スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム

格闘技

井上尚弥さんが階級を上げて臨んだ2団体統一戦で勝利し、「2階級で4団体統一、即返上、5階級制覇へ」が年内にも見えそうな件。

08:00
ボクシングでは強い者を中心に相手と世界がまわる!

「モンスター」の二つ名に違わぬ底知れぬ強さ。WBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ、スティーブン・フルトンさんと井上尚弥さんの試合は、またしても歴史の扉を片手で開けてしまうような試合でした。早くも2団体王者となったことはもちろん、日本人ではわずか2例目となる4階級制覇の達成。井上さんが強いことの何度目かの再確認をしながら、「どこまで強いんだ」と奥底がまた見えなくなるような破格の戦いぶりでした。強い、強過ぎる。あまりの強さで、早くも次なる一歩は「2階級で4団体統一、即返上、5階級制覇へ」しか見えなくなりました!




井上さんの試合で、勝ち負けという点で緊張感を覚えるのはいつ以来だろうかと思います。5年ぶりの挑戦者という立場自体は気にするものではないとしても、バンタム級からスーパーバンタム級へと階級を上げたことによる階級の壁というのは、どうしても意識せざるを得ない点でした。かねてよりバンタム級ではかなり過酷な減量を強いられているという話でしたので、昇級はプラスに働くだろうと思いつつ、これまで何度も見てきた「階級を上げた途端に、あの圧倒的なパワーは影を潜め…」という現象がナイとは言えません。いかなモンスターと言えども。

前日の計量でも「階級」という部分での差は感じられました。キッチリと仕上げて一発で計量をパスした両者でしたが、身長・体格では明らかにフルトンさんが上回っています。もうひとつ上、フェザー級あたりでも十分にやれそうなサイズをスーパーバンタム級まで絞っているフルトンさんは、両者並んだ際にも明らかに大きい。肩の位置も、手の長さもフルトンさんが一回り上です。公称では身長・リーチそれぞれ5センチ程度の差がある模様。どんなに強いパンチでも届かなければ意味がないのは当然のこと。はたして、この差をどう跳ね返していくものか。

↓乳首の位置の差で見るともっと差がありそうに見える両者が睨み合う!


試合前にはちょっとした悶着もありました。フルトンさんの陣営から井上さんのバンテージの巻き方にクレーム(※陣営的にはクレームではないとの主張)が入り、精神戦を仕掛けてきたのです。もちろん井上さんは「ここは日本だ」と、世界の常識通りに「日本ボクシング界のローカルルール」に沿って何も気にせずにやるとどこ吹く風ですが、いろいろとピリピリさせてくる対戦相手です。

しかし、そのピリピリがまた心地いい。尊敬とヘリ下りで迎えられるのも悪い気はしませんが、「勝つ」と思ってやるのなら、マックスまで自信満々な相手を殴り倒してこそ盛り上がるというものです。フルトンさんは「俺の名前は間違いなく歴史に刻まれるだろう」「俺は独創性にあふれ頭がいい」「いいところに当てれば試合は終わる」と不敵な笑みを浮かべてくれています。そして、「俺は自分が不利な状況ほど生きている実感がある」とも。おおっ、いい感じの煽りVTRじゃないですか。それでこそ、貴重な井上尚弥の1試合を使う甲斐があるというものです。「勝てるかな?」というドキドキがあってこそ井上さん本人も自身を高める意欲が増しますし、見る側も楽しくなります。

そのワクワクを示すかのように会場となる有明アリーナは満員大盛況です。会場に入りきれない人のためにドコモはLeminoなるdTVのゾンビみたいな動画配信サービスを用意して、この一戦を無料生配信することを決めてくれました。以前、dTVで井上VSバトラー戦を中継したときの、アクセスをさばき切れずに「もう全員無料で見てヨシ!」と当日になって緊急無料全開放をしたヤケクソ対応の反省を踏まえて、最初から無料開放とした英断、大いに支持したいところです。

さらには、この一戦の勝敗を予想して当てると1000万ポイントを山分けするという破格のキャンペーンまでも実施してくれるという気前のよさ。ドコモが出した1000万ポイントをクイズ正解者で分けるだけなので「これは断じて賭博ではない」という周到な建付けに僕も試合前から興奮の色を隠せません。「よし!dアカウント27個作って全通り応募すれば必ず当たるな!」という気づきを実行はしませんでしたが、応援と儲けが重なることがあればその熱さは最高潮です!

↓これはボクシング賭博ではありません!山分け型のクイズです!


↓ウチは快適に見られたので、リプ欄は読まないでおいてあげてください!


↓この事例はLimenoで頑張るより「俺は松ちゃんみたいに入場できないのか?」路線を探ってもよかったかもしれません!



16時の配信開始からLeminoにガッチリと接続し、そのポジションをキープした僕。おかげさまでセミファイナルが終わっても、引きつづき回線は絶好調です。一瞬の遅延感も固まり感もなく安心して見守ることができます。まさかセミファイナルのあとに、煽りVTRで1時間使うとは思っていませんでしたが(※現地の皆さま、お疲れ様です!)、緊張と興奮を高めるにはちょうどいい待ち時間です。それぐらいの待ち時間があったほうが、一瞬で終わるかもしれない試合を楽しむのにはいいのです。「見る前に飲む」でないと間に合わないかもしれませんからね。

そして1時間たっぷりと煽っていただいてから迎えた入場のとき。「ボクシング・プライド・オブ・ジャパン」と呼び込まれた井上さんと、対戦相手のフルトンさんが、それぞれ無敗の歴史を映像で振り返りながらリングに上がってきます。井上さんの表情はとても落ち着いており、花道脇の少年ファンの声援にもしっかりと応じています。入れ込みも、硬さもない、大いに期待できそうな気配です。

↓来ているメンツも、華やかさも、今宵リングに上がる選手の格も、まるでラスベガスのよう!


そして迎えた決戦の時。第1ラウンドはいたって静かな立ち上がりです。スタンスを広げ、腰を沈めてかなり距離を取ってきたフルトンさんは、まずは「見」といった雰囲気です。当たりそうにない距離からでもジャブを伸ばし、間合いを探っています。一方で井上さんは、その「見」にお付き合いしつつ、当たりそうもないパンチは避けることすらせずに見切っています。そして、時折遠目から飛び込んでの左ボディをみぞおちあたりに突き刺していきます。大きなパンチこそまだ当たらないものの、積極的な攻勢で怖さは十分に与えていく井上さん。体格・リーチいずれもフルトンさんが上のはずなのに、リングの上ではどう見ても井上さんのほうが大きく見えます。これがボクシングの不思議さ、「リングでは強い者が大きく見える」というヤツなのでしょう。

第2ラウンドも、リングの中央からプレッシャーをかけていく井上さんと、下がり気味に守勢に徹し、井上さんのパンチの軌道や強さを確かめるフルトンさんという構図は変わりません。井上さんは1ラウンドよりも距離を詰めていき、左のジャブは顔面をとらえるようになります。ただ、フルトンさんは「メイウェザーのよう」と評されるだけあって、なかなかに守りが上手い。素早いバックステップと固いガード、頭をよく動かして井上さんに的を絞らせません。ピンチの際も、ロープを背負って大きくスウェーして逃れるなど簡単にはやらせてくれそうにない相手です。

第3ラウンド、じょじょに「見」が終わったか、あるいは「見ているだけではいつか死ぬ」と悟ったか、フルトンさんは前に出始めます。距離を詰めることで、むしろ連打を許さないようなそんな構えです。しかし、そのなかでひとつ鍵となる攻撃が生まれます。30秒過ぎに井上さんの左でボディを突く攻撃に対して、フルトンさんが打ち下ろし気味に右のカウンターを合わせたのですが、井上さんはそのカウンターにさらに反撃の左を合わせたのです。「1発返す間に2発打たれる」という速さ、そして当たった打撃の強さ。ボディ自体が効いていることと合わせて、フルトンさんにとって警戒を高めざるを得ない攻撃となりました。ラウンド終わりにはフルトンさんが鼻血を流す様子も。

