スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム

ミラノ・コルティナ五輪

ミラノ・コルティナ五輪パラリンピック応援感謝パレードに参加して感謝と応援を届けたら、りくりゅうペアから返礼のリフトをいただいた件。

12:00
感謝と労いのパレード!

25日、東京日本橋で行なわれたミラノ・コルティナ2026冬季五輪・パラリンピックの日本代表選手団による応援感謝パレードに行ってまいりました。告知も控えめ、時期も冬から春に変わったあとのゆっくり開催というところもあってほどよい感じのにぎわいのなか、目の前を過ぎ行く選手たちに感謝と労いを届ける素敵な機会を得られました。目の前でりくりゅうの応援感謝リフトも見られましたしね!

↓パレードの模様は動画でまとめてあるのでご覧ください!




極めて朝に弱い僕がのっそりと起き出した午前8時過ぎ。すでに日本橋界隈には多くの人が繰り出していました。発表によれば約5万人が日本橋中央通りに集まったとのこと。これがオリパラ終了直後の熱狂のなかで大々的な告知でも行なえば、かつての銀座パレードのように数十万人の人出ともなるのでしょうが、規模が大きいといろいろ大変なことも増えるでしょうし、このくらいがほどよい感じなのかなと思います。

大きな流れとしては日本橋中央通りの約700メートルを選手たちが練り歩き、行って帰っての1往復をするというもの。出発式が行なわれるコレド室町のイベント広場には招待客のみが入れるということで、一般のファンはそれぞれ思い思いの沿道から選手たちに感謝と労いを届けることになります。

イベントコース上には若干の高さがある台が設置されていたり、大型モニターで出発式の模様を流してくれたりといった計らいもありますが、まぁ基本的には目の前の選手を見る感じになりそう。ですので、できれば沿道の最前列に入りたかったところですが、朝が弱いためにそれは叶わなかったので、数列後ろから人の頭と頭の隙間に手を伸ばし、記念撮影などに励むこととします。

↓やってまいりました日本橋!
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↓パレードに備えて交通規制なども行なっています!
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↓沿道の各所には中継用のモニターと選手が乗る台を設置!
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↓ファンには応援小旗を配布!両手に持つのがオススメということで2本いただきました!
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自分のポジションを見定めてパレードの始まりを待っていると、近くには応援団長の松岡修造さんがやってきて、何やら声がけの練習などしています。さらにコース上ではパレードに協力する各地の学校からの吹奏楽部の皆さんが待機し、演奏のリハーサルなどにも余念がありません。フェンスには係の方が張り付いて押し合いなどで倒れることがないようにガッチリと保持。上空には報道のヘリも飛んできて期待感が高まっていきます。

やがてイベント広場では出発式が始まった模様。大型モニターで一応の様子は見守れるのですが、音響の関係もあってつぶさには様子がわからず。何となく橋本聖子JOC会長らの挨拶を聞きつつ、選手を代表してコメントするモーグル・堀島行真さんらを見守ります。このあとのパレードでは選手たちが8つのグループに分かれて行進してくるとのこと。目の前を過ぎる選手たちをしっかり見守っていきたいものです。

↓何となく出発式の様子を遠くのモニターで眺めました!
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そして始まったパレード。すごく徹底されていたというわけではありませんでしたが、何となく選手は右側通行を意識しているようで、行きと帰りで両サイドの沿道にそれぞれ近づいてくれるようになっている感じ。ただ、誰かひとり声が大きい観衆がいたりしてそっちに気を引かれると、列全体が引っ張られる傾向はあり、そういう意味では位置取りによって若干の見えやすさの違いはありそうでした。

全員バスに乗ってパレードする形式だと沿道後方の位置取りでも確実に選手の様子を見られるぶん、間近で交流したりする機会もなくなってしまうので、その辺の巡り合わせも含めて一期一会のものとして楽しんでいくのがよさそう。そういう意味では、推し選手にドーンとアピールするようなウチワでも持っている人が近くにいると、寄ってきてくれるチャンスは上がるのかなと思いました。次の機会ではウチワ持ってくれる担当(※各種用意して次々に出す)でも誘って行けたらいいかもしれませんね。

第1グループには小林陵侑さんや睛沙羅さんを先頭に、丸山希さんや堀島行真さん、渡部暁斗さんらが参加。五輪で大活躍だったスキージャンプ二階堂蓮さんの参加はありませんでしたが、メダリスト大集合でとても華やかです。第2グループではノルディックスキーのパラリンピアンたちが先導するなか、本大会では表情も沈みがちだったカーリング女子のフォルティウスが笑顔いっぱいで行進しています。第3グループではパラリンピックのアルペンスキーで銀2個を獲得した村岡桃佳さんを先頭に、ショートトラックのオリンピアンたちが行進していきました。ショートトラック勢は最終選考会を現地で見守り、この日のパレードでもたまたまコチラにたくさん視線をくれたりと縁があるなと思いましよね。

↓たまたまですが視線をたくさんくれて、縁があるなと思いました!
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第4グループには戸塚優斗さんや村瀬心椛さんなど五輪で大活躍だったスノーボード勢が集結。次々に金メダリストが通過し、歓声も、メダルがぶつかるジャラジャラという音も、大変にぎやかでした。つづく第5グループでは個人としては歓声もジャラジャラも最大級の睫敞帆さんが登場。ともに今季で引退を決め、長くチームパシュートで日本を世界の頂点へと滑らせてきた佐藤綾乃さんともども、たくさんの「ありがとう」と「お疲れ様」を浴びていました。長い間、本当にありがとうございました!

第6グループでアイスホッケーのスマイルジャパンらが通過すると、パレードはいよいよ終盤へ。遠くのほうからひときわ大きなざわつきが近づいてくると、これまでのグループとは異なりゴツめの警備の方が沿道ににらみをきかせながら第7グループが近づいてきました。その先頭には、今大会でもっとも大きな盛り上がりを生み出したであろうフィギュアスケートのりくりゅうペアが。フィギュア勢はカップル競技とシングルとでグループが分かれていたので、感謝と労いもじっくりと二段階で届けられるのはよかったなと思います。

すると、たまたま偶然なのですが、折り返して戻ってきた別のグループが台上でコメントなどしていた関係で、りくりゅうペアらがいる第7グループが僕のいる場所の近くで少し待機することに。その待ち時間を活かして沿道のファンへ感謝を届けてくれたのでしょうか、何とここでりくりゅうペアとゆなすみペアがリフトを披露してくれたのです。まぁ、三浦璃来さんはしっかりスマホを持って記念撮影していたようなので、単に上から全貌を撮りたかったという話なのかもしれませんが、このパレードでもとびきりの名場面を近くで見られたのはとてもラッキーでした。あんまりいい位置取りができなかったなぁと思っていたのですが、結果的にはベスポジを取れていたようで、我ながら引きが強いなと思いましたよね!

