スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム

格闘技

死力を尽くす真剣勝負と笑顔あふれる和やかさを兼ね備え、まさしく「スポーツの試合」だった村田諒太VSゲンナジー・ゴロフキン戦の巻。

08:00
リングから無事に降りるまでが試合です!

日本ボクシングの歴史に残る最大の試合でした。9日、さいたまスーパーアリーナで行なわれた村田諒太さんとゲンナジー・ゴロフキンとの試合。それぞれが持つWBA王座とIBF王座をかけて行なわれる世界ミドル級の王座統一戦は、地上最高の舞台で行なわれる、夢のような試合でした。

そして、とてもスポーツらしい試合でした。

今、世界にはスポーツなどなくても「戦い」はあふれています。それこそ生命を賭けて行なうような戦いについても情報があふれ、日々世界で目撃されつづけています。ただ、スポーツも戦いと呼ばれる類のものでありながらも、今世界にあふれている戦いとはまったく性質が異なるのだということを、この試合は雄弁に物語っていました。

この試合が素晴らしいものになると確信したのは、前日計量での両者の佇まいでした。Tシャツを脱いだゴロフキンの肉体の凄まじい仕上がり具合に息を飲みました。胸から腹の筋肉の仕上がりはもちろん、背中から脇腹にかけて広がる翼のような筋肉の分厚さ。身長は決して大柄ではないにも関わらず、これが本当に同じ階級かと思うほどデカくて分厚い。同じ場に立つ村田さんが華奢に見えるほどでした。


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当然のこととして計量をパスした両者は、しばし睨み合ったのち、笑顔で握手を交わし、たまたまタイミングが重なったゴロフキンの誕生日を祝いました。戦いの前には似つかわしくない光景かもしれませんが、これぞスポーツの試合だなと思いました。

両者に緩みや慢心はありませんでした。村田さんは憧れのボクサーに挑戦する立場として当然そうですし、ゴロフキンもまた素晴らしい肉体の仕上がりでこの一戦への意欲を示しました。紛うことなき真剣勝負の佇まいでした。一方で、笑顔で握手をし、誕生日のお祝いもしました。お互いへの敬意を失わず、終始和やかな佇まいでした。

翌日にはリングで殴り合いをするふたりです。勝者は敗者から名誉とベルトを奪い取ります。ミドル級の拳であれば「死」すら可能性としてはあり得るスポーツです。ふたりはそういう日への準備を万端にしつつ、それでも和やかだったのです。これがルール無用の「戦い」と「試合」との違いだなと思います。

スポーツで競い合うことを「試合」「テストマッチ」と呼ぶのは、あくまでもこれは「試し」であるからです。自分のチカラを鍛え、相手を乗り越えるような工夫を重ね、実際にそれを試す。そこで試すのは己のチカラであり、対戦相手や試合結果はそれを図るものさしに過ぎません。ボクシングのような、ときに危険を伴う格闘技であってもそれは変わりません。試すのはあくまでも己であり、対戦相手は自分にその機会をくれるかけがえのないパートナー。奪い合い、憎しみ合う敵ではない。真剣勝負と和やかさが共存した両者の素晴らしい佇まいには、そういう姿勢がありました。これが素晴らしい「試合」にならないはずがないのです。




下馬評は圧倒的にゴロフキンです。仕方ありません。相手は「歴史上で」トップを争うような偉大な王者です。村田さんももちろん強いが、相手はとてつもなく強い。とにかくパンチの多彩さと的確さは凄まじく、小さく素早いジャブでさえも試合を決めてしまうほどのパワーも持ち合わせています。映像で見るゴロフキンが現実に現れたら、ちょっと勝ち目はないように思われました。

ただ、村田さんも歴史を作ってきた日本最強のボクサーです。ある程度打たれることは覚悟のうえで、持ち前のタフネスと、一発で流れを変えるパンチでどこまで喰らいついていけるか。鍵となるのは村田さん得意のボディー打ちでしょう。顔面の殴り合いではおそらく勝ち筋が無いので、ボディーで仕留める、そういう戦い方をしていきたいところ。

ベルトを掲げて入場してくる村田陣営。2年4ヶ月という長い空白を経てようやくたどり着いた夢の舞台。引き締まった表情です。ゴロフキンはおなじみの登場曲に乗って軽快に入場してきます。余裕さえ感じさせます。カザフスタン国歌と君が代が流れ、気持ちも厳かに高まります。

そして始まった試合。まずは第1ラウンド、先に手を出したのはゴロフキンでした。あいさつ代わりの左のジャブは、あいさつだけで試合を終わらせかねない破壊力で村田さんの顔面をとらえます。ガードの隙間を的確に狙い、少しでもガードを下げればすかさず岩のような拳が飛んでくる。凄まじいパンチです。

村田さんはそれでも前に出ます。それがスタイルです。前に出て、距離を詰め、左のボディでいいのを当てます。このボディを受け、一歩飛び退いたゴロフキン。狙っていたパンチが決まった瞬間だったでしょうか。まずは村田陣営としては狙い通りの立ち上がりができ、「手応えあり」と言ったところ。

コーナーに引きあげてきた来た村田さんには笑顔も見えます。それはこの試合が実現したことと、自分がそこで戦えていることを喜ぶかのようでした。しかし、笑顔とは対照的に早くも鼻骨のあたりに亀裂が入り、血が滲んでいます。ジャブで割れたものでしょう。もしかしたら笑いの一部は「すげぇな」というニュアンスだったかもしれません。さて、どこまで耐えて、どこまで叩けるか。

第2ラウンド、村田さんは右ストレートでゴロフキンのボディを叩きます。これも狙っていたパンチでしょうか。ゴロフキンは嫌がる素振りで、腰を引いて守ります。ボディを意識するゴロフキンに対しては、二の矢として右のアッパーを放ちます。これも狙っていた展開でしょうか。村田さんがよく押しています。通用しています。

第3ラウンド、ラウンド頭に猛攻を見せるゴロフキン。ジャブを印象付けたところで、顔面を守る村田さんをあざ笑うようにフックで横から打ち、身体をかがめて守る村田さんを今度はアッパーで起こし、起こしたところでボディーを叩く。理屈でつながったパンチが、隙間から的確に飛んできます。しかもときおり、視界の外から飛んでくる角度のパンチも混ざっています。これをブロックだけで凌ぐのは限界があります。こちらも同じ速さで対応を重ねないと間に合わない。すごい攻撃です。