そして第4ラウンド、フルトンさんはさらに前に出てきます。攻撃は最大の防御、です。しかし、井上さんはリングジェネラルシップでも冴えています。相手が前に出ようとすればすかさず機先を制して、イヤな感じを植えつけます。鋭いワンツー、突き上げるようなアッパー、パンチの引き出しも少しずつ開いてきました。ラウンド終わりにはリングサイドにいるWBA・IBF世界スーパーバンタム級王者マーロン・タパレスさんの姿をカメラがとらえました。「次はあなたの番ですよ」と言ったところでしょうか。

第5ラウンド、井上さんのテンポはさらに上がり、新たなコンビネーションが繰り出されます。フルトンさんはガードを上げて懸命に守ります。ときにはガードごと押し込まれてたたらを踏むようなところも見せますが、さすがに守りは固い。フルトンさんの慣れもあってか、井上さんの有効打がなかなか出ません。第6ラウンドに入ってもその流れは変わらず、井上さんはほぼガードを叩いているような感じになり、ボディ打ちから突破口を探りますが、それも身体を「く」の字のようにしてボディの威力を堪えるフルトンさん。守りの手数を重ね、神経をすり減らすフルトンさんの心と身体のエネルギーを削りにいくようなラウンドです。

第7ラウンド、フルトンさんは飛び込んでワン・ツーと打ってくるような攻勢を見せます。1分過ぎにはフルトンさんの右フックが井上さんの顔面をとらえ、井上さんの上体が大きく揺らぐ場面も。井上さんもすかさず返してはいきますが、ここまでのラウンドとはやや違う展開となり、判定としても初めてフルトンさんのラウンドと言えるような内容となりました。あるいは、少し長い試合になるのかな…とも思ったのですが、決着は次のラウンド早々に訪れます。

第8ラウンド、ここまで終始安定して当たり、効いていた左のボディがみぞおちのあたりに入ります。フルトンさんはガードを下げてボディを守る姿勢を取り、身体を「く」の字のようにしてこらえますが、その動きがわずかに鈍かった。フルトンさんがガードと上体を下げた頃合いには、すでに井上さんはツーのパンチを始動しており、完全にガラ空きになった顔面に鋭い右が飛びます。大きく吹き飛び、リングに手を突きそうになるフルトンさん。何とか立ち上がろうとしますが、その上下する頭を前進しながらの左で井上さんがとらえます。さっきまで元気だったフルトンさんは、都合3発のパンチでリングに大の字になりました。

何とか立ち上がったフルトンさんですが、懸命の守りも空しく、雨あられと注がれる井上さんの連打によってコーナーに追い詰められ、数発が顔面をとらえたところでレフェリーが割って入りました。8ラウンド1分14秒、TKOによって井上さんは勝利し、世界スーパーバンタム級2団体王者、そして4階級制覇の王者となりました!

↓ここまで懸命に守ってきたフルトンさんの守りが追いつかなくなって決壊!

ボディを打って、効かして、効いているから守ってかばって、ガードが下がる!

下がったガードが上がるより先に叩き込む!

守りの手数と対応が追いつかない攻撃で「壁」を壊した!


いやーーー強かった。これは強い。ひとつ上の階級の2団体王者が相手という、かなり厳しめのシチュエーションでしたが、何ら問題にしませんでした。5年ぶりの挑戦者という立場、賞味30分ほどで終わってしまうとは。井上さんは顔もキレイですし、疲労感もジョギング後くらいの感じで、もう1試合くらいやれそうに見えるほど元気です。強さ、戦術、精神力、あらゆる面で完勝でした。

この戦いのひとつポイントとなるのは、体格・リーチで上回り、さらにディフェンス巧者であるフルトンさんをどう仕留めるかでした。サイズの小さいほうが懐に飛び込んで…という展開を想像していたものの、実態はそうではありませんでした。第1ラウンドから頻繁に繰り出した左のストレートで打つボディ、あの攻撃がその構図をしょっぱなから打ち砕きました。フルトンさんはかなり距離を取り、自分のジャブが当たらないほど離れた位置で「見」に構えていましたが、それでも井上さんのボディは届いてきた。バックステップで逃げるスピードよりも井上さんの踏み込みのほうが早い、これでひとつ安定して通じる攻撃が見つかりました。

顔面狙いならば、頭を振ったりスウェーしたりガードで防ぐこともできますが、ボディは動かしたり守り抜いたりできるものではありません。ある程度は打たれる場所です。そのある程度打たれるパンチが、かなり効くものだった。顔面はもちろん守るとして、ボディも漫然と打たせておくわけにはいかない打撃だった。そこで、いかにも狙えそうなカウンターの右を放ったのが第3ラウンドでしたが、井上さんはそのカウンターに反撃を合わせてきました。ボディ打ち自体が罠だったのか、あるいは単純に井上さんのほうが倍速いのか、この応酬がかなり印象に残ったのではないかと思います。このラウンド終盤で同じボディを打ったとき、フルトンさんはまだ飛んできてもいない追撃の右を警戒してガードをすかさずあげる動きを見せていましたので。

避けられない、耐えられない、反撃も怖い。ひたすらひじで守ろうとしても、あまり下を意識すると、似たような軌道から顔面を狙うジャブが飛んできて、しかも痛い。中盤からのフルトンさんの前進も、遠距離で一方的にチクチクされてはたまらんというところでしょう。この時点でフルトンさん側のプランはかなり狂ってしまったかもしれません。

そんななかで中間距離での打ち合いに挑んだフルトンさんは非常によく守り、よく凌ぎましたが、顔面を守ればボディが空きますし、ボディを守った状態から顔面を守ろうとすると、自分の手の動きよりも井上さんの手の動きの方が速くて苦しい。結果として、ボディを耐えつつ顔面を守るといった苦しい形を強いられ、その守りの手数が疲労とダメージの蓄積で鈍ってきたとき痛恨の打撃をもらってしまった、そんな格好かなと思いました。一言で言えば「井上さんのほうが強かった」という試合内容で、次はどうしたら勝てる、というプランが今は浮かばないのではないかと思います。「いいのが当たれば(誰でも)倒れる」くらいしかないのかなと思いました。

試合後にはリングサイドにいたタパレルさんが上がってきて、現時点ではまだ口約束ではあるものの、「年内に4団体統一戦」を行なうことが宣言されました。残された時間と貴重な試合を回り道に使うわけにはいかないという意志、まさに「最強」の歩む道だなと震えるような約束でした。これで年内にスーパーバンタム級を統一して、即返上からの昇級、5階級制覇という道も現実味を帯びてきました。そして、そのさらに先にある6階級制覇という夢も。「2階級で4団体統一」という偉業すら通過点としか感じない、そんな大きな夢を見られること、未来がますます楽しみになるような勝利でした!

↓「勝ったらやる契約」でもありそうな、すごいスピード感で次戦が決定!


イノウエから逃げるのではなく、イノウエとやりたいと望まれる世界!

真の強者が築く世界はそういう構図になるものです!

