スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム

競馬

初の対JRA年間勝利を前に「見は逃げ」という意識が働き、よくわからず買ったGIチャンピオンズカップで再びマイナス圏へ転落ですの巻。

08:00
打席に立たない首位打者の気持ちがわかりました!

人生初の「年間勝利」を目指して孤軍奮闘がつづく秋競馬。しかし、ここにきて、ついに、とうとう、戦いは苦境に追い込まれてまいりました。「お前の小遣いの増減に興味などない」という向きもあるかもしれませんが、個人的に非常にホットなテーマとなっておりますので、決着までお付き合いいただければと思います。

今年は全体的にいいペースでの戦い(対JRA)を繰り広げており、天皇賞秋でのイクイノックス軸からのズバリ的中などもあり、一時は年間収支がプラスの状態に持ち込んだ瞬間も。しかし、そこで年間勝利が見えたことで、ペースは狂い始めていました。年間勝利が見えたことで「買わないことを逃げとみなす」ような気持ちが出てきてしまったのです。

GIレースを中心にヒマなときに注目レースをマイペースで楽しむ…を旨としているわけですが、何をもって「マイペース」とするのか、懐疑的な視線を自分で向けてしまったのです。「ヒマじゃないから買わない」となりそうな瞬間に「本当に忙しいのか?逃げているのでは?」と思ってしまったり、「いまいち意欲がわかないから買わない」となりそうな瞬間に「本当にそうなのか?逃げているのでは?」と思ってしまったり。プロ野球で首位打者の選手が終盤戦に試合を休み始めるあの感じを、自分自身でやってしまっているのではないかと、自分自身で疑い始めてしまったのです。

その結果、「わからないから買わない」という戦術的撤退としての「見」すらも「逃げでは?」と疑い始める結果となり、ここにきて一気に成績は悪化。負けたので特に報告していないGIマイルチャンピオンシップでは1・2番人気2頭を軸に指名するも両方沈むという体たらくで完敗(※賭けたぶん全部失ったの意)。ジャパンカップはイクイノックスからの馬券で辛うじて微プラスで乗り切るも、迎えた12月3日のGIチャンピオンズカップで完敗し、ついに年間収支は再びマイナス圏へと突入しました。まだ負けは数百円ではありますが、これでもう「逃げ切り」はできなくなりました。厳しい、非常に厳しい。有馬記念ですべてを賭けた勝負に臨む、緊張の年の瀬を迎えることになりそうです。

↓これは「見」で行けばよかった!痛恨のチャンピオンズカップ!




事前の見立てでは…正直あんまりよくわかりませんでした。どれも強そうに見えるし、どれも弱そうに見えるという迷いのなかでの予想。GI帝王賞で上位したグループ(2番メイショウハリオ、4番テーオーケインズ、9番クラウンプライド)と、ここまで5勝無敗&前走いい内容の12番セラフィックコール、GIフェブラリーSと南部杯を圧勝するも距離に不安が残る15番レモンポップ、さらに「よくわからないのでルメールさん」という理由で6番グロリアムンディを買い目として手広くワイドで押さえていきました。とにかくどこかに引っ掛かってくれ、そんな気持ちです。

そんなフワッとした予想で買ってしまったのがまずかったのか、スタートと同時に予想とは若干異なる展開になっていきます。何と大外から15番レモンポップが早めの仕掛けで先頭を奪い、逃げる構えを見せたのです。大外の不利、距離の不安、を懸念していた部分が、スタート直後の思い切った逃げ戦術でいきなり消えました。「枠なりの並びで後方につけ、最後の直線で内から抜けてくるかどうか」と勝手に思い込んでいたものが、「そうか最短距離でまわりたければ、逃げて自分のペースで走ればよかったんだ」と今頃になって気づく僕。買い目には残しているので問題はありませんが、いきなり予想の手ぬるさを痛感させられます。

レモンポップがそのまま引っ張り速めのペースで推移するレース。2番手をうかがうのはこちらも外から13番のケイアイシェルビーと5番のドゥラエレーデ、その後ろで4番テーオーケインズが前目のポジションにつけました。2番人気の12番セラフィックコールは意図的なものか、最後方からのレースに。3番人気のクラウンプライドは3番ジオグリフ・6番グロリアムンディと横に並ぶ隊列の一番外をまわしています。距離的にはロスが大きい位置ですが、枠なりに同じあたりを狙えばこんな感じになるのは致し方なしでしょうか。

1000メートルの通過は60秒8。入りの400メートルまでは過去5年と比較しても最速のペースでしたが、向こう正面では少しペースを落としてきました。先頭のレモンポップはいい感じで逃げられている模様です。3コーナーから4コーナーに入って各馬加速がつくあたりでも引きつづきレモンポップはペースを抑えて走っています。「序盤の入りが速いわりに、中盤ジワジワとペースを落として、結局はむしろスロー」といった展開に上手く持ち込みました。これはそろそろ行かないとマズイぞと、後方からは2番人気の12番セラフィックコールあたりが上がっていきますが、ほかの馬も一斉に上がっていく流れで馬群がゴチャッと固まり、外へ外へと遠回りするしかない格好。直線に入ってもセラフィックコールはまだ最後方で、かなり苦しい展開となりました。

直線入って残り400メートル、レモンポップのペースも落ちていますが、中間でペースを落として息を入れたぶん脚はまだ残っています。前目につけていたドゥラエレーデとテーオーケインズもそのまま連れて粘り込む格好。中団から後方の馬は、前が抑えてギュッと馬群が詰まるなかで、好位外目からジリジリ下がっていく13番ケイアイシェルビーと3番ジオグリフが壁になっており、前に行くには壁が邪魔だが、壁を避ければ外回りで距離をロスするという難しい状態に。結局この壁は「後方から外目を差してくる馬全体」の仕掛けを遅らせる形となりました。終いがスローの流れで、前が壁となって仕掛けが遅れ、外へ外へとまわされて距離をロスするのでは、残り400メートルしかないダートコースの直線でひっくり返すのはちょっと苦しい。

結局、13番ケイアイシェルビーと3番ジオグリフが作った壁よりも内側をまわした馬は「1着、3着、4着、5着、7着」といずれも上位に入り、外をまわした馬は人気どころも含めてほとんどが後方に沈むといった形のレースになりました。やはり、根本的な話ではありますがコーナーで外をまわすのは距離の損が大きく、仕掛けのタイミングなどで取り戻すことができなければ、内側をまわったほうが普通に速いわなと、改めて勉強させていただきました(←勉強代1600円)。

逃げ切ったレモンポップはもともとの地力に加えて、距離不安をカバーする逃げ戦術と鞍上のペース配分でロスなく走れたのが功を奏しました。3着ドゥラエレーデと4着テーオーケインズは展開が向いた粘り込み。ドゥラエレーデはクラシック戦線ではいろいろもたつきましたが、ようやく本来の流れに戻ってきたのかなという感触で、テーオーケインズは最後の粘りが足りないところがなるほど引き際なのかなと思いました。そして、先行有利のレースを外にまわして上がり最速36秒6で2着したウィルソンテソーロは、もの凄い末脚で1頭だけ別世界の走りでした。これもキタサンブラック産駒ということで、キタサンブラックが芝もダートもしばらく日本の競馬を席巻しそうな、そんなレースとなりました。これを未来への肥やしとして、次走で取り戻したい、先につながる完敗でした!

