スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム

サッカー

欧州での強化試合2連戦に臨んだサッカー日本代表のトルコ戦は、2002年を振り返る感傷すらわかない「隔世の感」の強さだった件。

08:00
強い!強過ぎる!日本代表!

と言うと「どの代表のことですかね?」と聞かれそうなくらい好調な昨今の日本代表群ですが、今回はサッカーの話です。サッカー日本代表が欧州に乗り込んでのアウェー2連戦において、日本はあのドイツ代表を4-1、そして欧州選手権の予選でも上位につけるトルコ代表を相手に4-2と快勝・楽勝・2連勝を決めてしまったのです。

しかもただ勝っただけではなく、ドイツ戦は「相手が全費用を負担して」「たぶんワールドカップのお返しでボコすために」「わざわざ呼び出されて行ってあげた」というVIP待遇のなかで、不振がつづいて解任危機が取りざたされていたドイツ代表・フリック監督に解任のトドメを刺すというショッキング勝利。トルコ戦は代表デビュー組を含めて「ドイツ戦から先発10人を入れ替える」完全ターンオーバーのなかで「三笘温存」のオマケがつく大勝です。ヨーロッパキラー、アジアのポットから絶対引きたくない国第1位、EUROに出ても上位が狙える、そんな強さを見せつける道場荒らしのような戦いぶりでした。欧州各国はワールドカップを見据えて震えているのではないでしょうか。日本が入ったところが「死のグループ」になる、今から予言させていただきます!



スタメン10人を入れ替えて臨んだ日本。ひと昔前なら「とにかくドイツには全力で当たって砕ける!」「現在のチカラを知るためにトルコ戦は本気で戦う!」で2試合ともフルメンバーでやりそうなものですが、もはやそんな「憧れ」のような振る舞いはありません。ドイツ戦では本気で勝ちに行きつつ、システムの変更やメンバーの変更など「本番で戦うために、コレがどのくらい通じるのか」を試し、ドイツをモノサシとして使いました(※そのモノサシは試合後にポッキリ折れた)。そしてこのトルコ戦は、まさしくサバイバル。ここでどんな仕事ができるかで、この先の代表のなかでの序列が変わっていくという座組みの、純然たる「強化試合」という様相です。

そして始まった試合。日本はドイツ戦でドイツを完封した4-2-3-1の布陣でスタートします。しかし、この日は少し嚙み合わせがよくありません。トルコは4バックのシステムながら、中盤からアンカーの選手が降りてきたりして、最終ライン3枚で組み立てをしています。日本はそこに2人で詰めに行くのですが、人数的にどうしても手が足りません。余った相手のCBが組み立てをする形からイヤなところにパスを通され、後手後手の守備にまわる時間がチラホラ見られます。まぁ、本番では当然あり得る範囲の嚙み合わせの悪さですので、あえてこういう時間に身をさらすというのも「強化」の一環ではありますが。

攻撃の部分でもトルコは中盤の守備にかける人数が厚く、日本が攻撃へのスイッチを入れたい辺りで激しくプレッシャーを掛けてきます。そして、隙あらば手で押してくる。これがサッカーの激しさなのだと言われればそれまでですが、最近バスケのワールドカップなど見ていた影響もあって「全部アンスポでフリースローだろ!ボールもよこせ!」と苛立つようなところも。しかもそれを主審がスルーしやがる傾向なものですからストレスフルな展開です。相手に押されて飛び出た久保くんさんが流れで相手監督の足を踏んだ場面など、「やっぱりお天道様は見ているな」と思ったほどです。

しかし、そうしたストレスをスカッとさせてくれたのが前半15分。日本の伊藤敦樹さんが右サイドでボールを持つと、ドリブルから内に切り込んでひとりかわし、さらにワンツーでふたりまとめてかわし、左足をズドンと振り抜くとボールはゴール右隅へ一直線!技術と連携と度胸とが詰まったナイスゴールで、今日も日本が先制してみせました。相手にしてみれば「日本ITOばっかりやの…」「一番ヤバイITOはこの金髪のかなるほど」「あーーーーITO-3にやられた!ITO全部ヤバイやん!」と唸るであろう見事なゴール。こういうのを決めてくれれば、試合運びも俄然ラクになります!

↓まずはITOを区別するところから始めてみてくださいね!



さらに日本の攻勢はつづきます。相手も懸命に距離を詰めてスペースを埋めてくるのですが、日本代表各選手の技術がそれを凌駕します。狭いところを素早いタッチと正確なパスでつなぎ、バスケくらいの感覚で抜けていきます。これだけのプレーができるならアジアのライバルがドン引きで来たとしてもスコスコ抜けるのではないかと手応えを覚えます。そのなかでもひとつ次元が違ったのは久保建英くんさん。ひとたびボールを持てば相手が奪うことはできず、まさに「無双」といった感じ。

久保くんさんが次々にチャンスを生み出しながら、迎えた前半28分。選手の交錯で「ファウルかな?」と数名が足を止めた場面で、久保くんさんは猛然とボールを追って走り込むと、日本の中村敬斗さんからボールを奪い取るようにして持ち込み、左足でミドルシュート!無回転のボールはやや揺れながら落ち、相手GKが弾いたところをすかさず中村敬斗さんが詰めて追加点!

↓何となく「俺が俺が俺が俺が」みたいな熱さと勢いのあるゴールでした!


さらにつづけざまの前半38分、試合中の選手紹介で「和製ハキミ」と紹介され、視聴者を困惑させた日本代表初招集・初出場の毎熊晟矢さんがやってくれました。相手がサイドで孤立した状態だと見切ると、サイドバックの位置から毎熊さんは猛然とダッシュし、このボールを奪い取ります。そこから広大なスペースを駆け上がるや、味方の動きをよく見て、エリア内で完全にフリーとなった中村敬斗さんにピタリのクロス。これを中村さんが決めて日本3点目!新たなヒーローを目撃した視聴者からは、「で、誰!?」「あと、ハキミって誰!?」「わからんものをわからんもので喩えるな!」と喝采が上がります。

↓広い視野と判断力が生んだ追加点!ハキミっぽさとは違うかもしれないけれど、違っても世間的にはわかんないと思うので和製ハキミでOKです!


素晴らしい戦いで大量リードの日本。前半終了間際にセットプレーからポコンと1点取られたのは画竜点睛を欠く感じではありましたが、前半戦を3-1と楽勝ムードで終えました。欧州のサッカーを身につけた選手たちが、自分たち本来の強みを融合させて「欧州キラー」と化したかのような戦いぶり。相手のトルコも欧州選手権予選で上位につける本大会出場有力の国ですが、それを相手にこの試合ならEURO本戦に出ても台風の目となれるくらいの強さが今の日本代表にはあるだろうと思います。ちょっと天狗になってしまいそうな強さです。

その強さは後半に入っても変わりません。互いに大量に選手を交代して迎えた後半、トルコは必死の攻勢に出ます。しかし、日本も右サイドの伊東純也さんのスピードなどを活かして、さらなる追加点を狙います。後半10分の久保くんさんのポストを叩くシュート(※相手のクリアボールを跳ね返したもの)や、後半14分に「古橋それ」をトレンド入りさせた「古橋それは決めてくれー」の惜しい1対1の場面など、日本は多くのチャンスを作ります。実際に得点につながったのは後半16分のトルコのほうが先でしたが、それも不運ピンボールみたいな話。3点先取しているのですから、そうした不運も含めて受け入れるだけの余裕があります。

そして、「ついに」という感じの後半31分。この試合で何度も相手の裏に抜けながら「足を狙ったタックルで止める」「エルボーを入れて止める」など主審の判定傾向とのコンビネーションで得点機を阻止してきたトルコに、ついに年貢を納めるときがやってきました。右サイドを突破した伊東さんのエリア内への侵入に対して、トルコDFは手で引きずり倒してしまったのです。さすがにPK。いい加減にPK。最近バスケを見ていた目線ではすでに3人くらい退場になっている感じのトルコにようやく真っ当なファウルが与えられました。

完全にやっちまっているのに「WHY?」「チョットマッテクダサーイ」「ワタシナニモシテマセーン」みたいな顔で主審にアピールしているのにはおったまげましたが、まぁこれもサッカーの一部なのでしょう。客がスタジアム燃やしたり、椅子ひっぺがして投げたり、他人を客席の段差から突き落としたりする文化も世界にはあると言いますからね。まぁコチラも真の目的は「強化」ですので、勝手に退場されても困りますし、PKは試合を決めるこの1本だけで勘弁してあげましょう!