村田さんの打開策はボディー打ちになるわけですが、村田さんのボディー打ちは強力ではあるものの「その後の追撃」はありません。ゴロフキンはボディー打ちに対してはヒジを下げて腰を引いて守り、逆に村田さんの打ち終わりにアッパーや上からのフックで狙って来ます。「早くも対処された」という感触。はたして、その対処を上回るような一発を当てられるかどうか。

第4ラウンド、村田さんの額は内出血で赤くなっています。すでに相当の数のジャブを浴びていることがわかります。このラウンド中盤には連打を浴びて村田さんがグラッとする場面も。手数でも圧倒されており、じょじょに苦しくなってきました。それでもラウンド終盤には一発当てたところからゴロフキンをコーナーに詰める場面も作ります。まだ戦えています。

第5ラウンド、立ち上がりの連打で村田さんのヒザが一瞬沈みます。先にポイントにつながる攻めを見せたあとは、距離を取ってやや休むようなペース配分を見せるゴロフキンの試合巧者ぶりも光ります。遠めの距離ではリーチが長い村田さんが有利そうなものですが、ゴロフキンの当て感が素晴らしく、飛び込みながらスパーンと顔面をとらえる場面も。村田さんは動き自体が乏しくなってきており、翻弄され始めました。

第6ラウンド、ゴロフキンの右フックで村田さんはマウスピースを飛ばしました。マウスピースを飛ばしたパンチは、左のアゴが折れていてもおかしくないような一撃でした。前のラウンドでもマウスピースがこぼれ落ちそうな場面がありましたが、それだけ強いパンチを浴びているということでしょう。ペースは完全にゴロフキン。ここからは根性です。

第7ラウンド、中間距離ではゴロフキンのパンチだけが当たり、村田さんのパンチは空を切らされるという状態に。近づいてボディーを打ちたいところですが、近づく前に強いパンチが連続で飛んできてままなりません。ラウンド中盤にはロープを背負ってしまう場面も。表情も朦朧としてきました。

第8ラウンド、ゴロフキンは前に出て村田さんを追い詰め始めます。ロープを背負って連打を浴びる場面も。それでも、何度も自分を救ってきたワンツーからの右ストレートで村田さんも押し返します。ときおりゴロフキンをとらえた場面では、確実に効いています。闘志はまだ消えていません。

第9ラウンド、チカラを振り絞って先制パンチを放つ村田さんですが、ゴロフキンはそこにカウンターを合わせてきました。凄い反応です。これでグラッときた村田さんは、コーナーまで後退し連打を浴びます。攻め立てるゴロフキン。朦朧としながらも反撃を試みる村田さん。いつしか声援禁止の場内では、村田コールが始まっていました。観客自身を守るためのルールである「声援禁止」を守ることよりも、今戦っている村田さんを後押ししたいという気持ちが上回っていました。それだけ心を動かす熱戦でした。

その声援が最後のチカラとなるように、村田さんは攻めます。右ストレートが、右フックが、ゴロフキンをとらえます。ゴロフキンを後退させます。しかし、最後はチカラ尽きました。ラウンド冒頭と同じような形での村田さんの左に合わせるカウンターが決まり、村田さんはゴロフキンに背を向けて棒立ちになってしまいます。一瞬、意識も切られたでしょうか。背後からのゴロフキンの追撃は空を切りますが、村田さんはリングに崩れ落ちます。それと同時に陣営からタオルが投入され、試合は終わりました。

↓タオル投入は止む無し!最後のパンチが当たらなくてよかった!


タオルを投入しなければ村田さんはまだ立ち上がっていたかもしれませんが、「試し」としてはすでに負けていたかなと率直に思います。中盤以降は試合を支配され、一方的な展開でした。ボクシングですから「一発」の可能性は常にあるものの、そうなってもいいようなパンチが何度か当たってもゴロフキンは崩れなかった。村田さんが相手に背を向けてスタンディングダウンのような状態になったタイミングは、試合を止めるべき頃合いだったと思います。これは殺し合いではなくスポーツなのですから。

そのスポーツ的な判断のおかげで、両者はリングで互いを讃え合える状態で試合を終えることができました。ベルトはゴロフキンのもとに渡ったものの、ゴロフキンのガウンは敬意の証として村田さんに渡されました。素晴らしい試合の記憶が日本に残り、その試合を作った選手がそれぞれ自分の足でリングを降りました。よく戦い、よく終えた、そう思います。村田さんが強いことがわかり、ゴロフキンは凄まじく強いことがわかった、いい試合でした!

↓これぞ「スポーツの試合」の終わりです!
お疲れ様、お帰りなさい!

素晴らしい試合をありがとう!



ボクシングというのはいろいろな思惑が重なり合うスポーツです。毎年世界選手権が行なわれる類のスポーツではなく、戦いたい相手と必ず戦えるわけでもありません。王者は自分にふさわしい相手を選び、挑戦者は少ない機会を待つほかありません。お金や契約、さまざまな障壁があります。特に今はコロナ禍でもあり、試合にたどり着くことすら容易ではない道のりです。

世界一の相手と戦いたいと思えば、まず自分が「世界一かもしれない」と並び立つくらいの選手でなければなりません。ロンドン五輪の金メダル、ミドル級での戴冠、日本で歴史を作ったボクサーとしての評判、長い長い待ち時間、すべてを重ねて村田さんはそこまでたどり着きました。それだけのものを重ねられたこと、そこにたどり着けたことは、村田さんが素晴らしいボクサーであることを証明しています。村田さんが素晴らしく強かったから「ゴロフキンと戦って負けることができた」のです。挑むことさえできずに終わるのではなく。

僕はこの試合に映画「ロッキー」のラストシーンが重なるような気持ちで見ていました。華麗で強いゴロフキンと、気持ちで喰らいついていく村田さんと、そして最後に芽生えた友情のようなものが、まさに映画のような終わり方だったと思います。映画のラストでは、対戦したアポロとロッキーが「再戦はごめんだ」「俺もだ」と抱き合いますが、この試合もそういう試合であればいいなと思います。互いにチカラを発揮して「もうごめんだ」と思えるくらいの試合であればいいなと思います。再戦は現実的におそらくないだろうと思いますが、再戦がないことも含めて美しい記憶となるような、そんな試合であればいいなと思います!