↓推し馬グランプリ(※JRAの販促企画)での自身の推し馬レモンポップの勝利にプレゼンターとして花を添え、長澤まさみさんもニッコリ!

長澤まさみさんは単勝レモンポップ購入済だそうで、ガッチリ儲けた模様!

絵になるツーショットで結構なことです!



とまぁ、終わってからなら言えるあーだこーだを、レースの前にはまったく想像できてはおらず、反省だけが残る完敗となった今回。残る今季の予定は有馬記念、そしてもしも有馬記念で年間勝利に持ち込めなかった場合はGIホープフルステークスに最後の望みを託して、人生初の年間勝利(対JRA)を目指していきたいと思います。「イクイノックスを買え」「ルメールを買え」という必勝戦術もここにきて崩れたことで、ちょっと有馬記念はどうしたらいいのかわからなくなってきましたが、「長澤まさみを買え」も視野に入れつつ孤軍奮闘してまいりたいと思います。

どの道、毎年「有馬が最後だからドーンと」いって、ドーンと外して負けるのが常ですので、有馬で勝たねば年間勝利はなかったのです。中途半端に勝ちが見える状態だと、「打席に立ちたくない」「有馬記念で購入を300円以内に抑えれば年間勝利確定」「買わなければ絶対に負けない」などという逃げの気持ちも生まれますが、初めから有馬記念次第だと思っていれば覚悟も決まるというもの。競馬民らしく有馬でドーンといって、胸をドーンと張れる人生初勝利を目指します!



タイトルを逃して「来年やり直し」に臨む野球選手の気持ちも理解できそう!

史上最強馬とは「誰でも乗れるポニー」であるという真理を示し、すべての「幻」のなかで最強となったイクイノックスのジャパンカップの巻。

08:00
史上最強馬とは一周まわって「ポニー」だった!

薄っすらと雨の降る寒空の東京で、史上最強馬による世界最高のレースが再び展開されました。第43回ジャパンカップ、どれだけ賞金を積んでももはや海外馬が参戦しようという意欲すらわかない感じとなった日本競馬「完全ホーム」の大舞台。もしも史上最強馬イクイノックスに彼のホームで勝てる馬がいるとしたら、それは日本競馬の馬しかいないだろうと思います。イクイノックスを止められる馬は世界に存在するのかを世界が確かめる、そんなレースでした。

そこに集った素晴らしいメンバーたち。イクイノックスに先着して日本ダービーを獲ったという事実がこの先も燦然と輝きつづけるだろうドウデュース号。後ろからは差せないとしても前から行ったらどうかな?を突きつけるタイトルホルダー号。デビュー以来いまだ3着より下になったことがない昨年の牝馬二冠スターズオンアース号。栄光目指して逃げつづけ、気づけば18億円余りを稼ぎ出したみんな大好きパンサラッサ号。そして、それら複数GIタイトルを持つ名馬たちのなかでもとりわけ大きな期待を集める打倒イクイノックスへの最後の刺客、今年の牝馬三冠、斤量54キロ、最強のお嬢さんリバティアイランド号。あまりにハイレベルな戦いが見込まれたためか、当初は9頭立てになるのではないかという情報もありましたが、最終的にはフルゲート18頭が名を連ねる状況となったことも含めて最高の舞台が整いました。

枠順もまた「ホントに抽選してます?」と聞きたくなるような理想的なもの。1枠1番にリバティアイランド、1枠2番にイクイノックス、2枠3番にタイトルホルダー、3枠5番にドウデュースという並びは「タイトルホルダー、イクイノックス、リバティアイランド、ドウデュース」の隊列を組んでチカラ勝負をしなさいと言わんばかり。少し離れた外からパンサラッサが上がっていくだろうことも含めて、「紛れ」という不安要素がまったくないレースが見込める格好です。

だからこそ、確信をもって馬券を購入することもできました。何度考えても、どう考えても、全馬がまともに走ったときにイクイノックスより前に馬がいるケースは考えられませんでした。パンサラッサとタイトルホルダーがいれば極端にスローになるはずがなく、1枠2番から出て3番手あたりにつければ前が壁になるはずもなく、後ろから差せる馬がいるはずもない。ゲートが上手くて、馬が賢くて、騎手もルメールさんです。どこにも死角はありません。何なら、ルメールさんがムチを落としたとしても、馬自身が「指示はないけど、ここで仕掛けます!」くらいのことはやりそうです。当てることはイージーと言ってもいい。儲けることはやたら難しいですが…!

↓パドックでは「リバティアイランドをマークする風のイクイノックス」という歴史的な場面を見ました!
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↓当てるだけならイージーなのですが、まったく儲からない馬券を「史上最強と知っていた」と示すために購入しました!
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↓返し馬ですら「一騎打ち」と見えてくる世紀の対決!

