スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム

柔道

素人衆が「JUDO」と揶揄するときは「つまらん」という意味なので、柔道有識者は真に魅力ある柔道を目指して改善に努めてほしい件。

08:00
4年に一度議論になる「柔道」と「JUDO」!

パリ五輪が終わりまして世間も急速に冷え込みモードに入っているなか、引きつづき五輪の話をこねくり返していきたいと思います。大会期間中は試合観戦と「メダルだ、わーい!」という話をすることで精一杯でゆっくりまとめる時間がなかったテーマについて、少しずつやっていければというところです。

まず、大会序盤にいろいろな議論を引き起こした「柔道」と「JUDO」について。多くの場合、これは日本選手が負けたときに盛り上がるテーマです。「何だこの負けは」「こんなもの柔道ではない」「JUDOに負けた」と噴き上がりながら、ルールへの不満やら審判への不満やら結果への不満やらをぶつけるのが定番の流れです。

ただ、その議論というのは上手く嚙み合っていないと常々僕は感じています。世間一般の素人の側は4年に一度だけ柔道を見ておりますので、最新のルールやそうなった経緯、技術の進化や流行について把握しておりません。ですので、自分の不満を的確に表現するのが難しい状態です。4年に一度しか見ないのですから、そうなるのは仕方のないことです。世間はそんなに毎日柔道を見るほど柔道を好きでもヒマでもないのです。そして、柔道はそんなに見てもらえるポジションにあるコンテンツではありません。我々素人はハリウッド超大作を見たり、面白新作ゲームをやるのに忙しいのです。

ただ、せっかく見たのに、せっかく自分なりの意見を表明したのに、その表現が不的確だといわゆる詳しい側の人がズレた反応を返してきます。そして、下手に詳しいものですから隙あらばマウントを取ってきます。「ルールがわかってないね」とか「これは優れた技術でーす」とか「日本の選手だってやっていますけど?」とか「嘉納治五郎先生の教えにもかなっているぞ」とか「私は黒帯ですが?」みたいな知識自慢・経歴自慢を始めて、せっかく4年ぶりに柔道を見てくれた人を冷たくあしらいがちです。どの世界にもいるヤなヤツというだけの話ではありますが、せっかくの機会に分断を加速させるのはもったいないと思うわけです。

↓この肩車みたいなのも「柔道」なのか「JUDO」なのかで喧々諤々でしたよね!


この技について的確に不満を伝えるのは結構難しいものです。まずこの技自体がよくわからない。原理としては相手の脇の下に頭を入れて、相手を引きずり倒しながら「肩で担ぐような」態勢を取り(※人間を横にして首と肩の上に乗せているイメージ)、そこから頭の上のほうに抜く感じで相手の身体を畳に落としていますので、肩車だと言われたらそうなんだろうなとは思いますが、パッと見で判断するのは難しいと思います。

↓伝統的・古典的に肩車だと感じるのはコッチの動画みたいな投げですよね!


この動きを足を持たずに、地面スレスレでやることをイメージしてみてください!

さっきの技と近づいていきますから!



この伝統的・古典的な肩車は現在の競技柔道では反則となります。現在の柔道では立ち技において腕を使って「相手の帯から下」を攻撃したりつかんだりブロックしたりすれば反則負けとなります。いわゆるレスリング式の片足タックル(朽木倒し)や両足タックル(双手刈)は反則ですし、前述の伝統的な足を持って持ち上げる肩車も反則となります。ただ難しいのはこれは国際ルールでの話であって、国内向けのルール…講道館ルールでは禁止されていないのです。

なので、前述の肩車のような技に関しても、素人意見がなかなか通らなくなるわけです。「あんなものタックルじゃないか!あれはJUDOレスリングだ!」と言えば「足なんて持ってませんけど」と返ってきますし、「柔道の精神にそむく!」などと言えば「むしろ講道館ではOKなんですけど?」と返ってきますし、「ヘンな技!」とか素人感満載で言おうものなら「あれはルールに対応して生まれた高度な技術!正真正銘の肩車でーす」とガッツリとマウント取られますし、「これだから外国のJUDOはけしからん!」とか言えば「日本の偉大な�眛D昭�選手もさまざまな肩車を使ってますが?知らないんですか?」みたいなことを返されます。そして「普段柔道を見てもいない素人は黙っとれ」とマウント一本で勝負ありとなるわけです。

違う違う違う違う。

素人衆の不満を「正しく表現できていない」からと言って汲み取らないのは有識者のやることではありません。「何もしていないのにパソコンがぶっ壊れました!」という人を、優しくウィンドウズ起動まで導いてこそ有識者のはずです。別にそれは義務ではありませんが、有識者がそんな態度で素人にマウント取って、どうしてこの競技が広まったり発展したりするでしょう。「最初は全員素人」なんですよ。

素人衆の真の不満は「つまらん」ということなのです。日本選手が負けるのは別に構いませんが、あのようなワケのわからん形で負けるのは「つまらん」のです。そしてもっと言えば柔道に素人衆が期待していることは、人間を美しく投げること「だけ」です。フワッと身体が浮いて、人間の身体が宙を舞い、弾むように背中から畳に叩きつけられる「あの瞬間」だけを「柔道」と呼んでいるのです。それ以外の全部は柔道ではないのです。前述の阿部一二三さんを倒した肩車のように、地面スレスレでもちゃくちゃしたものは「柔道」ではないのです。伝統的・古典的な肩車のように立った状態で担いでから投げられたのであれば、「柔道で負けた」と認めてもいいですけれど。

競技スポーツとして発展していくなかで、柔道の技は「相手の背中を地面につける」ことでポイントを取れる建て付けになりましたが、そのルールを真正面から攻略して「背中をつけりゃいいんだな」と思ってやっているすべての選手とすべての試合は、素人衆の感覚では「柔道」ではないのです。ルール云々とか国際的な合意云々ではなく、そんなものは「つまらん」からです。ハッキリ言って、地面付近でもちゃくちゃしながら相手の背中を地面につけるだけなら、グレコローマンスタイルのレスリングを見たほうがよっぽど面白いです。レスリングにだって投げ技はありますし、むしろ豪快です。消極的な選手はすぐ注意されますし、背負い投げ風の偽装攻撃なんか存在しません(レスリングだとその体勢になったら簡単に2点取られるから)。チャレンジの仕組みもありますし、レスリングのほうがよっぽど気持ちよく観戦できます。

それでも我々素人衆が柔道に期待し、柔道を面白いと思うのは、フワッと身体が浮いて、人間の身体が宙を舞い、弾むように背中から畳に叩きつけられるあの瞬間があるからです。いつか飛び出す魔法のような美しい瞬間に期待して、ほかの技を受け入れているのです。本当は内股一本と背負い投げ一本しか認めたくないような気持ちで、「ま、毎試合そうもいかんわな」と思いながら足技とか地面スレスレでのもちゃくちゃを見ているのです。「ホームランを見たいなー」と思いながら「ま、犠牲フライでも1点は1点」と思っているような話なのです。

その意味であの試合は素人衆は大いに不満を溜めたはずの試合です。まともに組み合わない相手。上手な偽装攻撃。なかなか出ない指導。そして最終的にあの地面でもちゃくちゃした一本負け。しかも負けたのは素人衆からも「これは確かに柔道だ」と認められる真の柔道家・阿部一二三さんです。こんなもの面白いわけがありません。その不満をさまざまな表現や理由で(ときに不正確に)発信しているだけで、本当の思いは「つまらん」その一点です。あの試合だって一二三さんが見事に浮かされて、内股でバーンと畳に叩きつけられていたら「ガバ強ぇーーー!」「負けたーーー!」「橋本が秒殺されるからこんなことになるんだよーーー!」と素人衆だって「柔道での敗北」を清々しく受け入れたでしょう。