これでもゴロフキンは全盛期ほどではないんですから、頂点は高いですね!

YouTubeチャンネル登録者180万人超の朝倉未来さんには不要でも、他選手と業界のため技術としてのタップを駆使してほしい件。

12:00
タップする選択は欲しかったです!

なかなか衝撃的なものを見ました。13日にフジテレビで生中継された総合格闘技イベント「RIZIN」でのこと。注目カードのひとつであった、YouTube等で人気の格闘家・朝倉未来さん(※みくると読みます)の試合で、失神KOという格闘技らしい決着を見たのです。緊急事態宣言下での東京ドームギチギチ開催というよもやの舞台設定とあいまって、令和に甦る昭和とでも言うような懐かしさと、情報バラエティ(※バイキング等)から厳しい声が上がるのではないかという懸念で、ドキドキが止まらない一戦でした。



試合自体はまさしくエキサイティングなものでした。打撃を得意とする朝倉未来さんと、寝技・組み技を得意とするブラジル人柔術家クレベル・コイケさんによる対戦ですが、打撃VS寝技の構図は序盤から鮮明です。朝倉未来さんはひたすら打撃の構えで、相手の踏み込みに対してカウンターを合わせようという狙いです。タックルや組みつきをかなり警戒しているようで体重は後ろに掛かり気味となっており、自分から攻めていくような場面は見られません。意図が非常にわかりやすく、一触即発の緊張感がある姿勢です。伊達にYouTubeチャンネル登録者数180万人を超えてはいません。剣豪のような佇まいです。

クレベルは打撃自体はそれほど上手くなさそうですが、朝倉未来さんが前に出てこないのでローキックを中心に嫌がらせをつづけます。ストライカーに対して足を蹴るのはセオリーですので、いかにクレベルが打撃が得意ではないと言っても標準以上には蹴ってきます。その攻防のなかで朝倉未来さんが後退すると、クレベルは一気にコーナーに追い詰めるようにして組みついてきます。飛びついて、引き込んで、三角絞め(※相手の片腕を取って、両足で頭と肩を挟み、頸動脈を絞める技)の構え。朝倉未来さんは寝技は回避に専念し、すぐさま立ち上がります。

そこから打撃での攻防の時間がつづきますが、やはり朝倉未来さんは前には出ません。打撃のなかでもパンチが得意なのか、中距離での攻防においてもローキックが出る場面はほとんどありません。「パンチが届かない距離でカウンター狙い」という構えのため、ほぼ一方的にクレベルのローで蹴られつづけます。このあたりは「足を斬らせて、骨を断つ」の心でしょうか。むしろクレベルが前進してくることが両者の接触のきっかけとなるかのようです。

1ラウンドの中盤にも再びコーナーで組みつかれると、投げでリングに叩きつけられた朝倉未来さん。二度目のグラウンドでの攻防も、回避に専念して立ち上がると、ラウンド終盤になってようやく前進してのパンチなども出始めます。残り10秒であれば、よしんば組みつかれてもグラウンドで決められることはないという冷静かつ的確な判断でしょうか。得意・不得意のハッキリした戦いで、勝負は「一瞬」だなと固唾を飲まずにはいられません。

↓不得意場面になれば一気に決着がつきそうな、メインにふさわしい緊張感ある試合です!

この緊張感はあの伝説の曙VSボブ・サップ戦以来!

令和格闘技界最大の一戦です!

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第2ラウンド、朝倉未来さんの右足はかなり赤くなっています。クレベルはあえてミドルキックなどで意識を上にもっていってからローを蹴るという繰り返しで、朝倉未来さんの動きを封じていきます。朝倉未来さんは明らかにローを嫌がる表情で、コーナーに後退していきます。あるいはクレベルの意識を攻撃に向けさせる罠だったでしょうか。そのあたりの真相は定かではありませんが、クレベルはコーナーに詰まった朝倉さんにタックルで組みつくと、コーナーに押しつけながらヒザ蹴りやヒジ打ちを飛ばし、ヒジをかなり顔面に強く入れてきます。さらにクレベルは朝倉未来さんに抱きつくと、引き込んで寝技に持ち込みます。どこまでが朝倉さんの仕掛けた罠かわかりませんが、勝負は再びグラウンドの攻防へ。

1ラウンドでの二度の寝技の攻防では、チカラで振りほどいた朝倉未来さんでしたが、この三度目は少し様子が違います。朝倉未来さんの右手と頭を抱えたクレベルは、自由になっている朝倉未来さんの左手をつかんで大きく開かせると、その隙間から自分の右足を通してきました。この左手が身体についたままであれば、クレベルも腕が邪魔になって強く絞められないので、何とか自由な左手を処理したいわけですが、朝倉未来さんはその動きにハメられてしまいました。クレベルの流派・ボンサイ柔術秘伝の技術に違いありません。罠と罠との応酬のなかでクレベルにはこの秘策があったのか。「朝倉対策」として用意してきたであろう秘策に、「やられた」と唸るしかありません。

これでガッチリとクレベルの三角絞めが決まり、朝倉未来さんは胸を張って上体を反らして抵抗することも、腕を突いて抵抗することもできない態勢。もはや脱出不可能と見えましたが、朝倉未来さんは戦前のコメント通りに「簡単にタップはしない」と試合を続行していました。絞めを仕掛けるクレベルは朝倉未来さんに呼び掛けながら、何やら叫んでいます。放送では理解できませんでしたが「タップしろ!」という呼び掛けだったでしょうか。もちろんそのような呼び掛けに朝倉未来さんが応じるはずはありませんが。

呼び掛けがつづいた数秒後、朝倉未来さんの身体が明らかに脱力しました。張っていた腕が緩み、動きが止まります。クレベルは技を緩めて朝倉未来さんの顔面をのぞき込み、指で顔を叩きました。朝倉未来さんの意識があるかを確認していたのでしょう。反応がないと見るや、クレベルはレフェリーの裁定を待たずに自ら技を解くと、朝倉未来さんに向かって今度は「しっかりしろ!」とでも言わんばかりに声をかけます。

