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いやーーー、すごい戦いでした。全日本卓球選手権、男女シングルスの決勝はまさに「未来」につながる、「未来」が見える戦い。東京五輪、そしてパリ五輪へとつづいていく戦いでした。日本の卓球は世界でも屈指の強さを誇るわけですが、頂点の高さだけでなく分厚い層・将来性をも感じさせるような。
女子の決勝は、準決勝で伊藤美誠さんの3年連続3冠を阻んだ早田ひなさんが、石川佳純さんを倒して初優勝。東京五輪選考レースでもダブルス巧者としての代表入りがある「かも」という位置にいた早田さんが、この全日本を制したこと。1年ずれていれば東京の選考にも「かも」があったかもなと思えてくる勝利でしたし、その「かも」が成らなかったからこその優勝だったのかなと思いました。東京を追いかけたからこその飛躍。長身、身体能力、左利き。スケールの大きな新女王の誕生でした。
↓優勝後はダブルピース連発で若さを遺憾なく発揮!
たくさんの方々に支えていただき全日本選手権でダブルス3連覇、シングルスで初優勝することが出来ました!応援して下さった皆さん有難うございました🙇♂️
— 早田ひな (@hayata_hina) January 19, 2020
今年1年はテーマを『挑戦』とし逃げていた部分にもしっかりと向き合って進化したいと思っています。
また良い報告が出来る様に頑張ります🐣💛 pic.twitter.com/w3asmiZgAp
Tリーグ初代MVP、そして全日本女王!
先に女子の決勝を終えた時点で、「未来につながる全日本だったのー」と感慨にふけった僕をさらに驚かせたのが男子シングルスの決勝。今回は、長年日本男子を牽引してきた水谷隼さんが勇退ということで、変化の節目ではあった大会。とは言え、大方の予想としては「張本優勝」一択でした。実際、張本選手は決勝までしっかりと勝ち上がってきました。準々決勝までは1ゲームも落とさないような強さと、準決勝を大逆転で競り勝つようなしぶとさで。これはもう決勝も勝つだろうと。
しかし、そこに立ちはだかった選手がいた。まだ高校生の宇田幸矢くん。「いや、張本くんも高校生だし」「ていうか、張本くんのほうが学年下だし」「インターハイ決勝かな?」という若者同士の決勝戦。卓球に年齢はさして関係がないとは言え、並み居る強豪を打ち倒してこの対戦が実現するというのは未来感が高いというもの。
↓世界ジュニアではミックスダブルスで金を獲得した期待の精鋭!
㊗️㊗️㊗️㊗️㊗️㊗️
— テレビ東京卓球情報 (@tvtokyo_tt) December 1, 2019
㊗️史上初の快挙㊗️
㊗️㊗️㊗️㊗️㊗️㊗️#世界ジュニア 卓球選手権大会🌏#ミックスダブルス 金メダル🥇#宇田幸矢 #木原美悠 ペア#田勢邦史 男子監督と優勝直後の3ショット✨#卓球#テレビ東京#史上初#快挙に手が震える#勢いに乗って#3種目制覇だ pic.twitter.com/9zq4wn3uOt
探り合いから始まった決勝戦。ストップレシーブで「見」の姿勢を見せる宇田くんと、立ち上がりから攻めにかかる張本くん。しかし、宇田くんのギアもすぐさま上がっていきます。前陣速攻、台に張り付くようにしてボールの上がり際を叩くことをスタイルとしつつ、ときに台の下から打ち上げるようにして前後・緩急・回転のゆさぶりも加えていきます。
ダブルスも組む関係だけに、互いに手の内は知り尽くした両者。サーブからの展開はお互いに読み切っており、「そうきたらこう」「そうくると思ってたからこう」「それも知ってたからこう」「そこまで全部最初からわかってました!こう!」という高速での応酬がつづきます。3球目、4球目まで読み合った上での戦いは、見ている者の岡目八目すら置き去りにしていくスピード感です。
さらにそのなかで繰り広げられる駆け引きの妙。サーブを伸ばしていくのか、短くいくのか、ストレートなのかクロスなのか。相手のサーブに対してストップするのか、ツッツキで短く返していくのか、チキータで伸ばして攻めにいくのか。選択肢がいくつかあるなかで、どれを選び、どれを意識させるのか。手の内を知り尽くしている間柄だけに一層駆け引きも折り重なっていきます。
それはさながら野球の名投手・強打者の対決のよう。速い真っ直ぐは当然あるが、真っ直ぐだけでは痛打を浴びる。切れる変化球は当然あるが、球種を読まれれば痛打される。チカラと技術だけでは押し切れない部分を、「内を意識させて外へ」「忘れた頃にスローカーブ」「ここでズバッとインハイへ」といった駆け引きで取り合っていく煮詰まった戦い。考えて、相手にも考えさせながら、高速でチカラと技術を発揮していく濃厚な決勝戦です!
↓相手が打つ前に考えて動き、相手の考えを読んで逆に打つ戦い!
【宇田 連続ポイント】#全日本卓球選手権
— NHKスポーツ (@nhk_sports) January 19, 2020
男子シングルス決勝#宇田幸矢 2-1 #張本智和 ←試合中
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特集記事や試合結果など掲載中
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「0.1秒先の未来が見える」能力者同士の決戦みたいになってきた!
サーブのコースを読む、相手の返しを読む、「フォア側からストレートに返してこない」というこの日の張本くんの傾向を読む…が全部積み重なったうえでの「フォア側で待ち構えての決めの一打」!
↓何でもないミスっぽく見えるところも、積み重なった駆け引きの末のもの!
