スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム

平昌五輪

ありがとう平昌!パラリンピック閉幕を迎えるにあたり、次は2020年東京で「アスリートの大会」をやると改めて誓うの巻。

12:00
最後まで盛り上がりました!

熱戦つづいた平昌パラリンピックも終わり、長い長い「平昌」もひとつの区切りを迎えました。韓国の山奥でやると決まったときのアチャーという気持ちや、高速鉄道作る・作れない問題、ホテルのあり・なし問題、雪不足への不安と降雪機への期待、寒さへの不安と防寒6点セットへの期待、緊急大量ノロ、モルゲッソヨ……たくさんの心配事も過ぎてみればいい思い出。楽しく充実した日々となりました。

18日に閉幕を迎えたパラリンピックも、最終日まで途切れずに日本勢が奮闘してくれました。アルペンスキー女子回転・座位では、すでに今大会4つのメダルを獲得している村岡桃佳さんが5つめのメダルを獲得しました。これは冬季パラリンピックにおける日本選手の一大会の獲得数としては史上最多となるものです。アイススレッジスピードスケートで複数距離のまとめ取りが可能だった長野大会を超えての5個というのは、歴史的な快挙だったと思います。

この日の回転はアルペンスキー5種目のなかでは「一番苦手」ということでしたが、とてもそんな様子は感じさせない滑り。攻めるというよりは丁寧になぞるといった滑りで、ミスなく旗門を通過していきます。1本目を終えて2位、2本目は大きくバランスを崩して転倒するミスがありましたが、他選手も苦しむコースコンディションでのなかのこと。1本目の順位を守り切っての見事な銀でした。

↓私に始まって私に終わるの有言実行!そして村岡さんは早くも北京への意欲を表明!



「次も見られる」ことで、次回の楽しみもいや増す!

北京では夢の「5冠」に挑戦だ!



「いやー、面白い大会だったなー」とダラダラ閉会式待ちをしていると、さらなる盛り上がりが追加でやってきました。日本勢は8位となったアイススレッジホッケーの決勝戦。3連覇を狙うアメリカと、それを阻止せんと立ち向かうカナダの頂上決戦は、稀に見る大逆転のゲームとなったのです。

第1ピリオドに1点を先制し、そのリードを保ったまま試合終盤を迎えていたのはカナダでした。アメリカはアイスホッケーではおなじみの秘策「GKをフィールドプレーヤーに替えて、6人で仕掛ける最後の総攻撃」を繰り出します。実質的なプレーヤーがひとり増えるぶん、パックを奪われればガラ空きのゴールに放り込まれてしまう諸刃の策です。

ありがちな話なのですが、最後の猛攻を仕掛けたアメリカはパックを失い、カナダが独走でゴールに迫るという絶体絶命のピンチを迎えます。試合時間は残り1分。ここで追加点なら完全にアウトという場面。「おぉぅふ…アメリカオワタ…」と思ったそのとき、ガラ空きのゴールに向けて放ったカナダのシュートは「ポストに当たって」跳ね返ったのです。命拾いしたアメリカがパックを拾うと、つないでつないで全員がなだれ込んで起死回生の同点弾に!

これで延長戦に持ち込んだアメリカは、1点先取で決着する延長を制して、大逆転での3連覇を達成。この劇的な決着は、もはやアイススレッジに乗ってるとか乗ってないとかではない、大興奮でした。同点弾そして決勝弾を決めたアメリカのファーマー選手のヒーロー感たるや。オリンピックのほうのアイスホッケーも終盤に激しい点の取り合いを演じて、最後は残り1分で同点に追いつく劇的な戦いではありましたが、負けず劣らずの面白い決着でした。

↓試合の面白さは「展開」にある!技術・体力はあくまでもそれを演出するバックボーン!


残り1分、リスク覚悟の猛攻、迎えた大ピンチ、逃れて同点、そして逆転!

アイススレッジに乗っても面白い試合はできる!



クロスカントリースキーで金メダルを獲った新田佳浩選手が、パラリンピックを目指すきっかけとなったのは、誘いをかけたコーチの「パラリンピックは弱者の発表会ではありません。アスリートの大会です」という言葉だったそうですが、やる側も、見る側も、そういう意識が大切なのかなと思います。

村岡さんの「私に始まり、私に終わる」、成田緑夢さんの「ヒーローになりたい」、勝った選手たちの野心は明るくて前向きです。リハビリのために、生きる支えとしてスポーツを始めるという一面もあるのかもしれませんが、世界の頂点をかけて戦う舞台というのは「弱者の発表会」なんて意識ではおさまらないものでしょう。そこに出ること、そして勝つことで栄光を手にする眩しい舞台のはずですし、そうしていかないといけない。

「かわいそうな人だけど今日はパーティーをしてあげましょう」なんてメソメソ飾りつけしているヤツがいたら、それは違うぞって思うじゃないですか。イラッとするじゃないですか。「かわいそう」はいらないのです。「かわいそう」で区切ってるわけではないのです。身体に不自由がある階級の大会であることと、かわいそうな人を集めた大会であることとは等しくないのです。

怪我をしたアスリートや、挫折したアスリート、金銭面で苦しんだアスリートが、昔話を振り返るのと同じことです。確かに大変だったのでしょうが、それも含めて今があり、それがあったからある今なのです。怪我をしたり、不自由があってよかったとまでは思わないまでも、「最終的にこんな素晴らしい日がきたのは、あの辛い日々があってこそ。すべては無駄じゃなかった」と思えるタイミングはあるもの。かわいそうだから讃えるのではなく、頑張った人を讃えるときに大変だった逸話があると一層グッとくる、それは五輪もパラリンピックも大差ない話だと思います。