試合はこのまま終了となり、生中継のカメラには朝倉未来さんのうつろな表情と、大きく腫れ上がった右顔面が映し出されていました。本人的には「完全な失神ではない」という段階かもしれませんが、いわゆる「落ちた」という状態ではあったのでしょう。完敗でした。かつてのPRIDE全盛期でも「下からの三角絞めが決まる」などという場面はほとんど見られなかったなかで、これをやってのける。しかもRIZIN最強という評判の朝倉未来さんを相手にやってのけるとは恐るべき対戦相手です。解説席で高田延彦さん(※かつてグレイシー柔術最強の男ヒクソン・グレイシーと二度の死闘を演じた伝説的格闘家)が「日本の格闘技の中心が静岡に移ったね!」と興奮するのも納得です。

クレベルという選手はおそらく人類最強クラスの選手なのでしょう。でなければ、YouTubeチャンネル登録者数180万人を超える朝倉未来さんを相手にこれほどの試合はできないはずです。もちろん朝倉未来さんも必殺のカウンターが決まれば、一撃で相手を仕留めるチャンスは当然あったと思いますが、この日は紙一重の差でクレベルが上回ったということなのかなと思います。少しの幸運がクレベルに味方した、そういう言い方もできるのかなと。まさに総合格闘技の技術の進化を感じずにはいられない一戦でした。人類最強VS人類2位の対決を見た、そんな満足感でいっぱいです。

↓このような厳しい試合のあとでもしっかりとインタビューに応じる朝倉未来さん、さすがです!


「結果的に(相手が)強かったなと」
「今後は一度考えます」
「引退を含めて考えてみてって感じ」
「最後はちょっと油断した」
「タップする選択はなかった」
「自分への自分自身の幻想が打ち砕かれた」

油断、油断があったのは反省点!

ただし、タップする選択はありませんでした!

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もちろんYouTubeチャンネル登録者数180万人を超える朝倉未来さんにしてみれば、この程度の絞めでどうこうということはないのでしょうが、視聴者からのお願いとしては、やはりタップをしてほしかったなと思います。朝倉未来さんにはその必要はなかったことは理解していますし、死の淵から甦るたびにYouTubeチャンネル登録者数が増していくという特性もあるとは思いますが、やはり今はコンプライアンスも厳しい時代ですし、何よりも安心安全を追求しなければいけないという意識が高まる時代です。

「タップしない」というのは朝倉未来さんのような存在にだけ可能な話であって、一般の人類であればほんの数秒頸動脈を絞められただけで意識を失い、その後は「死」を含めた危険が待っています。本物の殺し合いではなく格闘技としての戦いを見せる場合、そういった危険を避ける姿勢というのは必要でしょう。特に一般的人類選手には。

相手を殴る、絞める、そういった危険性やスリリングな攻防というのをエンターテインメントとして楽しむには、「危険性に勝る技術」というのが求められます。危険性はあるし、リスクはゼロではないけれど、それを上回る技術があります、という保証が。そのひとつが相手の技を容易にもらわないという、この試合でも朝倉未来さんが存分に見せつけた回避や防御の技術ですが、もうひとつがやはりタップの技術だろうと思います。

この態勢は詰んだ、そう思ったときに相手が頸動脈を絞める数秒より先にタップを繰り出す、その技術。将棋の棋士も、視聴者や解説が決着を予感するより早く、AIと同じようなスピードで「参りました」を繰り出しますが、ああいった技術は格闘技にも求められるものだろうと思います。YouTubeチャンネル登録者数180万人を超える朝倉未来さんにとってはそこからが真の見せ場であったとしても、ほかの一般的人類選手や業界全体を考えたときには、人類最強クラスのトップ選手の使命として「決まったことはわかっています」「危険を回避するためにタップしますね」「はい、何事もありませんでした」と示すことは必要であっただろうと。

それはある意味で、何も起きないうちから負けを認めるような煮え切らない決着であり、朝倉未来さんが望む戦いではないかもしれませんが、弱い選手も含めた全員のために今後はぜひタップをしてもらいたいなと思います。子どもたちや技術に乏しいものが朝倉未来さんに憧れて、タップしない精神だけを受け継いだら「死」を含めた危険に見舞われ、格闘技自体がなくなってしまうかもしれません。よしんばその結果として、最初に抱き合った瞬間にタップする、あるいは前日記者会見でタップするということになったとしても、殺し合いではない以上、致し方ないことだろうと思うのです。

そうした早すぎる決着に対して、僕らファンも「さすが朝倉未来さん」「組み合っただけでチカラを見抜いた」「AIを超える驚異の分析」と受け止められるよう、観戦技術を身につけていかなければいけないなと思います。安心安全に危険性を楽しむために必要な「技術」を全員で身につけ、これからも格闘技というエンターテインメントを堪能していきたいもの。今年の流行語大賞に「三角絞め」が入る勢いで、積極的に三角絞め対策を学んでいくしかないですね!

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YouTube登録者数200万人を超える強さを身につけ、雪辱に臨んでください!

具志堅超えの世界戦15連勝!無観客開催にも動じず、ラスベガス級のチカラと魅力を見せつけた井上尚弥さんの完勝劇の巻。

12:00
次こそ本当のラスベガスへ!

スポーツ関連も慌ただしい秋の週末。中央競馬ではアーモンドアイが皇帝シンボリルドルフを超える芝GI8勝目を達成。持ったままで直線に入り、余裕を持って駆け抜けるさまは東京芝コースの絶対王者という風格。単勝1.4倍の低配当馬券も「2分で1.4倍に金が増える」超高還元率チケットに見えてきます。強かった、さすがだった。歴史とともに過ごせる時間、嬉しく思います。

埼玉西武ライオンズではコーチによる選手私物の窃取という問題が発覚。「窃取」という表現をする時点で、「窃盗罪にあたる犯罪行為だぞ」とあえて強調しているようにも見えますが、被害届は出さずに内々の処分で手仕舞いさせるとのこと。これは長年の働きに対する温情采配なのか、温情をかけてしまったことで示談に応じてくれない相手に「再チャレンジ」する機会を与えてしまう無慈悲采配なのか。判断は難しいところです。

「やってくれそうなヤツが見事にやってくれた」

そんな週末のハイライトとなったのは、ボクシング井上尚弥さんのWBA・IBF世界バンタム級の防衛戦でした。初のアメリカ上陸から3年、ついにラスベガスに到達し、夢の舞台での試合を迎えようとしたとき、まさかそれがコロナ禍による無観客開催となろうとは。本来ならVIPと男と女と欲望で埋め尽くされたであろうMGMグランドカンファレンスセンターは、選手・関係者のみが集う寂しい空間でした。

