は揃った。舞台は最高。これ以上ない戦いが始まります。

浮き上がりで先頭に立ったのは木村さん。前半から積極的に飛ばしていきます。しかし、ドルスマンも速い。富田さんはドルスマンを追って3番手から2番手へと進出していきます。最初の50の折り返し、木村さんがトップ、2番手にはわずかの差で富田さん。苦楽をともにしてきたタッパーが「このタイミングで色さえ変わる」と思いながら繰り出す渾身のタップは互いに遜色なく、決着のラスト50に向かいます。

富田さんは懸命に追いすがりますが、木村さんの勢いは落ちません。むしろ引き離すようにしてゴールへと向かいます。強い、さすが木村敬一、強い。ライバルを引き離して木村さんがゴールした直後、富田さんもゴール。一瞬の静寂ののち、互いの順位を知ると「キム!」「宇宙!」「おめでとう!」と友情の抱擁が自然と起きます。無観客だから、ふたりの言葉が聞こえます。ありがたい。美しい。ありがたい。

あぁ、こんな素晴らしい場面を、当のふたりは見えていないだなんて。「こんなに嬉しそうな木村さんを見たことがない」とふたりに伝えたくて仕方ないような気持ちです。最高の笑顔ですよと。最高の名場面ですよと。しかし、そんな差し出がましいことをしなくても大丈夫なのだと気づきました。木村さんの目から流れる涙。たとえ目が見えない相手に対してでも、どんなに喜んでいるかを伝える手段を人間はちゃんと持っているんだと、今さらながらに気づかされました。泣いて、泣いて、泣いてください。喜びが互いに伝わるまで!

↓そうか、涙は触れることができるんだ、今初めて気づきました!


↓NHKによるハイライト動画はコチラです!


この試合を見て、VTRを見て、インタビューを見て、何回も泣いてる!

見させていただいてありがとうございます!



試合後のインタビュー、先に海外メディアのインタビューを受けてきたためか、英語で答えていたら涙が止まってきたと開口一番の軽口で笑わせる木村さんですが、まさに「決壊」するように涙はあとからあふれてきます。何を聞かれても嗚咽するほどの昂ぶり。「この日のために頑張ってきたこの日は本当に来るんだな」という言葉は、その日がいかに来なかったかを示すものです。北京大会からでも13年、もっと長い時間、目指して目指して届かなかったぶんの重みがあります。コロナ禍のなかで「夢見るぐらいはいいんじゃないか」と勇気を持って言葉にしただけの想いがあります。

そんな木村さんに「本当は悔しがらないといけないのかもしれないけれど…木村くんが金メダル獲ってくれたことが本当にうれしいし、そこにつづいて僕がゴールできたことも本当にうれしい」と改めての言葉を捧げた富田さん。ここまでくれば、もう木村さんも怒りはしないでしょう。これだけの戦いをしておいて「まだ言うか」と呆れるように笑ってくれるはず。練習でも試合でも切磋琢磨することで、このコロナ禍のなかでもチカラを高め合ってきたふたり。ふたりが揃わなければ、この笑顔も、この涙も、なかったのかもしれないなと思うと、色は分け合いましたがふたりの「金と銀」だなと思います。

木村敬一と富田宇宙だからこうなった。

ふたりだからこうなった。

表彰台に立つふたりが聴く君が代は、木村さんが鳴らしたものではありますが、「木村くんが鳴らしても同じだよ」なのですから何の問題もありません。ふたりで頑張って、ふたりで鳴らした、ふたりの君が代。木村さんは震えるほどに泣き、富田さんは朗らかな笑顔というのもまた対照的で、とても素敵です。結婚じゃないですが、お互いを補い合える素晴らしい関係だったのだろうなと思います。

ふたりの対照的な表情、メダルの色、見守る人たちがどんな顔をしていたか、ふたりが知り得ない情報がたくさんあるので、周囲の人やメディアはゆっくりたっぷり伝えていってくれたらいいなと思います。こんなに素晴らしい場面が過去にいくつあっただろうと思うような瞬間です。本人たちにも可能な限り味わってほしいなと思います。そして、僕らが本能的に「この色は一番すごそうだな」と感じる金の色を、たくさんの人の言葉で伝えていってほしいなと思います。太陽のようだ(浴びる)、山吹の花のようだ(嗅ぐ)、柑橘系の果実のようだ(食べる)…そこに横たわる生命の熱気のようなものが「すごい色なんだろうなぁ」と感じる助けになればいいなと思います!




木村さんが金を獲って泣いているところを見られて、本当にうれしいです!

富田宇宙さんが「この瞬間のために生まれてきた」と語る銀メダルを獲得し、「瀬戸VS萩野」につづく「木村VS富田」の期待高まるの巻。

08:00
生涯最高、見せていただきました!

