スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム

陸上

パリ・東京へと熱気を高めるべくセイコーゴールデングランプリ陸上を観戦し、国立競技場最寄り駅の改札は「北口」にすべきと感じた件。

08:00
逆転の北口、さすがでした!

本日はお出掛けの記録です。いよいよパリ五輪が近づいてくるにあたり、自分のなかの熱気をじょじょに高めていくべく、それっぽい現場に行ってまいりました。向かいましたのは聖地・国立競技場。こちらで開催されましたセイコーゴールデングランプリ陸上に行ってきたのです。

現地に降り立てばなかなかの出足のよさ。ほんのわずかに雨粒が落ちてくる気配もある空模様ですが、たくさんの人が国立競技場へと向かっています。聞けば今大会では試合のほかにもランニング教室的なイベントだったり、YouTuberさんと一緒に観戦する企画だったり、お祭りとしての盛り上げにも注力していた模様。

場外でもお祭り感を盛り上げるべく多数のブースが出展されていました。グッズやフードの売店はもちろん、砲丸や円盤など競技用の用具の展示、パラ陸上用のレーサー車いすに試乗できるブースや、10メートルダッシュのタイムを計時システムを使って正確に測れるブース、経緯はよくわからないもののJALのマイルに登録すると北口榛花さんのステッカーがもらえるブース(※地対空槍的な?)などなど盛りだくさん。

冠スポンサーであるセイコーさんも、男子100メートルの日本記録である9秒95を正確に腹時計で測るチャレンジだとか、この日の日付を表示した大時計の前で記念撮影すると豪華賞品が当たる抽選会などで盛り上げてくれていました。僕もいくつか参加させていただき、ステッカーやらクリアファイルやらをいただきました。ステッカーやクリアファイルはなんぼあっても困りませんからね。ありがとうございます、ありがとうございます。

↓やってまいりました国立競技場!
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↓本日のお目当てはセイコーゴールデングランプリ陸上です!
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↓セイコーさんらしいフォトスポットなどがありました!
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↓記念撮影をしてクリアファイルをいただきました!
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↓JALさんのブースで北口榛花さんのステッカーをいただきました!
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場内に入れば人・人・人で、陸上の会場らしからぬ雰囲気。トラックを取り囲む第1層はほぼ埋まっており、外周通路部分には立ち見のお客さんがあふれているではありませんか。まぁ、裏事情を言えば観戦ルールのほうで客席部分ではスマホ・タブレットでのみ撮影が許可されていて、カメラやビデオカメラでの撮影は通路からお願いしますという話になっていたため、カメラを構えた人は全員通路にいたということだったりはするのですが、それを鑑みてもかなりの客入りです。

トラック競技で決勝が始まるメインの時間帯には、もともとは一部しか開放していなかった2階席まで開放され、係員さんが通路を巡りながらそちらへの移動を促す一幕も。来年にはこの国立競技場で世界陸上の開催を控えていますし、陸上関係者的にも嬉しい手応えだったのではないでしょうか。6万人が世界のアスリートを出迎える夢の世界陸上、これならばあるかもしれまんね。

↓国立なのでわかりづらいですが1層はほぼギッシリです!

今年はパリ五輪シーズンということもあって、有力選手はパリから逆算しながらの参加となる今大会。選考においてもっとも重視すべき日本選手権を来月末に控えているということで、ここで100%を出し切るようなことは当然ナイわけですが、そんななかでどれぐらいできるのかというあたりに注目しながら見守っていきます。

まず女子1500メートルに出場した田中希実さん。すでに5000メートルではパリ五輪の参加標準記録を突破している田中さんは、1500メートル・800メートルとあわせて3種目での五輪出場を目指す見込み。今大会の出場選手たちを見渡せば自己ベストでは互角以上というところでもあり、ここは気持ちよく勝って日本選手権へと向かいたいところ…だったのですが。

序盤好位につけて流れに乗り、中盤から抜け出してレースを作るというイメージ通りの展開のはずが、終盤までライバルに後ろにつかれると、最後は集団に差されて4位という結果に。本番ではさらに前に本当の先頭集団がいるだろうことを考えると、手応えとしては微妙なレースなのかなと感じました。まぁ、今絶好調でも仕方ないことなので、夏に向けて気温とともにガンガングングン上げていってもらいたいところ。

↓自ら先頭に立つ積極的なレース運び!
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↓パリでは笑顔いっぱいのゴールを見たい!
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パリでも注目の種目のひとつになるであろう男子110メートルハードルには、すでに五輪内定を決めている泉谷駿介さんの参加はないものの、同タイムで日本記録を保持する村竹ラシッドさんが出場。村竹さんはスタートの反応鈍く出遅れるも、中盤から先頭に立つと最後はライバルを突き放し、パリ五輪の参加標準記録を突破する走りでさすがの優勝。最後はちょっとガッツポーズするくらいの余裕もあって、これは五輪へ向けても「日本勢」としての活躍に期待が懸かります。

↓五輪の決勝で日本記録を出せれば、夢が広がる!
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↓スポンサー様商品を積極的にアピールするぞ!

そして大観衆も熱い視線を注いだ男子100メートル。視線の先にはもちろん日本記録保持者のサニブラウン・アブデル・ハキームさんがいます。サニブラウンさんは2023年の世界選手権で日本選手最上位の6位入賞を果たしていますので、パリ五輪の参加標準記録10秒00を今年出せばその場で内定が決まる立場。かなり高いレベルの標準記録ではありますが、サニブラウンさんのチカラであれば、この日この場でパリが決まる可能性も大いにありました。

予選ラウンドは10秒07のタイムで勝ち抜けたサニブラウンさん。決勝ではさらにもう一段上のタイムを…と期待されたのですが、決勝ではスタート直後から遅れ気味でアヤしい気配を漂わせると、中盤以降はレースを止めてしまった格好で、10秒97で8位となりました。少し顔をしかめるようなところもあったのであるいは怪我でもしたかと心配されましたが、「足をつってしまった」ということだったので大きな怪我ではない模様。まぁ、サニブラウンさんが代表から漏れることはまずないでしょうから、リスクを取るのは本番だけで十分。しっかりパリに合わせてもらえればと思います。