率直に言ってカワイソウだなと思います。金や名誉、最強の称号はもちろん欲しいけれど、ラスベガスを目指す何よりの理由はその「舞台」でしょう。ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)を勝ち抜き、強豪ノニト・ドネアを下し、ようやくラスベガス級として迎えられたのにその「舞台」がないだなんて。

コロナ禍というのは百も承知のうえで、「頭を拳で全力で殴り合う」という命の危険を冒してまで目指したものが「命が危険だから」でなくなってしまうことには、残念無念な想いが募ります。27歳というキャリアの頂点を迎える年齢で、丸一年間試合もできず、ようやくの試合は夢の舞台ではなかったこと、「命」の使い方について考えさせられる気分です。

ただ、そうなってしまったものは仕方のないこと。今できることは勝って、勝って、勝ちまくって、いつか夢の舞台が戻ってくるまでラスベガスに留まりつづけることだけ。マニー・パッキャオが10年に及びラスベガスのスターでありつづけたように、井上尚弥もそうなればよいだけ。さすがに10年勝ちつづければ、ずっと無観客ということもないでしょう!

↓前日計量ではバキバキに仕上がった肉体美を披露!

ドネア戦よりも実が詰まっている感じがする!

コロナ禍のなかでも見事に仕上げてきました!



この日は自分がメインイベントという難しい状況。せめて重量級のスーパースターがメインを張り、自分がその前座で試合をつとめるような設定であれば「セットで注目」という展開もあったでしょうが、自分がメインでは自分の試合で話題をつくるしかありません。「いつかイノウエを見たい」と思って過ごす全米そして世界のボクシングファンを増やしていくこと。ボクシング界のメインストリームではない軽量級にあってラスベガスの夢をつかむには、この試合は重要な一戦です。ただ勝つのではなく、「イノウエを見たい」とラスベガスにも思わせる「勝ち方」が求められる試合です。

対戦相手のジェイソン・モロニーは世界ランカーではあるものの「勝って当然」という相手。ともに対戦歴のあるエマヌエル・ロドリゲス戦をモノサシにすれば、井上は2回TKO勝ち、モロニーは判定負け。河野公平戦をモノサシにすれば、井上・モロニーともに6回TKO勝ち、ついでに亀田興毅は判定負け。井上>モロニー>亀田といった構図が見えてきます。狙うはKO。それも「こいつはスゲエ!」というKOです。

第1R。まずは1年ぶりということで慎重な入りの井上。ややパンチをもらう場面もあるものの、左のジャブ、右のストレートがしっかりとモロニーに突き刺さります。早くも鼻っぱしらが紅潮するモロニー。2Rに入るとジワジワとエンジンがかかる井上。パンチをかわして、ジャブを打つ。シンプルな展開ながらも一発のジャブの重さで身体がグラつくモロニーは、早速井上の圧力を感じている模様。

3R・4Rとさらにプレッシャーをかけていく井上。序盤は「大きく確実にかわす」だったディフェンスも、小さくギリギリでかわしてすかさず攻撃へとつなげていく攻めの構えに。たまらずモロニーがクリンチで逃れようとしても、至近距離からアッパー連発で打開するなど逃げ場を与えません。ジャブ、フック、アッパー、井上の多彩な左を前に、足を使って動き回るしかないモロニーです。

「丁寧に!」というアドバイスを受けて出ていった5R。顔をひねって相手のパンチを殺すディフェンスなども見せる井上は、さらに相手を引きつけ、仕留める機会をうかがう展開。モロニーがようやく攻めに転じた場面もしっかりとガードしてチャンスを与えません。左ジャブからのワンツー、そして相手の動き出しに合わせてカウンター気味に繰り出す右のストレート。「効く」パンチが次々にヒットします。

そして第6R。相手の左ジャブ2連発にカウンターで放った小さな左のフックで、この試合初のダウンを井上が奪います。モロニー側からの映像では「スローで見ても打ったことがわからない」ような小さくて鋭い左。井上の連勝街道の原動力でもある小さくても殺傷力のあるパンチがラスベガスの舞台でも輝きました。ラウンド終盤にはガードを下ろして上体の動きだけで相手のパンチをかわし、そのまま倒そうという構えも見せる井上。あとはもう仕上げるだけ、という状態です!

↓相手のパンチを顔をひねって受け流しつつ、相手の顔面に左フック!


攻撃したと思った瞬間に倒れていた!

スローで見ないと何が起きたかわからない!


勝負あったという状態での第7R。井上は相手の攻撃を見切っているので、攻撃してくれればすべてカウンターのチャンスといった様相に。そして残り10秒のサインが出たタイミングで、相手のパンチに合わせるカウンターの右ストレート。この試合で頻繁に当てていた右ストレートで最後はきっちりと仕留めて見せました。強引に倒すこともできそうだったけれど、確実に倒すために相手に攻めさせたというような試合作りからの「短か過ぎず長過ぎず、30分くらいはやろうか」のKO劇。勝って当然とは思っていましたが、ちょっと格が違い過ぎましたね!

↓7ラウンドも最後までしっかりお見せして、時間ぴったりで仕上げの一撃!

お疲れさまでしたラスベガス!

ありがとうございましたラスベガス!



さて、まずはラスベガスのメインイベンターとして見事な勝利をあげた井上尚弥。テレビでも伝わるレベルの完璧な勝利で、ますます評価というのも上がっていくだろうところ。とは言え、この試合は「勝って当然」という前評判通りのもの。戦いはどっちが勝つかわからないものであってこそ盛り上がります。パッキャオもそうであったように、強そうなヤツを次々に仕留めていってこそ真のラスベガスというのは始まります。

直近のターゲットは同じバンタム級の相手となるでしょうが、ドネアとの再戦となる可能性もあるWBC王者との統一戦、コロナ禍で一度流れたWBO王者カシメロとの統一戦、強そうなヤツに逃げそうなヤツはいません。もちろん井上は逃げません。勝って、さらに強い相手と雌雄を決する。それこそがボクシングの熱狂であり、ラスベガスの欲望です。今回の防衛で具志堅用高さんを超え、日本人最長の世界戦15連勝を達成した井上の目指す先は、ラスベガスの頂点のみ。命を張るに足る舞台が早く戻ってくることを祈ります!


限られた時間を存分に活かすため、早期の4団体統一⇒階級上げに期待!