↓完全に引きずり倒しに行っているのに何のアピールなんだ!?


エリアに入る前に引きずり倒せなかった時点で、その勝負負けてるからな!

これが「強化目的」でなかったら3枚レッドカード出して、10点差くらいつけてる試合だからな!

もうトルコとは試合しなくていいです!

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トルコの勢いも必死の攻勢も高速カウンターでなで斬った日本。後半途中から投入された遠藤航さん、そして先ほどのPKが決まったあとに「もともとは三笘を投入しようとしていたがやっぱりやめて冨安」という形で投入された冨安健洋さんが入ると試合はグッと引き締まり、危ない場面すらなくなりました。「怪我をしていない冨安」がいれば2022年時点でももっと上に行けた、そう思えるくらいの素晴らしいクオリティでした。ドイツ戦でサネさんを1対1でシャットアウトしたシーン、トルコ戦で相手をひとりで止めたあと一気に最前線に送ってカウンターにつなげた場面、お見事でした。次元が高かった。

終わってみれば4-2、またも大量得点で大勝となった日本。押し返された時間もあったので2戦連続での相手監督解任マッチとなるかはわかりませんが、日本の強さを存分に見せつけることができました。トルコとは2002年のワールドカップ日韓大会以来の対戦ということで、少し感傷的な部分も生まれる試合になるのかと思ったりもしましたが、そうではありませんでした。日本はこんなに強くなった。あのときのようなナイーブな試合はもうしない。あのときも普通にやってれば勝ってたし、今はもう普通に勝てた。そういう意味で、懐かしさよりも「時の流れの速さ」をしみじみ感じました。

21年前は「次はトルコか手強いな」と思ったものですが、今はもう「次はトルコか、勝てるな」と思っている自分がいます。舐める気持ちを全力で戒めつつなお、「勝てるな」と思える自分がいます。そして、「もうトルコとはやらなくていい」「強化にもならないし、粗暴過ぎる」「本大会で戦う日だけ仕方なくやろう」という気分の自分がいます。それこそがこの21年間での歩みだろうと思います。ずいぶん遠くまで来たものだな…そう思います。

この調子で強化を重ね、アジア制覇、そして世界のベスト8へ。「夢物語ではない」どころか、そのくらいを目指さないでどうするという「現実的目標」として、2026年に向かっていきたいもの。もはやトルコに立ちはだかられる日本では、ない。ベスト8以上を堂々と目指せる強豪に、なった。そんな実感を覚える欧州2連戦でした。次のワールドカップは世界に何を見せてあげられるのか、本当に楽しみです!

↓森保監督のメモが「いつかコイツ解任に追い込むリスト」だったとしても、もう驚きません!

「解任しようかな、どうしようかな?」と迷って決断ができない各国の皆さま、日本とやりましょう!

今の日本なら、勝っても負けても背中を押すような試合ができると思います!



1年前くらいに「森保解任」って言ってた人がシレッと元気そうな2連戦でした!

なでしこJAPANは2023年W杯をベスト8で終えるも、2024年パリでの「五輪金」という未到の目標へ向け最高のスタートを切った件。

08:00
これはパリで大輪を咲かせるためのプロローグ!

なでしこJAPANの2023年女子ワールドカップが終わりました。結果はベスト8。準々決勝で2019年ワールドカップ3位&東京五輪銀のスウェーデンに敗れました。決して勝つチャンスがない戦いではありませんでしたが、スウェーデンは勝負強く、戦い慣れていました。実績、経験、時間を掛けなければ積み上げられないものが勝負を分けた、そう思います。



準々決勝でおそらくもっとも注目の、そして厳しい顔合わせとなったこのカード。グループステージを破竹の勢いで勝ち抜いてきた新生なでしこJAPANと、現在勝ち残っているチームのなかでももっとも実績上位のスウェーデンとの対戦は、日本がこのトーナメントを勝ち上がっていくための最大の山と言える一戦でした。

もちろん勝算は十分にありました。日本は日程の面で一日試合間隔が長く、スウェーデンはベスト16でアメリカを相手にPK戦までもつれる120分の死闘を演じていましたので、コンディションには差があったはず。有り体に言えば「相手が先にバテるだろう」という算段がありました。しかし、体力面での不安などないかのように試合開始から飛ばしてきたスウェーデンは、日本のDFラインに高い位置からプレッシャーを掛け、前から前からアタックしてきます。そして、事前の算段が逆効果だったのかもしれませんが、前半から勝負を掛けてくるようなスウェーデンの激しいプレッシャーを前に、日本は「受け」にまわってしまいます。

そして、戦術面でもスウェーデンはしっかりと意図を持って試合に臨んでいました。まず日本が1トップであることからDFラインへのプレッシャーは掛けづらいと踏んで、スウェーデンはCBが持ち上がって組み立てを行ない、ときにライン間のスペースにまで顔を出してくるような積極的な攻撃参加を見せました。両サイドバックは常に高い位置を取り、日本のインサイドハーフのポジションを広げてきました。さらに、チーム全体を日本の左サイド寄りにスライドさせ、サイドで数的有利を作ってきました。日本はボールから遠いサイドで人数を余らされるような格好となっており、いいようにボールを運ばれました。また、左サイド側で守勢にまわったことで、得点王候補でもある宮澤ひなたさんはプレスバックに奔走することになり、攻撃面でも勢いを削がれました。

ただ、これはスウェーデンにとってもリスクがある戦い方で、序盤からハイプレスに行けば当然あとあと疲労が出てきますし、ひとたびボールを奪われて逆サイドに展開されれば広大なスペースが一気にピンチを招きます。そうさせないためにはボールを奪われたと同時に絶対に中央・逆サイドに運ばせないための素早い身体の寄せが必要になり、かなりエネルギーを使う戦術のはずです。そこさえ抜けられれば前半16分や前半28分に日本が右サイドへの展開で見せたようなフリーでの持ち上がりもできるわけで、どちらがこの我慢比べを制するかというような戦いだったのです。あえてこの試合の口惜しいところを挙げるなら、PKを与えたことでもPKを外したことでもなく、相手の前半勝負という攻勢に対して「やってやるよ上等だ!」「どっちが先に倒れるか走り比べだ!」「前半で限界まで走り切ってやるよ!」と飲み込めなかったことかなと思います。ちょっと、好きなようにやらせてしまったかなと思います。

↓ちなみに、チームが我慢比べをしている頃、解説の丸山桂里奈さんは細か過ぎる解説芸を披露していた!

丸山:「宮澤選手は足も速いんですけど」
丸山:「ソロバン1級を持っていて」
丸山:「手もめちゃめちゃ速いです」
丸山:「連動してるんですね足と手は」
丸山:「アタシも結構足速いほうだったんですけど」
丸山:「ソロバンの学校だったので!」

ソロバン1級の人、足速いか?そうでもないだろ?

じゃ、手と足は連動してないよな!解散!この話題、解散!