↓途中から遅れ出したときはドキッとしました!
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↓パリ五輪の決勝、楽しみにしています!
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そして、国立の主役となったのはやはり、さすがの北口榛花さん。2023年世界陸上の金・銀・銅メダリストが一堂に会するハイレベルなメンバーのなかにあっても、金メダリストはやっぱり強かった。試合展開としてはなかなかトップに立つことができず5投目を終えてもまだ4センチ差の2位で世界選手権銀のルイス・ウルタドさんを追うという苦しい流れでした。

ただ、その間も5投中3投で60メートルを超える記録を出すなど、北口さんの高い水準での安定感は抜群でした。そして迎えた最後の6投目、国立の大観衆の期待を背負って投げたやりはグングン伸びて63メートル45センチの投擲に。最後の一投で逆転優勝というのはまさに世界選手権の再現のようでもあり、ここ最近の北口さんの勝ち方の定番でもあります。これはもう「逆転の北口」の二つ名襲名も待ったなしといったところ。パリ五輪、そして2025年世界陸上で素晴らしい結果を出してくれた暁には、敬意を表して国立競技場最寄り駅の改札に「北口」と名前をつけてもいいかもしれませんね。日本陸上界を背負う大黒柱としてパリでも大投擲を見せていただきましょう。

↓いつも参加してくれてありがとうございます!
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↓最後の6投目、逆転の北口が吠えた!
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↓63メートル45センチの好記録で逆転優勝!お見事!
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ほかにも男子400メートルハードルではパリ五輪参加標準記録突破済みの豊田兼さん・筒江海斗さん・黒川和樹さんの走りをまとめて見られたり、男子400メートルでは日本記録保持者・佐藤拳太郎さんの優勝を見守ったり、走り幅跳びの橋岡優輝さんのジャンプや、1万メートルの日本記録保持者である塩尻和也さんが出場した男子5000メートルなど充実のラインナップを楽しみ、グッと五輪への気分も盛り上がってきました。

東京五輪で見られなかった光景を2025年の世界陸上で見る、忘れ物をしっかりと取り戻すためにも、パリ⇒東京へとしっかり自分自身の勢いもつなげていきたいもの。会場ではひっそりと2025年世界陸上のロゴを紹介していたり、チケット購入のためのID登録を呼びかけていたりもしたので、チャンスを逃さずに楽しんでいければいいなと思いました!

↓2016年頃に見せられたら「こういうのでええんやで」って言われてた感じのロゴ!

2025年は6万人の大観衆で世界の選手を迎えられたらいいですね!

苦しさを乗り越え笑顔でゴールする箱根駅伝のランナーたちの姿に、自分も「明日はないかもしれない今日」を笑顔で生きようと思った件。

08:00
この日に向かう一年の最後の2日間で大逆転!

皆さま、あけましておめでとうございます。2024年は元日から天災や大きな事故がつづき、明るさいっぱいで始まった年にはなりませんでしたが、それでもまた新しい年を迎えられたことを喜ぼうと思います。嬉しいことも、楽しいことも、悲しいことも、辛いことも、常にそこにあるものです。それぞれの立場で見えるものは異なるでしょうが、そんななかでも、どんななかでも、自分なりに前向きに過ごしていければいいなと思います。そんな世のなかであればいいなと思います。

一昨日・昨日・今日とニュースで「影響が広がっている」という言葉をたくさん聞きました。事故の影響で飛行機が飛べなかった、みたいな話です。しかし、それもとらえ方だなと思います。確かに事故で飛ばなくなった飛行機はあるのでしょうが、人々はただ影響を受けてただ困っていたわけではありませんでした。降りられる場所を探し、ほかの行き方を探し、ほかのやり方で行きたい場所へ行けるようにそれぞれで取り組んでいました。それはたくさんの人が困っている姿ではなく、みんなで痛みを分け合うように、吸収するように協力している姿だと感じました。大きな出来事の痛みを薄く広げて、堪えていくような姿だなと。

元日に起きた能登半島地震のあともそうでした。被災地へは助けと祈りを届けつつ、今まさに困っているわけではない人たちは自分の暮らしを淡々と守ることで、むしろ頑張ることで、その痛みを薄く広げて分け合うように過ごしていたように思います。「こんなときなのに」ではなく「こんなときだからこそ」と。楽しいことも笑えることも、できるのならばしっかりやろうと。前よりも少し、世のなかがたくましくなったような気がしました。もしかしたらこの4年間ほど「自粛って何だろう?」と考えてきた答えが、それぞれを少したくましくしたのかなと思ったりもしました。

迎えた1月2日・3日、能登半島地震の翌日というタイミングではありましたが、むしろ翌日だからこそ、しっかりと東京箱根間往復大学駅伝競走すなわち「箱根駅伝」は行なわれました。選手・関係者たちは感謝の心を抱いてしっかりと走りました。僕はそれをテレビで遠くから見ていただけでしたが、ほの暗い気持ちを乗り越えて、よーし頑張ろうという気持ちにさせてもらいました。誰かが頑張る姿は、誰かに伝わります。心を動かします。それこそが真に「影響が広がっている」と言うべき事象だと僕は思います。このいい影響が日本に広がって、2024年も元気に走っていければいいなと思いました!

↓優勝は往路・総合で新記録を樹立した青山学院大学でした!

青学創立150周年!

箱根駅伝節目の第100回!

ここで勝つことにフォーカスしてきましたね!