東京パラリンピックを迎えるにあたり、何人かその動向が気になっていたアスリートがいます。そのひとりが富田宇宙さんでした。富田さんは競泳のなかの視覚に障がいがあるS11クラスでメダルを争う実力者。2019年の世界パラ選手権では400メートル自由形と100メートルバタフライでメダルを獲得しており、今大会も複数のメダルを狙える存在です。

そんな競泳選手としての顔だけでなく、富田さんはマルチに人生を謳歌することでも知られる人です。メディアへの登場。講演会などの活動。大学時代から始めたという競技ダンスでは数々の大会で活躍し、2018年には「24時間テレビ」の企画のひとつとしてブラインドダンスの大会への挑戦の模様が採り上げられたこともありました。明るい性格と前向きな姿勢、コメントも軽快でバラエティ受けもしそうな人材です。

↓富田さんは佐藤栞里さんとのペアで優勝していました!


ただ、一方で気になる部分もありました。どこか競技者としてはひょうひょうとし過ぎているように見受けられたのです。一番印象に残るのは、S11クラスの100メートルバタフライでは金メダルを争うライバルになる、日本を代表するパラアスリート・木村敬一さんとのやり取りでした。

富田さんのほうが年上ですが、パラアスリートとしては木村さんが先輩というふたり。富田さんが「憧れ」と評すれば、木村さんは「自分を高めてくれる存在」と意識する、ライバルであり友人であるという互いを認め合うふたりです。リオ大会当時はふたりのクラス分けは別々でしたが、富田さんの目の病気が進行したことで同じS11クラスとなり、ふたりはまさにメダルを争う直接のライバルとなったのです。

しかし、そんなライバル関係にありながら、ふたり同時の取材において、富田さんは「やっぱり彼(木村さん)に(メダルを)獲って欲しいし、彼が獲ってこそ収まりがいいのかな」などと言うのです。その場では木村さんは「金を獲れば国歌が鳴ります」と視覚に障がいがある同士ならではの焚き付け方をしますが、それを富田さんは「木村くんが獲っても君が代なんでね」ともう一度受け流しました。

そういったやり取りの機会を何度か重ねたすえに、ついに木村さんは「キレ」ました。腹に据えかねた苛立ちをぶつけるように「金メダルを心の底から欲しいと思っているわけじゃないヤツと、俺が戦っているのって何なんだろう」と噛みついたのです。それはライバルと思えばこそ、この切磋琢磨を楽しめばこその言葉だっただろうと思います。アイツに勝とうと燃えている自分って何なんだと。この寂しさは何なんだと。そういうことだったのかなと思います。





今大会に臨むにあたっても富田さんは「自己ベスト」を一番の目標に挙げていました。26日の400メートル自由形S11クラスでは、富田さんは日本記録・アジア記録を持っています。自己ベストを更新すればアジア記録更新ということになり、当然メダルに手が掛かるわけですが、富田さんは「金でも銀でも見えないから色にこだわりはない」といった調子。競泳は相手と戦う種目ではないので、それもまた正しい心持ちではありますが、欲の薄さが気になる思いでした。

競泳男子400メートル自由形S11クラスの決勝が始まる直前、会場ではこの日金メダルを獲得した日本の鈴木孝幸さんの表彰式が行なわれていました。今大会初めて流れる君が代。リオでは流れなかった君が代が序盤で早くも聴けたことに嬉しくなり、そしてこの音は富田さんにも届いているだろうかと思います。誰が鳴らしても同じ、なんてことはないんじゃないかと思いながら。

右手を挙げて入場してきた富田さん。予選では全体2位のタイムを出し、決勝は5コースを泳ぎます。コースロープをガイドのようにして進んでいく富田さんは先頭争いです。泳力自体は4コースを進むオランダのドルスマンが上のようですが、富田さんはターンのたびにその直前にあった差を少し詰めて浮上してきます。棒で頭を叩いてターンのタイミングを知らせるタッパーとの呼吸の成せる技か。ドルスマンが途中のターンで一度「空振り」をし、壁をほとんど蹴ることができなかったのとは対照的です。

先頭から数メートル離された状態で最後の50メートルに向かった富田さんですが、それでも最後まで力泳はつづきます。終盤は再び差を詰めて、4分31秒69の2位でゴール。自己ベスト、日本新、アジア新での銀メダルという快挙の瞬間でしたが、全員が視覚に障がいを抱える選手たちということもあって、勝利のガッツポーズも歓喜の声もあがりません。少し時間を置いてからようやく結果を把握するという静かな決着は、パラリンピックならではの光景でした。

↓「俺が金かな?「俺が銀かな?」「どうかな?」という静かな決着!


↓NHKによるハイライト動画はコチラです!