僕調べによる「サッカーが上手い女性お笑い芸人ランキング」で第1位の丸山さんがそんなオシャベリで盛り上がっていた直後、やおら試合は動きます(※緊張感薄い失点になっちゃったよというNHKさん向けのお知らせ)。スウェーデンが遠目からフリーキックを蹴った場面、ゴール前にふわりと入れてきたボールをGKの山下杏也加さんがパンチングで弾きますが、これが短くなってしまいました。ペナルティエリアから外に出ないようなボールをスウェーデンに拾われ、日本は激しく当たりに行くこともできません。ゴチャゴチャとしたピンボールのような展開から、最後は押し込まれて失点してしまいます。

ここまで苦しみながらも完全に崩されたというような場面はなく、ピンチらしいピンチも前半25分のロングボールで裏を狙われたときくらいでしたが、スウェーデンのお家芸で見事にやられました。そして、失点したことだけではない布石もこのプレーのなかにあったように思います。この混戦のなかで、もしかしたら複数回、日本のDFの手にボールが当たっていたのではないでしょうか。スウェーデン側のアピールと、スローVTRを見ると、どうもそういったように見えてきます。もちろん意図的ではないのでハンドには当たらないプレーですが、これが後半につながる「布石」にはなったかなと思います。

↓最初のパンチングを遠くに飛ばせないと、あとはピンボールの運次第でこうなりますよね!


スウェーデンはここからの試合運びも上手かった。先行逃げ切りを狙う意図からすれば、1点を取ればペースを落として守りに入りそうなものですが、一層のプレスを掛けて日本の反撃を潰しにきました。「失点の直後の得点」など試合が激しく動きやすい時間帯を、消耗を厭わずに潰しに来るあたりは試合巧者だなと思います。いつが危なくて、どこが勝負所かをよく知っています。日本は結局、前半は反撃の糸口を掴めないまま「封殺」されるような格好となりました。前半終了間際にはポストを叩く危ういシュートなども撃たれましたので、まぁ0-1なら仕方ないかなといった手応えです。

ただ、もとより勝負は後半です。相手は体力面で日本に譲るはずですし、この戦い方なら後半バテないはずがありません。そこまでしっかり我慢していくことが大事です。後半に入ると、日本は左のウィングバックに入っていた杉田妃和さんに代えて遠藤純さんを投入し、左サイドで守勢にまわっていた部分に手を加えてきます。相手が逆サイドへの展開を嫌い、横パスのコースを切ってくるのなら、何のことはありません、縦に行けばいいのです。遠藤さんはドリブルで自ら持ち上がって突破していくことができますので、これで左サイドの主導権を日本が奪い返せるはず。だったのですが、ここで再び試合が動きます。

後半3分、スウェーデンのCKの場面、ゴール前の混戦のなかで日本選手の手にボールが当たってしまいました。ジャンプのために振り上げた手に当たったもので、決して意図的なプレーではないでしょうが、手がわずかにボールに向かって動いていたのは心象としてはよくないプレーでした。主審もその場でハンドを宣告することはなかったものの、VARから「PKの可能性あり」としてビデオを見るように促され、ビデオを見たあとの裁定は日本のハンド、PKとなります。このあたりは「意図的ではないにせよ、多いですよね」と言われると、まぁ仕方ないかなと思うところです。

↓日本は山下ダンスで抵抗するもPKを決められて2失点目!0-2と苦しくなりました!

丸山解説者は「2-0は1点取ったらひっくり返しやすい」という5年前くらいの流行語で盛り上げてくれました!

2-0は危険なスコア!まだまだこれからです!



痛い2失点目を喫したものの、ここからは予定通りに日本の時間帯となります。前線が決意を持ってハイプレスに行くと、逃げ切りに掛かるスウェーデンを押し返すことができるようになりました。前半は機能しなかった日本の左サイドの攻撃は、遠藤さんの突破を足掛かりとして何度もチャンスを生み出せるようになりました。ここまで0-0で来ていれば、日本の勝ちはかなり濃厚だっただろう…そう思うくらいに試合の様相は一変しました。

後半18分には逆サイドまで大きく折り返すクロスから藤野さんのシュート。後半23分にはエリア内から長谷川さんがシュート。後半26分には斜めに切り込んできた藤野さんがエリア内から惜しいシュート。つづけざまに何度もチャンスを迎えます。その流れのなかで後半29分には、エリア内で植木理子さんが倒されて日本がPKを獲得します。時間帯も内容も、ここで1点取ればチームが俄然勢いに乗れる場面でした。が……

↓日本はこのPKを決められず!クロスバーに嫌われた!


後半40分をまわってもスコアは0-2のまま。アディショナルタイムは長めに取られる傾向とは言え、状況はかなり苦しくなってきました。しかし、日本は諦めません。藤野あおばさんのFKがクロスバーを叩き、ゴールライン上で弾んで外に出るという精神的にも厳しい外し方などもありましたが、それでも諦めません。相手の疲労感とともに、むしろ日本はグングン勢いを増していきます。そしてついに後半42分、ゴール前の混戦から林穂之香さんが押し込んで日本は2-1とします。遠かった1点、やっと取りました!

↓あと1点、まだまだわからない!


アディショナルタイムは比較的長めの10分。まだ十分に時間はあります。日本はさらに勢いを増して攻勢を仕掛け、後半46分にはCKから植木さんの惜しいシュート、後半47分には清家貴子さんがエリア内で切り返してのシュートと猛攻をつづけます。後半51分には、長谷川唯さんが相手DFの裏に完全に抜けた状態で日本がスローインを得るという千載一遇の好機もありましたが、ここに素早くボールを送ることはできませんでした。

スウェーデンは足元がもうだいぶおぼつかず、意図せずともファウルになってしまうような状態。最後はコーナーフラッグ付近での時間稼ぎも試みました。延長まで行ければどうにでもなる、そういう手応えでした。日本は最後まで攻めますが、ついに同点のゴールは挙げられず、タイムアップ。試合終了の笛と同時に日本の何人もの選手が泣き崩れるような悔しい敗戦となりました。勝てない試合ではありませんでしたが、相手は強く、したたかだったなと思います。もっとやれた気がするベスト8でした!

↓日本はあと1点が取れず、ベスト8で今大会を終えました!


ただまぁ、こう言うと何ですが、これは「始まり」だなと思います。今大会は終わりましたがこのチームにとってこれは始まりだなと。今大会は放映権料の高騰などもあって「テレビで中継されない」のではないかと危ぶまれるような状況でした。それは国民的な女子サッカーへの関心低下を示す出来事だったと思います。昨今は男子の日本代表でも全試合がテレビ中継されるわけではありませんが、それにしてもワールドカップでそんな話になるというのは、まぁまぁ深刻な事態だっただろうと。

ただ、そこから盛り返すには十分過ぎる戦いを見せ、未来に大きな希望を残すことができたと思います。準決勝で「スペインVSスウェーデン戦」をやるということは、日本が勝った相手と日本が僅差で敗れた相手のどちらかが決勝に行くということです。最低でも「2位」になる相手と日本は勝ち負けしているのです。上手くすれば「1位」と「3位」と勝ち負けしているという展開さえあるかもしれません。メダル争いの力量は十分に示しましたし、優勝という可能性すら思い描けるほどの戦いぶりでした。大会前の期待感から比べると、まったく異なる状況に持ってこれたと思います。

この大会は終わりではなく、パリへとつながるプロローグになった。

2011年のなでしこJAPANは、その3年前の2008年北京五輪において準決勝でアメリカに敗れ、さらに3位決定戦でドイツに敗れるという悔しい想いをしていました。あと一歩でメダル、女子サッカーの歴史を変えられる、自分たちの住む世界を変えられる、そういう勝利を取り逃がした口惜しさを胸に日々の生活とサッカーとの両立に励んで2011年を目指したのです。2011年ワールドカップのチームは、2008年北京五輪の悔しさを持ち越してさらに強くなったチームでした。今度はそれをワールドカップ⇒五輪の流れでやればいい。そういう始まりにすればいい。

2011年、あの伝説のなでしこJAPANが世界一になったあと、本人たち(と、なでしこの優勝が面白くない人たちと)が何度も言っていたのは、女子サッカーはオリンピックで勝ってこそ本当の世界一であるということです。どうせ世界一になるなら、まだ勝ったことのないタイトルのほうがいいでしょう。これだけの戦いを見せたチームなら、パリでの目標はメダル、色は金、そういう宣言をするべきですし、それに見合った支援があってしかるべきだろうと思います。そのときに、この日の悔しさは最高の助走になるはずです。本人たちにも、見守る観衆にも、どちらにとっても意欲と情熱を湧き上がらせるものになるはずです。最後まで諦めなかった自分たちを誇りに思って、次なるアジア予選、そして大本番へと臨んでもらえたらと思います。次はきっと、大会前から大注目を浴びての登場となることでしょう。

「状況をセルフで温めておきました!」

それぐらいの気持ちでパリを目指してほしいもの。

リベンジの機会が1年後にあるってのは、悔しさを保ちながら頑張るのに、ちょうどいい時間だと思いますしね!