リネールさんに対する冷ややかな視線も同じ思いから生まれるものです。ハッキリ言ってリネールさんは強いです。まだ10代の頃に、すでに完成した柔道家であった井上康生さんをアッサリと破ったように、リネールさんは世界一の強さを備えています。相手全員を美しく投げようと思えばできるでしょう。しかし、リネールさんはそれを目指していないように感じます。リオ五輪決勝での原沢久喜さんとの「指導決着」などは最たるもので、リネールさんにとっては勝利することが目的であり、そのための手段は別に投げである必要はないのだろうと思います。現在のように指導決着が起きにくい状況なら、「仕方ない、投げるか」とやり出すというだけで、美しく投げようとも思っていないし、一本で勝ちたいとも思っていない、そう感じます。できるはずなのにやらない、そう見えています。

パリ五輪期間中に真の柔道家である大野将平さんも言っていましたが、「正しく組んで正しく投げる」柔道を素人衆は見たいのです。「攻めた結果、相手に指導が行く」のであって最初から指導を狙うような戦いは見たくないのです。「一本を取る」柔道を見たいのです。そして、その一本とは「フワッと身体が浮いて、人間の身体が宙を舞い、弾むように背中から畳に叩きつけられるあの瞬間」のことなのです。それを目指さないものを素人衆はすべて「JUDO」と呼んでいるのです。

結果的に指導決着になるかもしれない。結果的に美しい投げでは決まらないかもしれない。しかし、目指してほしい。ホームランを打ってやると思って打席に入ってほしい。日本人選手もやっていようが、世界のルールで認められていようが関係ありません。美しい投げを目指さなければ「つまらん」のです。「つまらん」ものは「つまらん」のです。素人衆が「JUDO」と言い出したとき、有識者は「この競技はつまらないんだな」「何とかしなきゃヤバイな」「ルールを変えるかルールの運用を変えよう」と思うタイミングなのです。現状を追認して、「俺たちはこういうスポーツ!」とか開き直っている場合ではないのです。

↓真の柔道家である大野将平さんは信じられる!何度もその見解に頷いたパリ五輪でした!



このようなことを踏まえれば、有識者の行動はもっと変化があってしかるべきです。我こそ黒帯、我こそ詳しい者と思うなら、「もっとサンボみたいな投げもあるんだぞ」みたいな知識紹介をしてマウントを取るのではなく、4年に一度の「世間一般による視察の機会」だと受け止めて今後の柔道界の前進に向けたさらなる議論を進めていくべきなのです。「両者直立した状態以外からの投げは全部無効にしよう」とか「両袖を握って防御している輩にはすぐ指導を出そう」とか「パラ柔道みたいに組み合った状態から始めよう」とか、美しい投げをすべての選手が目指し、美しく投げなければ勝てないような環境を整えていくことを考えてほしいのです。

これまでも「足取り」を禁止したり、有効や効果を廃止したりしてきたのは、「美しい投げによる一本」を目指してほしいからでしょう。本来なら禁止しなくていいものまで禁止するのは、日本国内と違って禁止しないとみんなそればかりやるからでしょう。一時期よりは随分とよくなったとは思いますが、それでもまだまだ理想には程遠いのが現状です。その理想からの距離を教えてくれるのが素人衆からの「JUDO」という揶揄であり、「JUDO」と言われる間はまだまだ改善点があるんだなと思って改善に努めてほしいのです。「こういうのはつまんないんだな」と自覚して。

そして日本選手には、発祥の国の誇りを持って美しく投げて勝つ「柔道」を実践してほしいと思います。相手の「JUDO」については受けに徹し、そんなものは通用しないぞと跳ねのけて、美しく投げて勝ってほしい。全員ができるとは思いませんし勝つためにほかの手段を取ることもあるでしょうが、日本が真の柔道家を生み出せなくなったら、この競技はジャケットを着て行なうレスリングになってしまいます。それがダメとは言いませんが、それなら五輪には「レスリング」だけがあれば十分。似たようなものを2つもやる余裕も意味もありません。この競技の魅力と面白さを体現する真の柔道家を輩出するのは日本のつとめであり、柔道発展のために必要なことなのです。だって、日本が一番柔道を愛しているんでしょう?大切なんでしょう?それとも柔道の未来はフランスにお任せして、まともに組み合わずに地面でもちゃくちゃしますか?

美しく投げて勝つ。

相手を魔法のように宙に舞わせて畳に叩きつける。

それが柔道の魅力であり、それを失ってはいけないと思います。世界がどれだけ違う方向に進もうとも、日本の真の柔道家がそれを打ち破り、柔道への憧れを生み出さないといけないと思います。真の王者は勝てばいいのではありません。皆が憧れる存在でないといけません。柔道への憧れを生み出すのは、美しい投げによる一本、それが究極ですべてだと僕は思います。「そんなことはどうでもいい」と柔道界隈の人が思うなら、それはそれでひとつの選択ですが、その先にある未来は「JUDO」とも呼ばれなくなる静かなものだろうなと思いますね!

↓美しい投げを目指し、美しい投げで勝てる者が真の柔道家だと僕は思います!


これを見たくて柔道を見ています!

毎回見せてもらえるわけではありませんが!



有識者は「柔道=面白い」「JUDO=つまらん」と受け止めてください!

これがパリ五輪である以上、日本柔道には「確定リネール」を投げて勝つしか道はなかった柔道混合団体フランス金メダルへの嫉妬の巻。

07:00
これがパリ五輪だ!

残念、無念、心が波立って眠れないような夜になりました。柔道混合団体、日本は開催国にして柔道大国であるフランスと戦い、敗れました。戦前からこの顔合わせになるだろうと見られ、苦戦が予想されたなかで、日本の柔道家たちはよく戦いました。誇れる勝負でした。銀で満足する柔道家は日本にはいないわけですが、その銀はプラチナの輝きがあると思います。そのメダル、この勝負、大事な思い出にしていただければと思います。僕らも、そうします。



混合団体の仕組みは総じて日本には有利ではありません。理想を言えば五輪で実施する階級の代表が1人ずつ出て総当たりで実施すべきだろうと思います。しかし、現実としてそんなことをやれば参加できる国がなくなってしまいます。そこで複数階級を束ねるわけですが、複数階級を束ねれば「体重が重い階級に強い選手がいる国が強い」という格好になるのは当然です。もちろん我々は無差別級こそが真の最強を決める階級だと考えていますので、相手が何キロであろうが望むところですが、実態としては日本の優れた柔道家が集う軽量級の代表は十分にチカラを発揮できない仕組みです。

そんな戦いに日本は総力戦で挑みました。1回戦スペイン戦、あの号泣から立ち上がってきた阿部詩さんが一本勝ちで戦いの狼煙を上げると、橋本壮市さんのよもやの「秒殺」などもありつつ、個人戦の無念をも団体戦に燃やす�盪毀ね茲気鵑両〕�、そして日本勢ではほぼ唯一と言っていい「自分本来の階級で団体戦に出場でき、かつ金のチカラを持つ選手」である村尾三四郎さんの優勢勝ちで勝負を優位に進めました。最重量級の選手が苦戦したことで抽選で代表1名を選出してゴールデンスコア方式で争う延長戦にまで持ち込まれますが、�盪毀ね茲気鵑�制して初戦を突破。準々決勝へと進みます。

準々決勝のセルビア戦は、相手も階級に合う選手を揃えることに苦心しており、体格差を活かされることがなかったことから4勝1敗での余裕ある勝利。準決勝のドイツ戦もほぼ同級の選手同士の戦いで、個人戦の結果も日本のほうが上位という力関係もあって、日本は4連勝で決勝進出を決めます。1回戦こそ少し危うい展開もありましたが、チームも十分に温まり、「ここからが本番」という場所までたどりつきました。はじめからわかっていたこと、こうなると思っていたこと、そこで勝つことを目指してきた相手、フランスとの決勝戦に向かいます。

↓チカラを合わせて約束の場所までやって来ました!