「また青学か」「しかも独走」「つまんね」みたいな声もSNSでは散見されました。なるほど、確かに1年ぶりにこの2日間だけを見れば、そういう感想になるのかもしれません。競り合い、アクシデント、そういったものはない、圧倒的独走と言ってもいいような勝利でした。しかし、それはこの1年間の最後の2日間、2時間の映画で言えば最後の1分にも満たない程度の時間についてだけの感想です。

この1年間、下馬評は「駒澤1強」でした。昨年度の大学駅伝三冠達成ののち、今年度も出雲・全日本と勝利し、「2年連続の三冠」へと評判は高まる一方でした。実際にその下馬評に違わぬ強いチームだったと思います。記録を振り返ってみても、1区の区間賞に始まり、区間順位で1位、2位、2位、6位、3位、12位、4位、4位、5位、4位ですからまったく悪くありません。総合タイムも10時間48分00秒という例年の優勝タイムを上回る見事なものでした。優勝していても何の不思議もない、例年なら勝っていたであろう、よくまとまった素晴らしいチームでした。

駒澤1強と呼ばれるほどのチームが、実際に本番でもしっかりとチカラを出したのに、なおそれを上回るほどの走りを見せた青学がただただ凄かった。実際に走り出すまでこうなるとは思っていませんでした。当日、レースが始まってからでさえも、1区で駒澤の篠原さんが区間賞、青学の荒巻さんが苦しそうな走りで9位となったときに「駒澤1強」と再確認したほどでした。そこからまさかこんなレースになるだなんて。これは決して青学の独走などではなく、1年かけての「大逆転劇」と言うべき勝利だったと思います。

特に大きなポイントだったのは3区でした。駒澤は、今年度の出雲・全日本でいずれも区間賞を獲得した佐藤圭汰さんを送り込んでいました。佐藤さんは昨年の箱根駅伝には出場していないものの、洛南高時代には1500メートル・3000メートル・5000メートルの高校日本記録を更新するなど、「世界」を含めた大きな期待を受けて駒大へと進んできた選手です。入学以来5レースの大学三大駅伝で「出雲1位、全日本2位、箱根欠場、出雲1位、全日本1位」と素晴らしい成績を残してきました。一方、青学が3区に送り込んだ太田蒼生さんは、箱根専用機と言ってもいいような強さを「箱根で」見せるタイプで、3年間の大学生活における大学三大駅伝の成績も「出雲欠場、全日本欠場、箱根2位、出雲欠場、全日本欠場、箱根2位、出雲欠場、全日本7位」というもの。対極的な走りっぷりです。

その両者が織りなしたデッドヒートは、「駒澤1強」の壁を打ち砕くものでした。戸塚中継所でタスキを受け取った時点では両者の差は22秒。駒澤としては、エースの投入で1分から2分へと差を広げたいはずの区間です。しかし、青学・太田さんはかなり早いペースで前を追い、最初の5キロで10秒ほどを詰めると、8キロ手前では前を行く佐藤さんに追いつきます。佐藤さんは後ろを振り返り、自分の真後ろにいる太田さんを嫌がってか左右に蛇行しますが、もちろん太田さんはその動きについていきます。サングラスで太田さんの表情はうかがえませんが、虎視眈々、そんな感じです。

ひと息入れつつライバルの様子をうかがった太田さんは、14キロ手前で前に出ると、意地を見せる佐藤さんと抜きつ抜かれつのデッドヒートに。追ってきた側のほうが苦しいはずですが、太田さんは抜き返されてもひるまず、何度も勝負を仕掛け、最後は残り3キロ付近でサングラスを外したのを合図にロングスパートを仕掛けて、佐藤さんを突き放して区間賞。太田さんはあの東京国際大のヴィンセントさんが96回大会で出した59分25秒に次ぐ歴代2位の好タイムでのゴールとなりました。

ただ、太田さんも素晴らしかったけれど、佐藤さんもそれに次ぐ歴代3位という好タイムでのゴールでした。個人タイムでは太田さんと佐藤さんの差は26秒差しかなく、4区につないだ時点では両校の差はわずか4秒差。まだまったく勝負はわからない段階でした。しかし、「勝って突き放すはずのエースが逆転された」という出来事は大きなショックを駒澤に与えた模様。笑顔でゴールした太田さんとは対照的に、佐藤さんはゴール後にぐったりとうな垂れ、取材も体調不良で切り上げたといいます。レース中にも足を滑らせるような動きが何度か見られており、執拗な追走で心と身体を削られていたようでした。それはまさに「駒澤」が感じていたショックを示すような動きだったなと思います。決して悪い走りではないのに、むしろ歴代でも素晴らしいほうの走りなのに、「上手くいっていないぞ」と思わせてしまうような。

↓学生最高ランナーと、箱根に愛された男の対決!


「駒澤」のショックを青学は見逃しませんでした。4区でタスキを受けた青学・佐藤一世さんは、中継所では4秒だった差を入りの1キロほどで一気に15秒ほどにまで広げてきました。これで走者の後ろに監督車が入り、姿が見えにくくなります。先頭で走れば、前は大きな中継車がいることで風除けにもなります。そして何より、「自分たちが1位、相手が2位」ということが明確になります。サッカーでよく見られる「1点取った直後に、相手が動揺している間にもう1点取る」というような勝負勘のある入りでした。逆に言えば、駒澤は意地でもついていきたい場面でした。「負けた?」という動揺がおさまり、「いやいや」と思い直すまで絶対に離されたくない場面だったなと思います。

往路に主力メンバーを固めた駒澤を、さらに上回る走りで破った青学は、2区・3区・4区の連続区間賞でリードを築き、そのまま往路新記録で芦ノ湖に到達しました。駒澤も見事な往路新記録でしたが、その姿は敗れた側のそれでした。主力を固めて往路で勝つ、そんな駒澤のゲームプランを完全に崩したことは、復路の行く末も含めて決めてしまうような勝利でした。

↓「前半勝利」「初日勝利」以上に大きな意味があった青学の往路優勝!笑顔でゴール!


↓5区では「山の神」「山の妖精」などにつづいて「山の名探偵」も登場!

名前が工藤慎作さんで、メガネが黒縁で「コナンっぽいなぁ」と思ったら、みんなそう思ってたみたいでスッキリしました!

「犯人を追う」ときはコナンも足速いですからね!謎の靴のチカラで!



復路に入っても青学は勝負所で強かった。もし駒澤が復路で逆転するのならば、(アクシデントでもない限りは)6区で追いつくか最低でも差を大きく詰めておきたいところ。相手が見えない状態で追いかけるのでは、前もマイペースが崩れませんし、追う側も頑張りきれません。しかし、その6区で区間2位の好走を見せた青学と、コンディションの関係で本来想定していたメンバーを起用できず区間12位とした駒澤とで、逆に差は広がりました。

こうなれば先頭の青学は元気に楽しく自分の走りをするだけ。この日も8区・9区で区間賞とし、大崩れもなくゴールした青学は、復路新記録こそならなかったものの、総合新記録となる10時間41分25秒でゴール。「駒澤1強」の壁を越え、歴代記録の壁を越え、見事に第100回の記念大会を制しました。速過ぎる青学の余波で、復路スタートでは異例の16校が繰り上げとなり、さらに10区鶴見中継所でも4校が一斉に繰り上げスタートとなったりもしましたが、駒澤が高くて固い壁だったがゆえに、それを超えるための最高の仕上げをしてきたらこうなった…そんな「大逆転劇」だったかなと思います。1年かけて最後に抜いてドーンと弾けた、鮮やかな差し切り勝ちでした!