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ボクシングでは強者がリングの中央に立ち、相手はその周囲をまわるような展開になるものですが、この試合はまさに「イノウエを中心にまわる世界」のようでした。この試合に向かう過程で井上さんが右拳を怪我をしたとき、井上さんが弱い挑戦者なら「チャンスを逸したね、残念」で試合ごと流れていたかもしれません。あるいは中途半端な強さの挑戦者であれば、怪我をいいことに「やっぱりやらない」と王者の方から対戦を避けられたかもしれません。

しかし、実際としては、井上さんの怪我が完治するのを待つために、試合が延期されました。それこそが「イノウエを中心にまわる世界」を示すものです。相手も戦いたいのです、このモンスターと。そして、逃げることはできないのです。このモンスターから逃げれば、それは有無を言わさず臆病者とみなされるのです。誰もが強いと認める強者だからこそ、こういう試合がしっかり組まれ、しかもそれがラスベガスではなく日本で行なえるのです。

多くの選手が「試合をする」ということ自体に苦心し、政治力と経済力の壁の前で望むようなキャリアを積み上げられずにいるボクシング界にあって、狙った相手を招き、無駄な遠回りのない試合を組める真の強者の存在はまさに「ボクシング・プライド・オブ・ジャパン」です。次戦が日本で見られるのかはわかりませんが、何らかの形で見守っていきたい、そう思います。ボクシングでこれほどの夢を見る機会、そうそうないと思いますからね!

↓ちなみに、予想が当たりましてドコモさんより1725ポイントいただくことになりました!

ええっ!タダで井上さんの試合を見たうえに、1725ポイントもらえるんですか!

賭博より効率よくて最高です!


次戦、1億ポイント山分け企画があれば、dアカウント増やすべきかもですね!

モンスター井上尚弥さんによる史上初のバンタム級4団体統一は、生存を強く主張したdTVを含めて勝者しかいない神試合だった件。

08:00
dTV独占というドコモの自己主張!

この世の大体は経済が第一である…そんな真理と向き合うような時間でした。13日、日本の有明アリーナで行なわれた歴史的一戦を、僕はdTVとかいう「消滅済だと思っていた動画配信サービス」で見ていました。DAZNと提携したのはdTVを捨てるためではなかったのか。あるいはDAZNを切ることを内心で決めたからdTVなのか、真実はわかりません。わかりませんが、こんなところで、この試合を、よくやったものだなと思いました!

↓dTVの「d」はたぶんドコモのdです!「ダメ」とか「鈍」とか「DEAD」とかではありません!


永久に使うことがないと思っていたサービスだからこそ永久に残っていた初回無料体験特典。「これを使うのは今日だ」と決断するのに時間は無用でした。今日を最後にもう見ることはないだろうと思いながら、僕が見守ったのはボクシング世界バンタム級4団体統一戦である井上尚弥さんVSポール・バトラーさんの試合でした。井上さんが持つ3本のベルトと、バトラーさんが持つ1本のベルトが勝者によって統一され、バンタム級では史上初となる主要4団体統一王者が誕生することになっていたのです。

井上さんが達成すれば日本人初・アジア人初のオマケつき。しかも、井上さんはこのベルトを1本ずつ獲得してきていますので、そのグローリーロードは非の打ちどころのない輝きで満ちています。この階級に敵はいない。「無敵」であることを完全に証明する。そんな歴史的な試合が!まさかdTVで!行なわれようとは!今さらドコモはどこにチカラを入れているんだと!真剣に思いましたよね!

↓なおdTVは大量のアクセスをさばき切れず、急遽無料配信に切り替えていました!

それはどうもありがとうございます!

それならもっと告知してほしかった!

無料なら広く国民が見られたのに!

単純な運営力で言えばABEMAのほうが遥かに上だと証明された中継でしたね!

○ABEMA(1R KO)dTV●

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星空のように輝く有明アリーナ。リングを囲うスポットライトはまるで檻のように、光の道のように、リングを光の筋で彩ります。「キルビル」のテーマで入場してきた井上さんは自らの拳と、自身が持つ4本のベルト(WBA・WBC・IBF・リングマガジン)を高く掲げ、威風堂々です。前日計量では電子式体重計と微妙な差が出て計量やり直しになる場面もありましたが、それもサッと所用を片付けてクリアするなど仕上がりは万全。相手も世界王者ではありますが、完全にホーム、圧倒的に格上のモンスターとして「挑戦者」を迎えます。陣営の着るTシャツには「GET THE FOURTH」の文字、見据えるターゲットは挑戦者ではなく「4団体統一」です。



そして始まった試合、それは思いがけない苦戦となりました。勝ち負けという観点で言えば1ラウンド半ばでは「確勝」を確信しました。対戦相手バトラーさんのパンチは井上さんによって完全に見切られており、手を出しても当たる気配がありません。相手のパンチを「届かない」と見切ったときはほとんど反応せずに攻撃につなげ、「届く」と思ったときもバックステップではなくスウェーでかわして即座に攻撃に転じる井上さん。その見切りの正確無比さは少し呆けるほどでした。スウェーで相手のパンチを鼻先で感じたあと、拳が戻るのに合わせて井上さんの身体と拳が突っ込んでいくのです。これでは攻撃すればするほどピンチになってしまいます。「よくできた格ゲー」みたいな動きです。

そのように勝ち負けという意味ではまったく問題のない試合なのですが、ひとつ問題がありました。相手の作戦か、あるいはリングに乗ったあとの本能か、バトラーさんがほとんど手を出してこないのです。すべてのチカラを防御と移動に振っているかのように、ほとんど手を出さずに防御に徹しているバトラーさん。それでも井上さんはガードの隙間からジャブを突き刺したり、ボディを打ったり、ガードの上からでも構わずパンチを見舞ったりと一方的に攻勢をつづけます。ただ、相手もWBO王者です。「勝たなくてもいい、立ってさえいられれば」という姿勢でこられると倒すのは簡単ではありません。

勝つだけならポイントはいくらでも取れそうですが、史上最強のモンスターを目指す井上さんにとって「倒す」ことが勝つこと。勝負を捨てて守りに徹した相手をそれでも倒そうというのは相当に難しいミッションでした。毎ラウンドのように相手をコーナーやロープに詰めて1・2・3・4・5・6のパンチを見舞うも、バトラーさんはなかなか倒れない。バトラーさんのボディや顔面、そしてロープを背負う背中までも真っ赤になっていきますが、それでも倒れない。これではそのうちガードを叩いても爆音あげる井上さんの拳のほうが壊れてしまいそう。

すると「あ、来ないな」と察したのか、ここから井上さんは驚きの戦いを実践します。3ラウンド頃からじょじょに井上さんはガードを緩め、ときに顔面を突き出し、ときに亀になってワザと相手に連打のチャンスを与えて打ち終わりを狙い、ときにゆーっくり身体を揺らし、ときに完全に静止して「的」となり、なんとかバトラーさんの攻撃を誘おうとし始めたのです。攻撃を誘いたい井上さんと攻撃をしないバトラーさんのコラボレーションによって、ノーガードの井上さんがパンチを出さないバトラーさんのわずかな身体の動きに反応して5回下がる(※本人てへぺろ笑い)なんて場面もありました。パンチを打ってもいないのによけているという、一周まわって子どもの遊びのようでさえあります。

ついにはリング上で「腕を背中で組む」という動きまで見せた井上さん。戦いのさなかに、対戦相手を目の前にして手を後ろに組むなんて、漫画のなかに出てくる中国拳法の老師しかやらないムーブですが、それを現実にやってのけたのです。しかも、その中国拳法の老師のムーブそのままに、その状態で放たれる相手のパンチを「ほほい」とかわすと、ようやく開いた扉の向こうに鋭いパンチをねじ込んでみせます。「このノーガードは罠なんだろうなぁ…」と思った相手が「やっぱり罠じゃん!」とすぐ気づくコントみたいな試合。この舞台でここまで差を見せつけるとは!ホント、パンチが、当たらない!

↓手を後ろに組んでもなお「世界王者がパンチを出せずに固まる」という井上さんの怖さ!