そして始まったレース。大歓声が起こるスタンド前からのスタートは、タイトルホルダーが若干立ち上がりそうな雰囲気があったもののキレイに決まりました。イクイノックス、リバティアイランドもまったく問題なく出ていきます。タイトルホルダーがいい出足で前に進出すると、外から勢いよくパンサラッサが駆け出していきます。大外8枠17番スターズオンアースも前目のポジションを狙って進出してきます。イクイノックスはハナを切るパンサラッサ、タイトルホルダーの後ろにつく3番手。リバティアイランドはイクイノックスを見るように4番手あたり。イクイノックスの後ろを誰が取るかを争った場面では、鞍上の川田騎手もその位置を狙ってきたディープボンドを一喝するなど譲らぬ構えです。そのリバティアイランドに競り掛けていくのはスターズオンアース。ある意味で、対イクイノックスではなく対リバティアイランドの最強牝馬決定戦と設定してきたか。ドウデュースは内ラチ沿いに走り、1コーナーでリバティアイランドの後ろに入りました。スターズオンアースの位置取り以外は事前の想定通り、理想的なチカラ勝負の隊列です。

パンサラッサが大逃げで飛ばし、前半1000メートルは57秒6という速いペースに。2番手タイトルホルダーの位置でも1000メートルの通過が60秒ちょうどぐらいでしたので、レースはしっかり流れています。レコードタイムを狙うならもう少しタイトルホルダーが押していってほしかったところですが、まぁこの辺は馬の状態もあるのでしょう。そのまま道中は大きく位置取りが変わることなく、同じような隊列で進んでいきます。引きつづき大逃げのパンサラッサは、最後の直線に入ってもまだ大差をつけています。場内では「まさか」を期待して大きな声が上がります。しかし、パンサラッサの脚色はだいぶ鈍ってきています。直線に入って残り400メートル、2000メートルまでを1分57秒7でカバーしてきたパンサラッサですが、さすがにこの距離で一杯か。もう後続は射程圏まで迫っています。

じょじょに後退するパンサラッサ、死力を尽くして粘り込もうとするタイトルホルダー、前を行く2頭は苦しくなってきました。しかし、イクイノックスはほとんど同じ位置を追走してきたとは思えない身軽さで並び掛けると、あっという間にタイトルホルダーをかわし、パンサラッサもとらえようという構え。その背後からはリバティアイランドも追走してきていますが、仕掛けたあとの反応、伸び、すべてに差がありました。2馬身、3馬身、グングン離れていきます。こうなるとリバティアイランドも前を追うというよりは、横にいるスターズオンアースとの勝負になってきます。競馬番組で「リバティアイランドの単勝30万円」を購入した藤浪晋太郎さんあたりは、もはや馬券を破ってもいいくらいの展開です。

残り200メートル手前で先頭に立ったイクイノックスは、さらに伸びるようにして独走し、残り50メートルでは後続の様子を横目で確認したルメール騎手が勝利を確信して「流し」ました。見せムチと肩ムチを数発繰り出しただけで、「まだ全力ですらない」という走りです。つづく2番手には前評判通りの強さを見せてこのメンバーを振り切ったリバティアイランド、3番手にはスタートからの仕掛け・位置取りが功を奏した格好のスターズオンアースが入りました。ドウデュースはスターズオンアースの外までまわしてから追い出した部分でのロスを埋めるに至らず4番手まで、5番手にはタイトルホルダーが粘り込んでこのメンバーにあってもレベルの高い地力があることを改めて示しました。上位にズラリと並んだ予想通りの名馬たち。紛れがあったわけでもアクシデントがあったわけでもなく、ましてやほかの馬が弱かったわけでもなく、存分に力量を発揮するチカラ勝負をやった結果として「ただただイクイノックスが圧倒的に強かった」、そんな圧巻のレースとなりました!

↓過去のどんな馬との対戦を想像しても、このペース・この位置取りから上がり最速を繰り出す馬に勝てる図が浮かびません!



↓残り50メートル、後方を確認して「流し」にかかるルメール騎手とイクイノックス!
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↓ゴール後、戻ってきた大観衆にガッツポーズで応えるルメール騎手とイクイノックス!
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レース後、騎乗したルメール騎手は「ポニーみたいですね。誰でも乗れます」と語りましたが、まさにポニーのような強さでした。馬自身が賢く、行けと言えば行き、待てと言えば待つような動かしやすさがあります。スタート直後の位置取りのやりやすさ、ムチを見せるだけでグンと加速する反応のよさ、レースの終わりまでしっかり強さを出す隙のなさ、ゲームのように操縦できる馬です。そのように調教してきた努力は当然あるわけですが、「いくら言っても言うことを聞かない馬」もいるもの。その点でイクイノックスは走る能力が高いだけでなく、馬自身が競馬を知っていて競馬が上手い。だからこそ、今回のように前につけてもそのまま掛かってしまうことがありませんし、後ろに控えて一気に差してくることもできます。展開による「紛れ」を、騎手の判断と合わせて限りなくゼロにすることができます。

「逃げるか、追い込むか、どっちか」という極端な競馬をする必要もありませんし、「ある程度溜めを作りたいので道中は前に馬を置いて、最後は紛れが起きないように大外ぶん回し」なんてロスの大きい走りをする必要もありません。このスピード、このペースの3番手追走から最後上がり最速で突き放せる馬にもとより「紛れ」などあるはずがありませんが、どんな位置どんな展開になったとしても必要な走りができるという点で、「ポニー」とは言いえて妙だなと思います。

道中の直線をパトロールビデオで見るとよくわかりますが、向こう正面では追走する馬が掛かってしまっている様子が見えます。最後の直線では、先頭を行くイクイノックスはムチを入れなくてもチカラを出してくれるので、まるでゲームのように真っ直ぐ駆けてくるのに対して、後続の馬は右ムチを入れれば左に行き、左ムチを入れれば右に行き、その蛇行する走りを鞍上が調整するように走っています。蛇行分のロスはそこまで大きくはないものの、走りの完成度という点でもイクイノックスが一枚も二枚も上だったなと感じる場面でした。どうやったらこの馬に勝てるのか、世界のホースマンに聞きたいくらいですね!

↓馬に乗っている人の頭についたカメラの映像だとは思えない、まったく酔わないポニーの走り!



↓タイトルホルダーのジョッキーカメラは「パンサラッサ鑑賞」には最高の位置取り!