迎えた決勝。日本のオーダーは目を見張るものでした。何と、女子57キロ級の試合には2階級下の「女子48キロ級」で金メダルの角田夏実さんを送り、男子73キロ級の試合には1階級下の男子66キロ級で金メダルの阿部一二三さんを起用したのです。そのほか女子70キロ超級でも日本の本来の代表である素根輝さんが負傷欠場であることから、70キロ級の�盪活讐辰気鵑魑�用しており、「6戦中3戦で階級が下」の戦いとなったのです。これが「柔よく剛を制す」の精神なのか。日本柔道の真髄を見せんとする起用に、胸が震えます。大きな者が小さな者を制して何が柔道か。小さな者が大きな者を投げてこそ柔道だ。真の柔道家であるならば、投げられるはずだ。そんな思いでこの圧倒的に不利な戦いに臨みます。

まず第1試合男子90キロ級は、この階級で銀の村尾三四郎さんと銅のンガヤハンブさんの対戦。フランスの優勝を期待する大観衆が悲鳴のような歓声をあげる完全アウェーのなかで、村尾さんは冷静沈着な戦いからゴールデンスコアの延長戦9秒に美しい大内刈りで一本!個人戦では「幻の金メダリスト」となった村尾さんが、真の柔道家としての投げるチカラを遺憾なく発揮して、フランス応援団を沈黙させました。絶対に勝ちたい試合での素晴らしい勝利でした。この団体戦通じてのMVPと言える活躍でした。

↓美しい一本!同じ階級同士では負けられない!


つづく第2試合、体格差を考えれば「負け覚悟」と言ってもいい女子70キロ超級の試合。70キロ級でメダルを逃した�盪活讐辰気鵑�78キロ超級で銅メダルを獲得したディッコさんの顔合わせでは勝利は計算しづらい…そう思っていました。実際にひとまわりもふたまわりも大きい相手に子どものように振り回されました。荷物のように持ち上げられました。しかし、懸命に耐えた�盪海気鵑蓮∩蠎蠅妹廚蠅弔�ような低い態勢から乾坤一擲の大内刈り!これが78キロ超級銅のディッコさんから技ありを奪い、日本が2連勝としたのです。

第3試合男子90キロ超級では日本は100キロ超級の斉藤立さんを送りますが、相手は地元フランスが誇る英雄テディ・リネールです。リネールは「組み合わない」攻防から両者指導を引き出すと、その後は同じ階級同士でもなお圧倒的な身長差・体格差・リーチ差を存分に活かして、安全圏から攻撃を繰り出しつつ、相手の技を潰して指導を誘うリネール流の戦い方を繰り広げます。早い時間に指導ふたつに追い込まれた斉藤さんは、7分間に及ぶ熱戦を演じますが、最後はリネールさんの長い足からの内股一本で敗れました。ただ、「リネールと言えども簡単に勝ったわけではない」という意味で、十分に伍する内容でした。

そして第4試合女子57キロ級、奇策とも言える起用で送り出された角田夏実さん。確かに角田さんは減量で48キロ級まで階級を落としているサイズの大きな選手ではありますが、1階級上の阿部詩さんでもなく、2階級上の銅メダリスト舟久保遥香さんでもない起用は一般的なものではありません。「柔道」だからこその起用、期待です。相手は57キロ級で銅のシジクさん、体格差に加えて力量も十分の難敵です。このシジクさんを相手に角田さんは世界を制した巴投げ…体格差や腕力差を覆す捨身技で対抗します。そして、見事に投げます。巴投げの態勢に入った角田さんを相手が持ち上げようとした刹那、角田さんは前掛かりになった相手の体重を足に乗せて巴投げの二段打ち。これで宙に舞い上がったシジクさんは、漫画のように背中から畳に落ちました。会心の一本!これが世界を制した巴!これをビデオ判定でないと一本と即断できない審判団はどうかと思いますが、畳にひっくり返ったシジクさんを見せられては「認めざるを得ない」でしょうね!

↓相手のチカラをも利用する、これが日本柔道の真髄!


これで3勝1敗、残りは2戦。あと1勝で日本は勝利します。迎えた第5試合男子73キロ級、阿部一二三さんの相手は73キロ級で銀メダルのガバさんです。この強敵を相手に、一二三さんは試合を支配しました。ガバさんは一二三さんの投げを恐れて、徹底的に組まず、かわし、すんでのところで腹ばいで逃げまわりますが、構わず投げつづけました。ゴールデンスコアの延長戦を含めて9分弱、一二三さんの柔道が世界を魅了したはずです。人間はこんなに相手を倒せるのかと。その間、ガバさんはほとんど有効な攻撃を繰り出せていませんでしたが3つめの指導は頑として出ません。これがパリ五輪なのでしょう。パリ五輪で、フランスが誇りを抱く柔道で勝とうと思うなら、ハッキリと投げてねじ伏せなければならないのです。東京で同じ試合をやっていれば、延長にも入らず一二三さんが反則勝ちしていたでしょうが。

そして悪夢が。これが階級差なのでしょうか、延長入って4分50秒、ガバさんは一二三さんの右腕を抱きかかえると、そのまま頭突き体当たりのように突進し、体重で一二三さんを地面に引き倒します。そして、そこから身体を回転させて一二三さんの畳を背中につけるという攻撃で、一本をもぎとったのです。これを柔道の技で言うなら「肩車」と呼ぶのでしょうが、僕のイメージする肩車はタックルで転ばせてから転がす技ではありません。「喰らうほうが悪い」と言えばそれまでですが、レスリングばりの攻撃で一二三さんは敗れました。柔道ではなくJUDOで敗れました。勝負をつけ損ねました。

↓東京五輪であればこうなる前に勝っていたでしょうがね!


まだ日本の優位がつづく第6試合。女子70キロ級の試合には、ともに63キロ級から�盪毀ね茲気鵑肇▲哀戰縫紂爾気鵑�登場します。アグベニューさんはこの階級の銅メダリスト。�盪圓気鵑�3大会目指して届かなかった個人のメダルを持つ選手です。�盪圓気鵑亙各�しました。この戦いが個人戦でできていればメダルに届いただろうと思う奮闘でした。しかし、ゴールデンスコアの延長戦3分過ぎ、�盪圓気鵑�大外刈りにいったところを逆に巻き込むようにして投げ返され、痛恨の技あり。これで3勝3敗となり、戦いは代表1名による決着戦に持ち込まれます。

電子スロットで行なわれる抽選。そこにもはや信頼感は持ちえないわけですが、代表として指名されたのは90キロ超級……要するにリネールでした。はい、知っていた。1回戦の段階からわかっていました。抽選になれば、こうなるだろうと。「リネールに勝たない限り、パリ五輪でフランスの金を阻むことはできない」ということです。それがパリ五輪です。斉藤さんは再びリネールに挑みました。しかし、リネールを崩すまでの技がありませんでした。長い手足と深い懐で、斉藤さんの大内刈りや体落としは吸収されてしまいます。3つめの指導は来ず、相手の技が効かないのであれば慌てることもありません。リネールは確実に投げられる場面を待ち、そして斉藤さんを投げました。この戦いが始まってから6分26秒、内股から大内刈りという黄金コンボでリネールは一本を取りました。柔道混合団体、フランスが金をつかみました。

↓リネールを倒さねば勝利はない、知ってた!