↓「タスキをしっかり直して」「笑顔でゴール」するように、との指示も飛んだ美しいゴール!


↓青学・駒澤の激突につづいて、城西大学が総合3位フィニッシュの快挙!


↓シード権争いでは9年ぶりに大東文化大がシード権獲得!優勝候補の一角とも言われた中央大は一斉体調不良で悔しい13位!

中央大の一斉体調不良はノーカンだと思いますね!

「進退」とか言わずに再挑戦してもらいたい!



結果はそれぞれ悲喜こもごもかなと思いますが、レースを見守って思うのは、この舞台を懸命に走れること、この舞台を目指せることは幸せだなということ。勝って嬉しい、負けて悔しい、チカラを出し切れて満足、チカラを出せずに後悔、いろいろな感情はあると思いますが、どんな形であれ、この日に向かって一生懸命生きてきたことの素晴らしさは変わりません。明日はないかもしれない人生を、一生懸命に生きて目指した日にたどりついたのですから、ぜひその日々を誇ってほしいなと思います。今日という結果をつかめたこと、たどりついたことを喜んでほしいなと思います。

青学の原監督や城西大の櫛部監督が、ゴールに向かう走者に「笑顔でゴールしよう」と呼び掛けていたのが印象的でした。もちろんいい結果を出した上位校なので、何もなくても嬉しくて笑顔になるのでしょうが、この日の記録である写真や映像が笑顔で残っていることはやっぱり素敵なことだと思います。絶対に笑顔で残したほうがいい、そう思います。

走っていれば当然身体が苦しいのでついつい顔も歪んでしまうもの。しかし、心は楽しく素晴らしい時間を過ごしたはずです。であればしっかり笑顔で記録しよう、そこまでしっかりプレーしよう、そうしたほうがきっといい、そんな未来を見据えた声掛けだなと思いました。その笑顔は、自分をこの先もずっと支えてくれる、自分の味方になる笑顔だろうな、そう思いました。

「笑顔で終わるぞー」
「かっこよく映ってるぞ、いいぞー!」
「駆け抜けろー笑顔で!」
「一生残るぞ!」

櫛部監督の声を受けて、泣きながら走る走者を見ていると、ランナーに限らず、誰もが、どんな日もそうやって、一生懸命笑顔で生きていったほうがいいなと思いました。苦しい日もあるでしょうが、苦しさと向き合って節目を迎えたときには、そこまでの道のりを自分で讃えてあげるように、やっぱり笑顔がいいなと。ちょっと無理していても笑顔を作れるような、そんな日々を重ねていきたいなと思いました。だって、昨日も、今日も、明日も、一生残る一日のひとつずつなのですから。

一年の計は箱根にあり。

若者たちの頑張りを見ると、正月が終わった気がします。

自分もそろそろ何かやらねば、と思います。

なるべく笑顔で、できるだけ楽しく、やっていきたいなと思います。

世のなかにはいろいろありますが、頑張って笑顔で生きていきたいものですね。

改めまして、2024年、あけましておめでとうございます!

↓一生残る、いい写真が撮れましたね!おめでとう!


↓素晴らしい思い出はずっと自分を支えてくれる、そう思います!


思い出は、誰かを熱くする!

そして思い出は、自分も熱くしてくれる!


1月4日・5日は自分に鞭打って昨年の残務整理に臨む所存であります!

箱根駅伝で大学駅伝3冠を成し遂げた駒澤大学・大八木監督評の変化から考える、「人間性も優れた選手が増えている」ことの理由。

08:00
言われてやるでは頂点に届かない時代!

今年も若者たちの素晴らしい走りを堪能しました。第99回東京箱根間往復大学駅伝競走、いわゆる箱根駅伝。今年は駒澤大学が出雲・全日本につづいて箱根も制し、史上5校目の大学駅伝3冠を達成しました。大会後に駒澤大・大八木監督の勇退が発表されましたが、箱根に一時代を築いた名伯楽の素晴らしい花道となる3冠でした。強かった、お見事でした。駒澤大学のみなさん、おめでとうございます!



今年は3年ぶりに沿道の応援も心置きなく行なうことができ、にぎわいが戻ってきた箱根駅伝。「応援に行かないことが応援になる」などと心をねじ伏せながら見守った去年・一昨年の寂しさを乗り越え、ようやくコロナ禍というものとも社会が折り合いをつけられるようになってきたのかなとしみじみ思います。この2年、よく頑張った、よくつないだ。「箱根駅伝」という文化のタスキがしっかりつながった、そう思います。新年にふさわしい慶びの光景でした。

そんな大応援を受けて走る選手たちの奮闘は本当に素晴らしかった。チームや個人の力量差はもちろんありますので早かったり遅かったりといった違いはありますが、学連選抜を含めて全校がリタイアなく走り切り、しっかりと東京箱根間を往復しました。ときには自分自身の期待に及ばない走りとなってしまうこともあったでしょうが、物事には好不調と幸不幸が必ずつきまといます。いつも全員が絶好調で超ラッキーなんてことはあり得ません。大事なのはそういう日でも「つないで」いくこと。つなげば誰かがカバーしてくれる。つなげば未来が残る。それが人間の営みだろうと思います。

駒澤大学と優勝を争うと目されていた青山学院大学などもそうでした。今季はチーム状態があまり芳しくはなかったか、出雲・全日本でも駒澤大の後塵を拝していました。箱根でも予定メンバーに発熱があったとかでアクシデント的なオーダー変更を余儀なくされました。その玉突きとなる格好で6区では区間20位となり、一時はシード権争いのほうが気になる8位まで後退しました。しかし、そんなアクシデントのなかでもしっかりとタスキをつないだことで、9区では岸本大紀さんが区間新に迫る歴代2位の好走を見せて3位まで再浮上。浮き沈みありながらもしっかりとみんながつないだことでの3位でした。結果だけ見れば「平年並み」くらいではありますが、青学の総合力を示す見事な3位だったと思います。

「総合力」というのは全方位が完璧である状況よりも、浮き沈みをカバーしながら苦境を乗り越えたときにこそふさわしい言葉です。どのチームにも早い選手と遅い選手、好調な選手と不調な選手がいるでしょうが、つなぎさえすればひとりひとりの良し悪しではない「総合力」での戦いとなります。人生のなかでスタープレーヤーではない自分にも、多くの平凡な人にとっても、よくない日にも頑張っていくことが必要なんだなと改めて伝えてくれるような走りでした。

↓素晴らしい走りで総合力を見せた青学もお見事でした!