パリを見据え、ピンクと黄色のヘアバンドでどちらを買うかを検討します!

相性が悪そうなノルウェーを一蹴したなでしこJAPAN、殊勲の長谷川唯さんが誰みたいであるか議論は「デ・ブライネ」で決定した件。

08:00
なでしこJAPAN、高さとフィジカルを一蹴!

快進撃つづく女子サッカーワールドカップのなでしこJAPAN。5日はノルウェー代表を3-1で破り、2大会ぶりとなるベスト8進出を決めました。全部で4ヶ国しかないワールドカップ優勝国同士の対戦というベスト16にしては厳しい顔合わせとなりましたが、なでしこは試合を完全に支配し、つけ入る隙を与えませんでした。強い、強いぞなでしこJAPAN。今大会、いまだ「負けるかも」と感じた時間がゼロ秒のまま、ベスト8での大一番に向かいます。

↓攻撃、守備、戦術、メンタルすべてのレベルが高い!


試合前、ひとつの不安を覚えていました。単純な力関係で言えば今大会の試合を見る限りはなでしこのほうが上であろうとは感じていました。しかし、勝負には相性というものがあります。なでしこはよく整備された守備組織をベースに、奪ってからの速攻を得意とするチームです。もちろんボールを持って自ら崩していくことも得意ですが、一番の強みとなるのはやはり「堅守速攻」です。戦い方に関する四字熟語として、もっともメジャーでもっとも伝統的なこの四文字はきっと日本サッカーの骨格となるものなのでしょう。2022年ワールドカップと今大会とでようやく答えを掴んだ気がします。

その日本に対して、ノルウェーは高さとフィジカルを前面に押し出すサッカーを得意とします。日本の守備組織を無視して、縦ポン一発でもゴールに迫るチカラがあります。ゴールに近いところで競り合いとなれば分が悪いのは否めません。ボールの出所を積極的に潰しに行くとはしても、何回かは危ない場面も作られるでしょう。そして、そうした戦い方は日本の攻撃面にも悪い相性となって影響します。堅守速攻をするための広大なスペースを、ノルウェーの戦い方はそうそう与えてくれません。つまり、日本は「攻撃では人数をかけて相手の守備組織を崩し、守備ではロングボールでのフィジカル勝負に挑む」ことを要求されるわけです。さぁ、一番得意の形にならない勝負、どうやってものにしていくか。

日本はおなじみの3-4-3の形で入ります。ノルウェーは4バックを採用するのではないかと目されていましたが、守備時は5-4-1の形で自陣にブロックを敷いています。明らかに守り重視の構えです。日本はハーフラインあたりまでは自由にボールを持てますが、そこからは相手の人数が多く、容易に崩せそうな隙間がありません。これまで自分たちがスペインなどにやってきたことを逆にやられる立場となりました。

しかし、なでしこはまったく苦しむ様子がありません。GKとDFの間にボールを送り込んで一瞬のスピードで裏を取る攻撃(※DFラインを下げ、前列の相手をボールの出し手のところに引きずり出す効果)、サイドから丁寧に崩しては逆サイドを狙う攻撃(※相手を左右に広げる効果)など、手を変え品を変え崩しの動きを見せることで、「中央でガッチリ守っているだけだと怖いぞ」という意識をノルウェーに与えていきます。ボクシングで言えば丁寧にジャブを突いて相手の思考をコントロールするような感じで、ノルウェーの守りをジワジワと広げていくような動きを見せたのです。インテリジェンスが高い。

そんななか、思わぬ形で試合は動きます。まだノルウェーの守備を広げる作業の途中の前半15分、日本は左サイドを切り崩すと、宮澤ひなたさんが逆サイドへとクロスを送ります。このクロスにノルウェー守備が足を出すと、当たり所が悪く、ボールがゴールに吸い込まれたのです。よもやのオウンゴール。思いがけない形で先制した日本ですが、日本には「逆サイドの裏で動きながら受ける斜めのボール」という明確な狙いがあり、それは高さには自信のあるノルウェーにとっては逆にとても嫌な性質のクロスでした。相手の嫌がることをやった結果、ちょっと難しいプレーを選択させ、それが痛恨のミスになったという流れ。日本の攻めが生んだオウンゴールでした。

↓「私の後ろに通すのは怖い」と思ったからこそ足も出たのでしょう!



日本にラッキーがあったあと、今度は日本にミスが出ます。追いつかなければならないノルウェーが攻撃に圧力を掛けた前半20分、この試合1トップとして日本の守備陣と渡り合っていたハウグさんが味方のゴールキックをヘッドで後ろに逸らして落とすと、そのボールがFCバルセロナ所属のハンセンさんにつながります。いいところでボールを受けたハンセンさんは右サイドにはたいてクロスを入れさせる狙い。そのとき日本のDFラインはキレイに下がっていったものの、2列目がついてきておらず、日本のゴール前で選手がフリーになってしまっていました。バンザイして「ボールくれ!」と呼び込むほどのスーパーフリー状態。何とか競りには行くものの、ヘッドで決められてしまいました。やられたと言うよりはやってしまったという感じの失点。ノルウェーの「これしかない」という攻撃を喰らって、試合は振り出しに戻ります。

↓日本は今大会初失点!「ロングボールを逸らして後ろに落とす」は要警戒です!


ふむ、やられました。しかし、最悪の展開ではありません。もしも日本が負けるとすれば、こういう形で失点したうえで守り切られるという展開だろうと思っていたところ。ですが、相手は少ないチャンスで狙い通りの得点を挙げたのに、自ら献上したオウンゴールによって同点止まりという状況です。勝つにはさらに得点が必要であり、日本としては慌てる必要はありません。想定されるゲームプラン通りに「前半は0-0でもヨシ」「後半、疲れと乱れを突いて崩す」という考えでいいのです。

再び落ち着いた試合は日本がボールを持つ展開に。攻撃では左サイドから丹念に仕掛け、逆サイドで仕留める隙をうかがいます。相手が密集する中央では長谷川唯さんが飛び出すことで狭いスペースを突いて行く動きも。これだけ相手が守りを固めるなかでも長谷川さんの個人技はその隙間をフリーウェイのように通過することができます。ときに自ら飛び出し、ときにノールックで予想外の位置にパスを飛ばし、ときに相手が密集する狭い隙間を精密なスルーパスで通していく攻撃は、現代に甦るファンタジスタといった感覚です。

特に前半43分に見せた、左サイド遠藤純さんの駆け上がりに合わせたキラーパスは戦慄ものでした。相手が跳ね返したボールを拾った長谷川さんは、ゴール中央からやや左サイドへと移動しながら、相手方の右サイド背後にできたスペースを狙っていました。そこに走り込んでいく遠藤純さん。相手は4人が立ちはだかってコースを塞ごうとしています。そのなかでも一番通しやすそうな本命のコースを目掛け左足インサイドでパスを出すようなモーションを見せた長谷川さん。相手の守備は重心をそちらにずらしました。しかし、長谷川さんの動きはフェイクで、相手の重心と逆を取るように右足のアウトサイドでパスを送ったのです。

完全に逆を突かれた相手は、自分のすぐ横を通過するパスにもかかわらず反応できません。よもやそのコースを通してくると思わなかった遠藤さんが途中で一度減速してしまったためにパスに追いつけませんでしたが、全速力でそのまま駆け上がっていればおそらくピッタリ届いただろうボールでした。広大な視野、高い技術、悪魔的な発想、驚愕のスルーパスでした。SNSでは日常的に男子の海外サッカーを見ている視聴者から「デ・ブライネだ」「モドリッチだ」「イニエスタだ」といった声がいくつもあがりました。ゴールにならなかったプレーではありますが、「崩せる」という確信は得ました。長谷川唯がいれば、崩せる。傑出した個を見せつけた前半でした。

↓ゴールになっていればパスの凄まじさが振り返られただろうに、惜しい!