そんな史上最強馬はどこまで走ってくれるのか、気になるのはむしろそちらの話題のほうでしょうか。陣営は「これが最後のレースかも」という可能性を否定はしませんでした。来年もまた走ってくれるのか、有馬記念をラストランとするのか、あるいは実はこれがラストランだったのか、未来の可能性を決めかねている様子。現実的に考えればイクイノックスの「種牡馬としての」評価を上げるようなレースは、もう世界のどこにもありません。これからの日本競馬のこと、いや世界に広がるその血によって進化する世界の競馬の未来を思えば、怪我をさせるようなリスクを負ってまで成すべきことは何もない、それは真っ当な判断だろうと思います。

もし、仮にそうなったとしても、「走る」ことに関してはもう存分に見させていただいた、そう思います。確かにイクイノックスはクラシック三冠はひとつも制していませんし、凱旋門賞という夢への挑戦も今のところありません。取れなかったトロフィーはあります。しかし、そういうトロフィー集めをコンプリートしていないこと以外は、歴代のどんな「幻」と戦わせたとしてもイクイノックスが最強であろうと思います。どの馬のどういうレースならこれより前に行けるかのイメージがある人は、ぜひ発表してほしいと思います。それぐらい圧倒的な、異次元の走りをこの目で見られたことを一生の自慢とできるような、そんなレースを天皇賞・ジャパンカップと連続で見させていただきました。だから、仮にこれが最後であったとしても、新たに抱いた「幻」は未来の名馬と堂々と戦っていけると思います。おそらくは連戦連勝で。

たまたまではありますが、まだ2戦目のイクイノックスを競馬場で見て、あまりによく見えたことから馬券を買って、驚くような強さに未来を予感した、あの出会いを幸せに思います。「強い馬だ」と先に知ってしまってからでは、ここまで素直にその強さを受け入れることができず、ついつい穴を狙ってはハズレ馬券をつかんできたことでしょう。イクイノックスの出るレースをイクイノックスから買う、簡単そうで難しい決断をつづけられているのは、幸せなことだなと思います。

「イクイノックスのほうが上だった」

しばらくは、そう言いつづけるイクイノウエオジとなって、未来の競馬を見守っていくことにしたいと思います。

これより上かも?と思わせる馬に生きているうちに出会えるのか、本当にそんな日はあるのか、半信半疑で進んでいきたい、そんな一頭だなと思いました!

↓イクイノックスが2歳の頃に撮った写真は、自慢の一枚ですね!
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「あれ現地だった自慢」のレース、サイレンススズカの秋天から更新します!

人生初の単年度黒字化&対JRA勝利が見えてきた今季の競馬で、「馬を選ぶな、ルメールの複勝を買え」という正解にたどり着いた件。

08:00
初の単年度黒字化が見えてまいりました!

最近、妙に競馬の話が多いなと思われている方がいるかもしれませんが、実は今年、僕のなかで競馬熱が盛り上がってきております。というのも、競馬人生で初めて「単年度黒字」というものが見えてきたのです。胴元の取り分を勘案すれば、賭け金の75%も取り戻せば十分に勝ちと言える不平等ギャンブルにおいて、賭け金を上回るお金が取り戻せそうだぞという希望の光。これがスタートアップ企業なら「そろそろ上場して投資家から金をむしって逃げよう」と鼻息荒くするところですが、僕もまさにその状態。まるで馬のように鼻息を荒くしています。

ついに先日の天皇賞・秋での勝利により、いよいよ賭け金よりも払い戻しの方が多いという黒字状態に到達。ネット投票の履歴が残るClubJRAネットでの集計を見れば「的中率78%、回収率115%」という夢の数字が記録されています。「このサイトのグラフは、回収率が100%を超えると赤色になるんじゃよ…」と馬の長老様から噂話としては聞いていた、あの赤色グラフが、ついに自分の集計に登場したのです(※なお現地参加分は記録されていないのでノーカウントだが、こちらも勝った記憶しかないので勝っているはず)。現在賭け金を回収金が2880円上回っており、「よし!あとは1円も賭けない!」と決断すれば、ついに僕は、長年の宿敵でありライバルであったJRAに勝利することができるのです!(※みみっちい賭け方をしていることを割り出してはいけない)

だが、しかし、シーズン最終戦付近を休んで首位打者を取ろうとする浅ましい野球選手のようなことをして、本当に勝ったと言えるのでしょうか。否、断じて否。普段よりたくさん買う必要はないけれども、GIとかの普段買いそうなレースを買わずに今年度を終えたなら、それは心のどこかに「逃げ」の意識があったと言わざるを得ません。買って、勝って、年度末の有馬記念まで駆け抜けて、そこで有終の美を飾ってこそ、真の勝利と言えるというもの(※ホープフルステークスって何でしたっけ?)。そもそも回収率100%を超えさえすればいいという話であれば、どこかで複勝1.1倍でも買って勝って寝ていれば済む話。全力で楽しんだ末に手にした勝利でなければ、真に自分に対して誇ることはできないでしょう。黒字化を誇るためにも、真剣に、本気で、残りのレースにも取り組む所存なのであります。

↓ということで、今週はGIエリザベス女王杯に挑戦しました!



事前の見立てとしては、1枠1番で単勝1番人気のブレイディヴェーグと、4枠7番で単勝2番人気のジェラルディーナが実力上位であろうと見ていました。ブレイディヴェーグは前走ローズSの内容と、一緒に走ったメンバーの秋華賞での結果を見れば、もし秋華賞に出ていればリバティアイランドの2着・3着は十分にあったと判断しました。そしてジェラルディーナは昨年のこのレースの覇者であり、非常にレベルが高いレースだったなとあとから改めて思った宝塚記念で4着するなど今年も十分なチカラを示しています。この2頭を軸に、牝馬三冠レースでいずれも好走したハーパーが次点、府中牝馬Sで好走したルージュエヴァイユ、ディヴィーナが内のいいところに入ったのでコチラも有力と見て、このあたりで決まるだろうと踏みました。

「もう面倒だし、この5頭でワイドボックス10点買うか…」という考えも一瞬よぎったものの、やはり真剣に予想をしてこそ真の勝利はあると思い直し、実力上位の2頭からどちらを取るか、それを最後の最後まで思案したのです。そして、最後は実力未知数の新鋭よりも実績十分なGI馬ジェラルディーナを安定軸として取ったわけですが、そのとき僕は今季何度も救われ、何度も思い知らされてきた大事なことを検討に入れ忘れていました。1枠1番ブレイディヴェーグの鞍上はウマ娘CMのタップダンスでもおなじみのルメールさんだった。何故2頭で迷ったのにルメールさんのほうを買わなかったのか。何故最初に「ルメール」のあたりにグリグリッと二重丸を書かなかったのか。その反省をするのはレース開始からわずか数秒後だったのです…。

↓人生初の単年度黒字化へ向けて大負けだけは避けたいエリザベス女王杯のスタートです!