バトラーさんが井上さんの強さをわかり、

全部を防御に振って倒されないようにし、

その状態のバトラーさんを倒すのは容易ではないと井上さんが認めたからこそのこのムーブ!

強者VS大強者だからこそ生まれた珍場面でした!

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思いがけない苦戦(※なかなか倒せないの意)となったわけですが、井上さんと陣営に慌てた様子はありません。陣営からは「逃げ回ることはできても、リングの上で隠れることはできない」という名言アドバイスも飛び出しました。そうです、この戦いに防御はあっても逃走はありません。井上さんは「かかってこい」の挑発と、「かかってこないならコッチから行くぞ」の攻撃を繰り返し、じょじょにバトラーさんの体力を削っていきます。

迎えた終盤戦、井上さんはもう一段ギアを上げました。もはや誘っても乗ってこないと諦めたか、井上さんはボクシングの動きを解除し、小走りでバトラーさんを追いかけるようになります。ボクシングのステップで逃げるバトラーさんを小走りで追いかけてぶん殴る井上さんの振る舞いは、見方によっては恋人同士の追いかけっこのようでもあります。YouTuberが雑魚を相手にしたときみたいな試合が、4団体統一戦で行なわれてしまうことにただただ驚きしかありません。

そして場内がわずかに「大丈夫か?(※KOできるか?の意)」と不安を覚え、井上さんを大声援で後押しするなかでの第11ラウンド。両の拳を突き上げるようにしてコーナーを飛び出したそのラウンドで、ようやくその瞬間は訪れます。11ラウンド残り2分、強烈な右のボディ&左フックのコンビネーションを発端に、強パンチの連打を繰り出した井上さんは、じょじょに腰が沈んでいくバトラーさんを、打ち下ろしのパンチでついにリングに這わせました。まるで杭でも地面に打ち込むかのように、文字通り相手をリングに沈めました。

リングに両手足をついたバトラーさんは小さく首をひねり、レフェリーはテクニカルノックアウトを宣言しました。その動きを見て、安堵したかのようにリングに横たわったバトラーさんの姿と、ジャンピングガッツポーズでお父さんと抱き合う井上さん。楽勝ではあるけれど大苦戦の一戦は、勝って目標を達成した井上さんと、チカラをしっかりと示したバトラーさんと、井上さんの試合を11ラウンドも見られた観衆と、サービスがつづいていることを知ってもらえたdTVとで、勝者しかいない神試合でした!

↓強い、強い、強すぎるモンスター!


↓歴史が生まれた!バンタム級史上初の4団体統一!


↓尚弥さんのもとにWBOベルトがようやく到着!


↓見るまでもない紙ですが、ジャッジの採点は「全ラウンド井上」です!

もう寝ていても勝てるのに、それでも倒しにいった井上さん!

それが最強を求めるボクサーのプライド!

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ここまで長い道のりでした。本来であれば2018年から2019年にかけて行なわれたワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)で井上さんは4団体を統一しているはずでした。しかし、WBC王者の不参加、WBO王者の途中離脱でベルトはふたつ止まりに。そこからの時間は「戦ってもらう」ために費やされていきました。WBO王者であったジョンリル・カシメロとの対戦はコロナ禍によって流れ、その後カシメロがなんじゃーかんじゃーと難癖と悪態をつきながらなかなか試合をしないことによって、井上さんの「待ち時間」は伸びていきました。

ようやく2022年になってWBC王座を手土産に井上さんとの再戦に臨んだノニト・ドネアさんを撃破して3団体統一を果たすと、5月にはなんじゃーかんじゃーと試合をしないカシメロの王座が剝奪され、4団体統一への道が開けます。そして昨日、この階級の1本目のベルトを獲得してから約5年をかけて、なんとか20代のうちにバンタム級の統一を達成しました。待つ時間と耐える時間、じょじょに適正階級が上がっていく身体の変化、そのすべてを乗り越えた我慢の統一劇でした。

ポール・バトラー戦で見せた「後ろに手を組むポーズ」がこの5年間を象徴するムーブだったなと思います。戦えさえすれば勝てるのに、相手が戦ってくれない。そんなジレンマのなかで、世間を盛り上げ、対戦をアピールしながらじっと待ってきた。「どうかかかってきてくれ」と願ってきた。リングの上以外での長い戦いと、それをも勝ち抜いた我慢強さを示すあのムーブは、珍場面にして名場面でした。

井上さんは試合後のインタビューでスーパーバンタム級への転向を表明しました。しかし、そこでも我慢の時間はつづくでしょう。現在のスーパーバンタム級は2冠王者がふたりいるという状態。「めちゃくちゃ強そうな挑戦者」を相手に2本のベルトを賭けてくれるお人好しはなかなかいないだろうと思います。各団体から挑戦者に指名されて、その試合がつつがなく実施されるまで、どれくらいの時間がかかるものか気を揉むばかり。

とは言え、全階級4団体統一をしていく義理もないわけですし、ここから先はより強そうな相手を倒しながら、より大きな舞台へ進んでいくだけ。勝つとか負けるとかではなく、どれだけ強そうな相手と戦うことができ、どれだけ井上尚弥というボクサーの強さを世界に示せるのか、それが真のミッションです。そのためには「かかってきてくれる」相手が何よりも必要です。戦うまでも戦いです。陣営も総力を挙げて「かかってこさせる」戦いに勝ち抜いてもらいたいもの。勇敢な王者たちが、このモンスターにかかってきてくれることを切に願います!



あと、井上さんの次の試合までにdTVが消滅していることも切に願います!

井上尚弥さんが日本ボクシング史上初の主要3団体統一を果たした一戦は、強いドネアの先にあるスーパースターへの一歩だった件。

08:00
強い、強すぎる、3団体統一!

圧巻、圧勝、圧倒的でした。7日に行なわれたWBA・IBF・WBCバンタム級王座統一戦。日本の井上尚弥さんとノニト・ドネアとの試合は、日本ボクシング史上初の主要3団体統一という次元に留まらず、PFP(パウンド・フォー・パウンド)ランキングで井上さんをいよいよ1位に押し上げるのではないかと思えるほどの「強すぎる」一戦でした。



ボクシングには「強くない相手」とのタイトルマッチが行なわれるケースもよくあります。探しに探し、選びに選んだ「弱い相手」とビジネス的な興行を繰り返す王者もいるものです。しかし、井上さんはそうではありません。「弱い相手とは戦わない」という自らの意志そのままに、強い相手を踏み台にして世界の真の頂点へと迫ってきました。

真の頂点に迫るためには、実際に「強い」ということはもちろん、「強そう」であることが何よりも重要です。この男こそが一番強いのではないか、そう信じる者が増えて、別の男を信じる者たちとぶつかり合って、互いの王者をぶつけ合って形成していく「格」というものが真の王者を作り上げます。単にベルトを目指すのではなく、真の王者を目指すのなら弱い相手と戦うのは無意味であり、無駄な時間です。

そういう過程のなかで出会ったノニト・ドネアは、まさしく「強い相手」であり、実際にこれまでの戦いのなかでもっとも井上さんを苦しめた相手でもありました。前回2019年の対戦では、最終的に判定勝利こそおさめたものの、ドネアの鋭いパンチで目の上をカットし、痛打を喰らって何度もたたらを踏みました。さすがフィリピンの閃光、さすが5階級制覇の偉大な王者、アジア初の主要4団体制覇の達成者、ノニト・ドネアは強かった。

その苦戦のなかでわずかに失った「格」を、

ドネアを圧倒することで倍にして取り返す。

これは主要4団体統一という道への3冠目であると同時に、井上さんのキャリアにわずかに残る曇った部分を払拭する試合でした。「ドネアと同じくらいなのではないか?」というガラスの天井を打ち破り、どれほど強いか想像もつかないモンスターへと立ち戻る、そんな一戦でした。ドネアが望んで作った状況ではありますが、井上さんにとってもこの試合は4団体統一のさらに先にある、ボクシング界のスーパースターへと至るために、避けては通れない一戦でした。因縁、宿命、すべてがここにある。

↓両者素晴らしい仕上がり!井上さんはリミットぴったりで計量をパス!