2020年は東京でコチラが迎える側として大会をやります。ぜひ、素晴らしい大会にしたい。「かわいそう」を捨てて、楽しむための準備をしたい。そのほうが自分が充実するじゃないですか。「かわいそうな人のためのパーティー」なんて辛気臭いものをやるのか「アスリートの大会」をやるのか、それは自分の気持ち次第なのです。僕は辛気臭いのはゴメンです。興奮して、盛り上がって、ハイタッチする大会をやりたい。「かわいそうな人のためのパーティーをやってしまった…」なんて後悔はしたくない。たぶんこれが自分の人生で最初で最後となる、「自分の街」での五輪・パラリンピックなのですから!

↓なので、閉会式で見た北京大会の出し物はちょっと違うと思いました!


車イスの少女が、想像のなかでは自分の足で踊るって違うでしょ?

車イスの少女が車イスのままで、想像よりも素晴らしい瞬間を迎えられるってことに意味があるわけじゃない?

その夢のような瞬間のひとつがパラリンピックなのだから!

自分らしく、自分のままで輝きたい!それは誰にとっても同じ希望です!



ありがとう平昌!お疲れ様平昌!次は2020年東京でお会いしましょう!

すべてがつながって今がある!トリノの炎に照らされ一層眩しく輝いた、成田家に幸せを運ぶ成田緑夢さんの金メダル。

07:00
何もかもがすべてつながっている!

あのトリノから12年。人生とはすべてがつながっていて、すべてに光があって影があって、それをどこから見るかは自分次第なのだと感じさせられました。成田緑夢さん、平昌パラリンピックでの金メダル獲得。この金の輝きは12年前に強い影があったからこそ、一層眩しく輝いているような気がします。気がするだけですが、僕にはそう見えるのです。

新競技バンクドスラロームの会場には、成田童夢さんの姿がありました。父・祖母の姿もあったようです。「しくじり先生」にも出てしまうくらいに、派手に話題になり、派手にしくじったトリノでの成田家のいろいろ。まぁ、そりゃあもう、ヒドかった。それは偽らざるトリノの現実だったと思います。同じ姿をもう一回見せられたら、もう一回派手にSNSが燃え上がるでしょう。「国民的メロウセブン行事」でしたから。

ただ、アレはアレで鮮烈で、思い出深い出来事でした。あの日のアレがなかったら、こんなに緑夢さんのことが気になりもしなかったでしょうし、童夢さんの大ハシャギにグッとくるようなこともなかったでしょう。物事にはいい面と悪い面が常にある。それをどこから見るかはその人次第、タイミング次第。金メダルの輝きの一部は、トリノで真っ赤に燃えた炎の照り返し。あの日、燃えたふたりは辛かったでしょうが、燃えたことで生まれた光もあった。そんな風に、今ならば思えます。



バンクドスラロームは規定のコースを3本滑り、そのベストタイムで争われます。緑夢さんは両足または片足に不自由がある選手の集うLL2クラスの1番滑走で登場。まず1本目は50秒17という好タイムで全体トップとなり、2本目へと進みます。迎えた2本目、緑夢さんはさらに攻めます。得意のスタートダッシュを決めると、パンピングと呼ばれる上下運動で加速をつけ、自身のトップタイムを更新する49秒61をマーク。1番滑走から後続にプレッシャーをかけ、他選手もタイムを更新するなかでトップをキープし、優位に立ってラストの3本目へと向かいます。

とは言え、優位は絶対のものではありません。3本滑ってベストタイムということは、3本目の最後の最後まで勝負はわからないということ。「勝てそう」と思うことで暫定トップが心理的には必ずしもプラスとは言い切れないところがあります。「俺以外のヤツ全員コケろ!」みたいな他人任せに走ってしまいがちな状況でもありますから。

しかし、「常に挑戦」というモットーは、器の小さい考えなど浮かび上がらせもしません。3本目、緑夢さんはさらに攻めます。多くの選手が苦しんでいる難しいバンクでは鋭く攻め込んだことで、手をつきそうになるほどバランスを崩しかけますが、耐えてさらに加速していきます。

自身のタイムを大きく上回って最後のバンクを通過すると、大きく手を振って抜重、加重を繰り返し、最後まで加速をつける動き。48秒68は全選手唯一となる48秒台でもあり、自身のタイムを大きく更新する圧巻の3本目でした。トップの選手がさらに自分を超えてくる、これは強いチャンピオンの勝ち方でした!

↓最後まで攻め切った!攻めたからこそつかんだ金!バンクドスラローム男子LL2クラス初代王者!


お兄さんの童夢さんも喜んでいる!

お兄さんがオリンピックに出た立派なお兄さんとして世界の舞台に帰ってきた!