↓すぐ近くでリフトの競演を見られました!
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そしてパレードは最後の第8グループへ。こちらにはフィギュアスケートの男女シングルの選手たちが集い、坂本花織さん・中井亜美さんらにとりわけ大きな歓声が飛んでいました。僕も佐藤駿さんに声掛けなどしてみたのですが、惜しくも届かず。最後方からパラリンピックのスノーボード男子バンクドスラロームで銀を獲得した小栗大地さんが通過するのを見送って、行きのパレードはこれで全員通過となりました。このあとは帰りの道のりを行く選手団を見守っていくことに。

帰りの道のりは基本的に選手たちは反対側の沿道を見て進んでいる感じで、なかなか視線が合う機会なども得られなかったのですが、それでも時折こちら側に視線をくれた際に記念撮影などさせていただきつつ、約1時間のパレードを見送りました。大本番の緊張から解き放たれ、ゆったりと感謝と労いを届けられてとても充実の時間となりました。またこういう素敵な時間を得られるように、選手たちの奮闘を見守っていけたらいいなと思います。

参加した選手団、パレードを盛り上げてくれた各方面の吹奏楽部の皆さん、運営関係者の皆さん、素敵な時間をありがとうございました。次回は道路に50センチくらいの高さの花道でも設置していただけると、車いすに乗ってパレードする選手にも後列の人からの感謝と労いが届きやすくていいんじゃないかと思いましたので、ご検討いただければと思います!

↓偶然たまたまという感じですが、スノーボード小野光希さんに半分くらい視線をいただきました!
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↓スノーボード戸塚優斗さんの誰か向けのファンサを近くで受け取りました!
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↓今年秋に愛知で開催するアジア大会の告知もありましたので、お伝えします!
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ミラノ・コルティナ五輪パラリンピックお疲れ様でした!ありがとうございます!

ミラノ・コルティナ五輪閉幕!日本勢の大大大活躍に加え、形式も文化も新たなスタンダードを生み出した転換点となる大会だった件。

12:30
ありがとうミラノ・コルティナ五輪!

17日間の熱い冬、ミラノ・コルティナ五輪の幕が下りました。五輪ともなればすべてが穏やかとはいかないのが世の現実ではありつつも、大きな事故、大きな問題などなく閉幕まで楽しく進んでこれたことを嬉しく思います。このあとにつづくパラリンピックも楽しくつつがなく進むことを祈ろうと思います。

今大会は初の広域開催となりましたが、現地はさておきテレビで見ているぶんにはひとつの都市での開催でないことは何の問題も違和感もなく、むしろこれまでは「札幌でやってますが東京五輪なので…」というどこかぎこちない感じであった各地域が、これは自分たちの五輪なんだと感じながらの運営となっているようで、新しいスタンダードになる大会だったなと思います。今までがウソをつき過ぎていた、が正しいかもしれませんが。

そんななか日本勢は大大大活躍でした。歴史上で獲得した総数の4分の1にも相当する多くのメダルを獲得。金メダル個数順で言えば10位とかになりますが、純粋なメダル獲得個数で言えば全体5位に相当する活躍ぶりで、毎日がお祭り騒ぎのような日々でした。スピードスケートで入賞なるかどうかくらいの滑りに少し無理のあるメダルの期待を寄せて、解説者の「いいですよー」の声に嘘でもつかれたような気持ちになるのが常であった冬の五輪はもう遠い過去です。

たくさんの喜びと讃え合う美しさを届けてくれたスノーボード、ときに悲壮感と向き合いながらあたたかい喜びを届けてくれたフィギュアスケート、睫敞帆さんという巨星が自分をさらけ出しながら燃えたスピードスケート、理不尽に打ち勝ったりまた敗れたりして悲喜こもごもだったスキージャンプ、次はあなたがキングをつとめるのだと早くも4年後への気持ちを高めてくれたフリースタイルスキー、今大会もたくさんの名場面を見守ることができました。

時間帯も深く、気力体力も年々衰えるなかで元気に楽しく大会期間をまっというできるだろうかと不安を覚えながらの開幕でしたが、選手たちが毎日届けてくれる元気と勇気を補充しながら駆け抜けることができました。ひとつだけの人生を燃やして灯した眩しい光、見させていただいてありがとうございます。また4年後へ向けて、お互いにひとつだけの人生を燃やしていきましょう。実り多い日々になることを祈ります。

↓競技のフィナーレを飾る男子アイスホッケー決勝は、アメリカが46年ぶりの金!大熱狂!



そして迎えた閉会式。何と今回の会場は、「ロミオとジュリエット」の舞台でもあるベローナの市街にある、古代ローマ時代の円形闘技場なのだとか。世界遺産でやる壮大な閉会式、うーむこれは東京も古墳とかでやってやったほうがよかったかもしれません。「円形闘技場で人間が競い合う姿を見たい」という人間の想いはずっと変わらない、ずっと人間ってそんなもの、そんな時の河を見るような気持ちです。




青白い光の柱があがる円形闘技場。屋根はまったくありませんが、天候にも恵まれたのは幸いでした。「Beauty in Action(躍動する美しさ)」をテーマにした閉会式は、オペラ「椿姫」の開演準備を模して始まります。映像ではイタリアの著名人が次々に登場して、それぞれの準備をする様子が描かれていきます。やがてその輪はオペラ「リゴレット」「アイーダ」「蝶々夫人」「セビリアの理髪師」に広がり、セビリアの理髪師が椿姫のヴィオレッタの装いを整える…夢のような光景が広がります。やがて円形闘技場で実際に始まるオペラ。各オペラの主人公が集い、火柱が上がると、「雨だったらどうしたんだろう?」と気になってきますが、そこは気合でいくんですかね。



オペラの主人公が闘技場の外に繰り出すと、そこにはこの出来事の本当の主人公である各国選手団の旗手たちが。選手たちもオペラの登場人物かのように世界に入り込み、行進していきます。闘技場内ではイタリアのさまざまな人々の表情を映しつつ、舞が披露され、主人公たちの入場を待ちます。各開催地域の人々が携えるイタリア国旗の入場。イタリアのメダリストたちの登場。イタリア国歌の斉唱。リレハンメル五輪クロスカントリーリレーチームが運ぶ聖火の到着。そして各国・地域の旗手の入場へ。