このピッチには長谷川唯にしか見えていない世界がある!

縦視点の映像が欲しかったところです!


↓「長谷川唯さんは●●みたいでスゴイ」のたとえ合戦は、このパスが決め手となって「デ・ブライネ」に決定しました!



ある意味で予定通り「0-0」の気分で終えた前半戦。スコアは1-1ですが、気持ちは変わらず「前半0-0、勝負は後半」で大丈夫です。そして互いに選手交代なく始まった後半、早速日本は仕掛けます。前半はハーフライン付近からプレッシャーを掛けていた前線が、後半はハイプレスを掛けにいきました。ここが勝負所という攻めの姿勢です。機先を制する形で日本は全体が押し上げていきます。

そんななかで迎えた後半5分、ゴール前でボールを持つ日本はDFラインの前で受けた宮澤ひなたさんから、それを追い越してゴール前に走り込む長谷川唯さんにパスを送ります。長谷川さんは相手を引きつけながらポスト役となって再び宮澤さんに戻してシュートという形を狙います。この落としはつながらずパスをカットされたものの、エリア内でボールを持つことになった相手は反転することができず、逆サイドにいる味方にパスを出しました。「クリアしてくれ」というパスでしょう。ただ、それが少しズレてしまった。そのズレたパスを清水梨紗さんがかっさらうと、ひとりかわしてシュート!相手の足に当たったボールはGKの逆をついて日本勝ち越し点!

↓ちなみに最後足に当てたのは、1点目オウンゴールした選手です!厄日!


仕掛けた時間でしっかり取り切った、狙い通りの展開でノルウェーは攻めるしかなくなりました。ノルウェーは選手を入れ替えて攻勢に出ます。160センチ台の選手を下げて170センチ台の選手を送り込むパワープレー采配です。これでノルウェーの前線はズラリと170センチ台の選手たちになりました。ノルウェーは高いタワー目掛けてボールを送り、それを後ろに逸らして日本のゴール前に送るという形を徹底してきます。日本が競りに行っても競り勝てず、競っていることで「競った選手の受け持つスペース」が空白になるという格好で、押し込まれる場面が増えます。もちろん日本もボールの出所にプレッシャーを掛けて、簡単にはロングボールを出させないのですが、全部を防げるわけではありません。耐える展開がつづきます。

幾度かヒヤッとする場面を迎えるなか、それでも日本は慌てるところはありません。どれだけ押し込まれてもまだ勝っていることに変わりはないのですから、浮足立つ必要はないといったところ。こういうとき相手もリスクを負っており、むしろチャンスも増えます。互いに撃ち合って、どちらが先にフィニッシュの精度を出せるかの勝負です。それを見せたのは後半36分、日本の宮澤ひなたさんでした。相手がロングボールを蹴ってきた場面、こぼれ球を清水さんが拾うと、藤野あおばさんにパス。藤野さんはドリブルで持ち上がりながら、逆サイドを駆け上がる宮澤さんに送ります。スピードで相手を振り切った宮澤さんは、落ち着いてゴールに流し込みました。ボールを奪ってわずか3手10秒、電光石火のカウンターでした。

↓宮澤さんは今大会5点目、得点王へとひた走る!


1点差なら最後の最後まで事故のような失点を警戒しなければならず、日本の守備にも重圧が掛かったことでしょう。ただ、2点は大きい。残り10分、アディショナルタイムを入れても15分程度、しっかり守り切ることはできる点差です。そのなかで日本には大きなプレーも飛び出しました。規程の90分を過ぎた後半46分、ゴール前でノルウェーが放ったヘッドをGKの山下杏也加さんがワンハンドで掻き出したのです。ゴールラインにわずかにボールがかかるほどの際どいところからのスーパーセーブは、ノルウェーの希望を断ち切るものでした。もう残り時間で2点は厳しい。今大会は被シュートゼロなんて試合もあり、GKの見せ場はほとんどありませんでしたが、いいところでいい仕事をしてくれました。攻守の精度で、圧倒的でした!

↓用意してた画像、使うチャンスがありました!ナイスセーブ!


↓日本はそのまま逃げ切って3-1で勝利!ベスト8進出!



苦しい時間帯もありましたが、そういうことがあることも含めて承知し、しっかり勝ち切った見事な試合でした。堅守速攻という強い形がありつつ、それ以外の戦い方でもしっかりとやれる奥行きを見せ、さらにチームの評価も高まるような試合だったと思います。次戦は中5日空いた11日ということで、日程的にも万全の状態で臨めそう。同じグループで戦ったスペインもスイスを5-1で圧倒してベスト8行きを決めており、相対的になでしこJAPANへの期待感もますます高まってきています。

次戦は東京五輪銀のスウェーデンと、世界ランク1位&東京五輪銅&ワールドカップ2連覇中のアメリカによる試合の勝者との対戦です。どちらが来ても優勝候補の一角であり、非常に厳しいベスト8、今大会屈指のベスト8です。ただ、日本には日程で1日ぶんのアドバンテージがありますし、その日は祝日で日本からの念もたくさん届くはず。ここを勝ち抜ければ「あとはもう頂点へ行くだけ」という感触も出てくる大一番を、不安ない状態で迎えられるのは願ってもないことです。2011年のあのなでしこたちも、ベスト8で開催国ドイツを延長戦での劇的なゴールで下したことで勢いに乗りました。あの試合がなければ丸山桂里奈さんは国民的なスターにはなっていませんし、逆に言えば「国民的スターを生み出す」ような大一番でもあります。そんな試合をするのにふさわしい相手が来ることが確定しているのですから、勇んで戦いたいもの。最高の週末になるよう、期待して応援したいものです!




最大の山を、山の日に迎えるなでしこJAPANには運も味方についている!

優勝候補の一角・スペインに完勝&史上初の無失点突破を決めたなでしこJAPAN、12年前の強さを世界と日本が思い出すの巻。

08:00
なでしこJAPANの新たな花と種がここに!

素晴らしい戦い、鮮やかな勝利、一躍優勝候補に躍り出る「完勝」でした。女子ワールドカップを戦うなでしこJAPANのグループステージ第3戦スペイン戦。2021年・2022年と連続で女子バロンドールを獲得した現在の世界最高女子選手と目されるアレクシア・プテジャスさんを擁するスペインは、女子欧州CLをこの数年で2度制しているFCバルセロナ勢を中心とした、紛れもない優勝候補の一角でした。開幕前のオッズではアメリカ、イングランドに次ぐ3番手と目されており、グループCを1位抜けするのはスペインだろう…というのがまぁ、標準的な見立てでした。

しかし、ここに堂々たる強豪がいた。世界で4ヶ国しかない女子ワールドカップ優勝国のひとつ、日出づる国・日本の撫子たちのことを、世界も、日本も、お忘れだった。両者ともに2連勝でグループステージ突破を決めたあとの第3戦、日本はスペインを4-0で一蹴し、威風堂々グループ1位突破を決めました。しかもその内容は紛れもない「完勝」でです。スペインがどれだけボールを持っても、肝心なところはついに一度も崩されず、逆に日本は見事なゴラッソを何度も叩き込んで見せた。感動すら覚える強さでした。