ゲートが開いて一斉に馬が走り出すその瞬間、何と軸として指名した4枠7番ジェラルディーナは立ち上がってフェラーリのマークみたいなポーズになりました。痛恨の出遅れ。「後方から競馬ができないわけではない」ものの、無意味に出遅れて得になる要素などありません。いきなり2馬身分くらい損をしました。

そんなジェラルディーナをしり目に、各馬は1コーナーへ向けてポジション争いを演じています。ハナをうかがうのは9番のアートハウス。実力はあるものの最後のキレで分が悪いところから、先行策での粘り込みを狙っている模様。それに4番ローゼライトがつづいて逃げる様相です。その2頭を行かせつつ前目につけたのが3番ハーパー。1番のブレイディヴェーグも若干伸び上がり気味のスタートで、いきなり内にヨレるなどモタつきますが、ひとつ外にいる2番ルージュエヴァイユが抑え気味であるところを見て、ルメール騎手がスッと前に出していきました。これで1コーナー手前で有力馬ハーパーの後ろにポジションを取り、非常に走りやすい態勢を築きました。

その頃僕の軸馬であるジェラルディーナは、最後方あたりからムーア騎手が少し押して、前へと進出を計っています。1コーナーに掛かる前に何とか中団までは押し上げたものの、馬がクチをパカーッとあけて若干フェラーリみたいなポーズで走っています。うーむ、あまりいい感じの走りではありません。外枠から押し上げていったマリアエレーナの後ろにつけながら外・外とまわる格好となり、あまりいいポジションにも入れませんでしたが、まぁスタートがアレでは仕方ありません。

1000メートルの通過は61秒1とややゆったり目のペース。逃げた馬から後続集団までは5馬身ほど開いていますので、有力馬たちはさらにゆったりとしたペースで走っている模様。となると、早めに前に進出して、いい位置取りから仕掛けていかないと、最後の直線だけで後方から差し切るのは難しそうです。そのあたりは各騎手とも先刻承知か、向こう正面の直線終わりではグッとペースが上がり3コーナーへとなだれ込んでいきます。内ではハーパー、ブレイディヴェーグ、ルージュエヴァイユの3頭がラインでも形成するように連れて上がっていきます。僕の軸馬ジェラルディーナはマリアエレーナの脚色が悪いと見たか(※レース後騎手が下馬/故障か)、後ろにつくのは止めて外をまわしてきました。距離としては損ですが、前に上がっていかなければ勝負にならないので致し方ないところ。

直線に入ると、ラインを形成していたハーパー・ブレイディヴェーグ・ルージュエヴァイユの3頭は、右回りはあまり得意でないのかハーパーが勝手に外へと流れていき、まるで「どうぞ」とでも言わんばかりにブレイディヴェーグの進路を開けます。そこをブレイディヴェーグが悠々と加速すると、後ろにつけていたルージュエヴァイユも何の引っ掛かりもなくそのまま伸びていきます。外からはジェラルディーナ、後方からは前が壁になって引っ掛かっていたライラックが伸びてきますが、内枠3頭がキレイにラインを組んで経済コースを回ってきたぶん及びませんでした。結局、内枠3頭がそのまま上位で入線。内枠有利、騎手重要、何度目かとなる大反省をしつつ「迷うなかにルメール騎手がいたらもう迷うな!ルメールを買え!」「ルメールが選んだ馬にルメールが乗るんだからルメールを買え!」「馬を選ぶな!ルメールを買え!馬はルメールが選んでいる!」ということを改めて確認するレースとなったのでした。

↓スタート直後に一声上げていい位置を取ったルメール騎手の勝負勘!


↓出遅れたジェラルディーナのムーア騎手のジョッキーカメラは、何と「馬の頭しか映っていない」という異例の映像に!


カメラに映る範囲と目で見える範囲は違うとは言え…!

これ、どこの何を見て走ってるのだ!?

ひたすら馬の頭がぶつかってくる感じなのですが…!



と、ここまでの書きっぷりを見ると「負けたな?」という印象かもしれませんが、若干の優柔不断さもあって軸はジェラルディーナと言いつつブレイディヴェーグからの馬券も若干買っておりまして、ほぼ賭け金元返しとなる1500円購入1390円戻しの微負けで踏み留まることができました。迷った2頭のうちルメールさんの乗っている方を選んでおけば微プラスで終えられる展開、面倒臭さが勝って「ワイドボックスで買っちゃえ」をやっていれば賭け金倍増の快勝の展開だっただけに惜しい部分もありますが、まぁ、それもまた競馬。判断ミスも大負けには至らず、またひとつ「単年度黒字」へと近づくレースとなりました。

今回の判断ミスを踏まえて「本当にルメールさんを買えば勝てるのか?」を確認しましたところ、今年のGIレースでルメールさんの騎乗機会は14レースあり、何とそのうちの11レースでルメールさんは馬券に絡む騎乗(5勝、2着2回、3着4回)を見せていました。残りの3レースも、4着が1回と、人気薄の馬に騎乗したフェブラリーステークス、そしてスキルヴィングに騎乗した日本ダービーということで、「迷う馬にルメールさんが乗っている場合、よほどのことがない限り、ほぼ来る」ということが実績として示されていました。何も見ないでルメールさんの馬を複勝で買っていれば勝てる、競馬とは簡単なことだったのです。何だかこれなら、残りのレースも大負けせず生き残れそうな気がしてきますよね。負けさえしなければいいのであれば「ルメールの複勝」、これで大丈夫。まぁ、それが楽しいかどうかと言われると、楽しくはないかもしれませんが……。

はたして、今年度の終わり、夢の黒字化は達成されるのか。

それともギャンブラーにありがちな「勝っている分を全部賭けて、結果負けて終わる」になるのか。

露わになる自分自身の本性を楽しみに、予想に励んでいきたいと思います。

今後の予想が「ここはルメール騎手が騎乗の●●を複勝でドーンと」みたいになり始めたら、「勝ちたいんだな」と思っていただければと思います!

↓リバティアイランドのいる秋華賞には向かわずにコチラを勝つ、は陣営含めていい判断でした!


周辺事情を含めて、最後にルメールさんが選んだという結果だけを見ればOK!

「ルメールさんより競馬詳しい」者だけが自分で予想しなさい!

楽しくなくても、それで勝てる!



3番人気馬×ルメール騎手のレースとかが大きく勝つチャンスな気がします!

「京都芝3000メートル大外枠」からドゥレッツァ号を菊花賞制覇に導いた、ルメール騎手の「人間の手腕による3馬身1/2差」の圧勝劇。

08:00
騎手という人間が生み出した3馬身2分の1差の圧勝劇!