日本からはスピードスケートの森重航さんとフィギュアスケートの坂本花織さんが旗手をつとめます。ふたりでひと棹の国旗を持ち、何故か大笑いしながら振り回しています。開会式で旗手をつとめた森重さんも、団体戦からエキシビションまで活躍がつづいた坂本さんも、長い大会期間中本当に頑張ってくれました。楽しんでもらえているといいなと思います。旗手の入場後は、各選手団が一斉に入場してきました。閉会式は国・地域の隔てなく一斉になだれ込むのが恒例ですが、今回は集合場所から移動してきた流れなのか、何となく各選手団が固まって入場してきている感じも。日本選手団も何となく一団となって入ってきました。日本選手団で最大のバズを記録したりくりゅうペアは、三浦さんをリフトして高いところから記念撮影する大技も披露。フィギュアスケート各国ペア勢は便利な脚立を活用しているようです。

↓いつも楽しそうで素敵です!


↓今回も日本選手団はイタリア国旗を手にして入場!


↓りくりゅうペアはこの先1年間くらいリフトを持ち芸としてやらされてそうな予感!


何やらお土産などを受け取った選手団がスタンドに着席すると、大会の模様を集めた映像上映を挟んで再びステージイベントの時間に。クラシックバレエと現代的なダンスとが競演し、調和していく様子を、五輪での競技の様子になぞらえているようです。鏡張りのボックスやキラキラと光る山のオブジェは今大会の雪と氷を象徴するものでしょうか。幕間の映像ではメダリストたちの栄光の瞬間も映し出され、日本からもりくりゅうペアや木村葵来さん、堀島行真さんの姿が採用されていました。りくりゅうペアは日本だけでなくイタリア運営側からもとても感動的な名場面として認知されているようですね。幕間映像にレギュラー出演する勢いです。

その後は、クロスカントリー女子50キロクラシカルの表彰式、クロスカントリー男子50キロクラシカルの表彰式が行なわれ、今大会最大のスターのひとりでもあるノルウェーのクレボさんが大会を象徴するかのように登場。表彰台の中央で6個目の金メダルを受け取りました。ゾルジ坂をバカっ速で登ってみせたあのクレボステップは、世界にクロスカントリースキーへの興味を大いに広げたことでしょう。雪がない地域の子どもたちも真似するのかもしれませんね。

↓ピンバッジ集めてる人みたいな感じで金メダルをお持ち帰りです!


大会ボランティアの皆さんを讃えるイベント、新たにアスリート委員会メンバーに選出された委員たちの紹介、蝶々夫人をもとにしたステージイベント、「水」をテーマに踊るダンサーに囲まれての名曲「Il mondo」の歌唱、世界的バレエダンサーであるロベルト・ボッレさんの舞とつづくステージ。オリンピック賛歌の斉唱を経て、その後はいよいよ次回の開催地フランスのアルプス地方への引継ぎの儀式へと移っていきます。ミラノ・コルティナの各市長から返還されたオリンピック旗は、次の開催地フランス・アルプス地域へ。日本が強く望めばここに立っているのは札幌の関係者だったはずですが、強く望むほどではない民意でしたので、オリンピック・パラリンピックのためにも意欲あるフランスにお願いするのがよいでしょう。ぜひまた素晴らしい大会を作っていただきたいものです。





いよいよクライマックスを迎える閉会式。大会組織委員会ジョバンニ・マラゴさんのスピーチでは、大会の成功を誇りつつ各方面への感謝を述べ、このあとのパラリンピックへの決意を語りました。コベントリーIOC会長のスピーチでは大会運営の労をねぎらいつつ、「魔法のような大会をありがとうございました、イタリア」と讃えました。そして大会で生まれた歓喜の映像たちとともに、火が落とされていく聖火。その一部には喜び過ぎて転倒したフィギュアスケート団体戦での三浦璃来さんの姿も。もはやこれは大会を通じてのスターの一角となった、そんなことも言えるかもしれません。「りくりゅう」というよりは「Riku-Ryu」になったのかもしれませんね。同じ日本の者としても誇らしくなるような気持ちです。

その後は、祭りのあとを惜しむように盛大なダンスパーティーへ。選手たちもスタンドで立ち上がって身体を揺らし、宴はつづいていきました。選手たちの楽しむ姿は、見る者にとってもご褒美のような時間。たくさん楽しんで、また次の4年に向かってもらえればと思います。ミラノ・コルティナ五輪、ありがとうございました!

↓各地の聖火が消され、ミラノ・コルティナ五輪が閉幕しました!


↓美しくて爽やかな五輪でした!




さて、今大会はまた新しい潮流を感じるような大会でした。これまでもスケートボードやスノーボードなどのアーバンスポーツでよく見受けられた、勝者と敗者の区別なく挑戦する者への惜しみない称賛と、お互いへの敬意で満たされるような決着が、多くの競技で見受けられたように感じます。

インターネットやSNSの発展で、オールドメディアの国威発揚・勝つか負けるか的な紋切り型の報道の影響が低くなったり、かつては唯一無二の共同体であった国とか地域よりも大きな存在感で「界隈」的なものが心の大きな部分を占めるようになったことも影響しているのかなと思います。そこにいる選手や、そこにいる自分は、何国の何人ということ以上にともにその競技を愛する仲間・共同体であるという感覚。家族でやるトランプでことさらに勝ち誇ったり蹴落としたりしないのと同じで、今日は競い合いだとしても、日常のほとんどは仲間であり協力者として過ごしている者同士では、それが自然な姿なのかもしれません。

敗れた瞬間にまず勝者を讃える拍手を贈る姿。勝者が自分のこと以上にほかの人のメダルを喜ぶ姿。自分自身の報われなかった日々の痛みよりも、ほかの人の報われた日々への敬意と賛辞を笑顔で表明する姿。たくさんの人がそうした姿を讃え、その美しさを讃えていました。きっとこれからもっと、そうしたシーンは増えていくのでしょう。もしかしたら、それがひとつの規範となっていく未来もあるのかなと思います。