2011年大会で優勝した日本は、「あのなでしこJAPAN」たちの引退と、「あのなでしこJAPAN」たちの眩しすぎる輝きにより、ここ数年は苦しんできました。金メダルを期待されざるを得ない東京五輪でもベスト8ということで、決して低迷していたわけではないものの、「あの期待値」には及ばない日々がつづいていました。しかし、それはむしろ芽生えを待つまでの必然の時間だったと思います。「あのなでしこJAPAN」から12年、あの優勝を見た子どもたちが大人になるのを日本は待っていたのです。自力で咲いた野生の花から弾け飛んだ種が、大きく育つのを待っていた。大きく育てようと励んできた。桃栗三年柿八年、撫子の花は十二年。ようやくその時が巡ってきた。

今大会のなでしこは、強い。

あのときのように、強い。

半信半疑の日々が、直前の壮行試合のあたりで予感に変わり、本大会2戦を経て確信に変わり、そしてこのスペイン戦で世界に証明してみせました。優勝候補の一角・スペインを相手に得点機会すら与えない完封の守備と、電光石火の速攻で4点を奪い取る攻撃と、その所業をこの先のトーナメントを見据えたターンオーバーのなかでやってのけるというチーム全体としての地力の高さは、偶然でもフロックでもありません。この試合が終わるまではと我慢していましたが、これはもう「優勝候補としか言いようがない」見事な戦いぶりでした。天運に恵まれれば優勝まである、そう言っていいチームです!

↓結果がよいからではなく、この試合内容は偶然でできるものではないから、間違いなく強い!



2試合を終えて得失点差で及ばずグループ2位となっていた日本。グループ1位で抜けるにはスペインに勝つことが必要でした。目線の低いチームであれば、「もう2位でいい」あるいは「全力で1位を取りに行く」という両極端の思考のどちらかに偏るところ。しかし、なでしこJAPANは違いました。この先を見据えてしっかりとターンオーバーを行ない、前節からスタメン5人を入れ替えてきました。そして、そのうえでスペインに勝つ、そういう高い目線でこの試合に臨んでいました。その姿勢、あっぱれです。誰が入ってもチームは機能する、この戦いはまだまだ長くつづく、垣間見える自負はすぐさま試合内容によって証明されていきます。

試合開始からスペインは高い足元の技術と、170センチ台の選手を多く並べる体格とでボールを支配します。まさにスペインというような戦いぶりで、日本もボール支配に自信があるタイプですが、これはちょっと回されるなという感触です。ただ、ボールを回せば勝てるというものではないことは、日本もスペインも互いによく承知している国でもあります。結局、大事なのは最後の崩しとゴールを決める精度です。その手前でいくら回しても、それ自体には意味がありません。その点で、日本はどれだけスペインにボールを持たれても肝心なところはまったく崩されてはいませんでしたし、むしろ攻められることをチャンスとすら見ているようでした。

日本の3-4-3のシステムは、守備時には5-4-1となって自陣に2ラインを敷きます。トップに入る「1」の選手には攻守で走り回る大きな負担が掛かりますが、そのぶん自陣ゴール前は分厚い構えです。今大会のなでしこJAPANはひとりひとりの動きが効果的かつチームで連動しており、ひとりがアタックみんなでカバー、ひとりが追い込みみんなで待ち受けるといった、真の意味での組織的な守備を実践しています。相手がボールと人を動かして隙を作ろうとしても、流れるように選手が動いて今作ったはずの隙を即座に埋めていくさまは、幾何学的な美しさすら感じます。「自己修復能力がある生物」みたいな感覚で、チクチクされても安心して見ていることができます。

それだけ固い守備を敷かれれば、相手は「4」の外側しかゆったり持てる場所はありませんので、ゴールに迫れるとしたらまずはそこからの長いボールが選択肢となります。前半3分、前半5分とスペインがゴールに迫ったプレーも、結局は「まずはそこだよな」「そこならどうぞ」という予定調和のなかで「外から送る長いボール」で生まれた攻撃でした。もちろん精度が高いボールが来れば怖いわけですが、日本にもゴール前には熊谷紗希さんのような個の強さを持つ選手がいますので、よほどの精度で来ない限りはそうそう決まる攻撃ではありません。

そうした固い守りを敷きつつ、攻撃でも日本は組織のチカラを見せます。前半12分、日本が自陣DFラインでボール回しをしているところから、電光石火の先制点は生まれます。おそらくは約束事があるのでしょうが、DFラインの熊谷さんから左サイドに入った遠藤純さんにボールを送ると、すでに中央では速攻のために日本の選手が相手ゴール前へとダッシュしていました。このダッシュに対してスペインのDFラインは不揃いで、かつ反応は鈍かった。人数はたくさんいましたが、日本の植木理子さん・宮澤ひなたさんのスピードは完全に相手を上回るものでした。広大なスペースの裏で、遠藤さんが送ったボールを宮澤さんが受けると、相手の動きをよく見て転がすようなシュート!日本先制!

↓ヨーイドンで走り勝てる時点で、「相手にどんどん上がってきてもらう」ほうが有利なんだな!


これで勝負の構図が決まりました。もうスペインは点を取りにいくしかありません。スペインの大好きなサッカーからすれば、全体で押し上げてボールを回して、相手を翻弄しながらゴールを狙うことになります。ただ、これはスペインが負けるときの王道展開でもあります。押し上げてティキティキタカタカやって点が取れなければ、当然自陣の広大なスペースがすべて仇となります。日本はしっかりと我慢をして、相手の攻撃を的確にガードしていくと、前半29分に再び試合は動きます。

スペインが押し上げて日本ゴールに迫った場面、DFの熊谷さんが長いボールでのクリアを味方につなぐと、「クリアボールを取った」ことを合図として、再び日本の電光石火の攻撃が動き出します。クリアボールを植木さんがヘッドで落とすのと同時に、宮澤さんが前にいる選手を追い越して猛然と相手ゴール前へと走り出しました。スペインは1失点目の場面でも反応が鈍かった19番カルモナさんがここでも棒立ちとなっており、スペインの左サイドの裏を埋める選手は誰もいません。中央のセンターバックもそこをケアする意識があまり高くなさそうです。スペースに向けて走り込む宮澤さんと、迷わずそこにボールを送る長野風花さんの意志疎通。スピードでひとりを交わした時点で、スペインの守備はもう4番のバレデスさんしか残っていませんでした。宮澤さんは「自分が残りの守備を引きつけたな」と思ったタイミングで、フリーで走り込む逆サイドの植木さんに預けます。

植木さんは「もう一度宮澤さんに戻す」という選択肢を持ちつつ、ほかに手があるか首を振って確認します。一瞬チラッと後ろを見たときに「日本の左サイドからは誰も来ていない」ということを察して、追い越す選手を待つ選択肢は消しました。中央をチラッと見たときに、そこに走り込む選手も時間が掛かることを確認し、その選択肢も消しました。あとは宮澤さんに戻すか、自分で行くかの二択。その二択ならストライカーとして「自分で行く」のは当然のこと。植木さんは対峙するバレデスさんと「縦か内か」の駆け引きをしながら、最後は内に切り返してシュート!相手がイチかバチかで伸ばした足を見ていたでしょうか、その下をかいくぐるような低いシュートを送ったことで、足には当たったものの逆にGKには取りづらい高いバウンドとなってボールはゴールに吸い込まれました。ボールを奪ってから15秒、これぞ「カウンター」という見事な一撃でした!

↓意志が揃っていて、周囲をよく見ているので、判断に迷いがない!


日本は「相手左サイドバックの裏」を急所と見定めていたようで、そこを何度も突いていきます。日本の守備組織に対して一番ボールを保持できる場所に入るプレイヤー、つまり攻撃のカギとなるプレイヤーが守備時の反応が鈍い選手だとしたら狙うのは当然のことですが、そういった狙いを持ってしっかりと実践していくしたたかさが日本にはあります。前半40分の3点目も狙いとしてはまったく同じです。相手が攻める、サイドバックが高い位置を取る、裏に広大なスペース、そこに走り込む、相手の反応は鈍い…。最後に決めたのは宮澤さんの個人としての能力ですが、その状況を狙って作れたことがチームとして日本が上回ったポイントでした!

