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「バドミントンなど別にどうでもいい」という大きな国民的視点に立てば、ぶっちゃけたところ永久にラケットを置いていただき、飲食店でも始めればいいんじゃなかろうか。そんな感じで誰も助ける者のない濁流に飲まれ、どんぶらこどんぶらこしている大きな桃、田賢斗さんと田児賢一さん。
「ガンバレ、今、助けるぞー!」
2段落目で早くも2回目となる「バドミントンなど別にどうでもいい」という国民的総意によって、桃田賢斗さんおよび田児賢一さんは選手生命を断たれようとしています。たまに出てくる擁護風ご意見などを見ても、リオに出場できないことは当然として、桃田選手には4年後の東京を目指してもらいたい的な論調のものばかり。特に明言はされないものの、田児さんは引退前提での「桃田は世界ランク2位だから」擁護論です。
「フモフモが助けにきたぞー!」
確かに賭博はダメです。刑法上の犯罪ですね。我々は「賭博ダメ社会」に生きているのですからダメです。ただ一方で、どのぐらいダメなのかという点については、非常に意見のわかれるところでしょう。法律に詳しい人たちが言うには、過去の判例をひも解くならば「金を賭けた」時点でそれは額の多寡によらず賭博罪に該当するといいます。
「サノケンすら擁護したフモフモだぞー!」
しかし、仲間内で賭けゴルフをしたり、賭けマージャンをしたりするのはありふれた風景でもあります。競馬や競艇などの公営ギャンブルと呼ばれる競技では昼間から堂々とジャンパー着たオヤジが金を賭けて泥酔しています。さらにパチンコ屋などは三店方式というワケのわからん理屈をこねて、カジノのスロットマシーンと何ら変わらない「賭け事」を提供しているではないですか。
「ほかに誰も助けにきてないけど、諦めないぞー!」
それを社会は平然と受け入れている。賭博はダメだと言いつつ、まったく性質が同じものが堂々と存在しているのです。ダルビッシュがパチンコ屋に行ったとき、我々はこんなに厳正に向き合ったでしょうか。「ダルビッシュなどどうでもいい」という立場からすれば、賭博で野球界追放(※4月25日までに自首すれば資格停止1年に割り引くキャンペーン実施中)が妥当であり、反社会的勢力(※弟/清原)との交際も疑われるわけですから、これはもう国外追放もやむを得ないところでしょう。しかし、実際問題そうはならない。何でしょう、この、パチンコならオッケーという謎理論。
「ロープも何もないけど精一杯手を伸ばすぞー!」
このような現実を受け、どれがアウト賭博でどれがセーフ賭博かわからなくなり、「賭け事自体はそんなに悪いことと思えない」という、偽らざる本音が彼らの胸の内には生まれるわけです。至極ごもっとも。海外には合法的にギャンブルをできるカジノもあります。「海外遠征でカジノに出会った」「初めてカジノに行ったのは合法の国」という彼らの証言は、一般には「感覚がマヒしていった」と受け止められるのでしょうが、実態としては「やっぱ悪くないよな、楽しい!」と気づいたのだと思います。
<「そんなに悪いことしたかなぁ?」という表情を狙っておさえる安定の底意地の悪さを発揮する毎日写真部>
https://t.co/iVXJeffQfn 違法カジノ店での賭博行為を認めたバドミントンの桃田賢斗選手と田児賢一選手が記者会見し「軽率な行動で期待や応援を裏切った」と謝罪しました。 pic.twitter.com/mPkpLe4KLQ
— 毎日新聞写真部 (@mainichiphoto) 2016年4月8日
「うーん、手が届かないなぁ……」
賭け事は悪くない、普通、当たり前という感覚。たまに政治家になりたがるバカが「カジノを作って税収アップ」とか言い出しますが、アレなど賭博罪の理念からすれば反社会的賭場を作ろうという、悪の組織の秘密基地作りみたいな提案なのですから、そのクチを洗濯バサミで綴じられても仕方ないところでしょう。実際問題そうならないのは、「賭け事自体はそんなに悪いことと思えない」という社会の意識があるからではないですか。パチンコはよくてバカラはダメという理屈は、本質的には筋がオカシイと思います。