9区岸本選手は「逆に見せ場を作ってくれた」と燃えて区間賞!

苦境が飛躍につながる、それもまた人生のあるあるだなと思います!


↓優勝候補の青学を上回って2位に入った中央は、長い苦境を越えていよいよ名門復活へ!

記念すべき100回大会に向けて幸先のいいスタート!

「駒澤・青学2強の争い」という気分で2位への注目度が低くなってしまって申し訳ない!



そういう意味では、定型文のように使う「ブレーキ」「大ブレーキ」といった表現も少し実情とは違うのかなと思いました。長い道のりのなかには苦境が必ずあります。人生には苦境がつきまとうものです。そういった苦境がない時期のほうが幸運に恵まれた珍しい時間なのであり、何かあるのがデフォルトなのです。優勝した駒澤大でさえも主力メンバーを複数欠き、大エース田澤さんもコロナからの病み上がりという布陣でした。見えづらいだけで苦境と向き合いながらの走りでした。ブレーキと呼ばれる出来事と無縁のチームなどそうそうないのです。ブレーキの有無のみで勝ち負けが決まるわけではなく、それは当然あるものとして、それ込みの全部で競うものなのです。

ましてや、タスキがつなげず繰り上げになったなんてのは、ブレーキ云々なんて話ですらなく、交通事情とか運営事情で仕方なくそうなっているだけのことです。もう少し社会の側に時間と心の余裕があれば途切れることなくつながったはずのタスキです。「たまたま」そういう役回りになった選手はあまり自分を責めずに「せわしないルールだなぁ」くらいの気持ちでいてもらえたらいいなと思います。みんなの道路を借りて走るんだから、そういうこともあるというだけのことです。倒れるときも「申し訳ありません」ではなく「盛り上がっていただけましたでしょうか……」で倒れる、それくらいでいいのではないかと思います。

↓55年ぶりに出場の立教大は最後までタスキが途切れずにつながりました!

せわしない交通ルールに見事に勝利!

監督が選手と同じ目線をチームを引っ張る、青春感あふれるチームでした!

「第二の青学」あると思います!


そして、大会のなかで印象的だったのは、さまざまな人のクチから飛び出す駒澤大・大八木監督評でした。幾多の勝利を重ねた名将として知られる大八木監督は、「男だろ!」の檄に代表されるように厳しさが前面に立つタイプの監督でした。その厳しさが駒澤大学を常勝チームに飛躍させたことは間違いありませんが、「古き良き厳しさ」がなかなか結果につながらなくなってきた近年でした。

そんななかでの三冠達成に関して、今までと何が変わったのだろうかということが当然気になってくるわけですが、「何が変わった」の答えとして「大八木監督が変わった」を挙げる関係者の声がつづきました。青学・原監督のコメントとして紹介されたのは「大八木さんが変わったからです。厳しさだけではなくなったからですよ」というもの。テレビで解説をつとめる渡辺康幸さんは「昭和の香りが漂っていてずっと勝てなかった」「それが指導法の方向性がガラッと変わった」「大八木さん自身が選手の目線までおりてきた」と追随しました。

さらに駒澤大でコーチをつとめ、来季から監督に就任すると伝えられた藤田敦史さんは「自分が現役時代、大八木監督がこうと言ったらこう、意見をすることはほぼなかった。意見する気持ちもなかった」「なぜならば監督が言ったことをやれば強くなれるから」「でも今の大八木監督は違う。考え方、練習方法を何パターンか示して、あとはお前たちが決めなさいと対話する時間も長くなった」と振り返ったと言います。

↓大八木監督自身が時代を感じて、自分を変えていったとのこと!

「話し合ってやらなくちゃ」
「自分から話を聞こうと」
「自分も変わらないと」
「そういう時代かなと少しずつ思いました」



幾多の勝利を積み上げた名将が、時代を感じながら自分を変えつづけられること、とても素晴らしいと思いますし、変わった方向はきっと正しいものだろうと思います。厳しさは確かにある程度の成長を約束してくれます。何もしないよりはやったほうが当然強くなります。ただ、イヤイヤとか渋々やるのでは真の成長はありませんし、イヤイヤでなかったとしても厳しさによって選手を動かす方法にはおのずと限界があります。

選手を動かすのは選手自身にほかなりません。音声入力のロボットではないのですから、何を言われたとしても、最終的には自分で動かすしかないのです。そして、本当に自分を動かすのは、自分の心だけなのです。自分で考えたこと、自分で願ったこと、自分で描く夢、それ以上にはいけるはずがない。自分の心が伴わずに「言われたことをやる」だけでは、24時間365日すべての時間をプラスにしていくことはできません。「自律」だけが自分の最高を引き出せる道です。

そういうスタイルで自分を鍛えていったとき、さらなるチカラが生まれます。自分で自分を鍛えることの難しさを感じたときにはじめて、日々の練習メニューを一緒に考えてくれる人、新しい知識や道具を与えてくれる人、食事や身の回りの世話をして助けてくれる人、応援して励ましてくれる人、そういった助けのすべてにありがたみが実感できるでしょう。その「感謝」がさらなる自律を生み、助けてくれた人の喜びが苦境を乗り越える追加のチカラとなるのです。