【宇田 初優勝へあと1ゲーム!】#全日本卓球選手権
— NHKスポーツ (@nhk_sports) January 19, 2020
男子シングルス決勝#宇田幸矢 3-1 #張本智和 ←試合中
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張本くんのサーブがストレートにこないという傾向を読む
↓
待ち構えて深く長く返す
↓
仮に張本くんがもう1球返してきてもクロスだろうと読んで強打の態勢で待つ宇田くん
↓
案の定クロスにキター!
↓
ただ、その前でネットに掛かってしまった
「仮に返ってきていても」という攻防でした!
そして勝負の第5ゲーム。ゲーム序盤は勝利を意識したか小さなミスが出て、さらに小さな不運もあって出遅れた宇田くん。それでもゲーム中盤以降は、まるで相手の返す場所を最初から知っているかのような回り込みでポイントを重ねていきます。10-8でのダブルチャンピオンシップポイント。しかも自分のサービス2本という大チャンス。
1本目、宇田くんは準決勝でもここぞの場面で見せていたバック側へのストレートの長いサーブ。裏をかく1球。しかし、ここは張本くんがラリーで粘ったうえで、「自分、どうせ最後はクロスで待ってるんだろ!」と逆をつくストレートへの返球で10-9。さらに張本くんはもう一本相手のサービスを返してチャンピオンシップポイントを消すと、最後は競り勝っての逆転ゲーム奪取。読んで、読まれて、読み返して、さらにそれを読む。この試合のなかで両者のギアが4段階くらい上がっているかのような攻防でした。
↓逆をついてもチカラと技術でそれを凌ぎ、さらに逆をついていく両者!
【張本 絶対絶命のピンチから粘って奪取!】#全日本卓球選手権
— NHKスポーツ (@nhk_sports) January 19, 2020
男子シングルス決勝#宇田幸矢 3-2 #張本智和 ←試合中
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「これは宇田くんショックだろう」と思いました。チャンピオンシップポイントから逆転されれば、誰だって多少はへこみます。そこを見逃さずに第6ゲームの序盤は張本くんがさらなる攻めでペースをつかみます。あっという間に1-7と大量リード。この第6ゲームを取るのは確定的で、そうなればゲームカウント3-1から3-3にされるわけですから、当然宇田くんはド凹みの展開であり、張本くん逆転優勝への道が見える展開のはずでした。
ただ、ここが真に宇田くんの強いゲームでした。1-7からでも気持ちを切らさず、ゲームを捨てるわけでもなく、少し詰めて6-11でこのゲームを終えたのです。途中、コーチとタイムアウトを取る手もあったはずですが、それはせず、自力で流れを止めて押し返した。これだけの攻防、駆け引きの末ならばようやく許されるであろう「最後は気持ち」の局面がこのゲームにありました。チカラ・技術、尽くせる部分を尽くしたうえで、気持ちでしかこらえられない場面をこらえてみせた。
そして迎えた最終第7ゲーム。互いに点数を重ね、揉み合いながら迎えたゲーム終盤。「ストレートを意識させてのクロス」「クロスを意識させてのストレート」「両方を意識させての両方」…試合のなかで積み重なった伏線をここぞと使い、両者が最後の1点を目指します。読まれていることがわかり抜いているからこそ、「あえて難しいこと」に挑まざるを得ず、なおかつそれを決めていくようなハイレベルな戦い。ポイント9-9のゲーム終盤、最後は、自分のサービスから2本連続で決めきって宇田くんが勝利。試合のなかで何度も声をあげてしまう、稀に見る大熱戦でした!
↓何か、最後の1点だけ見ると「ふーん」みたいな決着ですが、互いに手を尽くした末の「ふーん」です!
【宇田がフルゲームの大接戦を制し初優勝】#全日本卓球選手権
— NHKスポーツ (@nhk_sports) January 19, 2020
男子シングルス決勝#宇田幸矢 4-3 #張本智和
BS8Kでは午後6:30から男女シングルス決勝を録画放送
特集記事や試合結果などを掲載
NHK東京2020卓球特集ページはこちらhttps://t.co/SkrvNeVVAn#卓球 #全日本卓球 #東京2020 @nhk_2020 pic.twitter.com/S3nv2DHOvz
最初から最後まで気持ちが切れなかった!
切れそうになる展開もありながら、それを「タイムアウトを取る」とか「コーチの言葉」とかではなく、独力でつなぎとめた!
強い新チャンピオンでした!
夜のNHK「サンデースポーツ」。優勝者が登場するということで、世間もNHKも「女子は伊藤で男子は張本やな」と読んだなかでの新チャンピオン・宇田くんの登場。しかし、この「読めない展開」は必ずや未来への伏線となるものです。全日本選手権はチカラと技術があって、なおかつ「魔物」を打ち破った真の強者でなければ勝てない舞台。過去の優勝者を振り返っても、フロックはありません。
東京五輪については代表メンバーはすでに決定していますが、リザーブか何かの形で新チャンピオンも大会には関わっていくでしょう。いや、関わらせないとダメでしょう。五輪という特別な舞台、その空気を吸い、その重さを感じるだけでも意味がありますし、それは間違いなくパリ五輪につながっていくもの。リオの悔しさがあって平野美宇さんが東京では代表入りを果たしたように、「そこに置いておく」ことに意味があります。
一緒にいれば球拾いとかさせられるかもしれませんし、他人のメダル獲得を見せられてイラッとくる瞬間もあると思いますが、頑張って球拾いと応援をしてください!
↓全員団結で東京、そしてパリでの金を目指そう!
男子の活況、水谷隼さんも行きつけのカフェで目を細めているでしょう!