「棒を持ってくるぞ!」
じゃあ、何故こんなに悪いことになっているのか。ひとつには反社会的勢力の資金源たる闇カジノでの賭け事だったことが挙げられるでしょう。裏社会を増長させれば、表社会の治安が乱されます。賭けた賭けないよりも「反社会的勢力」とのつながりが問題である。そういう指摘には納得感があります。
「ビニ傘があった!トライしてみよう!」
ただ、それとて全方位的に筋が通るかというとそうでもありません。「反社会的勢力の資金源たる風俗店・飲食店」に出入りしているパターンは、さして咎められないじゃないですか。結構いるでしょ、そういうの。自慢気に語る輩も含めて。反社会的勢力は反社会的勢力と名乗って近づいてくるわけではなく、心の緩みを突いてスッと入り込んでくるもの。「客人」としての付き合いは、軽率ではあるけれど、軽率以上のものではないのではないでしょうか。ヤクザとズブズブで利益供与とかだと悪質ですが、それは横領だの背任だの別の適切な犯罪があるでしょうし。
「えっ、先っぽのほうは掴みにくいって?わがままだなぁ…」
結局は、すべて「イメージ」の問題に集約されます。いいとか悪いとかじゃなく、イメージ。清廉・元気を売り物にしていたハーフタレントがドロドロの不倫をしていたら「イメージ」が傷ついてテレビから消えるのと一緒。バドミントン協会の誓約書にある「日本代表としてふさわしくない状況」こそが本件の最大の問題であろうと思います。
「じゃ、持つほうをそっちに向けるわ…」
野球において野球賭博が問題視されるのは、見世物の根幹を揺るがす「八百長」が疑われるという点および、過去に同じような問題があったという歴史的経緯を含めてのものでしょう。一方で、円陣賭博は野球文化として許されていたわけじゃないですか。ほぼ全球団やってたんですから。「野球において円陣での金のやり取りはオッケーだけど、野球賭博はダメだよぉ」という区別があったのです。賭博の中にもセーフゾーンとアウトゾーンがあったわけです、野球圏では。イメージ的な部分によって。
「ダメだ、今度は僕が握れない!すっぽ抜けた!」
その点、バドミントンは野球よりも厳しいイメージ管理が求められるのは当然のこと。強化費や所属企業からの給料などは基本的に「頑張っている」「爽やか」「前向き」「健康」「元気」などのイメージに対して支払われているもの。そうした善なるモノを支援することで、社会が明るくなり、よくなるという考えで生まれたお金です。それを預かる以上は、「ふさわしい」言動というのがあるはずです。大して客もいないのに、羽根つきみたいな遊びで金をもらえるなんて、オカシイでしょ。オカシイと思わないと。何で金が出てくるのか、そのカラクリを考えないと。自分がお金をもらえる理由をもっと意識すべきでした。
「Hey Siri 溺れている人を助けたい」
ただ、そこまで思い至らないのは、本人たちのあの感じなら仕方ないかなと思います。今回の会見でドキッとしたのが桃田さんの「自分もスポーツマンで勝負の世界に生きているし、ギャンブルというものに興味があった」という言葉。僕にはない感覚でしたが、彼らは普段から「バドミントンで勝ったら(何故かはよくわからないが)金がもらえる」というギャンブルをやっている気分だったのでしょう。賭け金はないけれど、そのぶん遠征の手間を掛けたり、用具を買ったりしているわけで、「投資をして」「遊びで勝負をして」「リターンを得る」という意味では賭け事と近しい構造でヒリヒリしたりざわざわしたりしていたのです。田児さんなんて、自費で大会に出て賞金を稼ぐという本格派ですし。
「Hey Siri 溺れて いる 人を すぐに 助けたい」