ライバル選手も攻めて伸ばしてきた3本目の滑り。結果論ですが、緑夢さんが3本目でコケていれば、2本目までのタイムではメダルの色は銅でした。あのバンクで倒れなかったこと、倒れるギリギリまで攻めたこと、自分に勝たなければ得られない色のメダルをつかみ取った。これは五輪でもパラリンピックでも階級に関係なく、勇敢で素晴らしい勝利です。自分に勝った。相手に勝った。強かった。

それにしても素晴らしかったのはスタートやラストで決める上下動での加速。銅メダルに終わったスノーボードクロスでも、スタートでは常に先に立っていましたが、他選手に比して抜群の速さがありました。スタート地点の映像を目視で見ていくと、緑夢さんは最初の旗門のラインを3.6秒ほどで通過しています。銀メダルのエヴァン・ストロング、銅メダルのスールハマリ、4位のマイク・シェイいずれも3.7秒ほどで通過しており、ラインの違いは多少あるにせよ、スタートからのわずかな距離で緑夢さんが目に見える大きな差を生んでいることがわかります。

とにかく特徴的なのはパンピングの動作。ウェーブと呼ばれるコブのようなところに差しかかるたび、緑夢さんは伸び上がるようにしてボードにかかる荷重を「ボードが浮き上がるほど」まで一度抜き、頂点から下り始めるところで大きく沈み込んでボードに体重をかけていきます。こうすることでスノーボードは加速するのだそうです。ブランコで前後に体重移動するとどんどん振り子が大きくなるように、体重移動でどんどん加速する…そんなイメージなのだとか。

これはもしかしてトランポリンなのかなと思います。

緑夢さんはスノーボード、それからトランポリン、スキーハーフパイプ、さらにはウェイクボードなどさまざまな競技で活躍をしていますが、怪我のきっかけとなったのはトランポリンでした。練習中の事故で、左足がヒザから反対に折れ返されるほどの大怪我だったといいます。

トランポリンは台の反発を利用して跳び上がり、空中で回転などをして競います。空中の派手な回転に目を奪われますが、キモとなるのはいかに台を正確に強く蹴って跳び出せるかというところです。強く真っ直ぐに荷重をかけて台をたわませ、反発した台が一番大きく跳ね返ってくる瞬間に台を蹴って再び跳び出す。上下動と、一瞬のタイミング。パワーではなく感覚の勝負なのだそうです。

緑夢さんの大きな強みであるパンピングに、トランポリンで培われた感覚が活きているのではないか。ウェーブのたびにグングン加速する緑夢さんの強さを見ていると、ほかの選手とは別種の何かを持っているように思えてならない、それがトランポリンの感覚だったりするのかなと思うのです。

幼い頃、兄・姉と一緒に取り組んだスノーボードという競技で、身につけたトランポリンの感覚が活かされているとしたら、それは「人生」だなと思います。全部がつながっていて、ひとつも無駄なものはない。とあるタイミングでは「兄と姉」とのつながりでイヤな思いをしたかもしれませんし、「トランポリン」によって夢を絶たれたような気になる瞬間もあったかもしれない。

しかし、全部がつながって今がある。

全部がつながった今しか存在しない。

いろいろなことがタイミングによって意味合いを変えながら、すべてつながって今になる。そんなことを教えてもらったような気がします。

緑夢さんは多芸多才を発揮して、2020年は走り高跳びでのパラリンピック出場を目指すようですが、そこにもまたこれまでとこれからの日々がつながっていくのでしょう。東京での楽しみがまたひとつ増えました。そして、今は沈黙を守っているお姉さんも、立派な姉としてその舞台に立ち合えるような、そんなタイミングになるといいのになぁと、僕はしみじみと思うのです。

↓YouTuber活動がどっちに転がっていくか、そのハラハラ感も楽しみながら2020年に向かおう!



<やったらアカンけど攻めちゃいそうリスト>

「ドーピング検査の裏側全部見せます!」
「これからスタート!直前までLIVE!」
「1本目滑ります!レース中もLIVE!」
「これから怒られるみたいなので記録を兼ねてLIVE…」
「メッキかな?メダルを半分に切ってみた」
「ふりーめだる!触って、舐めて、揉んでみて!」
「メダルっていくらで売れるの?試しに売ってきた」
「総額???万円!メダルを売ったお金で焼肉へGO!」
「悲報 焼肉屋のメニュー全部食べるまで帰れまテン」
「緊急LIVE!ゲストと一緒に焼肉!誰かすぐキテ食べ切れない」
「今だから言える!兄とトリノ五輪マジ観戦&マジ説教」
「兄が突然曲を作ってきたので何故か僕が歌います」
「姉」

YouTubeは攻めなくていいと思う!

緑夢さんも可燃性の素質はあるはずだから!

世間の心はめっちゃ狭いので、今はとにかく穏便に!



お兄ちゃんプロデュースでお姉ちゃんが唄う応援歌とか作ってみない?

日本勢待望の金!大会のヒロインとなった村岡桃佳さんが、今大会そして2022年へと楽しさをつないでくれた件。

12:00
今大会日本勢初の金!金銀銅コンプリート!

熱戦つづく平昌パラリンピック、日本のヒロインが待望の金メダル獲得です。若干21歳で日本選手団の旗手もつとめた女子大生パラリンピアン・村岡桃佳さん。「ももか」という響きに個人的にも「おっ」と前のめりになってしまう注目株は、すでに獲得していた銀・銅・銅の3個にくわえて、14日のアルペンスキー女子大回転・座位で金メダルを獲得。今大会日本勢初、冬季の日本選手として史上最年少、さらに金銀銅コンプリートという、メモリアル尽くしの金となりました。




前回ソチ大会でも5位入賞をはたした得意の種目。今大会アルペンスキーの5種目に出場する村岡さんですが、最後に残る回転の種目はそのなかでは苦手な部類ということで、金を狙って獲るならこの種目が最後のチャンスという一戦でした。