それが正しくて、望まれる未来なのかなと思いつつ、僕自身は少し息苦しくなる瞬間もありました。競技とは勝ち負けではなく自分への挑戦、ライバルとは敵ではなく自分を高めてくれる仲間、持論としても頭で考える理解としても僕もそう思っていますので、正しいし望ましいとは思うのですが、「とは言え」と思う人情もあるわけです。自分が勝ったあとなら他人を讃える余裕もあるかもしれませんが、自分が負けたあとでそれをできるほどの人間性はなかなか備わるものではないだろうと。本当は泣いて叫んで、壁でも蹴りながら道具やメダルを投げつけたいくらいの人だっているでしょう。よくない、よくないけれど、その人情は理解できる。けれど、なんだか、その人情すらも悪として否定されていきそうな、そんな気配を覚えるような瞬間もありました。

すべては民意が決めることなので、この先の未来の考え方はどうなっていくかわかりませんし、どうなったとしてもそれに合わせるほかないのですが、僕自身は海のような観衆でいたいなと思いました。仮に、僕に向かって悔しさと怒りと報われなさで大きな叫び声をあげられたとしても、そうだよな、と思って見ているような。メダルを投げつけられたとしても、大事にしな、とたしなめながらかけ直してあげるような。そんな心持ちでいたいなと思いました。なので、もし美しい世界のなかで息苦しさと報われなさを抱えたままの人がいるなら、海がいいんじゃないかなと思いました。海はバカヤローと叫んでも何も言い返してきませんし、SNSに引用リポストとかして点火してきたりもしませんし。まぁ、メダル投げつけたら返してくれないかもしれませんが。

そんな変わりゆく世界を見ていくのも、また楽しいことかなと思います。


すべてのアスリートに感謝!次はまたパラリンピックでお会いしましょう!

行った行ったの大逃げ!競馬民大荒れの展開となった男子マススタート決勝を受け、マススタート選手は全員競馬学校に行け!の巻。

07:00
マススタート選手は競馬学校に行け!(※阿部寛さんの声で)

いよいよ閉幕を迎えるミラノ・コルティナ五輪。最終日となる大会17日目は日本勢の登場はありませんので、各種団体種目の決勝を見守りつつ、閉会式を待とうと思います。日本としては冬季五輪通算でメダル100個の大台にも乗せ、そのうち4分の1が今大会ということで、なるほど楽しいわけだなと思いましたよね。トリノとかバンクーバーの頃とか明るい話題もあんまりなかったですもんね!そりゃ世間もイライラしますよね(回顧)!

そんななか大会16日目には日本勢が最後の奮闘を見せてくれました。フリースタイルスキー男子スキークロスでは古野慧さんが史上初の快挙となる決勝進出での4位としました。ウェーブセクション・緩斜面での素晴らしいスピードで次々に勝ち抜けていく古野さんの滑りには日本が「誰!?」と大興奮。我が家でも「賭けながら見たい!」という熱い声援があがりました。

そして、日本勢が最後のメダル獲得に挑んだスピードスケート男女マススタート。こちらは惜しくもメダル獲得・入賞とはなりませんでしたが、各選手が素晴らしいレース展開の読みを見せ、出場4選手中3選手が決勝進出ということで、非常に楽しませていただきました。ただ、男子の決勝、アレはいけません。金を賭けた本物の鉄火場でアレを見せられたら、オヤジたちが両手のストロングゼロを投げつけてもおかしくないレースです。穴候補側である日本勢としては「チャンスを逃した」という性質のレースでもあり、全員まとめて猛省いただきたいところです。




まずレースの前提の部分から。このレースはトラック16周の6400メートルで争います。一定数の周回(4・8・12周)ごとに着順上位にポイントが与えられるポイントレースですが、最終着順のポイントが大きいので、メダル争いという意味では1着・2着・3着がそのまま金銀銅になる仕組みです。

今大会の男子の場合、ひとり突出した注目度…いわゆる「人気」の選手がいました。500金・1000金・1500銀を獲ったアメリカのストルツさんです。残り3周とかの最後のスプリントになったら、この選手に勝つのは無理だろうという圧倒的な末脚の持ち主。そこをどう考えてレースを組み立てるかがジョッキーの見せ場となるわけです。

↓ストルツさんがめちゃ強い、が予想の大前提となります!


スピードスケートは時速50キロくらいのスピードを出しますので、空気の抵抗などを強く受けます。先頭に立てば空気抵抗をより大きく受けて疲労が増すので、できれば誰かの後ろについて風よけにしたいということを考えます。なので、「前にあんまり出たくない」という気持ちがひとつ全員にあるわけです。

そしてレース展開などを考えたとき、強い選手の後ろというのは非常にいいポジションになります。強い選手は勝手に遅くなったりしませんし(※前が壁にならない)、勝つタイミングでしっかり仕掛けてくれますので、強い選手の後ろについて一緒にあがっていけば、ラクに自然にいい着順に飛び込めます。何ならラクしてきたぶん最後にピュッとかわして勝ってもいい。競輪でいう「番手」のポジションですが、つまりは「ストルツさんの後ろにつけたい」が第一の発想としてあるのです。

ただ、レースというのはそれだけではありません。ストルツさんは短距離型・末脚タイプですので、ストルツさんも誰かの後ろにつきたいのです。誰かの後ろについてラクをしながら距離を消化し、最後に爆走してぶっちぎれば勝利は確実、そう考えるわけです。「ストルツさんの後ろにつきたい」と「自分も誰かの後ろにつきたい、先頭を引っ張りたくない」という相互の思惑が交錯したとき、お互いが譲り合って全体が超スローになることがあり得る。

そこを見越して、集団が遅いならこの隙にリードを築いて逃げ切ってしまおうという逃げ馬…じゃなくて人が出てきます。その逃げ勢が出ると、放っておいたら逃げ切られてしまいますので、追いかける馬…じゃなくて人が出てきます。これを競馬などでは「鈴をつけにいく」と言いまして、簡単には逃がさんよと誰かが逃げを捕まえにいったりするのです。

こうしたそれぞれの思惑への読みと、レースペースを体感で測りながら、今は追うべきなのか控えるべきなのかを判断して、ベストなレース展開を作るのが騎手の仕事なわけです。競馬で名騎手として知られる武豊さんやクリストフ・ルメールさんは、レース展開の洞察力と馬を操る技術が高く、「ここでここにいくべき」のときにビシッと馬をそこにいかせるのが非常に上手く、そのあたりが名騎手の名騎手たるところだったりするわけです。

で、今大会のジョッキー…じゃなくて選手の皆さん。

ビックリしましたよね、誰も鈴をつけにいかなくて。

まずレース序盤、ストルツさんが押し出されるように先頭に立ちます。ほかの選手はどうぞどうぞとばかりに誰も前に出ようとしません。ストルツさんは「誰か前に行けよ」と振り返りながら、ジョギングペースで滑り出します。その緩やかなペースの最中、オランダのベルフスマさんとデンマークのトープさんが3周目でポーンと飛び出しました。