K-1に自腹要請をするのは本質的には「感染者は家でひとりで死ね」と言うのと同義であり、ゼロリスク信仰には賛同しかねる件。

08:00
「責任」なんて取れないし、ない!

僕は今の状況を「魔女狩り」だと思っています。新型コロナウイルスに感染した人、感染させたかもしれない人、そして感染を拡大させる要因を作ったかもしれない人は「魔女」として糾弾し、責め立て、非難していいのだという気配を感じます。それは恐怖から生まれるものです。魔女がいるかもしれない、怖い、安心したい、アヤしいヤツがいる、魔女かもしれない、安心したい、捕まえろ、白状しろ、しないならこうしてやる…という。

自分は絶対に「魔女」ではないという自信がある人はいいです。家に引きこもっていられる人。ごく少ない人間にしか会わずに生きられる人。マスクや消毒液を十分に備えて安心している人。そういう人にしてみれば、愚かにも出歩く人や集会をする人というのは「悪」そのものでしょう。捕まえて、糾弾したくなる気持ちはわかります。僕も6億円くらい抱えていたら、必要なものは全部通販にして、宅配の兄さんとのやり取りも完全防護服という鉄壁の防御のなかで「魔女」が絶滅するのを待ちたい。シェルター暮らしがしたい。

ただ、それは無理なのです。

この問題の最初から思っていることは「金=命」であるということ。健康を損なって死ぬパターンと同じく、金がなくなって死ぬパターンもあるのです。そして今、感染症によって両方のパターンが同時に起きているのです。金と余裕がある人はとにかく「健康を損なって死ぬパターン」を徹底的に排除したいと考えます。金で死ぬパターンはそもそも考えていません。極端な話、全員の外出が禁じられ、外に出たら完全防護服の自衛隊によって拘束される世界のほうがスッキリする、くらいに思っていそうです。

一方で「金がなくなって死ぬパターン」の人は「健康を損なって死ぬパターン」も同時に背負ったまま、完全に放置されているのです。旅行産業や外食産業などはすでに大きな打撃を受けています。そして、それ以上の致命的打撃を受けているのがイベント業です。「人が集まる」ことそのものを悪とされることで、イベントは「業」の根幹を失いました。一部の体力のある運営元は中止・休止・延期などで耐えています。放映権料や配信収入、グッズ販売で何とか生き延びているというところもあるでしょう。

しかし、そうではない運営元もたくさんいるわけです。そうした運営元は「業」の根幹を失い、「金がなくなって死ぬパターン」に陥っています。イベントを「ヒマつぶし」として楽しんでいるぶんには「なきゃなくてもいい無駄な遊び」なわけですが、それを業として行なっている人にとっては死活問題です。「我慢」の問題ではなく「生き死に」の問題になっています。自分にとって無用なものが、他人にとっても無用なわけではないのです。それができなければ死ぬ人が、いる。

22日、K-1の大会がさいたまスーパーアリーナで行なわれました。かつての華やかなりしものとは違い、「知らない選手が知らない選手と戦っている」ような大会です。武尊がわずかに知られているかどうか、という程度の。どれだけ運営元に余裕があるかはわかりません。わかりませんが、この大会はK-1としても年間最大の大興行です。スーパーアリーナのアリーナモードで興行を打てば、前日設営・当日撤去でも1000万円以上の会場使用料がかかります。選手への報酬、関係者の手当て、機材・制作費その他を考えれば数千万円から億単位での出費となる「社運を賭けた」ものでしょう。

その興行を自粛せよというのは「その数千万円から億単位の金を捨てて、死ね」と言っているのと同じだと僕は思います。捨てられるくらいの余裕があれば捨てもするでしょう。多くの運営元がそうしていることに心から敬意を表します。でも、それで「金がなくなって死ぬパターン」に陥るのなら勝負にも出るでしょう。「今死ぬか、あとで死ぬか」なら、「今死ぬ」のはとりあえずイヤですもの。

↓K-1側では万全の対策を施して開催などと意味不明なことを供述しており…!
【K-1側がかんがえたさいきょうの対策】

●会場入口にてマスクを配布(1名につき1枚)させていただきます。枚数に限りがありますので、マスクをお持ちの方はマスク着用でのご来場をお願いします。

●スタッフ、競技役員、警備員がマスクを着用させていただきます。

●こまめな手洗い、うがいを励行いただきますようお願いいたします。

●会場内数カ所に消毒液を設置しておりますので、ご利用をお願いいたします。

●会場入口にてミネラルウォーターを無料配布させていただきます。定期的に水を飲むことが感染予防の対策となりますので、ご利用をお願いいたします。

●会場入り口にてサーモグラフィーを設置し、入場時にみなさまの体温を確認させていただきます。発熱があると判断した場合、入場をお断りする場合がございますので、ご了承ください。

●会場内では常時換気を実施し、通常よりも多く外気取込を行います。これに伴い、場内が寒くなる場合がございますので、ご了承ください。

●会場内では加湿器と次亜塩素酸水を使った空間除菌を実施いたします。

●会場内の飲食ブースでの飲食販売は行いません。会場内での飲み物の販売は自動販売機のみとなりますので、ご了承ください。なお「ビン・缶」を除く飲食物の持込は可能です。

●今大会では撮影会、サイン会、握手会、休憩中のサインボール投げなどのイベントは行いません。

●今大会では会場内での密集を避けるため、一部物販ブースを会場外に設置させていただきます。会場からの入退場にはチケットの半券が必要となります。必ず半券をお持ちください。

●発熱や咳など症状がある方、少しでも体調にご不安のある方、身近に新型コロナウイルス感染症の感染者もしくは感染の可能性のある方がいらっしゃる方は入場禁止とさせていただきます。

●咳エチケットをお守りいただきますよう、お願いいたします。

●大会から帰宅後も、すぐに手洗い・うがいなどを行いますようお願いいたします。

●咳やくしゃみなどの症状がひどく、他のお客様のご迷惑になると判断した場合、入場禁止事項にあたると判断した場合、ご入場をお断り、またはご退場いただく場合もございますので予めご了承ください。


「次亜塩素酸水による空間除菌」は微妙かもしれないけど、家電メーカーもそれで「ウイルス対策」って謳ってるし!

「ダメ元」「ワンチャン」「ないよりマシ」でやってるんでしょ!

マスクもどこかから集めてきて、頑張って考えたんでしょ!