2本の試技を行ない、その合計タイムで勝負を決するアルペンスキー。タイムは純粋にスタート地点からゴール地点までの移動時間ではなく、それぞれの身体の不自由さによって係数が掛けられるという仕組みです。村岡さんは2番目に不自由さが大きいLW10-2クラスで、実際の移動時間に対して81%ほどの数値が勝負タイムとなる扱いです。

とは言え、競技を見るにおいてそこに面倒臭さなどはありません。画面表示の時点で、計算済みのタイムが表示され、その時計を見ているぶんには「リアルタイムの80%くらいのゆっくりさで時計が進んでいる」ことは案外気づかないものです。単に、座った姿勢で斜面を滑走する何らかのスポーツを見ているだけという感覚。マイナースポーツを見るときの「へー、こんな種目もあるんだな」という物珍しさ以外には何の違いもありません。

1本目、村岡さんはライン取りを丁寧に行なう滑り。どの種目でもそうですが、ラインを外れて膨らんだりすればタイムはグッと遅くなるもの。スピードの維持とスムーズなターンをいいバランスでこなしていきます。2位の選手に1秒40の差をつける滑りは、ワンミスでひっくり返るけれど、ノーミスならひっくり返らない差。「勝てそう」の気持ちのバランスを2本目でも上手く保てるか。緊張感も高まります。

決勝は1本目の結果の逆順で滑るということで、村岡さんは最終滑走となります。滑降・スーパー大回転で金、スーパー複合で銀と女子のアルペンスキー座位での「女王」といった存在のシャッフェルフーバーはタイムを伸ばせずかなり離れた順位に留まっています。技術系種目得意のクラウディア・レシュは2本目1分13秒47のタイム。1本目で2位につけたファンイムペレンも1分14秒台での滑り。村岡さんの1本目のタイム1分13秒47近辺をもう一度記録すれば、余裕を持ってトップに立てるという展開です。

できることをやればそのまま勝てる、今日勝たなくていつ勝つんだというチャンスがめぐってきました。中継の都合で試技途中からの映像となった村岡さんは、中間タイムですでに2秒以上リードするという素晴らしい滑り。1本目の自身のタイムをさらに上回る1分13秒06での滑りは、まさにウィニングランという圧勝でした!

↓1本目のリードと関係なく、2本目も攻めて、タイムを上げて勝ち取った!



銀・銅・銅ときたら金しかないからね!

もーもか!もーもか!もーもか!も・も・か!

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「自分らしく攻めて金メダルを獲るか、コケてサヨナラするか」という気持ちで臨んだという村岡さん。チカラを出し切ることができるイイ攻めの姿勢を保てたのは、自分で獲った銀・銅・銅の3つのメダルがあればこそ。自分のメダルが自分の後押しになるという好循環。旗手という責任を背負っての大活躍は、魔物にも自分にも打ち勝ってチカラを出せる「本物」ならではの快挙だったと思います。

↓これまでは笑顔・笑顔・笑顔だった村岡さんも金にはこの涙!

なお、泣いたのは立位の種目の代表の本堂杏実選手が泣きながら駆け寄ってきたので「もらい泣き」したとのこと!

本堂さん、「お前が先に泣くんかい!」のイイ仕事!


「パラリンピックをどう見るべきか」という課題、たくさんの人がその距離感を探っていることと思います。ただ、いろいろと見ていくと、距離を探る必要はないんだなと思います。世界の頂点をかけた真剣勝負の舞台には、「かわいそう」とか「大変ですね」なんて気持ちを持ち込むのは失礼だし無意味なのかなと思うのです。

もちろん大変なこともあったり、不自由も多いのでしょうが、それを超えた先にある頂上決戦に途中経過の大変さばかりを持ち込むのは失礼だと思うのです。サッカーのワールドカップに出る選手に「えー、毎試合10キロも走るんですかぁ!?大変ですね…」とか言わないわけじゃないですか。陸上の棒高跳びの選手に「その棒を運ぶの大変ですね…」「飛行機にどうやって乗せるんですか…バリアフリー社会は遠い…」「え、ひとり5本くらい持ってるんですか!?悲報!」なんて言わないわけじゃないですか。勝った負けた、やったやられた、試合は試合としてそれ以外のことは持ち込まなくていいと思うのです。

オリンピックとの違いは「階級」の差だけです。この階級はこういうルールでやる、この階級はこういうルールでやる、その違いだけ。ボクシングの重量級選手と軽量級選手がそれぞれに尊敬されるように、どの階級の勝者も同じ敬意で迎えられるようでありたい。もちろん人気によって、もらえるお金や得られる声援に差がつくことはあるでしょうが、「何かで世界一になった人」という同じ基準で受け止めたいもの。

だから、大変さや不自由さを理由にことさらに持ち上げることも必要もなく、とんでもない凡ミスがあったときにニヤニヤする気持ちを隠す必要もなく、同じでいい。そのなかで個人として「カワイイな」とか「ご近所さんだな」とか興味が出てきたら、そこからはまたもう一段深い「推し」という気持ちで見守ればいい。「推し」は階級の差や人気の差を超える強い気持ちです。そして、「推し」は「知る」ことからしか生まれない偶発的な気持ちです。

「どう見るか」なんて考えるのではなく、ただ見ればいいのです。まったく興味がない、映画を見たい、遊びに行きたい、そういう人に無理に薦めようとは思いませんが、オリンピックで盛り上がって日本人が世界一をかけて戦う模様に熱くなった人なら、余計なこと考えずにダラダラ見ればいいのにと思います。そういうのが好きなら楽しめるし、「推し」も見つかるはずです。