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地上波ではなくアマゾン・プライムビデオでの独占中継となった一戦。この試合が500円で見られて、しかも映画などが1ヶ月間見放題だと思うと、タダ同然という気持ちになります。この日に合わせて改めてアマプラに再加入をした僕は(※前回は村田諒太さんの試合に合わせて加入)、アマゾンライフを満喫しながらこの試合を迎えました。

前座の試合を見守りつつ、試合開始時刻の21時を迎えると、前回の対戦では入場BGMとして流れたキル・ビルのテーマを布袋寅泰さんがギター生演奏で披露して井上さんを出迎えてくれます。それが極上のエンタメであるか否かを区分けする「布袋」というライン。五輪のようなド級の舞台にのみ現れる「布袋」というぶっといライン。この試合にふさわしい出囃子です。

↓布袋をバックに井上が登場!布袋も認めるビッグマッチだ!


対するドネアは「次は倒せる」という言葉とともに堂々たる佇まいで現れます。掲げたWBCのベルトはそれが欲しくて獲ったというよりも、もう一度イノウエと戦うための切符として手にしただけのこと。守るためではなく、賭けるためのベルトです。偉大な王者がこの試合にすべてを懸けて戻ってきた。勝って誇りを示すのか。あるいは敗れて花道を歩くことになるのか。ドネアのキャリアにとっても節目となる、いや、「節目となるにふさわしい」一戦でしょう。よくぞ戦うことを決めた、よくぞ再び向き合った。素晴らしい顔合わせ。なんじゃーかんじゃーと理由をつけて逃げ回るカシメロに、ふたりの爪の垢をダイレクトで飲ませてやりたいような気持ちでいっぱいです。

そして始まった試合。第1ラウンド、ドネアの動きは軽快です。この階級にしてはパワーがあり、カウンター一発で決めるようなボクシングをすることが多いドネアですが、それでは井上さんのスピードに対抗できないと考えたでしょうか。計量後に極端に体重を戻してはいないという情報もあり、スピード重視ドネアといった様相。実際にその戦略は功を奏し、ドネアは先手を取ります。

開幕初弾の左フックで井上さんの顔面をかすめると、その後も機敏な動きで攻撃の機会をうかがい、井上さんのパンチをバックステップで軽快にかわします。そして、ここぞという場面での強烈なカウンター。幾多の相手をリングに沈めてきた左フックを井上さんのパンチに合わせてきます。「ドネアは出来がいい」それは間違いなかったと思います。この試合を見た誰もがそう思ったはずです。

しかし、出来云々は関係なかった。

第1ラウンド、時計の表示が消えた残り3秒ほどのタイミングで、それは起きます。じょじょに前への圧力を掛け始めた井上さんが、左の連発でドネアの意識をわずかに左へと揺らした直後、井上さんが小さく左のフェイントを入れると「イノウエの左に対してカウンターを狙った」ドネアの左拳がわずかに下がりました。すると、狙って作ったその「隙」へ、コマ送りでもスキップしてしまうような高速の右ストレートが突き刺さります。

テンプルを直撃し、脳まで揺らすようなクロスカウンター。偶発的なものではなく、カウンターを誘って、それに合わせた神技でした。そのわずか一発で先ほどまで元気いっぱいだったドネアはリングに尻もちをつきました。ここは残り時間少なくドネアはゴングに救われますが、この試合のための積み重ねも、この試合のための対策も、よく仕上がった出来も元気も、ノニト・ドネアというボクサーのスタイルも、一発ですべて消し飛びました。

第2ラウンド、仕留めには行かないようにとあえて自重していたという井上さんですが、一発で尻もちをつくほど脳を揺らされた側が、そうそうすぐに立て直せるものではありません。井上さんは冷静に丹念にパンチを重ねていくだけで、すべてが仕留めるための攻撃になってしまいます。ドネアも懸命の反撃でペースを取り戻そうとはしますが、井上さんの連打に身体がついていかず、いいのをもらうとすぐに足がグラッときます。これは厳しい。

残り1分52秒、井上さんがガードの隙間から小さく鋭い左を通すと、ドネアは操り人形のようにフラフラと一歩、二歩、三歩、リングをさまよいます。詰め寄る井上さんと、懸命に守るドネア。しかし、もはやドネアは井上さんのジャブのスピードに反応できず、ジャブだけでグラッとくるような状態。最後はワン・ツーでドネアをコーナーに押し付け、その跳ね返りに左フックを合わせる強烈なコンビネーション。小さく速くドネアの頭部が揺れると、そのままドネアは大の字になって倒れました。

↓強い、強すぎる、井上尚弥!39歳とは言え、相手はノニト・ドネアだぞ!

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あまりにキレイに倒されたことで、ドネアの回復も早く、そして爽やかです。コーナーにやってきた井上さんをハグすると「アリガトウ、コングラッチュレーション」と日本語で語り掛けました。そして、諸手を挙げて、自分の戦いと井上さんの勝利を讃えているようでした。あるいは大きな決断をしたのかな、なんてことも思います。強さにおいてはすでに井上さんが上だったとは思いますが(※一度勝っているわけだし)、ドネアが築き上げてきた「格」のさらに上に、井上さんが昇っていった…そんな世代の継承をも感じるような光景でした。

ドネアという選手は本当に強い選手でした。

みんなに愛された辰吉丈一郎さんがいて、それを完膚なきまでに叩きのめしたウィラポン・ナコンルアンプロモーションがいて、そのウィラポンと4度激闘を重ねた西岡利晃さんがいて、その西岡さんをまったく何もできないほどに圧倒したのがノニト・ドネアの鮮烈な記憶です。自分たちが「強い」と思っていた男たちの遥か上にいる存在でした。正直なところ、前回の対戦でドネアが井上さんを苦しめたときには「ドネアが健在である」ことが嬉しくさえありました。あの時代が今も輝いているような気持ちになりました。

39歳という年齢は、ボクサーとしては当然下り坂であり、最盛期ほどの強さはないとわかってはいても「ドネアはドネア」です。強くて偉大な王者です。「あのドネア」をわずか2ラウンドで、まったく何もさせずに、美しいボクシングでリングに沈めたこの衝撃。「4団体統一」という当面の目標はもちろんとして、むしろここからどんな大きな夢が見られるのか、想像だにしなかった世界への扉が開いたような気持ちです。

例えて言うならマニー・パッキャオのような存在となって、世界がイノウエに魅了される。そんな世界もあるのかもしれないな、そう思います。パッキャオが6階級制覇を達成したのは、間もなく32歳になるという頃。井上さんはまだ29歳になったばかり、あと何年も「全盛期」はつづきます。どこまで大きな夢が見られるか。どこまでの格にのぼりつめられるのか。楽しみはまだつづきます。天井を設けず、どこどこまでも期待して見守っていきたいものです。もちろん、夢を見るならアマゾン・プライムビデオで。

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死力を尽くす真剣勝負と笑顔あふれる和やかさを兼ね備え、まさしく「スポーツの試合」だった村田諒太VSゲンナジー・ゴロフキン戦の巻。

08:00
リングから無事に降りるまでが試合です!