↓これは「決めたほうがスゴイ」のゴールですが、気持ちよく打たせればそりゃ入るときもありますよね!



日本、衝撃的な3-0。前半を折り返したスペインのショックはいかばかりだったか。グループステージ突破が決まっているとは言え、意気消沈は否めないでしょう。後半に入ると、前半何度も裏を突かれ、突破を手で止めたことでイエローカードをもらっていた19番のカルモナさんを下げてきました。右サイドバックに入っていた選手を左に動かして、日本が突いてきた穴を塞ぎにかかったようです。ただ、今さらケアをしても3失点していることは変わりません。スペインとしてはティキティキタカタカして点を取りに行くしかないのです。

一方、日本は前半殊勲の2ゴールを挙げた宮澤さんを下げて、今度はドリドリブルブル得意の藤野あおばさんを投入しました。苦しい時間帯でのボール保持なども期待したいところです。ボールを支配して攻めるスペイン、懸命の守りでガードする日本。スペインの圧力はすさまじいものの、肝心なところは崩されていないので、ただ回すだけという格好。日本も時折カウンターからシュートまで持っていく場面を見せるなど、隙あらばトドメを刺そうと狙っており、決して一方的な防戦ではありません。むしろシュート数で言えば日本が上でさえあります。

ついにスペインは後半17分に女子バロンドール2度獲得のプテジャスさんを下げる決断をします。明らかに上手くいっていない様子です。日本も中盤で奮闘した長野風花さんに代えて長谷川唯さんを、サイドで攻守に躍動した清水梨紗さんに代えて守屋都弥さんを投入。さらに、守備と攻撃とで相当な運動量を見せた植木さんを後半22分に下げ、そこに田中美南さんを投入します。そうして多くの選手が入れ替わり、スペインも右に左に選手を動かしてやり方を変えてきますが、日本の守りは交代選手の元気によって良くなることこそあれ、乱れることはまったくありません。誰が出ても同じ戦いができる、そういうチームです。もう怖いのはミスと、相手の個人技くらい。このまま3-0かせいぜい3-1で逃げ切りだ…と思いました。それでも十分でした。十分だったのですが。

迎えた後半37分、途中交代で入った田中さんがスペインの猛攻とこの試合そのものを最高の形で終わらせます。日本の右サイドでのスローインの場面、相手がさらなる交代選手を投入し、ポジションの確認などをしてる間隙を突いて、田中さんはDFラインの裏へと走り出します。そして、そこにスローイン一発でボールを送ると、田中さんはすがりついてきた相手を振り払い、ゴールへと向かっていきます。田中さんはエリア内へと侵入すると、フェイントなどを交えながらゴールの上の隅へ左足でズドン!完全に相手にトドメを刺し、スペインの後半の猛攻を無為にする4点目で、世界に「なでしこJAPANあり」の衝撃を発信しました!

↓嗅覚を感じさせるゴール!相手がほかのことに気を取られているとき隙が生まれる!


日本はそのまましっかりと守り切って4-0で勝利。十分やれるとは思って迎えた試合でしたが、十二分の衝撃を与えて、一気に今大会の勢力図すら変えてしまいそうな戦いぶりでした。これは決して偶発的なものではなく、ベースにあるのは誰が入ってもガッチリと守れる連動した守備組織ですので、どことやってもこういう戦いができるはず。もちろんいつもいつもカウンターがキレイに決まって、相手のゴールを許さずに済むわけではないでしょうが、どこが相手でも十分に戦えることはもう疑いようがありません。絶対に負けるような相手はどこにもいない。

あとはほんの少しの運、相手に先にミスが出るとか、シュートを撃つときキレイに足に当たるとか、ちょっとしたことが自分たちの味方につくかどうか、そういう部分かなと思います。それを上手く引き寄せることができれば、不調の選手も怪我の選手もカードトラブルも疲労もないわけですから、相当なところまで勝ち上がっていけるはず。そして、「この大会を見た子どもたち」がさらなる未来の花となるような歴史を作っていけるはず。

あのなでしこJAPANから12年、再び実りの時が来た。

テレビで中継することを決めた甲斐があった。

ただ、その強さが世間に伝わるのはこのスペイン戦のあとからです。「強い国に勝ったらしいな」から注目が始まり、実際に見るのは次戦からです。次の試合でこの日のような戦いを見せてこそ意味がありますし、新たな種を飛ばしていけるというもの。次戦は日本時間8月5日土曜日の夕方5時から、対戦相手はA組2位のノルウェーです。何と、このベスト16で4ヶ国しかないワールドカップ優勝国同士の戦いとなりました。またしても迎える大一番を前に、NHKも地上波中継で強いなでしこJAPANの戦いを届けてくれるとのこと。本当に、放映権買ってくれてありがとうございます。

まぁ、得てしてこういうときにポロッと負けるのがスポーツだったりもしますが、このチームに関しては心配ないだろうと思います。このチームの最大の強みは、守備組織という再現性の高い部分にあります。急に弱くなるような類の強さではありません。対戦相手のノルウェーが日本の強みとは関係のないミドルシュートと放り込みヘッドみたいな攻撃をしてくるので、スペインほど見事に守備がハマることはないかもしれませんが、そのぶん攻撃陣がきっとやってくれると思います。大いに期待して見守っていきたいものですね!

↓この勢いであと4つくらい勝てるように楽しみにしております!


↓あと4つ勝ったらお宝になるヤツも今なら気前よくあげちゃうぞ!

くれ!って言ってみるもんですね!

ホントにあげちゃってよかったですかね!

まぁ、あと4試合あれば大丈夫ということで!



安心感のある女子ワールドカップくじがあれば、今からでも買いたいです!

10年の想いを込めた猶本光さんと、10代で決めた藤野あおばさんとのW杯初得点×2で、なでしこJAPANベスト16進出決定の巻。

08:00
なでしこJAPAN、軽やかに決勝トーナメント進出!

ド平日のド日中、「金を出し渋ると露骨にこういう感じになるのか…」ということを感じるような午後2時キックオフという設定。これではNHKが中継をしたところでまともな暮らしの人は誰も見られないのではないか?という気もしないではない時間に、サッカー女子ワールドカップに臨むなでしこJAPANは素晴らしい戦いを見せていました。

「何となく苦戦しそうな気がする」とデジャブが甦る相手・コスタリカ代表を迎えてのグループステージ第2戦でしたが、フタを開ければ何の危なげもない2-0の完勝。のちに行なわれた同じグループのスペインVSザンビア戦でスペインが勝ったことにより、この時点での決勝トーナメント進出も決定しました。どこよりも早く、誰よりも軽やかに刻んだ次へのステップは、くじ運がよかったとかたまたま上手くいったとかでは片付かないもの。勇敢で、楽しそうで、強い、なでしこJAPANが帰ってきました!