日曜日は競馬などを楽しんでおりました。3歳牡馬クラシック3冠の締めくくりとなる菊花賞です。今年は23年ぶりに皐月賞馬と日本ダービー馬とが並び立ったということで2強対決に注目が集まっていました。僕自身も「2強のどちらが勝ちますかね…」という見立てでレース予想などに取り組んでおりました。

しかし、フタを開けてみれば何と重賞初挑戦となるドゥレッツァ号が菊花賞を制覇。それも2着入線のダービー馬と、3着入線の皐月賞馬に3馬身差以上をつける圧勝です。ある程度の評価はしつつも、コースレイアウト的に不利であろうと思われた大外枠であったこと、これが重賞初挑戦という未知数の部分があったことで勝ちはないだろうと踏んでいたのですが、とんだ見立て違いでした。何とかワイド馬券で上位3点当てて賭け金微減で済んだものの、2強がそのまま連に絡んだなかでは惨敗といった感触のレースでした。

それを生み出したのは馬自体の強さはもちろんですが、騎乗するルメール騎手の神騎乗に要因があったことは、さすがにこのレースを見せられれば理解せざるを得ません。下手な騎乗などを見ると「騎手とかいう荷物が乗ってないほうが速いのでは?」と言いたくなる日もありますが、この菊花賞は間違いなくルメール騎手の手綱さばきによって生み出された圧勝劇でした。平凡な騎乗でも馬のチカラで勝ち負けはしたかもしれませんが、3馬身と2分の1の差はつかなかっただろうと思います。「何も考えずにルメールを買え」が正解のレースでした…!

↓スタート直後、「アーッ!」という声が漏れた桃色17番ルメール騎手の仕掛け!




まずこの菊花賞というレースの説明から。こちらのレース、クラシック3冠の締めくくりとして京都競馬場芝3000メートルの距離で競うレースです。皐月賞(2000メートル)、ダービー(2400メートル)と比べても距離が長いことで、スタミナ豊富な長距離ランナー(ステイヤー)が強いレース……と言いたくなりますが、実はそうではありません。現代の日本競馬は長距離得意のステイヤーなど求めておらず、レース数が多いマイル(1600メートル)前後の中距離レースをメインに、せいぜいがクラシックディスタンスである2400メートルくらいまでで強い馬を育てようとしています。

そのため、この菊花賞は「3000メートルなんて走ったことがないんだよね」という初心者馬が集い、「最後までスタミナもちますかね?」とおっかなビックリ走るレースとなっており、結果として「前半はジョギング程度で流し、最後に猛ダッシュで勝負を決める」という事実上の中距離レースになっています。勝利した馬の傾向でも、ダービー馬よりも皐月賞馬のほうが菊花賞での勝利との関連性が強く、最後の1000メートルダッシュに強い馬が勝つレース。卑怯者が集った校内マラソン大会のように、「みんなでゆっくり走ろうぜ!」からゴールが見えた瞬間に友だちを裏切ってダッシュするようなレースなのです。

そのため基本的には前目の好位につけるのが有利です。一番後ろからダッシュ大会になったらよほどの速さがなければ追い抜けませんので。ですので、位置取りが重要になります。そのときコース内側の枠に入った馬のほうが、コース外側の枠から内に寄ってくる馬よりも前に出やすいので当然有利なわけです。さらに、菊花賞の舞台となる京都競馬場芝3000メートルのレイアウトでは、スタート直後にコーナーがあるため、そこでポジションを上げ下げするのが難しく、何となく内枠の馬が前目につき、外枠の馬は後方から追走する展開になりがち。とまぁ、そんなことで「大外枠は不利」というのが定説となっております。

そんななか、大外8枠17番に入ったのがドゥレッツァ号とルメール騎手です。ルメール騎手はどういう考えでレースに臨んだか、レース後に調教師さんが明かしたところによれば、ルメール騎手からレース前に「静かな感じで競馬をするか、アグレッシブな競馬をするか」と聞かれたとのこと。調教師さんは「任せる」と応じたそうですが、このやり取りでルメール騎手には大きくふたつのプランがあったことがわかります。

静かな感じで競馬をするというのは、外枠発走なりの位置につけ、自分より少し内側の枠から出る1番人気・ソールオリエンスあたりをマークするということでしょう。中団から後ろくらいのポジションで道中を運び、最後にジワジワと上げてラストの勝負に挑むと。一方でアグレッシブな競馬をするというのは、思い切って前に行くという意味だったのでしょう。大外枠の不利を跳ね返していいポジションにつけるには、最初のコーナーに入るまでに思い切って前に出てしまえばいいわけで、それをやるぞということです。

実際のレースを見ると、ポンといいスタートを切ったドゥレッツァは、ルメール騎手の手綱によって加速し、コーナーに入るところで先頭に取りつきました。レース後のルメール騎手のコメントによれば「馬が元気だったのでフライングスタートをしました。すぐ前の方に行ったので逃げた方がいいと思いハナを切る判断をしました」とのこと。ポンと出て、馬が行きたがっていると察知して、迷わず先頭を取りにいったのであると。



これは「言うは易し行なうは難し」のレース運びです。脚質や性格の問題で「逃げるしかない」と思っている馬ならさておき、ドゥレッツァはここまで逃げたレースはありません。中団から前目で差す競馬で勝ってきています。ドゥレッツァが前に行った瞬間に若干のどよめきが上がりましたが、多くの人が「負けた」「終わった」と思ったことでしょう。何せこのレースは「ゆっくり走ろうぜからのダッシュ勝負」です。逃げ馬でもないものが前に行けば、「間違って勢いがついてしまった」「前半でバテて終わる」と思うのが自然です。馬はこの先ゴールまで、過去のどのレースよりも長い3000メートルあるなんてことは知りませんし、ゲームみたいにボタン操作で確実にスピードを上げ下げできるわけでもありません。一度勢いがつけば行ったきりでそれで終わり……と思うのが普通です。

しかし、ここからのルメール騎手のレース運びが見事でした。先頭を取り切ったあとはペースを緩め、縦長の隊列のなかで10番手あたりにつける人気馬と十分に距離を取ったまま、馬にひと息入れたのです。このレースの3000メートルを1000メートルずつに区切ったときのタイムが「60.4秒⇒64.1秒⇒58.6秒」という推移でしたが、前半ポジション取りのために少しチカラを入れたあと、4秒近くペースを落とし、最後に再びダッシュする中緩みのレースであることがよくわかります。

2020年にコントレイルが勝ったときは「62.2秒⇒62.6秒⇒60.7秒」という緩みのないペース推移だったため、ハナを切った馬は3番人気のバビットを含めてことごとく下位に沈みました。2021年にタイトルホルダーが勝ったときは逆に「60.0秒⇒65.4秒⇒59.2秒」という中盤ガッツリと緩むペース推移だったことで、タイトルホルダーは逃げ切り勝ちを果たし、後方追走の1番人気レッドジェネシスは13着となりました。ルメール騎手は自らハナを切ることで、「逃げ馬が逃げ切り勝ちをするときのようなレースペース」を自分で生み出したのです。初めて逃げる馬を、まるでゲームのように操って。