2020年、東京にも五輪とパラリンピックがやってきます。一生に一度の体験という人も多いでしょう。「推し」を持ってその日を迎えるのと、それをキッカケとして「知る」段階が始まるのとでは、得られる喜びは天地も違うでしょう。平昌パラリンピックは残り4日間というところですが、そこで一歩を踏み出すことが、東京をめいっぱい楽しむための大きな一歩かなと思います。

「一緒やん」

その気持ちがあれば、倍の期間楽しめる。

今その気持ちを仕込んでおけば2020年が倍楽しくなり、2022年も倍楽しくなる。たとえば今大会のヒロインを見たうえでの2022年とか普通にワクワクするじゃないですか。「前回のあの娘が」ってのは前のめりになるイイ理由でしょう。イイ機会でしょう。

仕込みの差が未来を変える、今はそのグッドタイミングだと僕は思うのです。難しいこと考えず、楽しみましょう!



最終日には村岡さんがもう1回登場!思い出を仕込んで2022年へ!

あの今井メロさん・成田童夢さんの弟・成田緑夢さんが、「挑戦を止めない」精神で成田家悲願のメダル獲得の巻。

12:00
メロにもきっとこのチカラはある!

パラリンピックに誕生したニュースター、成田緑夢。この名前がついに華やかな表舞台に掲げられたことに、僕も何だか感無量です。しかも、ネットニュースの類ではなく、ニュース速報で銅メダル獲得を報じられての颯爽登場だなんて。

緑夢と書いてグリムと読む。この読み方を知ったのはもう10年以上も前のこと。「成田夢露の弟」としてでした。まだ炎上という言葉も浸透していなかった時代に「大火」と言うべき大炎上を起こし、悪い意味で日本の話題をかっさらっていったあの兄妹。成田童夢、今井メロ(※今井は母方の姓/メロは気分でカタカナに)。そして、その弟である成田緑夢。スポーツ三きょうだいとして知られた一家の末弟が緑夢さんでした。

「成田家の最終兵器」として、一番の才能の持ち主であるとささやかれていた緑夢さん。2013年にはフリースタイルスキー・ハーフパイプで世界選手権9位・世界ジュニア優勝とするなど、ソチ五輪出場を目指して順調な歩みをつづけていました。スノーボード・ハーフパイプやウェイクボード、トランポリンでも全国クラスの成績を残す天才ぶりは、まさしく最終兵器というスケール感でした。

しかし、緑夢さんはソチには出場しませんでした。世界ジュニア制覇から間もなくのこと、トランポリン練習中に左足のヒザ下がマヒする大怪我を負ってしまったのです。なるほど、そうきたか。アスリートに怪我はつきものではありますが、メロさんや童夢さんが五輪に出て緑夢さんは道を絶たれるのかと、他人事ながら痛ましい気持ちにもなったものです。

↓しかし、意外なほど本人は明るかった…!

ソチの1年前に「最悪切断」という危機を迎え、そこからまだソチを目指すという立ち直りの早さ!

夢は終わらない!



そこからパラスノーボード、パラ陸上へと活躍の場を移し、2016年・2017年と全国障がい者選手権大会のスノーボードクロスの競技で優勝。日本代表としても戦績を残し、メダル候補として緑夢さんは平昌パラリンピックに乗り込んできました。まさに紆余曲折を経ての夢舞台。「メロに耐えてよく頑張った!感動した!」と滑る前から抱きしめたいような気持ちです。

男子スノーボードクロスLL2クラス(片足または両足に不自由アリ)に出場する緑夢さんは、まず予選を1位のタイムで通過します。スタート、そして序盤のセクションでの加速が素晴らしく、1、2、3、4、5、6、7、8とビッグな起伏をチェックして乗り越えるたびに、ガンガンズンズングイグイスピードが上昇していきます。先行逃げ切りが持ち味です。

しかし、この勢いでつづけざまに行なわれるはずであった競技は長い中断に入ります。どうやらスタートゲートが故障し、上手く作動しない模様。ULクラス(腕に不自由アリ)の決勝トーナメントでは、一度滑ったレースを巻き戻してやり直すようなことまで。最終的には係員がゴム紐を持って、その紐を離したらスタートというアナログな解決法にいたります。

↓バリアフリーというか新しいバリア登場!


出た、「ハードルを乗り越えていけ」の精神!

もしも視覚に難ある競技者がいたら「パッチン」の音でスタートしろということか!


↓なお、国際パラリンピック委員会は「競技には影響がなかった」とのコメント!

「あー、壊れてました?」
「五輪のときは大丈夫だったんですけどねぇ?」
「いつ壊れたんでしょうねぇ?」


予定から大幅に遅れて始まった決勝トーナメント1回戦は、スタート直後に大きくリードして逃げ切った緑夢さん。準々決勝もスタートで大きくリードすると、レース終盤には対戦相手の転倒もあって余裕の勝ち抜け。順調に準決勝進出を決めます。夢に描いたショータイムまであと一歩。もはやでっかい理想…メダルも夢ではありません。

そして迎えた準決勝、スタート前に深呼吸して臨む緑夢さんはスノーボードクロスでmaking making dreamに挑みます。跳ね上がり、舞い上がり、ボードを魔法のじゅうたんのように乗りこなし、フロントサイド、バックサイドでかっとばしていきます。スタートからリードを奪うと、ソチの銅メダリストである対戦相手を大きく引き離して中盤まで。

ただ、ここで足の不自由というか、ヒザ下のマヒによってかかと側に体重をかけるターンが苦手という面が出てしまいました。カーブの途中で緑夢さんは転倒してしまい、準決勝は敗退となります。転びさえしなければ勝ち、というリードがあっただけに悔しいレースでした。

さぁ、それでもメダルへの挑戦はまだ終わりません。「コケてもそこで終わらずに頑張る」はメロさんがトリノで残した課題でもあり、逆にパラアスリートにとっては強みでもある部分です。緑夢さんは次の戦場・3位決定戦へと燃えた瞳で挑みます。鍛えた特上の技で、夢に向かってフルパワーです!