日本ボクシングの歴史に残る最大の試合でした。9日、さいたまスーパーアリーナで行なわれた村田諒太さんとゲンナジー・ゴロフキンとの試合。それぞれが持つWBA王座とIBF王座をかけて行なわれる世界ミドル級の王座統一戦は、地上最高の舞台で行なわれる、夢のような試合でした。

そして、とてもスポーツらしい試合でした。

今、世界にはスポーツなどなくても「戦い」はあふれています。それこそ生命を賭けて行なうような戦いについても情報があふれ、日々世界で目撃されつづけています。ただ、スポーツも戦いと呼ばれる類のものでありながらも、今世界にあふれている戦いとはまったく性質が異なるのだということを、この試合は雄弁に物語っていました。

この試合が素晴らしいものになると確信したのは、前日計量での両者の佇まいでした。Tシャツを脱いだゴロフキンの肉体の凄まじい仕上がり具合に息を飲みました。胸から腹の筋肉の仕上がりはもちろん、背中から脇腹にかけて広がる翼のような筋肉の分厚さ。身長は決して大柄ではないにも関わらず、これが本当に同じ階級かと思うほどデカくて分厚い。同じ場に立つ村田さんが華奢に見えるほどでした。


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当然のこととして計量をパスした両者は、しばし睨み合ったのち、笑顔で握手を交わし、たまたまタイミングが重なったゴロフキンの誕生日を祝いました。戦いの前には似つかわしくない光景かもしれませんが、これぞスポーツの試合だなと思いました。

両者に緩みや慢心はありませんでした。村田さんは憧れのボクサーに挑戦する立場として当然そうですし、ゴロフキンもまた素晴らしい肉体の仕上がりでこの一戦への意欲を示しました。紛うことなき真剣勝負の佇まいでした。一方で、笑顔で握手をし、誕生日のお祝いもしました。お互いへの敬意を失わず、終始和やかな佇まいでした。

翌日にはリングで殴り合いをするふたりです。勝者は敗者から名誉とベルトを奪い取ります。ミドル級の拳であれば「死」すら可能性としてはあり得るスポーツです。ふたりはそういう日への準備を万端にしつつ、それでも和やかだったのです。これがルール無用の「戦い」と「試合」との違いだなと思います。

スポーツで競い合うことを「試合」「テストマッチ」と呼ぶのは、あくまでもこれは「試し」であるからです。自分のチカラを鍛え、相手を乗り越えるような工夫を重ね、実際にそれを試す。そこで試すのは己のチカラであり、対戦相手や試合結果はそれを図るものさしに過ぎません。ボクシングのような、ときに危険を伴う格闘技であってもそれは変わりません。試すのはあくまでも己であり、対戦相手は自分にその機会をくれるかけがえのないパートナー。奪い合い、憎しみ合う敵ではない。真剣勝負と和やかさが共存した両者の素晴らしい佇まいには、そういう姿勢がありました。これが素晴らしい「試合」にならないはずがないのです。




下馬評は圧倒的にゴロフキンです。仕方ありません。相手は「歴史上で」トップを争うような偉大な王者です。村田さんももちろん強いが、相手はとてつもなく強い。とにかくパンチの多彩さと的確さは凄まじく、小さく素早いジャブでさえも試合を決めてしまうほどのパワーも持ち合わせています。映像で見るゴロフキンが現実に現れたら、ちょっと勝ち目はないように思われました。

ただ、村田さんも歴史を作ってきた日本最強のボクサーです。ある程度打たれることは覚悟のうえで、持ち前のタフネスと、一発で流れを変えるパンチでどこまで喰らいついていけるか。鍵となるのは村田さん得意のボディー打ちでしょう。顔面の殴り合いではおそらく勝ち筋が無いので、ボディーで仕留める、そういう戦い方をしていきたいところ。

ベルトを掲げて入場してくる村田陣営。2年4ヶ月という長い空白を経てようやくたどり着いた夢の舞台。引き締まった表情です。ゴロフキンはおなじみの登場曲に乗って軽快に入場してきます。余裕さえ感じさせます。カザフスタン国歌と君が代が流れ、気持ちも厳かに高まります。

そして始まった試合。まずは第1ラウンド、先に手を出したのはゴロフキンでした。あいさつ代わりの左のジャブは、あいさつだけで試合を終わらせかねない破壊力で村田さんの顔面をとらえます。ガードの隙間を的確に狙い、少しでもガードを下げればすかさず岩のような拳が飛んでくる。凄まじいパンチです。

村田さんはそれでも前に出ます。それがスタイルです。前に出て、距離を詰め、左のボディでいいのを当てます。このボディを受け、一歩飛び退いたゴロフキン。狙っていたパンチが決まった瞬間だったでしょうか。まずは村田陣営としては狙い通りの立ち上がりができ、「手応えあり」と言ったところ。

コーナーに引きあげてきた来た村田さんには笑顔も見えます。それはこの試合が実現したことと、自分がそこで戦えていることを喜ぶかのようでした。しかし、笑顔とは対照的に早くも鼻骨のあたりに亀裂が入り、血が滲んでいます。ジャブで割れたものでしょう。もしかしたら笑いの一部は「すげぇな」というニュアンスだったかもしれません。さて、どこまで耐えて、どこまで叩けるか。

第2ラウンド、村田さんは右ストレートでゴロフキンのボディを叩きます。これも狙っていたパンチでしょうか。ゴロフキンは嫌がる素振りで、腰を引いて守ります。ボディを意識するゴロフキンに対しては、二の矢として右のアッパーを放ちます。これも狙っていた展開でしょうか。村田さんがよく押しています。通用しています。

第3ラウンド、ラウンド頭に猛攻を見せるゴロフキン。ジャブを印象付けたところで、顔面を守る村田さんをあざ笑うようにフックで横から打ち、身体をかがめて守る村田さんを今度はアッパーで起こし、起こしたところでボディーを叩く。理屈でつながったパンチが、隙間から的確に飛んできます。しかもときおり、視界の外から飛んでくる角度のパンチも混ざっています。これをブロックだけで凌ぐのは限界があります。こちらも同じ速さで対応を重ねないと間に合わない。すごい攻撃です。

村田さんの打開策はボディー打ちになるわけですが、村田さんのボディー打ちは強力ではあるものの「その後の追撃」はありません。ゴロフキンはボディー打ちに対してはヒジを下げて腰を引いて守り、逆に村田さんの打ち終わりにアッパーや上からのフックで狙って来ます。「早くも対処された」という感触。はたして、その対処を上回るような一発を当てられるかどうか。

第4ラウンド、村田さんの額は内出血で赤くなっています。すでに相当の数のジャブを浴びていることがわかります。このラウンド中盤には連打を浴びて村田さんがグラッとする場面も。手数でも圧倒されており、じょじょに苦しくなってきました。それでもラウンド終盤には一発当てたところからゴロフキンをコーナーに詰める場面も作ります。まだ戦えています。

第5ラウンド、立ち上がりの連打で村田さんのヒザが一瞬沈みます。先にポイントにつながる攻めを見せたあとは、距離を取ってやや休むようなペース配分を見せるゴロフキンの試合巧者ぶりも光ります。遠めの距離ではリーチが長い村田さんが有利そうなものですが、ゴロフキンの当て感が素晴らしく、飛び込みながらスパーンと顔面をとらえる場面も。村田さんは動き自体が乏しくなってきており、翻弄され始めました。

第6ラウンド、ゴロフキンの右フックで村田さんはマウスピースを飛ばしました。マウスピースを飛ばしたパンチは、左のアゴが折れていてもおかしくないような一撃でした。前のラウンドでもマウスピースがこぼれ落ちそうな場面がありましたが、それだけ強いパンチを浴びているということでしょう。ペースは完全にゴロフキン。ここからは根性です。