最終的には人間性、これに尽きると思います。

身体能力や環境といったスタート地点の差はあったとしても、最後に一番高いところに至るには「人間性」が必要です。人間性が伴っていなければ「自律」などできるはずもありませんし、たくさんの助けを得られるはずもありません。人間性が伴わなければ無闇に多くのアンチが生まれ、無闇に足を引っ張られます。どれだけ巨大な才能を持っていても、助力は乏しく、無数のアンチと戦いながらでは頂点に至るのは困難です。100点でなくてもいいけれど、スピードやパワーなどと同じくらい重要な指標として「人間性」があることを認識し、そこで80点くらいは取らないと、道具も知識も悪評も一瞬で世界に共有されるSNSネット社会にあっては頂点は目指せないでしょう。

昨今、「人間性も優れた選手が増えている」という印象は多くの方がお持ちでしょうが、それは偶然ではなく、人間性にも優れた選手でないと頂点付近には至らないようになってきたのだろうと思います。全体の競争力が高まった結果、まわりの助けを得ることも、足を引っ張られず後押しを受けることも、その後押しをさらなるチカラに変えることも競争の一部として必要になってきた。競技力だけではなく競技外の「人間性」も育まなければ、それがそのまま隙となり、すべてを伸ばしてきた選手との差となる。そういう時代なのだろうと思います。

今回の例で言えば、大学駅伝3冠というのは距離もコースも違い、それぞれのレースで何人もの選手が走るなかでの競争です。そこで勝ち切るには必要な選手数の2倍から3倍の選手層が必要でしょうし、そうなれば当然レースに出場できない選手が生まれます。「自分は出場できないなかで仲間を助ける選手」が生まれます。そういう選手がどうやって日々を過ごし、そういう仲間の姿に出場する選手たちが何を感じるか。そこに「人間性」が伴っていなければ、チームはたちまちひび割れてしまうでしょう。スポーツに限らずどんなものでも同じかもしれませんが、頂点を高くするには山全体を大きくしないといけなく、それは競技力だけで成し遂げられるものではないと僕は思います。

「人間性」という大事なチカラ。

スポーツに限らず誰しもが問われるチカラ。

それを育んでいくことが欠かせない、そんな時代なのかなと思います!





毎年正月は奮起するのに、それがつづかないのは僕の人間性の不足です!

サニブラウンさんが男子100m決勝進出という夢を叶え、織田裕二さんが泣いた世界陸上オレゴン大会は次走に引き継ぐベストタイミングだった件。

08:00
サニブラウンさん世界の7位に織田さん号泣!

2年おきに開催される世界陸上。世界陸上としては初めて陸上王国アメリカで開催されるオレゴン大会は、少し感傷的な、メモリアルな大会になっています。日本の陸上競技を盛り上げつづけてくれた織田裕二さんが、今大会でTBSによる世界陸上中継を勇退するからです。



TBSが世界陸上を独占的に中継するようになった1997年アテネ大会から足掛け25年、13大会連続でのメインキャスター。ともに進行をつとめるフリーアナウンサーの中井美穂さんとの名コンビでつないだ時代のタスキは、当時まだ20代だった織田さんが50代となり還暦が見えてくる年齢になるまでつづきました。いつしか織田さんの年齢は出場選手たちの倍ほどになりました。

当時、ドラマ「東京ラブストーリー」で時代の寵児となり、「振り返れば奴がいる」「踊る大捜査線」「ベストガイ」などヒット作で次々に主演をつとめた、まさしく時代のスターとして活躍をしていた俳優が、その活躍のさなかに陸上の大会のメインキャスターをつとめつづける。今で言えば、菅田将暉さんが世界陸上のメインキャスターになるような感じでしょうか。客寄せにしては強過ぎるのではないかと、起用自体に驚きを覚えたことを思い出します。

「騒がしい」とか「馴れ馴れしい」とか「ビジネスなんだろう」とか根拠のない批判も含めていろいろと言われる機会の多かった織田さんですが、時間と愛情とで、すべてをなだめてきました。「この人は、単純に、心から陸上が好きなんだ」とわからせてきました。いざ勇退するとなった今、そして偶然にも2025年大会が東京で開催されることが決まった今、あふれる声はその勇退を惜しむものばかり。

僕もそうやって惜しむひとりですが、だからこそいいタイミングなのかなとも思います。東京に世界陸上がやってくる。東京五輪の忘れ物を届けにやってくる。そういう機会として生まれた2025年はまたとない新生の機会です。誰かが盛り上げずとも、みんなの記憶に残り、たくさんの新しいファンが生まれる機会です。その新生に備えるステップとして2023年のバトンはもう次走につないでおいたほうがいい、そう思います。今がいいタイミングなのだと。

中継体制がどうなろうが競技の本質は変わらないと思いつつも、多くの人が中継を通じて競技に触れる以上は、競技に近しいくらい大事なのが中継です。その意味でこの25年、日本の陸上界は幸せだったと思います。時代のスターが陸上に夢中になって楽しんでくれたのですから。その楽しそうな姿に惹かれて、陸上って楽しそうだなとたくさんの人が思ったでしょうから。織田さんと過ごす最後の世界陸上を、存分に楽しみたいと思います。

そして2025年東京大会では、大会公式テーマソング「All my treasures」を歌う歌手の織田裕二さんが開会式にやってきてくれるだろうと確信しています。僕も東京五輪の忘れ物を取りに国立に駆けつけ、一緒にオマトレを歌い、一緒に世界を驚かせたいなと思います。海外勢にしてみればおそらくまったく知らないであろう謎の曲が(※2007年大会で聴いたことがあるかもしれない程度)、日本では陸上競技を象徴する国民的ソングとなり、6万人が合唱できるほどに定着していることを見せつけたいなと思います。

競技の話をする前段階がだいぶ長くなってしまいましたが、そんな気持ちでオレゴン大会を見守っていきたいなと思います。そして、また新しく生まれた未来への楽しみを大事にしたいなと思います。2025年は国立で世陸を見て、開会式でオマトレを歌う。新しい目標ができたことで、そこまでは元気に楽しく生きていないといけないなという気持ちが高まりました。2025年大会はもう「このあとすぐ」ですからね!

↓さぁ、楽しんでいきましょう!