↓迎えた決勝戦、緑夢さんはスタートで相手をおさえ込むと、相手のコースアウトもあって銅メダル獲得!


あの頃夢見描いた世界が、今この手の中に!

夢・感動・ファンタジー!My dream平昌パラリンピック!



敗れたレース後には「ナイスラン!」と相手を讃え、勝ったレース後には「常に挑戦は止めない」ことが目標であったと語った緑夢さん。その爽やかな笑顔と話し方を見ながら、僕はお姉さんのメロさんのことを思っていました。トリノでつらく当たってしまった申し訳なさと、それにしてももう少し頑張りようがあっただろうという不満足と、きっとあのときに足りなかったものは「常に挑戦は止めない」という気持ちだったんだろうなという納得とを感じながら。

メロさんのアレから12年を経て、出し切らずに終わったトリノのモヤモヤがようやく払拭されたような気持ちになりました。メロさんは母としてスノーボーダーとして女優として新たな道で頑張っており、成田家にはようやくひとつメダルが渡った。ぜひメロさんにも、もとはひとつのきょうだいとして誇ってもらいたいもの。オリンピアン、オリンピアン、パラリンピアンメダリストという美しいトリオが完成したのは、あの日メロさんがそこにいたからこそ。どれだけ紆余曲折があっても、メロさんがオリンピアンであることに変わりはないのです。やっぱりすごいことなのです。久々にオリンピアンとしての今井メロを掘り起こしてくれた緑夢さんに負けないよう、メロさんも新しい挑戦で、「成田緑夢の姉が何と!」ともうひと波乱見せつけてほしい。夢も挑戦も終わらない。人生はまだまだこれからです!


むしろコケたところがスタートラインとなる、そんな気持ちで!

「メガネ先輩登場にネット歓喜」と評された平昌パラリンピック開会式の聖火リレーがヒドかったのでネットで憤りますの巻。

07:00
2020年に向けて気をつけていきましょう!

新たな熱戦の舞台、平昌パラリンピックが開幕しました。9日の開会式に始まり10日間に渡る祭典は、次の2020年を控える東京のひとりとして、楽しみでもあり、貴重な学びの機会でもあります。よき前例を吸収し、自分たちがホストとなるその日に備えていきたいもの。

しかし、この開会式を見守りながら、僕は「まだまだだなぁ」と強く反省していました。恥ずかしいような気持ちにもなりました。もっと早く気づくことができたし、もっと早く気づかなければいけなかった問題点を、僕は約1ヶ月以上にも渡り、まったく意識すらしないままこの日を迎えていたからです。

開会式の最大の見せ場である聖火点灯。率直に言って、平昌パラリンピックのそれは近年まれに見るヒドさだったと思います。何故ヒドいのかという話はあとでやるとして、「ヒドくなるであろう」ということを僕は1ヶ月も気づかないでいました。当然気づいていなければいけなかったのに、です。

平昌五輪の開会式を見た人ならばご記憶でしょうが、今大会の聖火台はスタジアムに設けられた長い長い坂道の上にあります。五輪の開会式では、その坂道に設置された階段をのぼり、てっぺんで待つキム・ヨナさんに聖火が託されました。僕はあの階段を「長くて急だなぁ」と思いながらのんきに見守っていたのです。

あのとき僕は「長くて急だなぁ」ではなく、「歩行に不自由がある人のことを何も考えていない最低のデザインだ」と思っていなければいけなかったのです。そして、あの坂道を足の不自由さでのぼれない人はどうするのか、目の不自由さでのぼれない人はどうするのかという解決策に想いをめぐらし、「どこにエレベーターがあるんだ?」と秘密の入り口を探していなければいけなかった。

同じスタジアムでパラリンピックをやることはわかっていたのです。あれだけ長い坂道を見て、「キム・ヨナ落ちたら下まで転がるな」と思っていたのに、1か月後にそこをのぼるパラリンピアンのことを何ひとつ想像していませんでした。胃がキューッと縮まるような恥ずかしさでいっぱいです。

↓「この坂道のぼるの大変そうだなぁ」は自分基準でしか物事が見えていない感想でした!

なるべく誰もが、なるべく自分のチカラで、なるべく何でもできるような世の中にしたい!

そういう気持ちを僕は欠いていた!


本来なら1ヶ月前に五輪の開会式を見ながら気づかなければいけなかったことを、僕はパラリンピックの開会式で聖火が入場してきてからようやく気づきました。「はて、どうやってあの坂をのぼるんだ?」と。そして、その答えは到底容認できないようなものでした。結果的にのぼることはのぼったので、表面上は何の滞りもありませんでしたが、平昌のプランはパラリンピックの精神とは遠く遠くにあるものだったと僕は思います。これは東京の人間として、他人事ではいられないぞと震えるほどに。

↓平昌パラリンピックの聖火点灯を見ながら、東京のことを考えていきましょう!