第7ラウンド、中間距離ではゴロフキンのパンチだけが当たり、村田さんのパンチは空を切らされるという状態に。近づいてボディーを打ちたいところですが、近づく前に強いパンチが連続で飛んできてままなりません。ラウンド中盤にはロープを背負ってしまう場面も。表情も朦朧としてきました。

第8ラウンド、ゴロフキンは前に出て村田さんを追い詰め始めます。ロープを背負って連打を浴びる場面も。それでも、何度も自分を救ってきたワンツーからの右ストレートで村田さんも押し返します。ときおりゴロフキンをとらえた場面では、確実に効いています。闘志はまだ消えていません。

第9ラウンド、チカラを振り絞って先制パンチを放つ村田さんですが、ゴロフキンはそこにカウンターを合わせてきました。凄い反応です。これでグラッときた村田さんは、コーナーまで後退し連打を浴びます。攻め立てるゴロフキン。朦朧としながらも反撃を試みる村田さん。いつしか声援禁止の場内では、村田コールが始まっていました。観客自身を守るためのルールである「声援禁止」を守ることよりも、今戦っている村田さんを後押ししたいという気持ちが上回っていました。それだけ心を動かす熱戦でした。

その声援が最後のチカラとなるように、村田さんは攻めます。右ストレートが、右フックが、ゴロフキンをとらえます。ゴロフキンを後退させます。しかし、最後はチカラ尽きました。ラウンド冒頭と同じような形での村田さんの左に合わせるカウンターが決まり、村田さんはゴロフキンに背を向けて棒立ちになってしまいます。一瞬、意識も切られたでしょうか。背後からのゴロフキンの追撃は空を切りますが、村田さんはリングに崩れ落ちます。それと同時に陣営からタオルが投入され、試合は終わりました。

↓タオル投入は止む無し!最後のパンチが当たらなくてよかった!


タオルを投入しなければ村田さんはまだ立ち上がっていたかもしれませんが、「試し」としてはすでに負けていたかなと率直に思います。中盤以降は試合を支配され、一方的な展開でした。ボクシングですから「一発」の可能性は常にあるものの、そうなってもいいようなパンチが何度か当たってもゴロフキンは崩れなかった。村田さんが相手に背を向けてスタンディングダウンのような状態になったタイミングは、試合を止めるべき頃合いだったと思います。これは殺し合いではなくスポーツなのですから。

そのスポーツ的な判断のおかげで、両者はリングで互いを讃え合える状態で試合を終えることができました。ベルトはゴロフキンのもとに渡ったものの、ゴロフキンのガウンは敬意の証として村田さんに渡されました。素晴らしい試合の記憶が日本に残り、その試合を作った選手がそれぞれ自分の足でリングを降りました。よく戦い、よく終えた、そう思います。村田さんが強いことがわかり、ゴロフキンは凄まじく強いことがわかった、いい試合でした!

↓これぞ「スポーツの試合」の終わりです!
お疲れ様、お帰りなさい!

素晴らしい試合をありがとう!



ボクシングというのはいろいろな思惑が重なり合うスポーツです。毎年世界選手権が行なわれる類のスポーツではなく、戦いたい相手と必ず戦えるわけでもありません。王者は自分にふさわしい相手を選び、挑戦者は少ない機会を待つほかありません。お金や契約、さまざまな障壁があります。特に今はコロナ禍でもあり、試合にたどり着くことすら容易ではない道のりです。

世界一の相手と戦いたいと思えば、まず自分が「世界一かもしれない」と並び立つくらいの選手でなければなりません。ロンドン五輪の金メダル、ミドル級での戴冠、日本で歴史を作ったボクサーとしての評判、長い長い待ち時間、すべてを重ねて村田さんはそこまでたどり着きました。それだけのものを重ねられたこと、そこにたどり着けたことは、村田さんが素晴らしいボクサーであることを証明しています。村田さんが素晴らしく強かったから「ゴロフキンと戦って負けることができた」のです。挑むことさえできずに終わるのではなく。

僕はこの試合に映画「ロッキー」のラストシーンが重なるような気持ちで見ていました。華麗で強いゴロフキンと、気持ちで喰らいついていく村田さんと、そして最後に芽生えた友情のようなものが、まさに映画のような終わり方だったと思います。映画のラストでは、対戦したアポロとロッキーが「再戦はごめんだ」「俺もだ」と抱き合いますが、この試合もそういう試合であればいいなと思います。互いにチカラを発揮して「もうごめんだ」と思えるくらいの試合であればいいなと思います。再戦は現実的におそらくないだろうと思いますが、再戦がないことも含めて美しい記憶となるような、そんな試合であればいいなと思います!


これでもゴロフキンは全盛期ほどではないんですから、頂点は高いですね!

YouTubeチャンネル登録者180万人超の朝倉未来さんには不要でも、他選手と業界のため技術としてのタップを駆使してほしい件。

12:00
タップする選択は欲しかったです!

なかなか衝撃的なものを見ました。13日にフジテレビで生中継された総合格闘技イベント「RIZIN」でのこと。注目カードのひとつであった、YouTube等で人気の格闘家・朝倉未来さん(※みくると読みます)の試合で、失神KOという格闘技らしい決着を見たのです。緊急事態宣言下での東京ドームギチギチ開催というよもやの舞台設定とあいまって、令和に甦る昭和とでも言うような懐かしさと、情報バラエティ(※バイキング等)から厳しい声が上がるのではないかという懸念で、ドキドキが止まらない一戦でした。



試合自体はまさしくエキサイティングなものでした。打撃を得意とする朝倉未来さんと、寝技・組み技を得意とするブラジル人柔術家クレベル・コイケさんによる対戦ですが、打撃VS寝技の構図は序盤から鮮明です。朝倉未来さんはひたすら打撃の構えで、相手の踏み込みに対してカウンターを合わせようという狙いです。タックルや組みつきをかなり警戒しているようで体重は後ろに掛かり気味となっており、自分から攻めていくような場面は見られません。意図が非常にわかりやすく、一触即発の緊張感がある姿勢です。伊達にYouTubeチャンネル登録者数180万人を超えてはいません。剣豪のような佇まいです。

クレベルは打撃自体はそれほど上手くなさそうですが、朝倉未来さんが前に出てこないのでローキックを中心に嫌がらせをつづけます。ストライカーに対して足を蹴るのはセオリーですので、いかにクレベルが打撃が得意ではないと言っても標準以上には蹴ってきます。その攻防のなかで朝倉未来さんが後退すると、クレベルは一気にコーナーに追い詰めるようにして組みついてきます。飛びついて、引き込んで、三角絞め(※相手の片腕を取って、両足で頭と肩を挟み、頸動脈を絞める技)の構え。朝倉未来さんは寝技は回避に専念し、すぐさま立ち上がります。

そこから打撃での攻防の時間がつづきますが、やはり朝倉未来さんは前には出ません。打撃のなかでもパンチが得意なのか、中距離での攻防においてもローキックが出る場面はほとんどありません。「パンチが届かない距離でカウンター狙い」という構えのため、ほぼ一方的にクレベルのローで蹴られつづけます。このあたりは「足を斬らせて、骨を断つ」の心でしょうか。むしろクレベルが前進してくることが両者の接触のきっかけとなるかのようです。

1ラウンドの中盤にも再びコーナーで組みつかれると、投げでリングに叩きつけられた朝倉未来さん。二度目のグラウンドでの攻防も、回避に専念して立ち上がると、ラウンド終盤になってようやく前進してのパンチなども出始めます。残り10秒であれば、よしんば組みつかれてもグラウンドで決められることはないという冷静かつ的確な判断でしょうか。得意・不得意のハッキリした戦いで、勝負は「一瞬」だなと固唾を飲まずにはいられません。

↓不得意場面になれば一気に決着がつきそうな、メインにふさわしい緊張感ある試合です!