↓日本の諸君、これが「パリ五輪」なのだよ!




戦い終えた日本の代表は立派でした。思うところはあるかもしれませんが、結果を受け止め、畳を降りました。勝つチカラも勝つチャンスもありました。フランスにしてみれば想像以上の苦戦だったでしょう。「あと1敗で終わり」に追い込まれてから迎えた真の柔道家「阿部一二三」は、こちらがリネールを迎えたとき以上の恐怖だったでしょう。

ただ、選手層と自国開催とリネールという三種の神器が揃った状態では、フランスを崩し切れませんでした。個人でのメダル数を見比べてもフランスのほうが総合力は上でした。もし今大会に、大野将平さんのような本来の階級で団体戦を戦える真の柔道家がいれば、タックルで押し込まれることなどなく、第5試合で日本は勝っていたでしょう。全階級に世界一の柔道家を揃えることができなかったのは、日本柔道としては反省すべき点です。そこは発祥の国の誇りを持って、省みていくところでしょう。これは柔道なのですから。

そして、僕は悔しさと腹立ちのなかでもフランスに対する感謝の念も抱いています。このスポーツを、多少我々が思うところとは違う感じではあるけれども、こんなに愛好し、こんなに強い選手たちを育ててくれて感謝しています。フランスがいたからこそこのような熱い戦いもできましたし、柔道というスポーツの広まりもあるのだろうと思います。日本だけが愛し、日本だけで最強を争っていても、それは少し寂しい。競う相手がいてこそ、楽しい瞬間があります。

こちらにはこちらの誇りがありますが、先方には先方で考えもあるのでしょう。ふたつがぶつかったとき、どちらに追い風が吹くかと言えば、ここはパリで、これはパリ五輪なのですから、当然フランスなのです。この地・この舞台でフランスを倒そうとするなら、ハッキリとねじ伏せなければ勝てないのです。「微差」ではなく「明確に」勝たないといけないのです。「触れた」は確定ファウルであり、「逃げ」では3つめの指導は与えられず、「抽選」は確定リネールなのです。

そこに対する憤りがあるとすれば、それは今起きたことに怒るのではなく、3年前に立ち戻っての後悔とすべきだろうと思います。あの夏、日本は、東京は、選手たちに大きな追い風を送る機会がありました。ルールを捻じ曲げるとか不正を行なうという意味ではもちろんなく、すべての運を引き寄せ、五分五分のものをすべて優位に転ばせ、我々が考える理想を選手たちに求める圧倒的な「ホーム感」を生み出す機会がありながら、自らそれを放棄しました。世界の誰も止めていないのに自ら放棄しました。それが「民意」でした。

今パリは追い風を楽しんでいます。

会場を整え、選手たちを迎え、いくばくかのトラブルはありながらも熱い声援と熱狂で選手たちに生涯最高の舞台を用意しようと努めている人たちが、夢に描いた理想の大会を過ごすことは悪いことではありません。その理想を終わらせるなら、それにふさわしい形があるだろうと思います。聖火の点火者にまで選んだリネールを敗者にするなら、柔道でフランスを倒そうとするなら、投げて勝つしかなかった。そうすれば彼らもスタンディングオベーションで勝者を讃えたでしょう。その意味では僕が感じるこの気持ちの正体は、憤りとか怒りとか悔しさではなく「嫉妬」なのかもしれません。そうすることができなかったわけではなく、自らそうしなかっただけの、身勝手な嫉妬なのだろうと思います。

負けた気はしませんが、勝者はフランスです。

存分に喜び、またフランスの柔道を頑張ってください。

我々も美しく投げて勝つ、理想の柔道を追求します。

そして、またこのような熱い戦いをしましょう。

日本に対抗できる国がないとつまらんですからね!




熱い戦いと素晴らしい思い出をありがとう!日本柔道を誇りに思います!

阿部詩さんの2回戦敗退も「背負って」、世界の舞台で美しく投げて勝つ「柔道」を示した柔道男子66キロ級・阿部一二三さんの連覇。

07:00
これが「柔道」だ!

パリ五輪競技2日目は、日本にとって衝撃的な敗戦がありました。柔道女子52キロ級の絶対的な女王、阿部詩さんが2回戦で一本負けを喫したのです。2回戦での敗戦は敗者復活戦に進むことも叶わず、この時点で詩さんの52キロ級でのメダルはなくなりました。兄・一二三さんとの兄妹連覇ももちろんありません。

何が起きたのかと呆然とする詩さんが、やがて自分に起きた出来事を理解していくときの表情の変化、文字通りの「号泣」…「咆哮」と言ってもいいような涙は見ているコチラの胸も痛くなるものでした。せめてもの不幸中の幸いは、今回の開催地が柔道大国フランスのパリであったことでしょうか。会場の大観衆は今自分たちが見ているものの意味を理解し、大きなUTAコールで支えてくれました。せめてものチカラになればと思います。

↓こんなことが起きるのか、これが五輪の魔物なのか!



詩さんが弱かったとは微塵も思いません。敗れた試合も2回戦とは言え、世界ランク1位のケルディヨロワさんを相手に試合を支配していました。試合中、ケルディヨロワさんは執拗に詩さんの脇腹あたりをつかもうとしてきました。距離を詰めて空間を埋めることで、詩さん得意の袖釣り込み腰などの投げ技を防ぐ狙いでしょうか。それでも投げてしまうのが詩さんの強さであり、相手は守勢に徹するなかで早々に指導2つをもらっていました。杓子定規に判定すれば残り2分20秒ほどで放った背負い投げも偽装攻撃(かけ逃げ)で指導を与えていいくらいに守勢にまわっていました。

残り1分48秒では内股で技ありを取り、優勢に立ちます。その後、懸命に攻勢に出るケルディヨロワさんの攻めをさばきながら、寝技に持ち込んで時間を消化するなど、試合運びにも何の不安もありませんでした。相手が対策してくることも、五輪という舞台で思わぬ仕掛けをしてくることも、十分に承知したうえでの戦いでした。

それでも「魔」はさしてしまいます。残り1分2秒、ケルディヨロワさんは左手で詩さんの左袖をつかむとグッと手元に引き寄せ、自由な右手で詩さんの脇腹のあたりをつかみます。詩さんが腰を屈めて抵抗すると、ケルディヨロワさんは左手を放して、詩さんの背中側の帯をつかみます。そしてケルディヨロワさんは、半身になった詩さんの前の足を掛けにいきます。詩さんは大内刈りあるいは内股で対抗しようとしますが態勢が悪すぎました。捨て身で仕掛けたケルディヨロワさんの「谷落とし」でまさかの一本負け。

どうすればよかったのかはわかりません。あの体勢になってしまったらそうそう逃げられないように思います。なってしまう前に相手の狙いを潰すのか、なってしまう前に勝ってしまうのか、世界で何十・何百と勝ち星を重ねるには相手の捨て身技をそもそも許さないということが必要なのでしょう。かつて谷亮子さんも相手の思わぬ朽木倒し(※いわゆる片足タックル/現在は禁止技)で敗れたことがありましたが、捨て身の攻撃を受ければ当たることはあります。そういう意味ではあえて敗因を考えるなら「負ける前に勝てなかった」ことでしょうか。