マススタートでは中間ポイントというものがあり、4周目・8周目・12周目の着順上位にわずかなポイントが与えられます。3周目での飛び出しは、一般的に「4周目終了時点の中間ポイント狙い=入賞狙い」と想定されます。集団を離れて自力で走れば疲労も増しますので、中間ポイントを取ったら一度ペースを緩めて集団のなかで休憩するのが一般的。なので、ストルツさんはもちろん追いませんし、ストルツさんを警戒する他選手も当然追いません。

しかし、この飛び出したふたりは長距離型だったもので、「みんな追ってこないな」を察すると、そのまま逃げ切りへと舵を切り、快調なペースで飛ばしていきます。さらに、ここで集団のなかにいたオランダの同僚が動きました。みんなが嫌がる集団の先頭に立ち、「私が引っ張りますよ、みんなで前を追いましょう!」という顔をしながら、実は飛び出したベルフスマさんを逃がすためにペースを落としたのです。

後ろの集団はここで誰かが速やかに「鈴をつけにいく」べきだったのですが、かなり距離が空いてしまったことで、自分が跳び出して鈴をつけにいけば自分だけが潰れてしまって損をするという睨み合いの状況に。そういう場合は、みんなで先頭をかわりばんこにつとめながら全員で追っていけばいいものを、メダルを獲りたい、自分だけ損をするのはイヤだ、そんな思惑が交錯して集団のペースはあがらず、残り4周時点では「集団の最後尾が直線を出るときに、大逃げした先頭は直線の入口に差し掛かる」という4分の3周ほどの差がつく始末に。解説の睫攤敍瓩気鵝腹平昌金)からも「これは逃げ切れる差です」とアチャーな言葉が漏れ始めます。

大逃げの先頭集団は誰も鈴をつけにこなかったので余力も十分。ベルフスマさんは終盤さらにペースをあげてトープさんを引き離し、金確実という状況に。2番手のトープさんも余裕の銀確保という状態。ベルフスマさんは余裕たっぷりなので、最後の直線では観衆を煽りながら、ペースを緩めてガッツポーズ&拍手&流して入線しました。後ろの集団は最後のスプリントで銅メダル争いとなり、人気のストルツさんは直線伸びず、厩舎側から「距離ですね」というコメントでも出そうな滑りで4着となりました。

大逃げを許したうえに1番人気が連(※3着/メダルの意)にも絡まないという体たらくには、競馬界隈も騒然。「イングランディーレかよ」「クィーンスプマンテとテイエムプリキュアかよ」「ゴール前のガッツポーズは過怠金5万円だぞ」など、これが競馬場なら怒号飛び交う感じで盛大にズッコケることになりました。いやー、みんなが欲の皮を突っ張らすとこういうことがあるんですね!

↓オリンピックで大逃げ決めるというクs…ドラマティックレース!



↓大本命ブエナビスタ警戒で、2頭の大逃げを許したエリザベス女王杯と同じ感じになりました!


ま、このときはブエナビスタは猛然と追い込んで3着に入って責任を果たしたんですけどね!

3着にも入らないストルツさんの完成度が光ります!



振り返ってみれば、ベルフスマさんが逃げたときに一緒にいく誰かが必要でした。離れる前に誰かがついていけば、この展開にはならなかったはず。そして、できれば日本勢にいってほしかった。3人・4人となった集団が逃げていけば、さすがに後ろも追いつくまで追わないわけにいきませんし、もしそれでもまだ追ってこないようであれば逃げた集団だけでメダル争いができるチャンスでした。どの道最後のスプリントに賭けても苦しいわけで、イチかバチかならいってもよかったのではないかと思います。

そのあたりは選手としてもわかってはいたようですが、「まさか」という思いが拭えず動けなかった模様。蟻戸一永さんは「逃げる瞬間はわかってた、そこでチャンスを、後ろについていけなかった」「マススタートは展開を読めた人が勝てる」「自分自身チカラがないぶん、あそこで追うか迷った、チャンスをものにできない、覚悟がない」とわかっていたのに追えなかった自分自身を猛省していました。佐々木翔夢さんは「オリンピックは逃げが成立すると思ってなくて」「誰かしら追うだろうなという予想で滑ってしまった」とみすみす逃してしまったことを反省していました。

もし、日本勢があの逃げについていっていたら。あるいは先手を打ってアレをやっていたら。妄想のタラレバは広がりますが、そのときはそのときでまた展開も変わります。変わりつづける展開を読みながら「ここ」というときに動けてはじめて勝利も見えてくるというもの。逆に言えば、展開を操るチカラがあれば、滑りでは敵わなそうな相手でもやっつけることができるのがマススタートの面白さでもあります。日本には競馬も競輪もありますし、参考になる資料もたくさんありますので、ぜひ競馬学校にでも行きまして、レース展開について一層理解を深めていただくといいのではないかと思います。武豊さんやルメールさん並みに「展開」が読めていれば、大きなアドバンテージになりそうでしたので!

↓平昌の睫攤敍瓩気鵑離譟璽恒燭咾郎8てもお見事!


1周目で他選手を腕で押しのけながら優勝候補オランダのスハウテンさん(平昌銅、北京金)の後ろを確保!

そこから16周、中間ポイントには目もくれずひたすらスハウテンさんの番手に取りつく!

最後のコーナーでスハウテンさんが膨らんだところをイン急襲で差し!

ラストの直線は微妙にラインずらしてブロック!

レースがどうなるか最後まで読み切ったうえでの1周目の動きが見事!

この菜那さんも「解説のために競馬競輪を勉強した」そうなので、連盟主導で競馬やったほうがいいと思いました!

競馬をやればマススタートがもっと強くなると思います!



ま、競馬やり過ぎると「金を獲る」前に「金を失う」かもしれませんけど!

よく頑張った!日本史上最高のスピードスケート選手・睫敞帆さんが、一番望んだメダルには届かずも素晴らしい挑戦を終えた件。

12:56
よく頑張った!よく頑張ったよ!