この緊張感はあの伝説の曙VSボブ・サップ戦以来!

令和格闘技界最大の一戦です!

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第2ラウンド、朝倉未来さんの右足はかなり赤くなっています。クレベルはあえてミドルキックなどで意識を上にもっていってからローを蹴るという繰り返しで、朝倉未来さんの動きを封じていきます。朝倉未来さんは明らかにローを嫌がる表情で、コーナーに後退していきます。あるいはクレベルの意識を攻撃に向けさせる罠だったでしょうか。そのあたりの真相は定かではありませんが、クレベルはコーナーに詰まった朝倉さんにタックルで組みつくと、コーナーに押しつけながらヒザ蹴りやヒジ打ちを飛ばし、ヒジをかなり顔面に強く入れてきます。さらにクレベルは朝倉未来さんに抱きつくと、引き込んで寝技に持ち込みます。どこまでが朝倉さんの仕掛けた罠かわかりませんが、勝負は再びグラウンドの攻防へ。

1ラウンドでの二度の寝技の攻防では、チカラで振りほどいた朝倉未来さんでしたが、この三度目は少し様子が違います。朝倉未来さんの右手と頭を抱えたクレベルは、自由になっている朝倉未来さんの左手をつかんで大きく開かせると、その隙間から自分の右足を通してきました。この左手が身体についたままであれば、クレベルも腕が邪魔になって強く絞められないので、何とか自由な左手を処理したいわけですが、朝倉未来さんはその動きにハメられてしまいました。クレベルの流派・ボンサイ柔術秘伝の技術に違いありません。罠と罠との応酬のなかでクレベルにはこの秘策があったのか。「朝倉対策」として用意してきたであろう秘策に、「やられた」と唸るしかありません。

これでガッチリとクレベルの三角絞めが決まり、朝倉未来さんは胸を張って上体を反らして抵抗することも、腕を突いて抵抗することもできない態勢。もはや脱出不可能と見えましたが、朝倉未来さんは戦前のコメント通りに「簡単にタップはしない」と試合を続行していました。絞めを仕掛けるクレベルは朝倉未来さんに呼び掛けながら、何やら叫んでいます。放送では理解できませんでしたが「タップしろ!」という呼び掛けだったでしょうか。もちろんそのような呼び掛けに朝倉未来さんが応じるはずはありませんが。

呼び掛けがつづいた数秒後、朝倉未来さんの身体が明らかに脱力しました。張っていた腕が緩み、動きが止まります。クレベルは技を緩めて朝倉未来さんの顔面をのぞき込み、指で顔を叩きました。朝倉未来さんの意識があるかを確認していたのでしょう。反応がないと見るや、クレベルはレフェリーの裁定を待たずに自ら技を解くと、朝倉未来さんに向かって今度は「しっかりしろ!」とでも言わんばかりに声をかけます。

試合はこのまま終了となり、生中継のカメラには朝倉未来さんのうつろな表情と、大きく腫れ上がった右顔面が映し出されていました。本人的には「完全な失神ではない」という段階かもしれませんが、いわゆる「落ちた」という状態ではあったのでしょう。完敗でした。かつてのPRIDE全盛期でも「下からの三角絞めが決まる」などという場面はほとんど見られなかったなかで、これをやってのける。しかもRIZIN最強という評判の朝倉未来さんを相手にやってのけるとは恐るべき対戦相手です。解説席で高田延彦さん(※かつてグレイシー柔術最強の男ヒクソン・グレイシーと二度の死闘を演じた伝説的格闘家)が「日本の格闘技の中心が静岡に移ったね!」と興奮するのも納得です。

クレベルという選手はおそらく人類最強クラスの選手なのでしょう。でなければ、YouTubeチャンネル登録者数180万人を超える朝倉未来さんを相手にこれほどの試合はできないはずです。もちろん朝倉未来さんも必殺のカウンターが決まれば、一撃で相手を仕留めるチャンスは当然あったと思いますが、この日は紙一重の差でクレベルが上回ったということなのかなと思います。少しの幸運がクレベルに味方した、そういう言い方もできるのかなと。まさに総合格闘技の技術の進化を感じずにはいられない一戦でした。人類最強VS人類2位の対決を見た、そんな満足感でいっぱいです。

↓このような厳しい試合のあとでもしっかりとインタビューに応じる朝倉未来さん、さすがです!


「結果的に(相手が)強かったなと」
「今後は一度考えます」
「引退を含めて考えてみてって感じ」
「最後はちょっと油断した」
「タップする選択はなかった」
「自分への自分自身の幻想が打ち砕かれた」

油断、油断があったのは反省点!

ただし、タップする選択はありませんでした!

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もちろんYouTubeチャンネル登録者数180万人を超える朝倉未来さんにしてみれば、この程度の絞めでどうこうということはないのでしょうが、視聴者からのお願いとしては、やはりタップをしてほしかったなと思います。朝倉未来さんにはその必要はなかったことは理解していますし、死の淵から甦るたびにYouTubeチャンネル登録者数が増していくという特性もあるとは思いますが、やはり今はコンプライアンスも厳しい時代ですし、何よりも安心安全を追求しなければいけないという意識が高まる時代です。

「タップしない」というのは朝倉未来さんのような存在にだけ可能な話であって、一般の人類であればほんの数秒頸動脈を絞められただけで意識を失い、その後は「死」を含めた危険が待っています。本物の殺し合いではなく格闘技としての戦いを見せる場合、そういった危険を避ける姿勢というのは必要でしょう。特に一般的人類選手には。

相手を殴る、絞める、そういった危険性やスリリングな攻防というのをエンターテインメントとして楽しむには、「危険性に勝る技術」というのが求められます。危険性はあるし、リスクはゼロではないけれど、それを上回る技術があります、という保証が。そのひとつが相手の技を容易にもらわないという、この試合でも朝倉未来さんが存分に見せつけた回避や防御の技術ですが、もうひとつがやはりタップの技術だろうと思います。

この態勢は詰んだ、そう思ったときに相手が頸動脈を絞める数秒より先にタップを繰り出す、その技術。将棋の棋士も、視聴者や解説が決着を予感するより早く、AIと同じようなスピードで「参りました」を繰り出しますが、ああいった技術は格闘技にも求められるものだろうと思います。YouTubeチャンネル登録者数180万人を超える朝倉未来さんにとってはそこからが真の見せ場であったとしても、ほかの一般的人類選手や業界全体を考えたときには、人類最強クラスのトップ選手の使命として「決まったことはわかっています」「危険を回避するためにタップしますね」「はい、何事もありませんでした」と示すことは必要であっただろうと。

それはある意味で、何も起きないうちから負けを認めるような煮え切らない決着であり、朝倉未来さんが望む戦いではないかもしれませんが、弱い選手も含めた全員のために今後はぜひタップをしてもらいたいなと思います。子どもたちや技術に乏しいものが朝倉未来さんに憧れて、タップしない精神だけを受け継いだら「死」を含めた危険に見舞われ、格闘技自体がなくなってしまうかもしれません。よしんばその結果として、最初に抱き合った瞬間にタップする、あるいは前日記者会見でタップするということになったとしても、殺し合いではない以上、致し方ないことだろうと思うのです。

そうした早すぎる決着に対して、僕らファンも「さすが朝倉未来さん」「組み合っただけでチカラを見抜いた」「AIを超える驚異の分析」と受け止められるよう、観戦技術を身につけていかなければいけないなと思います。安心安全に危険性を楽しむために必要な「技術」を全員で身につけ、これからも格闘技というエンターテインメントを堪能していきたいもの。今年の流行語大賞に「三角絞め」が入る勢いで、積極的に三角絞め対策を学んでいくしかないですね!

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