今大会に向かうにあたり、詩さんは完璧な過程ではありませんでした。東京五輪後には長年苦しんできた両肩の関節唇を修復する手術を受け、休養もありました。2022年の全日本体重別選抜には代表入りの要件を満たすため強行出場しますが、結果として大会途中での棄権となりました。その後、2023年の世界選手権は制するも、昨年10月には今度は腰を痛めたと言います。それでも3月のグランドスラム・アンタルヤではオール一本勝ちで優勝していたように、力量としては何の不安もありませんでした。ただ、過程が不十分であったことで相手選手の捨て身や奇策を受ける機会を十分に得られませんでした。十分な過程を踏んでいれば、「何とかして勝たねばならぬ」相手の必死をもっと受け止める機会があったでしょう。あるいはそれを喰らってしまうこともあったかもしれません。しかし、喰らう機会自体が乏しかったことで「いつも金を持っていくウタ・アベをどうにかして倒さねばならぬ」のアイディアが温存されたままパリまで来てしまった。

そして、十分な過程を踏めなかったことは本来あるべきランキングを得られないことにつながり、この日の競技の第1試合から出場することになったり、2回戦で世界ランク1位の選手と当たることになったりと、ラクではない道のりを強いられました。同じ対戦相手であっても、五輪のなかで試合を重ねてからの対戦であったなら、あと何度か懸命な相手の必死を受け止めてからであったなら、詩さんの何かが「目覚めて」いたのではないかと思います。そして、相手の必死が届く前に相手を畳に沈めていたのではないかと。特に、敗れたケルディヨロワさんが最終的にこの階級の金を取ったことから振り返ると、そう思います。これが五輪、これが人生を懸ける舞台ということかもしれませんが、起きては困ることが起きるのが五輪なんですね…。



それでも詩さんはひとりではありません。スタンドにはご両親とお兄さんが来ており、準々決勝後のインターバルではご家族とおにぎりか何かを食べる姿が見られました。ご飯が食べられているなら大丈夫、日本にそんな安堵が広がりました。そしてこの日の戦いには、兄・一二三さんが登場してきます。自分と似た身体、似た環境、似た境遇、似た心を備えたお兄さんの歩みは、敗れた詩さんにとっても励みや支えになるものでしょう。これまでもそうだったように、兄にできるなら私にも、と。

一二三さんは強かった。2回戦は得意の背負い投げ、袖釣り込み腰で合わせ技一本。準々決勝は2度の鼻血出血治療による中断があり、ルール上はあと一度「同じ箇所からの出血」があれば一二三さんの負けになるという理不尽なピンチに陥りますが、こちらも袖釣り込み腰と大内刈りの合わせ技一本で突破。準決勝は相手の守勢になかなか技が決まりませんが、ゴールデンスコアの延長戦に突入した直後、「とにかくポイントをあげれば勝てる」と希望を持った相手が攻勢に出たところを捕らえ、袖釣り込み腰の仕掛けから「体重を後傾して耐える」相手に仕掛ける大外刈りの連続技を発動。最後の決めまでしっかり行ない、見事に技ありを奪いました。

↓こんなんで負けたらシャレにならない、最大の難敵・鼻血!


だったら、開幕早々鼻にパンチ入れたほうがいいかもしれない!

どうせ勝てない相手なら!



そして迎えた決勝。白の柔道着に身を包んだ一二三さんは日本の思い描く「柔道」そのものでした。「三四郎」すら「一二三」を見て作ったオマージュキャラクターじゃないかと思うくらいに。対戦相手はブラジルのリマさん。阿部さんの投げを警戒し、低い態勢を取ってまともに組むことすらしてこない相手を前にしても、一二三さんの「柔道」は変わりません。組んで、投げる。それが柔道です。

残り2分18秒、相手が投げを警戒して後傾と見た一二三さんは小外刈りを飛ばして相手を倒します。勢い十分、背中もついたように見えましたが、判定は技あり。一二三さんも一本ではないことにやや怪訝な表情も見せました。見ている者の頭に浮かぶのは先ほどの詩さんの試合。技ありでリードしたあとの残り時間、相手の必死に刺されたあの試合です。守るべきか、逃げるべきか、そんな考えも観衆目線では浮かびます。

しかし、一二三さんは動じもしません。一本でないならば一本を取るだけです。先にポイントを奪ったこと、そして足技を見せたことで相手も前に出てくるしかありません。解説席にいる「日本柔道」を体現する男のひとり・大野将平さんは「相手が前に出てくれば投げやすくなる」と投げる気マンマンです。「チャンス」という声色をしています。これが柔道家の心か。

そして迎えた残り1分26秒。まともに組まない相手を前に、唯一まともにつかめる両袖を持って、一二三さんは袖釣り込み腰を放ちます。横にまわり込んで逃げようとする相手を足でせきとめ、投げの方向をさらに回転させて、まるで円盤投げのように相手を振り回すと見事に決まって技あり!合わせて一本!

↓どれだけ逃げようとも逃がさない!美しく投げて勝つ「柔道」を示した!


スタンドで見守る詩さんは涙を流しながら拍手をしています。大観衆は偉大な王者の連覇に万雷の拍手を贈っています。ただ、一二三さんは静かに、厳かに、喜びを噛み締めています。対戦相手と握手をかわし、畳を降りる際には正座して深々と礼をしました。美しく投げて勝つこと。礼に始まり、礼に終わること。ともすれば世界のJUDOが忘れてしまいがちな、あるいは無用とすら思っていそうな柔道精神を眩しいほどに発揮しました。

これが柔道です。

これが柔道家です。

競技を発展させるのは素晴らしい選手だけです。理想を体現し、みんなの夢を叶える選手だけです。お金が稼げればいいわけではありません。ただ勝てばいいわけではありません。誰かが勝ち残るまでやれば、そりゃ誰かが勝つでしょう。でも、勝っただけでは「憧れ」は生みません。「憧れ」がなければ競技は発展しません。「憧れ」を生むのはその競技の理想を体現し、みんなの夢を叶えるスターたちだけです。一二三さんは間違いなくそういう存在でしたし、前夜は荒れ狂った世界の柔道界に「これが柔道だ」という姿を示し統治してくれた、そう思います。胸のすくような勝利でした!