いよいよ終盤戦を迎えたミラノ・コルティナ五輪。大会15日目、金メダルだけを狙って日本の睫敞帆さんがスピードスケート女子1500メートルのレースに臨みました。結果は6位。自分の真の種目と自認し、2019年に世界記録を樹立しいまだ破られていない1500メートルでの金は今大会もなりませんでした。10個のメダルを手にし、夏季冬季通じて日本女子選手史上最多となった美帆さんですが、一番欲しいメダルには届かなかった。

しかし、その表情はどこか穏やかでした。不満足を滲ませた1000メートルの銅とも、望外の結果に大喜びした500の銅とも違う、納得感のような表情。行く先々で涙を流し、この出来事を言葉にするのはまだ難しいと語りながらも、ここに至る過程やこの日の結果は納得のなかで受け入れているような表情に見えました。きっとこの挑戦は成功だったのでしょう。結果がこうだっただけで。よく挑み、よくやり遂げた。そんなレースだったのかなと思いました。



迎えた1500メートル決勝の日。スタンドにはオランダ勢にも負けない日本の大応援団が集いました。中継の解説席には姉の睫攤敍瓩気鵑皺辰錣蝓体制は万全です。日本が生んだ史上最高のスピードスケート選手が、一番欲しいメダルに挑む日。胸にはバンクーバーからつづく栄光の日々と、少しの失意と、たくさんの思い出が甦ります。地上波中継の幕間には、まったく同じような思い出を振り返りながら菜那さんがナレーションでその日々を反芻し、最後に「さぁ美帆、戦え。」と呼び掛ける映像も流れていたりします。もはやここまでくるとそれが若干の棒読みであるとかないとかは関係ありません。同じ気持ち、同じ祈りで待つだけです。





この種目、美帆さんへ追い風は吹いていました。今季のワールドカップにおいて美帆さんはこの種目を5戦1勝、2着2回としていましたが、直接対決も含めて残る4勝を挙げたオランダのヨーイ・ブウネさんが国内での代表争いで落選し、この種目には出場しないのです(※3000メートルとチームパシュートに出場し、チームパシュートでは日本に勝利)。リンクが違うので参考にはならないものの、今季も平地で1分53秒台の速いタイムをマークしてきた美帆さんは間違いなく優勝候補のひとりでした。本命と言ってもいい。

まず1組目、いきなり500メートル金、1000メートル銀のフェムケ・コクさんが登場しました。この大会の出来を見れば、1組目からいきなりメダルに飛び込んでも不思議はない強豪です。そして、タイプ的には前半型で、美帆さんのレース展開とも似た形になるはず。コクさんは最初の300メートルで24秒71の入りから、27秒69・29秒87とラップを重ね、ラストは32秒52のラップで1分54秒79のフィニッシュとしました。この落ち方を見ると、美帆さんも最後の粘りがカギとなりそうです。

日本から出場の堀川桃香さんは6組目、佐藤綾乃さんは9組目に登場しますが、タイムは伸ばせず。1組目登場のコクさんをかわす選手が出たのは、10組目で登場した3000メートル銅のバレリー・マルテさんになってようやくのこと。その後、13組目の3000メートル・5000メートルでメダルを獲ったノルウェーのビクルンドさんが1分54秒15でトップに出てきました。前半型よりは後半型のほうがいい流れでしょうか。

美帆さんのひとつ前の14組目では、1000メートル4位アメリカのブリタニー・ボウさんと、チームパシュートにも出場したオランダのデヨングさんが登場しますが、前半でリードしたボウさんが失速するところをラストでデヨングさんがかわしました。やはり後半型の流れか。この時点でトップにデヨングさん、2位にビクルンドさん、3位にマルテさんとなり、金メダルには1分54秒09以上が必要という状況です。

最終組、アウトレーンから美帆さんは滑り出します。最初の300メートルはここまでトップのデヨングさんを0.30秒上回る24秒96としました。その後のラップは27秒97、29秒67とし、残り1周の時点ではデヨングさんの仮想ラインを大きくリードしています。同じ前半型のラップを刻んだコクさんに対しての比較でも、700メートルから1100メートルにかけてのラップでは美帆さんが上回っており、残り1周時点で0.33秒のビハインドまで接近してきました。あとはラスト、ここからどれだけ粘っていけるのか。最後の1周の粘りがメダルを分けます。

解説席から菜那さんの「頑張れ!頑張れ!」の声が響くなか、美帆さんはバックストレートから最後のコーナーへとかかっていきます。しかし、画面に表示された速度計ではグングンと美帆さんのスピードが下がっていき、見た目にも足が重くなってきました。「ラストあげろー!」「落とすな!落とすな!」という菜那さんの叫びは、落ちてきていることを察しての切なる祈りだったのでしょう。その祈りを背に美帆さんは懸命に足を伸ばしますが、1分54秒865の6位(※写真判定)でフィニッシュ。一番望んだメダルには届きませんでした。



レース運びとしては見事にやり通したのだろうと思います。500金・1000銀で自身を上回ったコクさんに迫る前半の滑りを見せ、後半のラップで追い上げ、ラスト1周も美帆さんが上回りました。前半なるべく早く入って、そこで得たスピードを終盤につなぎ、維持していく。そんな滑りは遂行できていたのだろうと思います。

試合後のインタビューでは「だんだん1500メートルが走れなくなっていってるというのも感じてる」という言葉もありました。年齢や疲労、さまざまな要因で距離がもたなくなってきたことを自分で感じながら、そのなかで自分をどう高めていくか、どうやってこの種目の金を獲るかを考え、いい準備ができて、いい実行ができて、ただ届かなかっただけ。そんなレースだったのかなと思いました。

もしかしたらメダル圏内の3位をターゲットにして少し前半を抑えていけば、最後の落ち幅も少なかったのかもしれませんが、すでにこの種目の銀は持っている美帆さんです。金だけを目指し、金だけを狙ってきたからこの4年を頑張れた、そんな側面もあるはず。求めた結果は得られませんでしたが、4年間をまっとうしてゴールまでたどり着いた、素晴らしい挑戦のフィニッシュだったのではないかと思いました。

前回北京ではコロナ感染によりホテル隔離となったヨハンコーチとも最後まで一緒に戦えたこと。取材という形ではあったけれど、菜那さんと言葉を交わし、抱擁し、涙のあとのさっぱりとした笑顔を見られたこと。本当はそれが満面の笑顔であれば最高でしたが、そこにいるべき人とともにこの挑戦をやり遂げてくれたことは、とても嬉しく思いました。素敵なものを見させてもらって、本当にありがとうございます!

↓「よく頑張ったな(自分)」「よく頑張ったよ(美帆)」が聞けてよかった!