向こう正面で2000メートルに差し掛かるあたりではドゥレッツァとルメール騎手は3番手までポジションを下げていますので、先ほどの数値よりも実際はさらに緩んだペースで走っていたはず。それでも向こう正面の直線では1番人気・ソールオリエンスや2番人気・タスティエーラとは5馬身ほどの差をつけていますので、最後のダッシュ勝負への備えは十分でした。3コーナーから4コーナーにかけての手応えと位置取りから、ルメール騎手は勝利を意識しながらのラストとなったことでしょう。

最終的に、ハナを切った1頭であるリビアングラスが4着に粘り、早めに前に上がったサヴォーナも5着したことから、逃げ・先行が有利な前残りのレースであったことは明らかでしたので、最後の直線に入ったときのポジションで勝負はついていたなという感触。上がり3ハロンが、1着・ドゥレッツァ(34.6秒)、2着・タスティエーラ(34.8秒)、3着・ソールオリエンス(35.1秒)と「前にいるドゥレッツァのほうがラストが速かった」ので、同じ位置取りからでも十分に勝てるレースだったとは思いますが、この圧勝となったのはレース運び、騎手の腕だったなと思います。馬だけでも1着を取れる強さであったものを、騎手の好騎乗が圧勝劇に仕上げた。これでは負けるはずがありません。どうしてガッツリ買わなかったのか、こんなに強いとわかってたら買ってたのに、事前に教えてくれや、そんなことを言いたくなるくらいの見事な勝利でした!

↓勝ったルメール騎手はウマ娘CMのタップダンスで上機嫌!


GIはルメールさんだけ買ったほうが当たる気がするわ!

なるほど、いい馬の騎乗を頼みたくなるわけです!



個人的な反省点としては、いろいろ迷い過ぎてしまったなと思います。ソールオリエンス、タスティエーラの2強が強いことはわかっていたのに、当てたいという気持ちが強くなり過ぎたことで、いろいろ手を広げてしまいました。1番トップナイフも買ってましたし(※スタート直後に故障)、6番リビアングラスも前残りがあるぞと買ってましたし(※4着)、8番サヴォーナも前残りがあるぞと買ってましたし(※5着)、11番サトノグランツも前走好走で買ってましたし(※10着)、12番ハーツコンチェルトも好位粘りがあるぞと買ってましたし(※6着)、もちろん17番ドゥレッツァも買っていましたので、当てても儲からないほど散らばった予想になっておりました。

皐月賞とダービーを見れば、同じところからダッシュすれば2強より前に出る馬はいないとわかりそうなものなのですから、軸にするほど信じるでもなくサトノグランツまで手を広げたのはやり過ぎでした。のちに公開されたジョッキーカメラで見ると、サトノグランツはスタート直後のポジション争いのなかでタスティエーラに内から出られて位置取りを下げており、その時点でもう厳しかったかなと思いました。

その観点で言えば、ルメール騎手までではないにせよ2着したタスティエーラのモレイラ騎手も見事な騎乗でした。スタート直後のポジション争いでは一歩先に自分の行きたい場所に入り込みましたし、最後の直線での追い比べでも外に出せないと見るや狭い隙間を狙って一気に入り込みました。素早い判断と思い切りで内に包まれた分のロスを生みませんでした。改めてこの菊花賞というのは、どういうレースをイメージして、どこにどう位置取るかという騎手同士の争いが重要なのだと感じさせられるレースだったなと思います。騎手は荷物ではなく大事なブレインなんですね…。

↓24秒頃にポジション取られて叫ぶ川田騎手(サトノグランツ)の声!ラストの直線ではずっとモレイラ騎手(タスティエーラ)の声が!


最後ずっとヴァアアアって叫んでますね!

それやると速くなるヤツなのかは知りませんが!


と、今回もまた「ルメールを買え」「海外ジョッキーを買え」「あとは適当に人気馬を買え」という身も蓋もない学びを得ましたが、今後に向けても大いに収穫となるレースでした。菊花賞だけではなかなか判断しづらいところではありますが、ドゥレッツァは相当な強さと見受けましたので、次の出走機会にはしっかり買っていきたいと思いました。できれば、古馬とゴチャ混ぜになって、タスティエーラ、ソールオリエンスらも混ざって人気が割れるような感じだといいなと思います。あと1回くらいは、美味しいオッズで買えそうな気がしますからね!



「長距離は騎手で買え」という格言、現代でも変わらないなと思いました!

これが三冠馬の見た景色か!牝馬三冠を達成したリバティアイランドのジョッキーカメラで見る、勝つべくして勝った人馬一体の秋華賞。

08:00
これが「三冠馬」の見る景色か…!

15日、中央競馬にて注目のレースが行なわれました。3歳牝馬三冠レースの第3戦、GI秋華賞です。単勝1.1倍、そして最終的に「複勝1.0倍元返し」となるほどの圧倒的な支持(※これはほかの馬も上位人気だったためでもあるが)を受けた1番人気リバティアイランドが三冠達成なるのか。いや、なるのかならないのかで言えば「なるとしか言えない」という強さをすでに存分に見せつけられているわけですが、レースを終えてみて思うのは「1.1倍でも十分だった」ということだけ。負けようがない馬の能力と、勝ちに徹した騎手の騎乗と、こういうレースになるのであれば「わずか2分で資産が10%増える」馬券を買えば十分だったなということ。何度やってもアクシデント以外では負けようがない、そんな強さでした。

ちなみに個人的な馬券周りはと言うと、単勝1点で割り切る胆力も10%増えたら幸せになれるほどの軍資金もなかったことで、「当てればOK」くらいの消極姿勢でリバティアイランドからのワイド攻めでいってみました(←馬券下手そう)。せめて小さな夢でも見ようと「リバティアイランドが1着に来ても2着・3着には必ず別の馬が来る」という観点から2着・3着のワイドに夢を託したわけですが(※2〜5着に入った馬のワイドをボックス買いしていたので10.9倍的中)、トータルでは1500円購入で1880円払い戻しという25%プラスとなりました。これが勝利なのか、勝ち損じなのかはよくわかりませんが、まぁ減らなかっただけヨシとしましょう…!