試合後、一二三さんは苦しかった胸の内を語りました。東京五輪で勝ったあと「この三年、すごい苦しい思い、しんどい思いばかりで、ラクな道ではなかった」と。そしてこの日起きてしまった出来事について「妹のぶんまで、やっぱり兄が頑張らないとと思って頑張りました」「兄としてやるしかないという思い」だったと語りました。そこには期待を背負う者だけが知る苦しみが滲んでいたと思います。

連覇への期待、勝って当然と思われる重圧、王者として求められる役割、人間性も含めて問われる日々の暮らし、そのなかで世界中のライバルが自分を標的にしてくるという難しさ、そして「兄」として妹を思う気持ち…。一度目の勝利より二度目の勝利は遥かに難しかったことでしょう。それは一度勝った者にしかわからないことだろうと思います。人類の大半は知らずに過ごすものです。きっと、連覇に挑んだ王者たちしかこの気持ちには理解が及ばないでしょう。連覇への道がどれほど苦しくて長くて、世間に理解されない道のりであるか、ということについて。

その気持ちを家に持ち帰ってもらえたらと思います。その難しさを語り合うのがよい相手がいると思います。一二三さんはよく「妹がライバル」「妹がいたからここまで来れた」と詩さんの強さを讃えますが、詩さんも一二三さんの背中を追ってここまで来たのだろうと思います。足並み少しずれて一二三さんが連覇街道で前に出る格好になりましたが、その大きな背中でもう一度、「ふたりの挑戦」を引っ張っていってもらえたらと思います。

そして、このまま家に帰るのは物足りないので、日程の最終日に残された混合団体戦で地元フランスを倒して金を取って帰ってほしいと思います。団体戦の仕組みでは、一番軽量な階級でも一二三さんや詩さんの階級よりも上になりますので、出番はあまりないかもしれませんが、もし機会が巡ってきたら柔よく剛を制すの精神で、相手を投げ飛ばしてもらえたらと思います。そしてふたりで「金」を持ち帰ってもらえたらいいなと思います。一応それも「兄妹で同日金」と言えるっちゃ言えますから!

↓世界の舞台で「柔道」を見せてくれてありがとうございます!



柔道っていいなと思いましたし、きょうだいっていいなと思いました!

やっぱり頼れるお家芸!パリ五輪競技初日の日本選手団を襲った暗雲を柔道・角田夏実さんが黄金の巴投げで吹き飛ばしてくれた件。

07:00
暗雲漂う初日を救った巴投げ!

本格的に競技が始まったパリ五輪。日本勢も多くの競技で動き出しました。しかし、競技初日はあまり思うようにはいかない難しい立ち上がりに。金メダルを狙う昇り竜としていち早く登場したバレー男子はフルセットの激闘の末、ドイツに敗戦。挑戦者の立場でやはりドイツに挑んだバスケ男子も20点差をつけられて敗戦。卓球の男女エースが組んだ混合ダブルス「はりひな」ペアは詳細不明の北朝鮮ペアを相手に無念の初戦敗退。これは結果の話でありませんが、初日の金候補でありあわよくば複数メダルも視野に入れていたスケートボード男子ストリートは天候不良によって順延となってしまいました。

さらに国民的な期待を集める男子体操の予選では、団体・個人総合・種目別鉄棒で3冠を視野に入れていたエース橋本大輝さんが全体的に調子が上がらず、鉄棒では着地で両手をつく大きな減点があって種目別の決勝に進めませんでした。ゆかもスコアを伸ばせず、予選の結果とは言え個人総合ではトップの中国・張博恒さんに3.533点離され、団体ではライバル中国に2.434点離されました。もともと苦戦は覚悟のうえでしたが、想定以上の差と言わざるを得ません。暗雲が漂っています。




そんななかでも日本には頼れる種目があります。お家芸オブお家芸、日本が生んだ世界のスポーツ柔道です。27日は男女の最軽量級、男子60キロ級と女子48キロ級が行なわれました。しかし、日本時間の夕方から始まった準々決勝までの戦いでは、こちらにも暗雲の気配がありました。準々決勝に登場した男子60キロ級の永山竜樹選手が釈然としない敗戦を喫してしまったのです。

準々決勝の対戦相手は2023年の世界選手権王者であるフランシスコ・ガリゴスさん。その際は日本が誇る金メダリスト・�眛D昭�さんにも勝利した強豪です。金メダル候補を相手に永山さんは苦しみました。この試合の前の3回戦でもなかなか技が出ず、延長ゴールデンスコアからの反則勝ち(指導3)での勝ち上がりだったのと同様に、永山さんは準々決勝でも有効な攻めを繰り出すことができません。動きが固く、消極的です。技の流れから寝技に入られると、身体を引っくり返される場面が二度、三度とつづきます。寝技では少しチカラの差がありそうな感触です。

やがて永山さんが内股を仕掛けにいったところで背後に組み付かれると、またしても身体をまわされてしまいます。そして上から覆いかぶさられる形に。永山さんはガリゴスさんの足に自分の足を絡めていますので抑え込みにはなりませんが、苦しい態勢ではあります。ときおり永山さんの足が外れかけるので審判も止めるタイミングがなく、かなり長い寝技での防御となります。そのなかでガリゴスさんは絞め技の態勢に入りました。懸命に耐える永山さんの様子をうかがいながら審判はようやく「待て」のコール。

逃げ切った、そう思ったもののガリゴスさんはまだ絞めの態勢をつづけています。両者が離れるまで「待て」から5秒ほどかかったでしょうか。ようやく両者が離れ、永山さんが大の字で畳に寝そべったとき、審判は永山さんの表情をうかがって「一本」のコール。一瞬「落ちた」とみなされたでしょうか。永山さんはこの決着が理解できないように周囲を見回しながらガリゴスさんとの握手を拒みました。試合を決着させまいと畳に残る永山さんですが、すでにガリゴスさんも審判も引き上げてしまいました。後味の悪い敗戦でした。

↓「待て」ですぐ離れなかったガリゴスさん!


↓この決着には納得がいかない永山さん!


↓ちなみにこちらは2023年世界選手権で�眛D昭�さんがガリゴスさんに危険な投げ方をされて負けたときの動画です!


立った状態からヒジを極めて投げた!

�眛�さんもまず手が動くかの確認をしていますね!

このときの審判にもご注目ください!


審判員の毅然とした裁きがあればこの決着はなかったとは思います。「待て」のあと組みついてでも両者を引きはがしていれば、防御しているときに足が動いている様子から見ても永山さんは意識を失うことなく、一本は取られなかったでしょう。ただ、審判にそうする定めはなく、「待て」のあとは「試合者はすばやく試合開始時の位置に戻らなければならない」とあるだけ。そこに曖昧な数秒があるのです。「待てが聞こえませんでした」「私なりには素早く戻りました」的な空白の時間が。そして決着についても「試合者の一方が、絞技あるいは関節技によって、戦意を喪失したとき」は一本になると定められているのみ(※IJF英語版では「consciousness」を失ったら)。いつなのかは問わず、落ちたら負けなのです。

ならば、やはり落ちてはいけなかったのだろうと思います。安全を確保するまで防御を緩めてはいけなかったのだと。技が解けたときに落ちていれば、それが「待ての前なのか」「待ての後なのか」はわかりません。「待ての前にすでに落ちていたかもしれない」ことになってしまいます。それではどれだけ誤審を指摘しても「待ての前にすでに落ちていたのに待てがかかったことのほうが誤審だ」とカウンターを許すことになり、水掛け論でしかなくなってしまいます。

世界ではJUDOでも日本では柔道である、という発祥の国の誇りを持って戦う柔道家であるならば、「落ちたら死」という武道としての心構えは忘れてはいけなかったと思います。この曖昧な瞬間を裁くルールも、その曖昧な瞬間の選手を守るルールもないのですから。それはやはり「勝負弱さ」だったのかなと思います。

↓ここから切り替えられるかどうかが「強さ」です!


↓永山さんはその後3位決定戦に進出し、合わせ技一本で銅メダルを獲得しました!


あの厳しい決着から立ち上がった!

見事に「勝ち取った」銅メダルです!