五輪の舞台にタラレバはありません。すべてのタラレバを自問自答し終えたあとで、唯一無二の正解を出すのがこの五輪という舞台です。美帆さんには考えられるほかの選択も、あったと言えばありました。前半抑えるという別のレースプランもそうですし、今大会は3000メートルには出場せず500メートルの出場は最後まで迷っていたように、種目を絞るという考え方もあったでしょう。1000もパシュートもすでに金を持っています。この1500メートル一本にすべてを懸け、自分だけのための五輪とすることも、考え方としてはあり得るもの。ここまで15年以上にわたり睫敞帆という存在に支えられてきた日本がそれを咎め立てすることなどできない、僕はそう思います。

しかし、美帆さんは1500メートルで金メダルだけを狙ったレースをしましたが、1500メートルの金メダルだけを獲ればいいとは思っていなかったのでしょう。世界の偉大なスケーターたちがそうであるように、自分の距離のレースに出場を重ねて、競い、勝ち、チームパシュートでも日本を牽引してメダルをつかみ、そのうえで1500メートルの金を獲る、それが美帆さんの唯一無二の正解だった。疲労も調整も含めてそれが唯一無二の正解だった。なので、別の世界線を考えるのはよいことではなく、唯一無二の結果を受け止めるのみなのだと思います。

美帆さんだけでなく、ああしていれば、こうしていれば、というタラレバが思い浮かぶ試合や選手はいるかもしれません。でも、この五輪の舞台で出したもの選んだものが、その人にとっての唯一無二の正解だと僕は思います。人生を捧げ、あらゆることを考え、やり尽くしたあとの今です。もしもほかに選ぶべき選択肢があったのであれば、頭で考えるまでもなく身体がそれを選んだと思うのです。将棋の棋士が指すべき場所が光って見えるというように、そのとき選ぶべき選択肢があれば、頭で考える前に身体がそれを選ぶはず。もしそれを選らばなかったのであれば、それはきっとその人にとっての正解ではないのです。

4年の先にある今、五輪は点ではなく、長い一本の線。

その線を最後までしっかりと描き切った。

そうとしか描けなかった。

その唯一無二のものを大事にしてもらえたらいいなと思います。

素晴らしい挑戦をありがとうございました!



美帆さんがこんなに泣くほどの挑戦を見守れて、素晴らしい五輪になりました!

涙の銀!日本女子シングルでは初となる五輪ダブル表彰台の上で、最後まで笑顔を守った太陽のような坂本花織さんに感謝するの巻。

12:00
日本の太陽に涙の銀!

いよいよ最後の週末に入ってきたミラノ・コルティナ五輪。そのクライマックスにふさわしい、尊い競い合いが繰り広げられました。フィギュアスケート女子シングル、素晴らしい演技たちがつづくなかで、坂本花織さんが銀、中井亜美さんが銅、そして千葉百音さんが4位と、日本勢が上位にズラリと並びました。素晴らしい演技、素晴らしい試合でした。誇ってもらえたらいいなと思います。




迎えたフリープログラム。ショートプログラムで上位発進となった日本勢はいずれも最終グループでの登場となりました。最終グループを迎える段階でトップに立つのはアメリカのアンバー・グレンさん。ショートプログラムではジャンプの要素抜けなどがあり、70点台に乗せられず13位と出遅れていましたが、フリーではトリプルアクセルの成功などで盛り返してきました。何かとザワつきが多い今大会のアメリカにあって、強い心を示す演技。ショートとフリー、ふたつのプログラムで競うからこそ生まれる悲嘆と雪辱だったなと思います。最後に歓喜の叫びとガッツポーズが見られて、よかったなと思います。

最終グループ、まず登場したのはジョージアのアナスタシア・グバノワさん。団体戦ではメダル獲得を目指してショート・フリー両方に登場したというなかで迎えた個人の種目ですが、もしかしたらその過酷さが少し出てしまったのかもしれません。完璧な演技とはならず順位を下げます。ロシアからの中立選手として出場のアデリア・ペトロシアンさんも、冒頭の4回転トゥループが転倒となり、本来の演技には至りません。ショート、フリーともに出来得る最高の構成にはしてきませんでしたが、仮に構成を上げてきたとしても、立場的にも経験的にもチカラを出し切るのは難しかったかなと思います。「出られた」、それ以上を望むには堂々と出られるような世界に戻すこと、選手の頑張り以外のものが求められるでしょう。

残る演技者は4人、そしてそのうち3人が日本勢。まず、日本勢から最初に登場したのは千葉百音さん。初の五輪とは思えない落ち着きぶりで、直前の採点に時間が掛かるなどややナーバスになりかねない状況にも乱されるところはまったくありません。見た目の印象にはとても美しい演技で、初の五輪をノーミスで演じ切りました。ただ、速報の技術点と最終スコアにはやや乖離が。コンビネーションジャンプでqマークの回転不足を都合3回取られており、速報値の77点台から74点台までマイナスされました。全体的に採点が辛い傾向のある大会と感じますが、僅差で競う拮抗した大会でもあるので、辛くならざるを得ないのかなと思います。それでも千葉さんは演じ終えた時点で暫定トップに立ち、残る3人の演技を待ちます。初の五輪で堂々のメダル争いです。

そして、日本勢最大のライバルと目される、今季GPファイナルの女王、アメリカのアリサ・リウさん。かつてはトリプルアクセルと4回転を駆使するジャンプで知られたスケーター…いわゆる「天才少女」でしたが、一度の引退を経たあと、スケートの完成度を高めることを追求し、今大会は団体戦を含めてトリプルアクセルも含まない構成としました。音楽のチカラ、演技の美しさ、弾ける笑顔、あがる大歓声。場内の空気を途切らせることなく、熱狂を加速させていくような演技は、明るくて強くて華やかで「これぞアメリカ」というもの。ジャッジにGOE+5を連打させたまったく軸のブレないレイバックスピンから、天高く一本指を突き立てるフィニッシュは、すごい盛り上がりでした。エンジョイフィギュアスケートでした。ジャンピングハグが出るのも納得の演技です!