初戦ザンビア戦からはスタメン4人を入れ替えてきた日本。何と言っても万感胸に迫るのは猶本光さんのワールドカップ初スタメンです。2011年、なでしこJAPANが日本に歓喜をもたらしたあと、U-20女子ワールドカップでの活躍などからその光を受け継ぐことを期待され、ただ世界の舞台とは何故か縁がなく10年余りを過ごしてきた猶本さん。もしかしたら世間が背負わせようとした光はあまりに大きいものだったのかもしれないと思ったりもしましたが、ついにこの舞台にやってきました。ここからが始まりだな、そう思います。頑張ってほしい。

この日も3-4-3の布陣で臨む日本は、前線からプレッシャーを掛けてボールを奪い、互いにいいポジションを取って素早く安定したつなぎを見せます。前半8分には相手へのプレッシャーからDFラインでのボール回しにミスを誘い、もう少しでGKと1対1という場面も。初戦の完勝で気分もよく、動きに硬さもなく、いい試合の入りを見せています。

前半11分には右サイドのCKから、味方が動いてゴール前を空け、そこにキャプテン熊谷紗希さんを飛び込ませるというデザインプレーで惜しいヘッド。前半15分には藤野あおばさんが持ち上がり、中央でポスト役になった田中美南さんがはたいて、逆サイドの猶本さんがエリア内でシュートという美しい展開も。GKが弾いたところを詰められれば1点という場面でしたが、日本は反応鋭く2人が詰めてしまい、逆に渋滞してしまって詰め切れませんでした。とは言え、美しい崩しから「日本だけ2人詰めていた」という形は悪くありません。チーム全体が連動してしっかりと攻められています。

そして試合が動いたのは前半25分、ここまでポスト役として見事なさばきを見せていた田中美南さんが、DFラインから降りてきてフリーで受けたところからでした。全体的に相手を日本の右サイドに寄せた状態から、田中さんのポストプレーで左に手早く展開すると、このボールに対してコスタリカの守備は空振ってしまいました。誰もいない裏のスペースに転がるボールと、そこに走り込む左のシャドー・猶本さん。猶本さんが鋭く左足を振り抜くと、ボールは真っ直ぐゴールに吸い込まれました。日本先制、そして猶本光さんワールドカップ初得点!

↓前半15分のシュートと同じような展開から、今度は弾かれずに決めた!

仮に弾かれても、日本が詰められていた感じはしますね!

美しい崩し、美しいゴール、おめでとう猶本さん!



日本側は歓喜に沸き、この日の解説をつとめた川澄奈穂美さんも「素晴らしい!!」とスタンドで飲んでいるおねーさんみたいな喜びようで大盛り上がりです。そして、そういった歓喜の時間、相手にとっては落胆の時間を逃さないのもこのチームの強さだなと思います。初戦のザンビア戦でも後半早々に立てつづけのゴールで試合を決定づけましたが、いけるときにしっかりいくしたたかさがあります。

つづけざまの前半27分、左サイドのクロスから逆サイドまでボールがこぼれた場面、相手からボールを奪い取った藤野さんはドリブルでエリア内までズカズカと侵入していきます。あらかじめ首を振ってゴールラインまでの距離を確かめた藤野さんは、カバーにきた相手DFをゴールライン側に切り返して振り切ると、角度のないところからニアサイドを狙ってズドン!最初から「ニアでぶち抜く」をイメージしたスーパーゴールでした。ここまで何度か惜しい場面を逃してきた藤野さんですが、そのなかでも一番難しそうなシュートを見事に決めてくるとは。解説の川澄奈穂美さんも「やったーって言ってる!カワイイ!」とゴキゲンになる見事な追加点でした!

↓このニアをぶち抜けるのなら、ナンボでも点が取れそう!日本のミトマだ!


↓「へー」という感じですが、これが男女通じて日本の10代選手によるワールドカップ初ゴールとのこと!

小野さんでも、久保くんさんでも、中田さんでもなく、澤さんでもなく、藤野さん!

ワールドカップ日本最年少ゴールは藤野あおばさん!



あっと言う間の2得点。しかも、「この大会に並々ならぬ思いを抱えてやってきた」選手と、「大きな期待を背負いながら少しゴール運に恵まれていなかった」選手とが、まとめてワールドカップ初得点を挙げられたのは大きい。これで背負ったものを下ろして、軽やかに自分のプレーを出していけるはず。「12年ぶりの優勝」から始まる「今大会やることリスト」のなかにきっと記されているだろう項目を、わずか1分で2個クリアしました。単なる2点以上の大収穫です。

「勝ったかな?」という感触もある2点ですが、その後も緩むことなく試合を支配する日本。前線から激しく追い回すようなことは控えますが、それでも「相手のDFラインがサイドにボールを送ったら取りに行く」といった仕掛けのスイッチはチームとして共有されており、機を見てしっかりとプレッシャーを掛けていきます。このあたりは個々の判断というよりも、チームとしてこうなったらこういく、こうなったらいかないが整理されている感じで、見ていても小気味のよいチームです。結局前半は2-0のままで終了。コスタリカにはやや落胆と焦りの色が見え、強引な攻めも目立ちますが、しっかりと跳ね返して前半を終えました。

後半に入っても流れは変わらず、キックオフからの流れでサイドに詰めてボールを奪うと、早速エリア内での惜しいシュートに持ち込みます。ドリブルでかわす、身体を使ってキープする、味方の位置をちゃんと見るといった個々の技量でも勝っており、「2-0は危険なスコア」なんて言いつつも危ない感じはまったくありません。

とにかく選手に迷いやバラつきがないのがいい。守備においては、いくときは皆で一斉にいきますし、ブロックを組んで構えるときは整然と守備ラインを作ります。相手の小さな動きをしっかりと見て確認し、指差し確認しながら受け渡しをしており、どこから誰がいくのかを互いによく把握しています。攻撃でも次から次に選手が出てくるのは当然として、ここにいたらいいのに、ここから離れてくれたらいいのに、という絵図を複数の選手が同時に描いて動くので、二手・三手先までつながっていく気持ちよさがあります。ボールを奪ったあとのカウンターの展開など、「あれよあれよ」という感じでシュートまで持ち込んでしまうのは本当にお見事。ヨーロッパでプレーする選手が多い代表だけあって、まるでヨーロッパのクラブチームのような組織です。

この試合も追加点こそありませんでしたが、取れそうにないのではなく、いくつも取れそうなチャンス、美しい攻撃がありながら、最後だけもうひとつ決まらなかったという内容で、見ていてもとても面白い試合でした。ホント、午後2時キックオフ設定とかもったいない限りです。ここまでの対戦相手は強豪国ではないとは言え、これだけの試合をできるチームが、強い国と当たったら急にポンコツになるなんてことはちょっと考えられません。大きな期待感を持って見守っていい、そんな手応えを感じる2試合でした。

↓最後の最後まで見事な戦いぶりで、なでしこJAPAN連勝!


↓「感動の振り返り」を求めるインタビュアーと、それはまだ今じゃないとばかりに先を見据える猶本さんの攻防!

全部終わったら、全部終わったら、たくさんの人への想いがあふれると思います!

でも、持って帰るお土産が何になるかで言うことも変わってくるので、全部終わってからのお楽しみにしましょう!



グループCのもう1試合でスペインが3-0で勝ったことで、日本とスペインの決勝トーナメント進出が決まりました。現状の順位ではスペインが得失点差で上回って1位、日本は2位という格好。1位抜けには勝利が必要ということで、もう少し後半に点を取れていればよかったかなと思うところもありますが、まぁ、1位がいいとか2位がいいとか考えだすとキリがありません。おそらく3戦目は休養も含めて大幅な選手の入れ替えをしてくるでしょうから、プラン通りに進めて、その結果どうなったかで先のことを考えるくらいでいいと思います。

仮にグループステージを1位で抜ければもしかしたらベスト16では少しラクな戦いをできるかもしれませんが、その代わり準々決勝ではグループEの1位で上がってくるだろうアメリカと対戦する可能性があります。そういう意味では「こっちがいいです」と選り好みできるほど、どちらかがすごくラクなルートということはありません。プランは遂行しつつも、しっかりと勝ちに行く、そういう気持ちでいなければせっかくのいい雰囲気に水を差してしまうというもの。スペインに勝ったら、男女連破で「また日本かよ」と思わせてあげられるので、せっかくなら勝ちを狙っていきたいですよね!

↓なお、この試合のプレイヤー・オブ・ザ・マッチには先制点の猶本さんが選ばれました!

いい感じのお土産、ひとつゲット!

でも、首から提げるタイプのヤツとかも欲しいですね!

首から提げるタイプのヤツ、獲りにいきましょう!


今後10年のなでしこの礎になる大会になるんじゃないかと思い始めました!

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婦人公論 2017年 12/27、1/6 合併特大号

僕は自分が見たことしか信じない 文庫改訂版 (幻冬舎文庫)

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