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そんなメモリアルな大会で、大きなプレゼントが生まれました。日本勢としては世界陸上の歴史で初めて、五輪を通じても90年ぶりとなる「男子100メートルでの決勝進出」という夢が叶ったのです。夢を叶えてくれたのはサニブラウン・アブデル・ハキームさん。

16日の予選では第7組の1位、9秒98の全体6位で準決勝進出を決めたサニブラウンさん。予選から9秒台という驚きと、さらに上位にいる選手たちは追い風のなかでのタイムだったのに対して、サニブラウンさんは向かい風のなかでセカンドベストを出したという好調ぶり。あるいはメダルにすら届くのではないかという好発進でした。

迎えた17日の準決勝。スタジオで見守る織田さんも「サニが10代で世界陸上に初めて出たとき、世界のてっぺんを目指していると言ってくれた」「僕は今でもその可能性があると思っています」「最後です、せめて決勝には残ってね」と祈りのような重圧をオレゴンに送って見守っています。

サニブラウンさんの登場する準決勝第1組にはアメリカのブロメル、ジャマイカのヨハン・ブレイクがいます。南アフリカのシンビネも世界の決勝でよく見る名前です。各組2着プラスタイム順で2名が決勝進出となる準決勝、「名前」だけで比較するならすでに敗退濃厚な状況です。

しかし、サニブラウンさんは堂々と世界の選手たちと渡り合い、素晴らしいスタートからジャマイカのブレイクを抑えてこの組の3位に。着順での決勝進出は決められませんでしたが、10秒05の好タイムを叩き出しました。その後、第2組では3着の選手のタイムがサニブラウンさんのタイムを上回ることはなくタイム順は変わらず、第3組でも東京五輪金のジェイコブスの棄権があり3着の選手のタイムはサニブラウンさんを上回りませんでした。

これでサニブラウンさんはタイム順で拾われる2名の1番手、単純なタイム順で言えば全体6位タイ、走った時点の風も加味すれば全体の6番目での決勝進出を決めました。予選とほぼ同じ位置を保っての決勝進出は偶然でもたまたまでもなく、地力によってつかみ取ったもの。世界陸上初、五輪を通じても90年ぶりの決勝進出、しっかりと決めてくれました!

↓「決勝になればヨーイドンなんで」と野心も見せたサニブラウンさん!


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CM明けのスタジオ、織田さんは「いやはははは…やりましたね」と絞り出すと、目を真っ赤にして泣いていました。近年サニブラウンさんが苦しんできた怪我とそれによる停滞を念頭に「正直、今回間に合わないと思ってました」と心境を語りながら、この偉業をやってくれたサニブラウンさんを「何なんでしょうね、あの男は」「男のなかの男」と織田節で讃えました。拭っても拭っても止まらない涙。最後の大会でも「熱くて」「泣ける」織田さんを見ることができて、サニブラウンさんの決勝進出とダブルで嬉しくなります。

つづく決勝。あわよくばメダルもと期待を懸けて見守りますが、サニブラウンさんはスタートの行き脚がつかず、予選で見せたような伸びがありません。ほとんど記憶がないような状態での走りだったそうで、どこかフワフワしたところもあったでしょうか。ゴールに入線する段階では上体を前に倒す動きも見られず、ほぼ棒立ちで駆け抜けるような格好。ゴール後にはよたよたと座り込む姿も見られました。金のカーリーが軽快にウィニングランをしている姿、その余力とは対照的でした。

サニブラウンさんの決勝のタイムは10秒06。風が向かい風ということで単純な比較はできませんが、予選・準決勝よりもタイムを落としました。上位は軒並み9秒8台に入れてきたなかでタイムが落ちるというのは、やはり地力の差だろうと思います。しかし、その差がどんなものなのかは一度決勝まで出てみないとわからないもの。決勝進出を懸けた準決勝で相当のパワーを消費すること。それでも上位勢は決勝でさらに上げてくること。決勝はヨーイドンの勝負ではなく、肉体的にも精神的にもどれだけのチカラを温存しているかでスタート前から差がついていること。決勝に進んだサニブラウンさんの姿を見て、初めて実感できることがたくさんありました。「準決勝を突破すれば勢いで決勝はイケるなんてことはナイ」んだなと。

それでもレース後のサニブラウンさんと織田さんには笑顔がありました。サニブラウンさんからは「満足できた」という言葉も出ました。それを織田さんは「それはこちらの言葉です」とたしなめるような場面もありましたが、率直な心境だったのかなと思います。どれだけ厚いかわからない壁に挑み、破ったあとです。決勝にチカラが残っていなかったなとか、負けて満足してどうするんだとか、反省をするのはまた別の日の話。今は笑顔で喜ぶのがいいでしょう。素晴らしい歴史をありがとうございます!

↓お疲れ様、ありがとう、そしておめでとう!世界の7位!



本当に見られる日はくるのだろうかと思っていた100メートルでの決勝進出、しかと見せてもらいました。織田さん時代に間に合いました。織田さん時代ではいくつもの出来事がありました。200メートルでは2003年パリ大会で末續慎吾さんのメダル獲得がありました。4×100メートルリレーではメダルの常連国になりました。100メートル9秒台に飛び込む選手が何人も生まれました。日本陸上は短距離で目覚ましい進化を見せました。いい時代でした。

改めていいタイミングだなと思います。

100メートルでの決勝進出という夢を叶え、メダルという夢を遺す。

ひとつの夢を叶え、さらに大きな夢を次走につなぐ。

前走にも次走にも美味しい夢がある、いいタイミングだなと。

今後、織田さんのような存在が現れるのかはわかりませんが、またそういう存在が生まれ、ひとつの時代となっていったらいいなと思います。今大会でひとつでもふたつでも、この時代の出来事として新たな歴史が作られ、次の時代の新しい夢が生まれるように祈りたいものですね!

↓大会期間中、心のヘビロテとしてオマトレを鳴らします!


2025年、期待していますよ!

6万人のオマトレ大合唱に!



次走の人が特に歌手とかでなかったら、オマトレは残してもいいと思います!

国立競技場で行なわれたセイコーゴールデングランプリ陸上を観戦し、再びここに世界の選手と観衆が集う日を心待ちにするの巻。

08:00
これからも国立で陸上の大会はできまぁす!