「スポーツ楽しい!勝つの楽しい!負けて悔しいのもヒリヒリして楽しい!」と「ギャンブル楽しい!勝つの楽しい!負けて悔しいのもヒリヒリして楽しい!」は、彼らの中で感覚的に似ていた。朝食でコーヒー飲んで、昼食でカフェラテ飲むみたいな感じで、どっちも似たような性質のものだった。そこに「賭け事自体はそんなに悪いことと思えない」が重なったら、アヤしい裏カジノでドキドキしながら賭け事を楽しんでも不思議はありません。
「Hey Siri 沈んだ 人を 引き揚げる 方法」
僕は何もかもを許せと言っているわけではありません。大きく「イメージ」を損なった以上、しばし選手として活動できないのは避けられないでしょう。「イメージ」が売り物なのですから。ただ、言うても「客としてバカラやって負けた」だけじゃないですか。負けたということで脱税もありませんし、ただただ「客としてバカラやって負けた」だけなのです。パチンコで負けるのは笑い話にする社会で、彼らを一発アウトにするのは、何かがオカシイと思います。
「うわっ、調べものしてる間に、沈んでから5分くらい経ってた」
賭博罪の刑法上の量刑は「50万円以下の罰金又は科料」、常習賭博罪にしても「3年以下の懲役」です。桃田さんは6回の通いで、現在は止めているということなら単純賭博で罰金でおさまりそうですし、1000万円負けた田児さんが常習性を認められたとしても(※バドミントン強いのにバカラ弱い)、初犯ということなら執行猶予となる線。刑法上はその程度のものでしかないのです。「人としてやってはならないこと」はもっとほかにあるでしょう。
「うーん、これはちょっとやそっとじゃどうにもならんね」
刑法上とは別にスポーツ的な観点で言えば、「客としてバカラやって負けた」よりも「八百長」「ドーピング」「買収」などのほうが、よほど問題なわけです。見世物の根幹を揺るがし、詐欺的手法でリターンを奪っていく行為なのですから。そうした行為でも4年間の資格停止後に堂々と復帰してくるわけで、復帰を前提とした資格停止以上のものを「客としてバカラやって負けた」に科すのは、やりすぎなのではないでしょうか。
「一回出直そう、基本的に道具が足らんわ」
田児さんは日本選手権を6連覇するなどした名選手。世界ランク1ケタに入った実績もあります。まだ26歳とこれからが勝負の年齢。悪い遊びに仲間を誘った責任は感じてもらうしかないですが、何も引退させんでもいいでしょう。本人は半ば「僕の引退で代わりに桃田を」的な人身御供みたいな気持ちになっていますが、負け金に応じて差をつけた「復帰を前提とした資格停止」でいいじゃないですか。どのくらいの時間にするかは、バドミントンが負った痛手をバドミントン界で判断するということで。
「必ず助けるぞ、桃田だけじゃなく田児も助けるぞ!」
4月25日までに名乗り出たら1年間の資格停止で勘弁してやる的な競技もある中で、「客としてバカラで負けた」だけのおバカさんを世紀の大悪党みたいにするのは筋が通らない。「バドミントンなど別にどうでもいい」という本音が、殴る手の勢いを強めているのではないですか。わざわざ擁護して一緒に怒られる必要もないのですが、僕の感覚ではこんなに殴るのはアンフェアにしか思えないのです。
「ホームセンターでロープを買ってくる!」
「賭け事はダメ」という社会を築いておきながら、賭け事としか思えないものを社会の中に当たり前に存在させ、それが何故OKになっているのかを説明することもなく、「賭け事自体は悪いことと思えない」という意識を育んでいる。そこを直していかなければいけないという意識付けのためにこそ、今回の事件は活かされるべきだと思います。桃田さんと田児さんには、これを機にやっていい賭博とやって悪い賭博、イメージ的に許される賭博と許されない賭博があるんだということを学んでもらい、正しくギャンブルを嗜んでもらいたいもの。パチンコは何故かOKらしいので、今後はパチンコでドーンといってみてはいかがでしょうか。バドミントンでの金の獲り合いも、また頑張ってくださいね。
「はい、ロープ」

さーて、今日は天気もいいから競馬場でも行って儲けちゃおうかな!