↓今年の凱旋門賞に出てたら勝ってたんじゃないですかね!それぐらいの強さに見えました!




小回りの1コーナー2コーナーに向かうレイアウトの京都競馬場。3枠6番の好枠に入ったリバティアイランドは、五分のスタートから少しだけ手綱をしごいて前方好位につけます。ハナを切るのは4番コナコーストと、外から押していった9番ミシシッピテソーロ、13番ラヴェルと17番ソレイユヴィータも前に行きますが、枠順もあって1コーナーまでに先頭を取り切るには至らず。ラヴェルが先頭で逃げる展開があればひと波乱あったかもしれませんが、無理に逃げるのは距離的にも不安があり、その目は消えました。

狙いなのか、成り行きでの作戦なのかはわかりませんが、17番ソレイユヴィータは少しずつ内側に位置取りをずらして、2番ハーパー(2番人気)と左右からリバティアイランドを挟み込み、先団につけるラヴェルをフタとしてリバティアイランドを取り囲みます。リバティアイランドを内から睨むハーパーにはルメール騎手が、リバティアイランドを外から睨むソレイユヴィータには武豊騎手が。ウマ娘CMでタップダンスを披露する両巨頭が「簡単にはやらせないよ」と面白い競馬を提案してきた模様。

武さんあたりは「この馬では最後まではとてももたんだろうなぁ」と思いながらやっていたのでしょうが(※最終順位17着)、それでも「リバティアイランドを負かしに行った」のは、強いヤツが簡単に勝つなんてことを許したら競馬が退屈だよね、といった競技全体を俯瞰してのことでしょう。まぁ、「僕より先に牝馬三冠されると、ねぇ」とか「私ならその馬でジャパンカップも勝ってみせますよ(ニコッ)」的な感じで両巨頭が意地悪しただけかもしれませんが。とにかく、一応の「包囲網」的なものが出来上がりました。その頃、3番人気のマスクトディーヴァは後方一気に賭けるように、14番手あたりに控えています。どこまでこの包囲網が維持されるのか、どれだけリバティアイランドを引き留められるのか、そのとき後ろから届く馬がいるのか。

しかし、そうした包囲網の動きを察知するやリバティアイランドと川田騎手の動きは速かった。位置取りをわずかに下げつつスッと横に出し、3コーナーに入る前には大外に持ち出していました。3コーナーからジワジワと前をうかがうと、4コーナーに差し掛かったところでひとつ気合をつけ、その途端にリバティアイランドは弾むように加速します。直線に入る頃には完全に先頭に立ち、馬場のまん真ん中をリバティアイランドは独走します。後方からマスクトディーヴァも追い込んできますが、先頭で直線に入った馬と最後方あたりで直線に入った馬の上がりの差がわずか「0.1秒」では届くはずがありません。

走路さえ確保すれば、後ろから来る馬に負けるはずがないという絶対的な信頼感。前を行く馬も見える範囲にいれば差せないはずがないという絶対的な信頼感。この馬で負けてはいけない、絶対負けてはいけない、と「紛れ」を排除するかのような手堅い騎乗で勝ち切った川田騎手。最後はもうムチも使わず、ちょうどのチカラでレースを終えるような緩やかな走りでした。マスクトディーヴァもかなり近いところに迫っていましたが、届きそうなところまで来たら、そのぶん突き放されるだけで、永遠に詰まらない差だったと感じます。「馬が強い」と言えばそれまでですが、強い馬を勝たせるための騎乗をした人間と合わせて、完璧なレース運びだったのではないでしょうか。お見事でした。

↓そしてこのレース、勝ったリバティアイランドにジョッキーカメラがついていました!これが三冠馬が見た景色!




こちらのジョッキーカメラを見ていると、リバティアイランド包囲網であったものは実はリバティアイランドによる「ハーパー包囲網」でもあったのかなと感じました。オークス2着、もっとも警戒すべき相手と見ていたであろうハーパーを視界におさめつつ、リバティアイランドもまた「最後まではもたないであろう馬の後ろ」にハーパーを押し込めていたのだなと感じます。そこにいさせれば前を行く馬が必ずフタになりますし、上手く壁が割れたとしても五分になるだけで自分の不利がない位置取りです。オークスで2着した馬が先に仕掛けてロングスパートするという、紛れがあったかもしれない作戦をスタート後の位置取りで見事に封じていました。

そして、向こう正面の直線に入ったところで、川田騎手の目線はチラッと外の馬(17番ソレイユヴィータ)と後ろのスペースを確認しています。「前の馬と外の馬はいつかタレる馬」と見て、それがいつになるかはわからないものの、同時に垂れてきてコーナーでまるまる包まれたらたまりませんので、早めに下げて早めに外に出したというところでしょうか。しかも今度はソレイユヴィータの外につけて、ハーパーが大外に持ち出せないように壁を作りました。レース全体がスローペースであったこともあり、あとはもう好位から先に仕掛けて悠々と先頭を行くだけ。もともと負けるはずのないレースでしたが、勝つべくして勝った、そんな動き方。

ウィニングランで川田騎手がリバティアイランドにかけた「ありがとうお嬢さん、素晴らしい走りだ」という言葉の何とも言えずオシャレなこと。「よく頑張った。ゆっくりでいいよ」と引き返し、陣営と合流したあとには数万人のカワダコールを受けながら「よっ!しっ!」と叫ぶ。普段ならせいぜい指を3本立てる姿を見るくらいしかない三冠馬誕生の模様を、こうして騎手の実況つきで見られるというのは大変ありがたいことだなと思います。カメラをつけるのは気になるしイヤだという騎手や馬主さんもいるでしょうが、競馬体験の向上のために、いい取り組みだなと改めて思います。

「これが三冠馬の見た景色か」

そう思って見る京都の空はとても高く、緑の芝はとても美しい。

リバティアイランドから素直に買って、この景色を素直な喜びで見られる、それで十分幸せだなと感じました。

大きな夢はないかもしれませんが、いい夢を見たレースでした!

↓誕生日にコレをやってのける、メモリアルな一日!

「道を作ることだけが最優先課題」と振り返った川田騎手!

まぁ、道がなくても勝ったとは思いますが、盤石で勝ったのは「腕」ですね!

ジョッキーさんもお嬢さんも素晴らしい走りでした!



人馬一体での圧巻のレース!これはイクイノックスとの対決が見たくなりました!

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婦人公論 2017年 12/27、1/6 合併特大号

僕は自分が見たことしか信じない 文庫改訂版 (幻冬舎文庫)

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