この問題点だらけの聖火点灯を繰り返してはいけない!

よくもこんなにヒドいことになったものです!



平昌パラリンピックの聖火は、韓国と北朝鮮のパラリンピアンが1本のトーチを掲げる形で入場してきました。韓国のキム・ジョンヒョン選手はクロスカントリースキーの視覚に不自由のあるクラスの選手です。そして、北朝鮮のマ・ユチョル選手はクロスカントリースキー座位の選手、つまり足が不自由なクラスの選手です。

彼らはそのトーチを次に受け持つクロスカントリースキーのソ・ボラミ選手のコーチに渡します。コーチはソ選手の車イスに取り付けられたポールにトーチをさすと、ソ選手とともに次の走者のもとへと向かいます。

次の走者はパク・ジフンさん、パク・ウンチョンさんの親子です。親子でトライアスロンをされているとのこと。子どものウンチョンさんは難病を患っており、このリレーも車イスで行ないます。お父さんのジフンさんは、ソ選手のコーチからトーチを受け取ると、ウンチョンさんの乗る車イスのポールにトーチをセット。ウンチョンさんの乗る車イスをジフンさんが押して、次の走者のもとへ向かいます。

次の走者はアルペンスキー視覚に不自由のあるクラスのヤン・ジェリム選手。前走者のジフンさんはトーチを車イスから外すと、それをヤン選手のガイドであるウンソリさんが持つトーチに近づけ、火を移します。ヤン選手とウンソリさんはトーチを一緒に掲げ、例の坂道にある階段をのぼって次の走者のもとへと向かいます。

坂道の中腹で待っていたのはアイスホッケーのハン・ミンス選手。ウンソリさんがハン選手が背負ったリュック状のものにトーチをさすと、ハン選手は腰から伸びたロープを頼りに、先ほどまであった階段が閉じられた坂道を、義足という不自由を抱えながらも力強くのぼっていきます。

そしてハン選手が坂道をのぼりきった先には、車イスカーリングのソ・スンソク選手と、五輪のカーリングで人気となったメガネ先輩ことキム・ウンジョン選手が待っていました。メガネ先輩はハン選手が背中にさしたトーチを受け取ると、それをソ選手とともに掲げ、最終点火を行ないました。

若干のトラブルがあったのか、最終点火はなかなか装置に燃え移りません。映像がロングの引きになると、花火に紛れていつの間にか聖火台に火が灯ります。ロングの映像なので不鮮明ではありますが、どうやら五輪の開会式で見た、棒が伸びていって聖火台まで火が進んでいく方式とはまったく違う装置であるもよう。



僕は、この聖火リレーはまったくもってヒドいと思います。多くの人が面白がったり喜んだりしているのに水を差すのは忍びないのですが、まず第一に何故メガネ先輩なのだと。そりゃあ韓国で大人気なのでしょうが、この大会の主役はパラリンピアンであり、パラリンピアンが火を灯すことに意味があるんじゃないんですかと。ソ・スンソク選手はどこにいったんですかと。

よくよく映像を見ると、火がつかないことに焦ったか、最後のほうはメガネ先輩がグッとトーチを装置に近づけているでしょう。そして、ソ選手は片手を離しているでしょう。これって「主役を奪う」行為なんじゃないですか。いろんな記事でメガネ先輩メガネ先輩ネット歓喜ネット歓喜とわいていますが、そうなってしまうような演出はパラリンピックとして一番大事なものを取り違えていると僕は思います。

パラリンピアンがこの大会の主役であり、彼らの活躍を見守ることが醍醐味であるのに、「メガネ先輩が点火しました」って書かれるような演出は本末転倒じゃないですか。「五輪とパラリンピックがひとつの大会に統一される」というのは僕の希望でもありますし、そういう演出だと言えばそうなのでしょうが、ならばまずそれは五輪の開会式でやるべきでしょう。五輪とパラリンピックがひとつの大会に統一され、複数の選手によって最終点火がなされたときに人気選手だけが目立ってしまったということなら仕方ないですが、少なくとも今は違う。今はまだメガネ先輩を主役にする大会ではないのです。

そして、もっと受け入れがたいのが、この開会式におけるリレーにおいて、ただの一回も「パラリンピアンからパラリンピアンに受け渡されたリレー」がナイことです。先ほどの状況をつづったテキストではあえてそこに触れずに書いているのですが、この開会式でのリレーは「パラリンピアン⇒コーチ」「コーチ⇒お父さん」「お父さん⇒ガイド」「ガイド⇒パラリンピアン」「パラリンピアン⇒メガネ先輩」とつながっています。

ガイドやコーチの横にいるパラリンピアンとはいったい何なんだと。何で横からガイドやコーチが出てきてトーチを受け取るのかと。「共生」がテーマだそうですが、共生とお節介は別物でしょう。多少身体に不自由があったとしても、人間としての尊厳は誰しもが持つものだし、自分でできることを自分のチカラでやる自由があるはずです。できないことをサポートする必要はあるでしょうが、できることを奪うのはまったくもって筋が違う。僕があの場にいるリレー走者であったなら、そのトーチは自分が受け取り、自分の手で次の走者に渡したい。それが当たり前の気持ちでしょう。悔しいでしょう。無念でしょう。できることを奪われるなんて。