このメダルは富田さんにとってどういう意味を持つものになるのか、静けさのなかで見守ったインタビュー。やはりひょうひょうとしているのだろうか、そんなことを思いながら言葉を聞けば、まるで世界が反転するかのように熱さがあふれ出してきます。富田さん本人も涙で言葉を詰まらせますが、こちらまでもらい泣きするような歓喜と感謝でいっぱいです。

「パラリンピックはオリンピックよりも本当にたくさんのみなさんのサポートが必要で」

「練習だけじゃなく、生活から何から、24時間支えていただいて、それで初めて競技ができる」

「ひとつひとつの種目で自己ベストを出して、また恩返しができるように」

そんな強いメッセージ性を備えた感謝の言葉のなかに、ちゃんと聞きたかった言葉もありました。「金メダルを目指してきた気持ちは、もちろんあった。けれども、それ以上にメダルを取ることができて、もう信じられないくらいうれしい」という言葉。そして、メダルを手にして、その重みを「本当に、本当に重たく感じる」と首に感じながら語った「障がいを背負って、いろいろな経験をしてきましたけど、この瞬間のために生まれてきたのかなと思います」という言葉。

あぁ、見事に「生涯最高」が発揮できたんだと思いました。自己ベストを出すことも、メダルを獲ることも、恩返しをすることも、結局は全部同じ行為であるものがちゃんと達成されて、生涯最高の瞬間を迎えることができたんだと思いました。「金メダルは木村君が獲って」という言葉を聞いたときの寂しさのような気持ちもかき消されていくような気がしました。

もしかしたら、富田さんは目標を探し求めて、マルチになっていったのかもしれないなと思います。生まれながらに見えない人とは違い、人生の途中から視力を失うことがどれほど辛いかは、未経験ながらも想像はできます。日々、できることが少なくなっていく暮らし。失っていく暮らし。何をすればいいのか、人生の目標も見えなくなるでしょう。そんななかで「見えなくてもできること」を探し求めていくのは、「人生の目標を見据えて進む」のとは違う向きのベクトルだっただろうと思います。

病気の進行によって世界トップを争う選手となったことも、もしかしたらどこかバツが悪い部分もあったのかもしれないなと思います。頂点を目指して人生を捧げてきた人と、はじめからそれを目指してきたわけではない自分との対比。それが「木村君が獲ってこそおさまりがいい」といった物言いにもつながったのではないかと思います。

しかし、今はもう目標が見えているのだろうと、試合後の言葉を聞いて確信しました。夢だった宇宙飛行士になったわけではなく、失ったものが戻ってきたわけではないけれど、「この瞬間のために生まれてきた」と思える瞬間に富田さんはたどりついたのですから。生涯最高の瞬間を迎え、ここからさらに未来を目指していくのですから。パラリンピックという舞台を通じて、生涯最高にたどりついたのですから。

あの言葉を聞いて、このあとの大会がさらに楽しみになりました。この「生涯最高」を超えていこうとすれば、自己ベストを出して恩返しすることはもちろん、金メダルというさらなる色を目指していくことになるでしょう。消去法的に選ぶ「中の中」とか「中の上」とかではなく、生涯最高の先にある「上の上」を目指すなら、自然とそうなるしかないでしょう。

富田さんと木村さんが競い合うだろう競泳男子200メートル個人メドレーSM11クラスと競泳男子100メートルバタフライS11クラスは、それぞれ8月30日と9月3日の予定。そこで銀の重さを感じた富田さんと、銀の悔しさをロンドン・リオで噛み締めた木村さんとが直接対決に臨むだなんて、何と熱い展開か。

特に100メートルバタフライS11クラスは木村さんと富田さんが今季の世界ランク1位・2位に位置し、文字通りふたりによる金メダル争いになる激アツの試合です。水泳競技の最終日最終盤に行なわれるファイナルアルティメットクライマックスレースであるという意味でも絶対に見逃せない試合です。日程も含めて「これを見ろ!」と言われているとしか思えない試合です。(※この試合激アツだな!と組織委員会も思ってこういう日程を組んだのでしょう)

「大変な人が頑張っているから」という理由ではなく、どっちが勝つんだと気になって見ずにはいられない試合がそこにある。そこで生まれるドラマを存分に受け止めるためにも、ここからの日程もしっかりと見守っていきたいもの。できれば木村さんのリオのビデオを見返したりするともっとよいかなと思います。「瀬戸VS萩野を超えるんじゃないか?」くらいの注目度で木村VS富田を楽しみましょう!

↓リオでは木村敬一さんは100メートルバタフライS11クラスで銀でした!


100メートルバタフライS11クラス決勝は9月3日の19時40分頃!

今大会でも必見の試合のひとつです!



パラリンピックは日本側の望む日程が通っている感じで、見やすいですね!

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婦人公論 2017年 12/27、1/6 合併特大号

僕は自分が見たことしか信じない 文庫改訂版 (幻冬舎文庫)

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