そして、暗雲を払うように日本に喜びを届けてくれたのが柔道女子48キロ級の角田夏実さん。角田さんは自身の必勝パターンと言える巴投げからの腕ひしぎ十字固めのコンボで1回戦・2回戦・準々決勝と一本勝ちで勝ち抜きます。準決勝では「巴投げ⇒腕ひしぎ十字固め」を徹底警戒する相手の防御に手を焼きますが、延長戦で「組手を拒否する」相手の動きが3つ目の指導を誘って、角田さんの反則勝ちに。対戦相手のスウェーデン・バブルファスさんは抗議の姿勢を見せましたが、最後は抱き合って別れました。バブルファスさんはまだ18歳ということで、ロス五輪以降も日本選手の前に立ちはだかりそうな選手。あと1年、生まれか開催年がズレていたら、危なかったなと思います。

↓最初の右手も使って引き剝がした組手拒否の部分が指導の対象で、そのあとに焦って攻めてもダメですね!


角田さんも「その組手の切り方ダメでしょ」とわかってるようですね!

守りつつも「はぁ?」の動きです!


そして迎えた決勝、相手はモンゴルのバブドルジさん。すでに今大会日本勢のメダル第1号は決まっています。あとは色が金なのか銀なのかです。白の柔道着で畳に向かう角田さんはいつものように笑みを浮かべています。落ち着いています。準決勝を終えたあとは少し腕と肩を気にしているようでしたが、表向きは影響は見せません。

バブドルジさんは右腕で角田さんの左肩から左わき腹あたりを取る狙いのよう。身体の間に空間があれば寝技に引き込まれたときに足を突っ込んで伸ばす十分なスペースが生まれます。できるだけ深い位置を取ることで間合いを潰して防ごうという構えのよう。間合いを詰められればヨシ、ダメなときは自分が先に巴投げに引き込んでしまえ、という二段構えの防御です。

準決勝、決勝、やはり相手に対策されています。世界選手権3連覇の女王が対策されないはずがない。しかし、それでも角田さんは自分の武器を信じます。徹底して巴投げ、そして腕ひしぎ。どれだけ防ごうとしても防げないほどに磨いてきた武器に勝負を託します。バブドルジさんの防御的な姿勢が指導を2つに増やしたあとの残り1分7秒、再び角田さんが寝技に引き込むと、しゃがみ込む相手を足で持ち上げついに宙に浮かせました。

相手は体幹を効かせて凌ごう、とにかく足から落ちて背中をつけないように凌ごうと粘りますが、角田さんはガッチリとつかんだ相手の右腕を放しません。右腕を宙に浮かせたまま保持することで、この技を凌ぐことを許しませんでした。判定は技あり!待てがかかって残り1分4秒、角田さんは守ります。バブドルジさんはしゃにむに突っ込むためたびたび右手が角田さんの顔に当たります。その痛みと、相手の攻めに耐える角田さん。最後は再び寝技に引き込んで時間を食い潰しました。角田夏実さん、パリ五輪日本勢第1号メダルは一番眩しい金メダルです!

↓これが夏季五輪での日本選手団通算500個目のメダル!


この階級では谷亮子さん以来の金!

31歳、遅咲きのヒロインがパリで輝いた!


表彰台の一番高いところに乗った角田さんは、いつもの笑顔ではなくたくさんの涙をこぼしながら君が代を聴いてます。それでもすぐに笑顔は戻り、メダリスト4人が表彰台の一番上の段に乗って、バブドルジさんのスマホで4人の記念撮影をしました。東京五輪では見られなかった、できなかった、することは憚られた光景が五輪に戻ってきた、そう思いました。競技の過程では「あ?」となる瞬間が互いにあったかもしれませんが、それを乗り越えて互いを讃え合える決着は美しいなと思いました。

選手は互いに戦ってはいますが、それは罵り合うためでもいがみ合うためでも奪い合うためでもないはずです。それはきっと、自分が磨いてきたチカラと技を発揮して、自分が思い描いた理想にどれだけ近づけたのかを感じるためなのだろうと思います。強いライバルがいて、思い通りにならない瞬間があってこそ、自分の限界を超えることができる。ライバルは敵ではなく強くなるためのパートナーです。そんな光景を、その輪の中心にいる人を応援する気持ちで見守れたこと、とても嬉しく思いました。心の暗雲も晴れる気持ちのいい金でした!

↓やっぱり柔道は頼りになるお家芸です!

いつもありがとう柔道!

序盤に柔道がある日程、ありがたいですね!



28日も柔道から阿部一二三さん・詩さんの兄妹同時連覇に期待です!

数多の朗報を上回る阿部一二三さん・詩さん「兄妹同日金」の偉業に、早くもパリ・ロスでの「兄妹一・二・三連覇」の期待高まるの巻。

08:30
阿部兄妹、一・二・三連覇へ!

東京五輪を盛り上げる4連休が終わり、俄然大会は盛り上がってきました。開会式の国立競技場周辺では中止を求めてやってきたデモ隊も思わず写真撮影に興じていたり、沿道応援の自粛を呼び掛けられていてもロードレースのコースにはたくさんの応援の人が居並んでいました。それはある種のモラル違反ということかもしれませんが、同時に「民意」でもあると思います。楽しもう、楽しみたい、そういう気持ちが世のなかを明るくすることを願いながら、引きつづきこの五輪・パラリンピックを見守っていきたいと思います。安心安全を追求することを忘れずに。

25日はそんな明るい気持ちをグングン加速させるような時間でした。午前中の競泳決勝では日本競泳陣の新エースである大橋悠依さん(※前任者はプライベートの問題と単純に遅かったので降格)が女子400メートル個人メドレーで金メダルを獲得。前日の前エース降格の時点で「妙にタイムが出ないな…?」「もしや日本だけ午前決勝に順応してて逆に予選で弱い説か…?」「今大会の金は厳しい…?」という不安もありましたが、あっという間に不安を払拭してくれました。いける、いけるぞ、競泳ニッポン。大橋さんを中心に頑張ってください!

↓やっと届いた世界の「金」!元気と勇気をもらいました!


さらにこの日はメダルラッシュの様相。新競技のスケートボード男子ストリートでは、堀米雄斗さんが地元に錦を飾る金。堀米さんをはじめとする選手たちと、コーチ陣や解説の方も含めて皆の「楽しそう」な雰囲気と、それを日本の人々も前向きに受け止めていることに新しい時代を感じさせてくれる試合でした。その陽気さに「眉をひそめる」のではなく「楽しそうでいいね」と受け止める空気、チャレンジそのものを評価し失敗もチャレンジの証と笑い飛ばすような空気が広がってきているなと思います。自分自身も「眉をひそめる」ような気持ちが、いつの間にか薄らいでいるなと感じます。

もともとストリートカルチャーから生まれたスポーツたちは、選手がとても楽しそうに、自分のスタイル(個性)を追求してきたものです。スポーツになる前に文化になっていたものです。勝ち負けというよりは、カッコよさを張り合うような形で。しかし、日本では自分のスタイルで服装を着崩していたり、自分のスタイルでラップを決めたりすると、それをモラルに反する蛮行かのように指弾する動きがありました。ストリートに根を張る選手たちに「チッ、うっせぇ、うっせぇ、うっせぇな、あなたが思うより反省してます」と頭を下げさせてきました。そこまですることはなかったなと思います。今ならそういう自由な個性とも、もう少し穏便に折り合えるかもしれないなと思います。

いろいろな人がいて、みんないろいろでいい。

世界にはこんな空気もあるのだと知る、それもまた五輪・パラリンピックだなと思います。

↓ウェアも日本柄のレインボーユニでオシャレ!


↓「ビタビタに決まって鬼ヤバイ」なんて解説も楽しそうでイイじゃない!