いろいろな不自由を乗り越えて、可能な限り「自分のチカラで、自分の思うように生きられる」社会へと近づいていってこそ未来が明るくなるんじゃないのかと。ましてや、リレー走者としてそこにいるパラリンピアンは、不可能に思えるようなことも可能にする超人でしょう。僕なんかよりよっぽどスキーが上手いし、よっぽどチカラがあるし、よっぽど勇敢です。何故、パラリンピアンが自分ひとりのチカラでトーチを運ぶことすらさせないような演出をしてしまうのか。それは共生なんかじゃない。演出が失敗しないように保険をかけてるだけじゃないですか。

そのくせ、ハン・ミンス選手が坂道のラストをのぼるときには、さっきまであった階段を引っ込めてロープで山登りをさせるんですよ。こんなのタダの嫌がらせでしょう。階段があるなら使えばいいんです。「ロープを使ってのぼれるんです、スゴイでしょう!」なんてのは、今そこでしなくてもいい苦労をさせているだけじゃないですか。そういう無意味な苦労をどんどん排除して、不自由があっても暮らしやすい世の中を実現してこそ意味があるのに。

最終点火の装置だって、何故五輪の開会式でキム・ヨナがつけたのと無駄に仕組みが違うのか。キム・ヨナはさらに一段高いところにのぼってから点火していたので、そこまでいかないと同じ装置が使えなかったのでしょうか。だとしたら、根本的な設計がオカシイ。パラリンピアンも使うとわかっている装置なら、パラリンピアンでも使えるモノにしないとオカシイ。あのバルセロナの「火矢で聖火台に灯す風の演出」でさえ、アーチェリーのパラリンピアンがやったことだというのに!とにかくオカシイことだらけで、僕は納得がいきません!

リオパラリンピックの開会式を見てみてください。

そこで展開された聖火リレーを見てみてください。

まったく違う。根本からまったく違う。

リオパラリンピックの聖火は、右手首から先に不自由を抱えているパラリンピアンによって入場してきます。左手で持てばいいだけなので、もちろん何の困ったこともありません。トーチは次走者である脳性まひという不自由を抱えたパラリンピアンのマルサルさんに渡されます。マルサルさんは杖を支えに一歩ずつ歩みを進めていきます。腕のチカラに対してトーチが重いのか、トーチはときおり大きく揺れます。

そして、マルサルさんは聖火リレーの途中でトーチを取り落とし転倒します。すぐさま駆けつけた係員は、マルサルさんが立ち上がるのを助けると、落としたトーチを手渡します。マルサルさんは再び歩みを進め、数メートルの距離で係員はそれを見守ります。

次走者は視覚に不自由を抱えたパラリンピアンですが、マルサルさんは次走者の手にしっかりとトーチを差し伸べ、傍らにいたガイドはヒジを支えて確実にトーチをつかめるようにサポートします。ガイドが受け取って渡すのではなく、パラリンピアンが受け取る、その主体のありよう。ひとつのチーム、同格のパートナーであっても、やるのはパラリンピアンなのです。いざ走り出す段では、もちろん手をつないで伴走をしますが。

そして、聖火は最後の走者へ。ガイドがヒジを支えてトーチとトーチが接するように導くと、最終走者のパラリンピアン、シルバさんのトーチに炎はしっかりと燃え移ります。シルバさんは脳性まひという不自由を抱えながらも、車イスを自分で操縦し、自分でトーチをポールにさします。

そして向かった聖火台。しかし、目の前には階段です。これは車イスではのぼれそうにない。サポートが必要だ。そう思ったとき、階段は形を変形させ、階段でありつつもスロープも備えるような形状になります。「あぁ、これなら階段としても使えるし、車イスの人でも自分自身でのぼれる」と納得できるアイディアデザインです。

シルバさんはスロープを利用して上段にのぼると、再びトーチをポールから抜き、五輪の開会式で使用されたのと同じ装置に点火します。五輪と同じように聖火が灯ります。ずっと雨が降っているという恵まれない気候のなかではありましたが、素晴らしい笑顔が美しい聖火に照らされていました。

↓危ない場面も確かにあるけれど、それも含めてチャレンジできるのが人生!(※聖火リレーは3時間42分頃から)


できることは自分でやりたい!

できないことを減らしたい!

できるかどうかわからないならチャレンジしたい!

困ったときは助けてほしい!



「自分がやりたいことを、自分のチカラでできる」というのは本当に素晴らしいことです。もちろん何もかもをできるなんてことはありません。でもなるべくやりたい。なるべくやれるように知恵を絞りたい。助けるのは最小限で済むように。最大限に自分のチカラを活かせるように。それが人間の英知なんじゃないんでしょうか。

今回の平昌パラリンピックの聖火リレーは、その英知を真っ向から否定するようなものだったと思います。体裁は整っていたし、盛り上がったのかもしれないけれど、パラリンピアンができたはずのことをこれっぽっちもやらせていない。共生の名のもとに、演出が失敗しないような保険をかけまくっている。そして、無意味なロープ山登りは組み込んでいる。ロープ山登りが必要なのは、本物の山に挑むときだけです!

平昌側で考えたのか、IPCがこうせよと押し付けたのか、本当の事情というのは当然わかるはずもないのですが、とにかく東京では絶対に真似してほしくないような聖火リレーでした。パラリンピックがパラリンピックとしてある限りにおいては、パラリンピアンが最高に輝く大会であってほしい。2020年を控える者として、僕はそう思います。心から!


こういうのを「反面教師」って言うんだな、と思いました!
sports






































婦人公論 2017年 12/27、1/6 合併特大号

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