国や地方自治体は「自粛」という形での要請しかできないわけですが、それは要するに「その数千万円から億単位の金を捨てろ、それで死ぬんなら勝手に死ね」という意味なのです。自粛要請ではなく「自腹要請」なのです。受けられる人は受けていますし、それはみんなにとってありがたいことですが、全員が受けられるわけがありません。それでもなお封じるとすれば、強権を発動するしかないわけで、その責任を取るのは「政治」の仕事でしょう。自腹要請に応じなかった側に「責任」を負わせるのはアンフェアです。

逆に「健康を損なって死ぬパターン」に対して同じスタンスでの要請を投げかけたら、これはもう承服しかねる人でなしだと理解できるはず。「家でひとりで頑張れ、自力で助からなかったら、死ね」ということですよ。感染拡大の恐れがあるからそうならないように自助努力で何とかしろ、というのは。元気な人のお出掛けより、感染している人・その兆候を感じる人のお出掛けのほうが、よほど危険ですからね。病院への移動、診断、全部が感染拡大につながります。だから、僕もK-1にそんなに思い入れがあるわけではないので「なきゃなくても構わない」とは思いつつも、「勝手に死ね」とは言えないのです。誰に対してであっても「死ね」とは言えないのです。

↓「埼玉県から東京都への流入が感染拡大の要因となっているので埼玉県からの越境を自粛要請…」と言われたら、お断りなのでは?

「また、千葉県からの越境も自粛を…」
「あと、神奈川県からの越境も自粛を…」
「なお、山梨県からの越境は許す…」

「死ね」と言うなら相応の政治決断を!

「強権発動で自由を制限した」という業を背負う覚悟とともに!


そして恐ろしいのが「今死ぬか、あとで死ぬか」の問いは、「今死ぬ」を逃れても結局「あとで死ぬ」が待っていることです。開催を推し進めたK-1には非難が殺到し、まさに「魔女狩り」の様相です。「明日から通勤する人もいるのだからさいたま新都心を消毒しろ」とか「ひとりでも感染者が出たら責任を取れ」とか「自衛隊を投入して最終手段を」などの非難の業火。「今死ぬ」を逃れても、ここから炎上…まさしく「火あぶり」が始まるのです。

あれだけ人々に愛された100日後に死ぬワニですら、一瞬で火あぶりになる世の中です。知らない選手が戦うK-1など枯れ木のようなもの。ボーボーとよく燃えています。この際、国が強権を発動するなら、まずテレビととインターネットを遮断するほうが効果的なんじゃないかと思うほど(※結果的に一番対策が上手くいってるのは中国とロシアと北朝鮮説)、大衆心理を拡大増幅するメディアの効果は恐ろしいものです。それだけの火力があるなら、いっそクラウドファウンディングでも始めて「目標金額1億円、目標金額に到達したらイベントを中止します」とかやったら、案外丸くおさまったりするのかもしれませんが。

↓そんな非難のなか、あえて「K-1最高!」ではなく「格闘技最高!」と叫んで締めた武尊!


天心戦でドーンと盛り上げたいわな!

この元気のない界隈全体をドーンと!



これは誰にとっても他人事ではありません。

次はK-1ではない誰かの番です。

「目立った者」が順番に火あぶりにされていきます。

非常に怖い。ウイルスよりもそっちが怖い。

自分だって仕事に出掛けています。多くの人もそうです。東京には、埼玉・千葉・神奈川・群馬・茨城あたりからガンガン人が来ているでしょう。電車などを使って。仕事だから、学校だから、と。僕にとっていらない会社、たくさんありますよ。楽天とか(アマゾンでいい)。ソフトバンクとか(ドコモでいい)。オリックスとか(何も借りない)。日本ハムとか(伊藤ハムでいい)。「自分にとっていらない」を全部リスクだと認定するなら、どこもかしこも感染拡大に寄与する悪の集団です。

正直、スーパーアリーナってそこまで悪くない環境なのです。空間としても広く、換気設備もあります。数万人が集っても臭いがこもっていたりしないでしょう。それは興行場法によって換気設備を設ける規定があるからです。1ドリンク制のライブハウスなどは、この興行場法の規定を満たすのが大変なので、「飲食のついでに音楽を楽しんでいる」という体裁にしているのです。あくまであそこは飲食店であり、興行場ではないのです(※だから必ず1ドリンク取る)。ライブハウスとスーパーアリーナ、同じ密度で人が集ってもクラスターとなる可能性はだいぶ違うはずです。ゼロではないにせよ、だいぶ低くなっているはずです。

ゼロリスク信仰には、僕は反対です。

リスクはゼロにならないからです。

ゼロじゃないリスクのなかでどう生きるのか。感染症の専門家は、そりゃ感染症の専門家として「少しでもリスクを抑える方法」を言うでしょう。ただ、感染症の専門家は感染症のことしか知らないわけで、「その結果生まれるほかの不都合」のことは念頭にないはずです。それは当然ですし、それでいいのですが、それによって加速するゼロリスク信仰にはもっと注意を払うべきだと僕は思います。ゼロリスク信仰を加速させることは害悪だとさえ思います。ゼロリスク信仰の究極の到達点は「感染症が発生した地域に初動でミサイルをぶち込み何もかも燃やし尽くす」なのですから。

参加側は、少しでも異変があるなら自宅に留まる。

運営側は、検温などで異変の有無をチェックする。

参加側は、マスクや咳エチケット、大声で飛沫が飛ばないようにする。

運営側は、マスクの配布や咳エチケットの徹底を呼び掛け、大声をあげないように注意喚起する。

参加側は、手洗いを励行し自分の手指から接触感染しないよう努める。

運営側は、消毒液の積極的な設置や、手洗いのための時間などを設けて促す。

参加側は、飲食物への飛沫の付着を避けるべく、換気のよい(できれば屋外で他人から離れた)場所で食事を済ませる(できれば何も食べない)。

運営側は、最大限換気に努めるとともに、食事の時間を十二分に設け、再入場も含めた柔軟な対応をとる。

……これぐらいじゃないんでしょうか。求めるのは。

誰かにだけゼロリスクを強いるのではなく、みんなで少しずつ分担するのが社会でしょう。K-1だって、何も考えてないときよりはリスクを下げたわけですから、多少なりとも平時よりは貢献したでしょう。「いつもより上がってるぞオイ」は止めますが、いつもより下がってるならどこかで折り合っていかないと。ウイルスで死ぬのは天災ですが、ゼロリスク信仰に殺されるのは人災です。天災と人災のダブルパンチは、避けないといけないだろうと僕は思います。



ゼロリスク実践なら自宅待機のはずで、逆に感染拡大しようが平気では?