この熱狂のなかで自分の演技を貫けるのは、この人、坂本花織さんしかいなかったのではないかと思います。一番苦しいタイミングを一番強い人が引き受けてくれた。それは偶発的なものですが、日本にとってはまたも坂本花織という太陽に救われた瞬間だったと思います。引退を表明し、これが最後と決めて臨む五輪の演技。愛の賛歌ほかに乗せて演じるファイナルの演技は、坂本さんらしいものでした。大きくて流れのある世界一のダブルアクセルで「これが坂本花織だ」とリンクの支配を奪還すると、不動の軸で貫くスピン、壮大なステップシークエンス、ジャッジの心深くまで飛び込むトリプルサルコウ、どの要素も高い加点を積み上げていきます。

惜しむらくは演技後半最初のコンビネーションが、トリプルフリップの着氷こらえで繰り返しのジャンプとなったことくらい。余ったコンボを最後のトリプルループにつける選択肢もあったと思いますが、その1.5点とかを取りにいくことよりも、坂本さんはこの演技の完成を目指しました。もともとの構成を知らなければ、どこに予定と異なる箇所があったかもわからないような美しい演技。本人は朗らかな笑顔ではなく、泣き出しそうな笑顔で演じ終えましたが、観衆は立ち上がって笑顔と大歓声を贈っています。今日だけではなく、坂本花織というスケーターのすべてに対しては、お祝いも労いも別れも笑顔こそが似つかわしい、そんなことを思います。




この大会を締めくくるように最後に登場したのは中井亜美さん。ショートの弾ける笑顔から連続するように笑顔で滑り出した中井さんは、冒頭のトリプルアクセルを見事に成功!トリプルルッツからのコンビネーションでセカンドジャンプが2回転になるなど耐える場面もありますが、初の五輪で、最終滑走という重圧のなか、金メダルを狙って躍動した17歳に眩しさ以外のものなどありません。最後のキュートな決めポーズで演技を終えた段階では、速報の技術点もこれまでのトップに立つ78.06点を示していました。かつて見られなかった夢が、一瞬心によぎるような演技でした。

ただ、まぁ、辛いなというか、厳格だなというか、オフィシャルのスコアを見ているとそこからグングンTESが削られていきます。後半のコンビネーションジャンプふたつに、エッジの「!」とqマークが2個つき、最終のTESは72.53点まで下がりました。この素晴らしい演技が結局フリー単独では9位となるだなんて。正直納得がいかない。スコアが出たのに中井さんが無反応だったときには、これは怒りの抗議活動でもせねばならんかと奮い立ちましたが、それは「どこに順位が出るのかわからなかった」のだそうで、自分がメダルだと理解したあとは跳び上がって喜んでくれたので一安心。金メダルを決めたアリサ・リウさんもお祝いにきてくれて、嬉しいメダル獲得となりました!



中井さんが嬉し涙を流すなかで、金を目指してきた坂本さんも止まらない涙を拭っていました。金を目指してきた人が銀なのですから悔しさがないはずがありません。この日の演技にも満足はできていないでしょう。本人が意図したとおりの、磨いてきたとおりの、完璧な演技は残せなかった。わずか1.89点差の最終スコアを見れば、無限にタラレバも浮かぶかもしれません。

それでも、最後まで笑顔でいようと、止まらない涙を隠せないまま、笑顔を見せつづけた坂本さん。坂本花織は女子シングルを救った光であり、日本フィギュアスケートの、いや世界のフィギュアスケートの太陽でした。前回北京五輪、4回転を駆使するロシア勢を前に挑む前から「絶望」の言葉が飛び交うなかで、自分の演技を極めて銅を獲ったこと。その後の暗澹たる世界を思えば、あの銅は女子シングルにとって金にも等しいメダルでした。この種目を守り、照らす光でした。

それから4年、世界をリードしてきた坂本さんはみんなの太陽だった。明るかった。あたたかかった。頼もしかった。この五輪の開幕を迎えてからも坂本さんを見ない日はありませんでした。団体戦に始まり、各個人種目、そして自分自身の種目と、毎日いるんじゃないかというくらいにリンクやスタンドに坂本さんの姿がありました。誰かが苦しいとき、誰かが落ち込んだとき、その傍らで励まし、元気を分け与えていたのは坂本さんでした。自分のことだけでも大変なはずなのに、自分に対してする以上の熱量で、みんなのことを見守っていました。

銀の表彰台に乗った坂本さんは、精一杯の笑顔を見せながら、金のアリサ・リウさんが上手にぬいぐるみをセットできるようにサポートしたり、通例では銅メダルの選手が担当することが多いオフィシャルの表彰台自撮りも買って出て、自慢の撮影テクニックを見せていたりしました。目に入る誰かに手を差し伸べずにはいられない、そんな人となりが、最初から最後まで坂本花織だったなと思います。

試合後のインタビューにあった「銀メダルで悔しいと思えるくらい成長したのかな」の言葉は、スケートについての振り返りなのでしょうが、人としても大きく大きく成長してこの日を迎えたのではないでしょうか。坂本花織は日本の、世界の、頼もしいリーダー、太陽だったと思います。引退を迎えたあとも、何をするにしてもまたみんなの中心にいて、たくさんの人をあたたかく照らす、そんな存在でいてもらえたら嬉しいなと思います。

すべてを終えて今何をしたいかと問われたとき、「今は、相当悔しいので、泣きたいと思います」と答えた坂本さん。もうずっと泣いていたわけですが、それは満杯のコップから水がこぼれていただけで、この舞台を去るまで笑顔を頑張って作ってくれていたのだろうと思います。なので、最後は自分を労わってあげてほしいなと思いました。氷の上じゃなかったら、胴上げでもしたいような、そんなカーテンコールだったと思います。ありがとうかおちゃん!かおちゃんのいるスケートは、とても楽しかった!

↓たくさん泣いたあとは、笑顔のエキシビションお待ちしています!




これは中継内で主に4位の千葉百音さんに向けられていた言葉ですが、自身も平昌五輪で4位となった宮原知子さんがこんなことを言っていました。「やっぱりもうあと一歩でメダルっていう順位であることに変わりはないので、もっとできたんじゃないかって思う気持ちは、もちろん消えないですけど、でも順位以上に大事にすべきものってあると思うので、今は悔しいかもしれないけど、そういった頑張ってきた自分っていうのは認めてほしいです」という言葉、千葉さんだけでなくたくさんの人に通じる言葉だと思います。たくさんの悔しさとやるせなさを抱えた人が、自分を労るきっかけになるといいなと思います。順位は大事だけれど、僕らも順位だけを愛しているわけではないので、何位であろうがかおちゃんはかおちゃんで、いつだって最高に輝いている、そう思います!


悔しくて辛くても、笑顔を守った太陽のようなかおちゃんに感謝!

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婦人公論 2017年 12/27、1/6 合併特大号

僕は自分が見たことしか信じない 文庫改訂版 (幻冬舎文庫)

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