ゴールデンウィークが終わるという絶望を振り払うように、連休の締めとなるお出掛けをしてまいりました。向かいましたのは我らがレガシー、国立競技場。今振り返ると何故有観客で開催できなかったのかトンとわからぬあの2020東京五輪以来となる、国立競技場での陸上競技会が有観客にて開催されたのです。

7日に行なわれた日本選手権の10000メートル、そして8日に行なわれたセイコーゴールデングランプリ陸上。国内外の有力選手が集い、観客とコネクトしながら展開する熱い戦いは、オリンピック・パラリンピックの残像を感じられるようなものでした。やはり国立で見る試合、とりわけ陸上は素晴らしい。陸上をやってこそオリンピックスタジアムです。

よく言われていた「国立にはサブトラックがないから五輪後は陸上の試合はできない」という話も、日本陸連が内規のほうを改定しまして、「五輪を開催した陸上競技場ならサブトラックなくてもオッケーです!」ということになりました。これからも国立で陸上競技の大会はできるのです。7月に決定される2025年世界陸上開催地、ぜひ東京に決まるように祈りたいもの。ここはひとつ委員たちにも「忖度」してもらいたいものですよね!一回東京を挟んでからほかにまわせやと!

↓やって来ました国立競技場!
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↓ハイテクゲートをくぐってセイコーゴールデングランプリ陸上2022東京観戦に向かいます!
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↓入場時にガイド冊子と携帯用消毒液、福島千里さんの引退記念品をいただきました!
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↓場内は国際大会の祝祭感あふれるいい雰囲気です!
国立競技場のスタンドには1万人に迫るたくさんのお客さんが集いました。その手にはお弁当やビールも握られ、行楽としての観戦を楽しむ姿も見られます。久々に再会したファン仲間なのか、若い女性グループが抱き合って喜ぶような場面も目撃しました。思わず僕もそこに加わってワンチームを結成したくなるような和やかな光景でした。(※結成した瞬間に警察からワンチーム飛んできそうだが…)

有観客での開催という前進に、選手たちも奮い立っているようです。陸上では「ここぞ」の場面で見られる、観客に手拍子を求めてチカラを引き出そうとする仕草も頻繁に行なわれています。素晴らしいパフォーマンスが生まれれば大きな拍手が起こり、驚きの決着となればざわめきが広がる。自分のパフォーマンスが誰かの心に響いていることを直に感じるのは、選手にとってもきっと喜びとなるものでしょう。

舞台と観衆と選手が一体となって生まれた、たくさんの素晴らしいパフォーマンスたち。フィールドとトラックで並行して競技が行なわれ、追い切れない部分もありましたが、個人的にも東京五輪のような気持ちで見守ることができ、大変盛り上がりました。こういうのをリベンジ観戦というのかもしれないなと思います。ま、もっとも、東京五輪の陸上のチケットは当たってなかったんでリベンジも何も、どの道見られたわけではないんすけどね!

↓やり投げの北口榛花さんは63.93メートルの好記録で海外勢を抑えて優勝!
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↓男子やり投げでもディーン元気さんが完全に元気になったところを示して優勝!
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↓男子400メートルハードルでは東京五輪銀のライ・ベンジャミンが貫録の優勝!
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↓女子1500メートルで期待の田中希実さんは、終盤の仕掛けで先頭に立つも最後は失速して4位に!
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↓男子3000メートル障害では三浦龍司さんが終盤の仕掛けで圧倒して優勝!
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↓東京五輪さながらの顔ぶれとなった女子200メートルハードルでは世界記録保持者のケンドラ・ハリソンが優勝!
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↓男子110メートルハードルでは順大の村竹ラシッドさんが世界陸上の参加標準に肉薄する好記録で優勝!
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↓男子100メートルでは予選で東京五輪代表のデーデー・ブルーノさんが重め残りで敗退する波乱!
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↓男子100メートル決勝では東京五輪には出場できなかった幻の金候補クリスチャン・コールマンが圧勝!
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↓世界陸上に向けて我らが織田裕二さんも熱く観戦していました!
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期待の選手が何人か棄権していたり、五輪の反動が感じられる選手がいたりするようなところもありつつ、今夏の世界陸上そして次回パリ五輪を目指す選手たちの躍動も感じられるような試合ぶりでした。なかでも、男子110メートルハードルの村竹ラシッドさんは、記録面でも、スターを続々と生み出している順大3年というプロフィール面でも、心に留めておきたくなる選手でした。フォトセッションで持たされるポカリとボディメンテ、一番かわいく持てていたと思います。そういうところ、いいんじゃないでしょうか。

そして、競技終了後には先頃引退を発表した福島千里さんの引退セレモニーも行なわれました。いまだ破られていない女子100メートルと200メートルの日本記録について、「私が持つ日本記録が更新されることをとても心待ちにしている」と語っていたのが印象的でした。いつもの福島さんのとぼけたような明るさで、本当に心からその日を待っているようでした。

超えていくこと、超えられること、そうやってつづいていくもの。誰かを目標にして成長していくすべての人は、やがて誰かに目標にされることで恩返しをしていくのかなと思います。遺された記録もまたレガシーです。レガシーはただ置いておくのではなく、活用されることに意味があります。活用されることで過去は生命を持って今を生きつづけていきます。過去の記録が、目指す人が現れたとき、超える人が現れたときに再び話題となるように。

せっかく作った国立競技場ですから、このレガシーもしっかり使って、ここで新しい記録が生み出される日を楽しみに待ちたいと思います。この舞台で陸上競技を観戦したことで、一層その想いは強くなりました。2025年の世界陸上が東京で行なわれるようであれば、そのときには福島さんの記録を始めとした幾多のレガシー記録たちも超えていける、そう思います。その日は世界のみなさんにもリベンジ観戦をしてもらえたらいいなと思います。走りやすくてアクセスしやすくて観戦しやすい、いいスタジアムですからね、国立は!

↓福島さんの引退セレモニーは動画でまとめておきました!


直前の試合のほうで大惨敗してたデーデー・ブルーノさんがとっても元気でした!

試合にはエントリーしていない山縣亮太さんもとっても元気でした!


世界のみなさん、また東京でお会いできる日をとても心待ちにしています!

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婦人公論 2017年 12/27、1/6 合併特大号

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