やる?やらない?問題に揺れる東京五輪ボクシング競技が、IOCより「なんかうまいことやっといて」の条件付きで実施OKいただくの巻。

12:00
「なんか、うまいことやっといてくれや」の心!

東京五輪へ向けて大いに喜ばしい報せが飛び込んできました。やるんだかやらないんだかハッキリしないまま、IOCと統括団体の間でバトルがつづいていたボクシング競技に関して、IOCが「ボクシングをやるぞ」と決定したのです。選手、関係者もまずはひと安心。東京五輪での実施、おめでとうございます。

↓山根なきアマボク連盟からも喜びの声が上がりました!



残り1年、これから選手選考の基準などを作ります!

「え!?今から!?」って感じですが、今からやります!



喜ばしい反面、実際には問題はさらに難しい次のステージへと移行した格好。IOCは「やるぞ」とは言ったけれども、「具体的にどういう風にやるか」については「なんか、うまいことやっといてくれや」の精神です。アマチュアボクシングを統括してきた国際ボクシング協会(AIBA)については「不透明な運営」「ひどい財政状況」「会長が犯罪者の疑い」という山根を超える悪のてんこ盛りにより資格停止処分とする見込みで、一体誰がどうやってボクシング競技を運営するのかがよくわからないままの見切り発車となったのです。

IOC側では国際体操連盟会長の渡辺守成氏を座長とする特別作業部会を立ち上げ、実施階級の決定をしつつ来年1〜5月に予選を行なうとのこと。「日本人がトップ」ということで国内団体との連携は取りやすくなりそうですが、逆に言えば「なんか大変やと思うし、日本でうまいことやっといてくれや」を期待した采配とも言えます。体操界がそういう処理に長けているなんてはずもないなかで、IOC理事唯一の日本人である渡辺氏を座長にもってきたということが、「なんか、うまいことやっといてくれ」の心を示す何よりの証なわけですから。

↓特別作業部会の渡辺座長、「話を聞く」ところからスタートする構えです!


「おとといの夜、座長になると聞いた」
「食事をしていたら電話がきた」
「誰だ?と聞いたら、バッハだと」
「これから状況を分析する」
「(判定に)AIを使うのもひとつの手段」
「寝るヒマないでしょうね」
「正直、ボクシングの状況よくわかってない」
「自分の目で見て、耳で聞いて」
「アスリートの声を聴いていきたい」
「できるだけ多くの人の話を聞きたい」
「必要があればプロボクシングの話も聞く」
「世の中全体がイコール(平等)は当たり前」
「私が国際体操連盟の会長になったときは」
「トイレ掃除から始めた」
「選手が一番上なんです」
「そういう哲学でやっていきたい」

スタートラインに立ったというか、スタートラインに向かって靴を手に持って走ってる感じ!

おとといの夜に急に言われたらこうなりますわな!




おとといの夜に「誰だ?」「バッハだ」という会話から始まったという特別作業部会。電話がかかってくることへの意識や予感は特にないあたりに、事前の準備・根回しというものは特になく、ギリギリまでAIBAの自浄作用を期待したものの「時間切れ」の状況によって動き出したという部分がクッキリと見えてきます。そのため、これまでの「文脈」というものに対しても、作業部会はフワーッとした認識にならざるを得ない模様。

会見のなかでチクチク聞かれる「男女平等についてはどう思う?」の問い掛けは、現在は男子8・女子5である実施階級数、それにともなう出場人数について「男女平等の観点から同じ数にすべきでは?」という意味での質問です。それに対して渡辺座長は「世の中全体イコールが当たり前」と返答しているのですから、これは即ち「実施階級を再検討し、男女同数にするかも」という意向を示唆したということ。

IOC側からは実施階級・出場枠の変更はないという話もありますが、座長は「イコールが当たり前」と言っている。これを「座長の強いリーダーシップ」と見るか、「やべぇ…文脈をわかってないまま座長がきちゃった…」と見るかは難しいところですが、とにかくイチから全部を決めていくという座長の意気込みは感じます。

そして、これも会見のなかでチクチク聞かれる「判定にAIを活用するというのも手」の話は、「そういうのできたらいいですねぇ」というドリームの話ではなく、「AIBAを資格停止にするとアマチュアボクシングを裁ける審判員がいないんですけど、どうやって判定するんですか?」という意味での質問。プロ野球の審判が資格停止になったので草野球から探してくる、みたいなことをこれからしないといけないのだがどうするのだ…という文脈です。

そこに座長は「AIを活用するのも手」とビシッと答えた。すでに座長の念頭には「テコンドーの機械を応用した、パンチが当たったらランプがつく装置」などの具体的イメージがあるのかもしれませんが、残り1年でそれを実現するのは極めて険しい道となります。当たってないパンチで次々にランプがつき、選手は気絶してるのにランプはつかないなどの「あれー?上手く動かないなー?」の未来しか見えません。

「これから話を聞く」「階級変えるかも」「判定にAIを活用するのもひとつの手」と無限に広がっていくドリームを現実に落とし込む作業。座長が掲げる「トップはとりあえずトイレ掃除から始める」という縁の下の力持ち精神。どんどん迫ってくるタイムアップの時。なるほどこれは寝ているヒマはありません。座長は寝ると思いますが、現場は不安もコミで寝られない夜の始まりです!

↓「実際問題、どうしますかね」という話になると顔が曇るボクシング関係者たち!

こんなとき山根がいれば無駄に頼もしかったのに!

山根なら「日本の審判が裁きますよ」「平等で、世界一優秀ですよ」「何の心配もない!」くらい言ってくれたのに!


↓「チケットは来月以降に」というのは来月から始まるという意味ではなく、今月は絶対ムリという意味です!

話を聞いて、階級を決めるだけでも1ヶ月くらいかかりそう!

「男女平等」をやり始めたら1年くらい揉めそう!

ある意味で、東京五輪でもっとも入手が困難なプラチナチケットになってきました!


選手側も「とにかく殴り倒せば勝ち」くらいの大らかさで臨みましょう!
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婦人公論 2017年 12/27、1/6 合併特大号

僕は自分が見たことしか信じない 文庫改訂版 (幻冬舎文庫)

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