その後も朗報が続々と届く日本選手団。卓球混合ダブルスでは絶対絶命のピンチからの大逆転劇などで水谷・伊藤組が決勝進出を決め、中国ペアと「金」を争うことに。ソフトボールも守護神・後藤さんの好リリーフでカナダを振り切り、アメリカとの金銀決着戦への進出が決まりました。メダルは確定したうえで色を狙うという「上がるしかない」戦いの予約2件、また楽しみが増えました。バドミントン、テニスでの実力者の順調な勝ち上がりや、団体競技での好試合・快勝などそれそれがこの大会への準備を発揮してくれていることに嬉しさと頼もしさを感じます。

そして、いずれもが新聞一面級の朗報たちをさらに上回って輝いた阿部一二三・詩の兄妹による「兄妹同日金」という大偉業。あるかもしれないとは言われていたことですが、本当に達成してしまうとはお見事です。そのうえ、阿部詩さんという傑出した個は、「日本柔道界がいまだ制覇できていない女子52キロ級の壁」も簡単に突破してしまいました。最強の兄妹はどこまでいくのか。五輪の金でもまだまだ天井が見えないスケール感に脱帽です!



昼セッションの3回戦、準々決勝、阿部兄妹は強かった。先に3回戦の畳にあがった詩さんが投げて抑えてのあわせて一本で易々と勝利すれば、一二三さんは組むことを拒んで逃げ回る相手を「両袖」をつかんでの「袖釣り込み腰」に見せかけて逆に「大外刈り」で背中側に倒すという仕掛けで鮮やかに一本。初の五輪という硬さはまったくありません。準々決勝も詩さんは相手の投げを潰して、そのまま横倒しにして技あり。一二三さんも消極的な相手を大外刈りで技あり。大得意の投げ技だけでなく足技も冴えています。

互いの試合を互いが見守る兄妹は、夕方のセッションでも快進撃を見せます。詩さんの準決勝は指導をもらわない程度に上手く逃げ回る相手に延長までもつれ込みますが、トータル7分を超えたところで内股技あり。組み際、電光石火の投げでした。一二三さんの準決勝は、胸に「家族」のタトゥーを入れたブラジルのカルグニンが相手。一二三さんは「ワシは家族と出ている」とばかりに背負い投げで鮮やかに一本。これで兄妹同日金まであと1勝ずつとします。

迎えた決勝、先に登場の詩さんはこの日絶好調のブシャールが相手。ブシャールは飛び込んで奥襟をつかみ、詩さんの技を封じようという戦いぶり。試合当初はそれを食って頭を押さえつけられていた詩さんですが、試合途中からはその飛び込みを見切ってさばくようになります。この日のために用意した策だったのでしょうが、あっという間に見切られて、これでブシャールは攻め手がなくなりました。

互いにポイントがないまま延長に突入し、試合時間8分を超えた頃には、ブシャールは疲労からかほぼ棒立ちで後ずさりという状態に。一方で詩さんは元気いっぱいに攻めつづけています。最後は相手が地面に突っ伏しての防御姿勢を、強引に起こして裏返し、そのまま抑え込むという力技。10秒抑え込み時点でポイントが入り、ゴールデンスコアでの勝ちが決まった詩さんですが、一本の20秒まで抑え込みつづけ、完勝での金メダル。投げ技をどれだけ防御されても、寝技で上回って勝つという勝ち筋の広さ。破れたブシャールの呆然とした表情が印象的でした。早くも3年後に向けて「どうすりゃええんじゃ…」とでも思っていたでしょうか。いやー、詩さん強かった!

↓とんでもない強さで女子52キロ級の壁、破壊!




その結果を見届けて畳に上がる一二三さん。試合時間2分にかかろうかというところで、またも「袖釣り込み腰と見せかけての大外刈り」という連携で技ありを奪います。もともと投げの鮮やかさで世界を制した一二三さんですが、そこに足技も絡めることで「防ごうとしても防げない」というさらなる強さを手に入れました。

ただ、そこで「勝った」「勝てる」と計算が働いたでしょうか。残り2分間は組むことを拒みながら徹底して防御の構えとなり、逆に危うい場面も生まれます。このあたりは少し精神的に憶病になった瞬間だったかもしれません。「相手が死にそうだな」という状況で「そのまま死んでくれ」と願うか「よしトドメ刺そう」と奮い立つかの差とでも言うべきか、ちょっと守ってしまったなと思います。

それでも一二三さんはしっかりと守り切ると、兄妹同日金の大偉業を達成。畳の上では喜びを見せないと誓っていたと言うとおり、一礼してようやくの笑顔を見せた一二三さん。むしろ見守る詩さんが「観戦している家族」の姿で、バンザイ大喜びだったのが印象的でした。自分の勝利の余韻に浸ることもなく、もう「妹」に戻っている。五輪すらも日常の一部という大物ぶり。一二三さんが勝ってさらに詩さんのスケールの大きさを感じる、そんな兄妹金でした。

↓「一二三」つながりで将棋の加藤一二三さんからもお祝いが!


↓やっぱりお兄ちゃんも強かった!


柔道界の新たなアイコンとして、そして「一二三」の名にちなんで、一二三さんには野村忠宏さんの五輪三連覇という偉業への挑戦が期待されることでしょう。パリ、そしてロスのエースとして。しかし、それ以上に大きな期待を寄せるべきは詩さんなのだなと、そのスケール感に圧倒されるような五輪でした。

とりわけ印象的だったのは試合直後のインタビュー。詩さんは、選手たちからよく聞く「支えてくれた人のおかげで…」という物言いではなく、「私の努力がやっと報われてよかった」とキッパリと言い切りました。それが唯我独尊的だという話ではなく、その言葉を聞いて、詩さんはまだ使っていないチカラがあるのだと感じました。

詩さんは自分のチカラでこの大会を制したのでしょう。勝ちたい、強くなりたい、そういう内なるチカラで。ただ、多くの選手は頂点を目指す過程で、それだけでは乗り越えられない壁にぶつかり、その苦しさを乗り越えるチカラを、支えてくれている人、応援してくれている人への「感謝」から得ていきます。こんなに苦しいのに何故私は頑張るのだ、という問いを「あの人に報いるため、あの人の笑顔が見たい」という他者から生まれるチカラに求めることで、さらに強くなるのです。

自分の喜びは自分の苦しみで相殺されますので、「こんなに辛いならもういい」となってしまいます。しかし、他人の喜びは自分がどれだけ苦しくても変わりませんので、あの人の笑顔を見るためならどれだけでも頑張ることができます。そういうチカラを得ることで、さらに強くなれる。そのチカラを詩さんはまだ使っておらず、五輪を圧勝してもなお底が見えない、奥深い伸び代がある。そう思います。

詩さんが勝ちつづけることで一二三さんも兄として勝ちつづけることを求め、互いが互いを引っ張りながらふたりで勝ち進んでいく…そんな兄妹の活躍がこれからもつづくのかなと思います。一二三さんが「一二三連覇」を達成する日には、詩さんも「お兄ちゃん、先にやっておいたよ」の三連覇を達成しているのだろうなと。逆に言えば、詩さんが三連覇するようなら、一二三さんもそこに届く、そういう二人三脚なのかなと思います。

もしも人生の設計が噛み合うようなら「一(いち)二(に)三(さん)詩(し)」で四連覇というところまで想像しながら、今後もこの兄妹の活躍を見守れればと思います。4年後、8年後まで予約をしたくなる楽しみが生まれたことにありがたさを覚える、阿部兄妹の見事な「一冠目」でした!




「妹よりも強い兄」で居つづけられるよう、お兄ちゃん頑張れの気持ちです!

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